コラム

糖尿病の合併症:早期発見・早期治療でリスクを減らしましょう

糖尿病は、血糖値が高い状態が続くことで、全身の血管や神経にダメージを与え、様々な合併症を引き起こす可能性があります。合併症は、大きく分けて「急性合併症」と「慢性合併症」の2つに分類されます。早期発見・早期治療が重要ですので、それぞれの症状や予防方法について詳しく解説します。

1. 急性合併症:命に関わることも

急激な血糖値の変動によって引き起こされる合併症で、適切な処置を行わないと生命に関わる危険性があります。

  • 高血糖による急性合併症:
    • 糖尿病ケトアシドーシス (DKA): 主に1型糖尿病で発症しやすく、インスリンの著しい不足により、体内の脂肪が分解され、ケトン体という酸性物質が血液中に蓄積します。症状としては、吐き気、嘔吐、腹痛、脱水症状、呼吸が速く深くなる(過呼吸)、意識障害などが現れ、重症化すると昏睡状態に陥ることがあります。
    • 高浸透圧高血糖症候群 (HHS): 主に2型糖尿病の高齢者で発症しやすく、著しい高血糖により脱水症状が進行します。症状としては、口の渇き、多尿、脱力感、意識障害などが現れ、重症化すると昏睡状態に陥ることがあります。
    • 発症条件:
      • インスリン治療の中断や不足
      • 感染症、外傷、手術などのストレス
      • 他の薬剤の影響
  • 低血糖による急性合併症:
    • 低血糖症: 血糖値が70mg/dL以下になると、冷や汗、動悸、手の震え、空腹感、集中力の低下、意識障害などの症状が現れます。重症の場合は、痙攣や昏睡状態に陥ることもあります。
    • 発症条件:
      • インスリンや経口血糖降下薬の過剰投与
      • 食事の量が少なかった、または食事を抜いた
      • 激しい運動をした
      • アルコールを飲んだ

2. 慢性合併症:静かに進行する脅威

長期間の高血糖状態が続くことで、徐々に進行する合併症です。自覚症状がないまま進行することも多いため、定期的な検査が重要です。

  • 細小血管症:
    • 糖尿病網膜症: 網膜の血管が損傷し、視力低下や失明に至ることもあります。
      • 発症時期: 糖尿病発症後5年頃から発症リスクが高まります。
      • 予防方法: 定期的な眼底検査、血糖コントロール、血圧コントロール、脂質異常症の治療
    • 糖尿病腎症: 腎臓の糸球体と呼ばれるろ過装置が障害され、タンパク尿やむくみが現れます。進行すると腎不全となり、人工透析が必要になることもあります。
      • 発症時期: 糖尿病発症後10年頃から発症リスクが高まります。
      • 予防方法: 定期的な尿検査、血糖コントロール、血圧コントロール、適切な食事療法
    • 糖尿病神経障害: 手足のしびれや痛み、感覚の麻痺、自律神経障害(発汗異常、起立性低血圧、消化器症状など)が現れます。
      • 発症時期: 糖尿病発症後数年で発症することがありますが、初期には自覚症状がない場合もあります。
      • 予防方法: 定期的な神経学的検査、血糖コントロール
  • 大血管症:
    • 心筋梗塞・脳梗塞・末梢動脈疾患: 動脈硬化により血管が狭くなったり詰まったりすることで、様々な臓器に障害が起こります。
      • 発症時期: 糖尿病発症後10年以上経過すると、動脈硬化のリスクが大幅に高まります。
      • 予防方法: 定期的な心電図検査や頸動脈エコー検査、血糖コントロール、血圧コントロール、脂質異常症の治療、禁煙、適度な運動
  • その他の慢性合併症:
    • 歯周病、感染症、皮膚疾患、認知症、骨粗鬆症: 高血糖が様々な臓器に影響を与え、これらの疾患のリスクを高めます。
      • 予防方法: 血糖コントロール、バランスの取れた食事、適度な運動、口腔ケア、ワクチン接種など

糖尿病の合併症は、早期発見・早期治療が重要です。定期的な検査と適切な治療、そして日々の生活習慣の改善が合併症の予防に繋がります。

0th clinic 日本橋では、糖尿病の合併症予防にも力を入れており、患者様一人ひとりに合わせたオーダーメイドの治療と生活指導を行っています。

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