コラム
繰り返す風邪?大人の扁桃炎の手術適応と副作用──手術する?しない?【医師監修】
繰り返す風邪?大人の扁桃炎の手術適応と副作用──手術する?しない?【医師監修】
「風邪をひくたびにのど(扁桃)が腫れて高熱が出る」「仕事や家事に支障が出るほど繰り返す」――
その場合、扁桃摘出術(扁桃腺の手術)が選択肢になることがあります。本記事では成人の手術適応と副作用・合併症、手術をする/しないの考え方を、やさしくまとめました。
「繰り返す扁桃炎」とは?(成人で多い経過)
いわゆるのど風邪が細菌性扁桃炎に発展すると、高熱・強い咽頭痛・膿栓などで仕事や家事に支障が出ます。
抗菌薬・鎮痛剤で良くなっても、年に何度も再発する場合、手術の適応が検討されます。
成人の手術適応(目安)
- 7/5/3ルール(過去1年に7回/過去2年各5回/過去3年各3回の重症で生活を妨げる扁桃炎が診断・記録されている)
- 扁桃周囲膿瘍(クインジー)を繰り返す(例:2回以上)
- いびき・無呼吸など閉塞性睡眠時無呼吸に関連する扁桃肥大(成人では個別判断)
- その他:片側性腫大など悪性腫瘍の疑い、合併症が強い場合 等
※国・地域のガイドラインで表現は異なりますが、概ね上記が国際的な目安です。「単なるのど痛み(非扁桃炎)」は手術の対象にならないことがあります。
手術のメリット:再発や欠勤の減少(研究結果)
- 成人のRCT(英国・NATTINA)で、手術群はのど痛み日数・受診・欠勤が有意に減少。
- NHSの意思決定支援資料では、手術しなかった成人は翌年に約5回、手術した人は約1回の咽頭痛(術後の痛みを除く)という傾向が示されています。
※発作の頻度・重症度、仕事・学業への影響、合併症(クインジーなど)の有無で効果の実感は変わります。
手術の副作用・合併症(成人の目安)
- 出血:術後当日〜2週間(特に5〜10日目)に起こりやすい。成人は小児より多く、数%〜約20%が何らかの出血を経験し、約1%が止血処置(再手術や輸血)を要するとの報告があります。
- 痛み:強い咽頭痛が7〜14日続き、食事・睡眠に影響。鎮痛薬・補水でコントロール。
- 脱水・体重減少:痛みで飲食が減るため。こまめな水分・アイスなどで予防。
- 感染・発熱、味覚違和・声の変化(稀)、麻酔リスクなど。
※出血リスクや術式(電気メス/コブレーション等)による差、施設・術者差があります。個別の説明をお受けください。
手術する?しない?──意思決定の考え方
手術を検討しやすいケース
- 7/5/3ルールを満たす重症の扁桃炎が記録されている
- クインジーを2回以上起こした
- 仕事・学業・育児への影響が大きい(欠勤・欠席・夜間救急など)
- 扁桃肥大+睡眠時無呼吸が強いと疑われる
手術を急がない/見送ることが多いケース
- 回数が基準を満たさず、日常生活の妨げが小さい
- 「のど痛み」は多いが扁桃炎ではない(ウイルス性咽頭炎・後鼻漏など)
- 出血リスクが高い(血液疾患・抗凝固療法 等)
※抗菌薬での予防投与は有効性が乏しく、推奨されません。
術後の経過:痛み・食事・出血のサイン
- 痛み:ピークは術後3〜5日。1〜2週間で軽快。冷たい飲食と鎮痛薬を活用。
- 食事:水分最優先。柔らかい物から。刺激物・アルコールは控えめに。
- 出血のサイン:唾に赤み・鮮血が混じる/口に血がたまる→すぐ医療機関へ(救急も検討)。
- 復帰:デスクワークで約10〜14日が目安。重労働・運動・遠出は医師指示に従う。
医師監修
0th CLINIC 日本橋 医師(内科/耳鼻咽喉・総合)
最終更新:
信頼できる根拠(公的機関中心)
- ENT UK(患者向け情報):繰り返す扁桃炎での扁桃摘出術(成人の出血リスク:約1/5、約1%が再手術/輸血が必要のことあり)。
- ENT UK/英国各地域の指針:7/5/3ルール、資金化基準(2024)。
- NHS England:意思決定支援ツール(2023)(成人:手術ありで翌年の咽頭痛回数が少ない傾向)。
- ランセット/NATTINA試験:成人の反復性扁桃炎に対し、手術は保存療法より臨床的かつ費用対効果に優れる報告。
- NHS病院の患者向け資料:成人扁桃摘出術の目的・リスク(クインジー再発例での手術推奨を記載)。
本文は上記の公的資料・政府系サイトおよび一次文献に基づいて作成しています。解釈は施設の診療方針により差が出るため、最終判断は主治医と行いましょう。
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本記事は一般的な情報提供です。口に血がたまる/鮮血が混じる、激しい痛み・発熱、飲めない・尿が少ない等があればすぐ医療機関へ。研究・推奨にはCOI(利益相反)や出版バイアスの影響があり得ます。個別判断は診察・検査結果に基づきます。