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【保存版】猫・犬・ヒトに噛まれた時の正しい対処|ワクチン・薬の期間・縫合の可否まで

【保存版】猫・犬・ヒトに噛まれた時の正しい対処|ワクチン・薬の期間・縫合の可否まで|0th CLINIC 日本橋

猫・犬・ヒトに噛まれたときの正しい対処

噛み傷は見た目が小さくても深部感染関節内感染のリスクがあり、初期対応が重要です。本稿では、救急~外来での標準的な考え方をもとに、家庭での一次対応受診の目安抗菌薬の選び方・期間破傷風・狂犬病ワクチン、そして跡を少なく縫合する戦略までを解説します。感染管理とワクチン評価は、IDSA/CDC等の推奨に準拠します。

1. まずやること(家庭での一次対応)

  1. 大量に流水で洗い流す(できれば数分以上)。可能なら生理食塩水で高圧洗浄に近い水流をかけ、砂や唾液を物理的に除去。歯牙片・異物が疑わしければ無理に探らず受診。
  2. 圧迫止血(清潔ガーゼ)。噴出性出血や止まらない出血は救急要請。
  3. 患肢の固定と挙上(手・指は特に挙上で腫脹軽減)。
  4. 氷嚢で冷却(凍傷に注意)。
  5. ワクチン歴の確認:破傷風(最終接種時期)、海外曝露の有無(狂犬病PEP評価)。
痛み止めは市販薬で可。ただし発熱・広がる発赤・膿・強い疼痛・しびれ・関節痛・体調不良があれば早期受診。

2. 受診の目安(迷ったら受診でOK)

  • 猫の咬傷:穿刺創で深部感染(Pasteurella など)リスク高。原則受診。
  • 手・指・関節周囲・顔、穿通が疑われる創、免疫不全・脾摘・肝疾患など基礎疾患あり。
  • ヒト咬傷(Eikenella 等・高感染率)。特に拳咬創(ファイトバイト)は関節内感染リスク。
  • 48時間以内に発赤拡大・熱感・腫脹・排膿が進む、発熱・悪寒など全身症状。
  • ワクチン相談が必要(破傷風の最終接種>5–10年/不明、海外での動物曝露等)。

3. 抗菌薬の選び方・投与期間の目安

咬傷は好気性+嫌気性の混合感染が多く、アモキシシリン/クラブラン酸(AMPC/CVA)が第一選択。β-ラクタム不可では代替を組み合わせます。

状況第一選択βラクタム不耐/アレルギー代替期間の目安*
予防投与(高リスク創)
猫咬傷、手足、穿通、関節近傍、深い顔面創、免疫不全 等
AMPC/CVA(内服) フルオロキノロン+メトロニダゾール、
またはドキシサイクリン±メトロ(妊娠不可 等個別判断)
3–5日
感染あり(蜂窩織炎・排膿 等) AMPC/CVA(内服/重症はABPC/SBT等IV) モキシフロキサシン単剤、
またはレボ/シプロ+メトロニダゾール
5日(改善遅ければ延長)
ヒト咬傷(Eikenella対応) AMPC/CVA(内服)/AMP/SBT(IV) モキシフロキサシン、
またはレボ/シプロ+メトロニダゾール
予防3–5日/感染5–10日

*IDSA/AAFP等:予防は3–5日、感染は原則5日を目安に、臨床反応で調整。手や関節内関与、深部膿瘍では外科的処置・ドレナージを併用。

菌種例:犬・猫=Pasteurella、嫌気性、ブドウ球菌等/ヒト=Eikenella(マクロライド耐性)等。培養は膿や深部組織からが望ましく、創面拭い取りのみは限界。

4. 破傷風ワクチンの考え方

「汚染創」(咬傷含む)では、最終接種から5年以上経過、または接種歴不明・未完了ならトキソイド(Td/Tdap)±TIG(破傷風免疫グロブリン)を検討。TIGは汚染創+接種歴不十分/不明などに適応。抗菌薬は破傷風予防には無効です。

創分類最終接種推奨
清潔・軽微10年超/不明Td/Tdap
汚染(咬傷・刺創 等)5年超Td/Tdap
汚染(咬傷・刺創 等)不明・未完了Td/Tdap+TIG

日本での具体的なワクチン種別・入手は医療機関でご確認ください。

5. 狂犬病ワクチン(PEP)の評価

日本は家畜犬の狂犬病清浄国で国内曝露のリスクは極めて低いですが、海外(流行国)での咬傷・コウモリ曝露ではPEP(暴露後予防:創洗浄+ワクチン±RIG)の検討が必要です。曝露地域・動物種・傷の深さで方針が変わるため、早期に医療機関と保健所へ相談しましょう。

海外で噛まれた/唾液が粘膜や創に付着した場合は、早急な洗浄当日中の医療機関受診が基本です。

6. 縫合はできる?跡を少なくする戦略

咬傷は感染率を下げるために原則は徹底洗浄・デブリドマンを優先し、縫合は部位・時間経過・汚染度で判断します。顔面など整容面の高い部位では、十分な洗浄と感染コントロールのうえで一次縫合を選ぶことがあり、手・足・穿通創遅延一次縫合や開放創管理を検討します。大きい創でも、デザインと層別縫合・張力分散で瘢痕を最小化できることがあります。

  • 十分な洗浄・デブリドマン後に縫合可否を判断
  • 顔面は整容優先で一次縫合を検討、手・関節周囲は慎重
  • 創の深さ・方向・張力線を考慮し、真皮縫合+表皮細径糸、テーピングで張力分散
  • 感染徴候があれば開放または遅延縫合に切替

拳咬創や関節内の関与が疑われる場合は、外科的洗浄・ドレナージが必要になることがあります。

7. 動物別の注意点(要点)

鋭い歯で深い穿刺創になりやすく、Pasteurella 等で高頻度に感染。手指・関節近傍は即受診。予防抗菌薬を短期投与するケースが多い。

裂創・挫滅創が多く十分な洗浄とデブリドマンが鍵。顔は整容を考え一次縫合を検討、四肢は慎重。Capnocytophagaは免疫不全等で重症化あり。

ヒト

Eikenella 等の混合感染。拳咬創は関節内感染の危険。早期の洗浄・抗菌薬・場合により外科的介入。

8. よくある質問(簡易)

抗菌薬は全員が必要ですか?
いいえ。低リスクの小さな創で感染徴候がなければ不要な場合も。ただし猫・手指・穿通・免疫不全などは予防3–5日を検討します。
痛み止め・アイシングは?
可。腫れのピークは24–48時間。疼痛増悪・発熱・赤み拡大は受診。
ワクチンはどれを確認?
破傷風(最終接種時期)と、海外曝露では狂犬病PEPの要否。:
跡を少なくできますか?
適切な洗浄・層別縫合・張力分散・テーピングで目立ちにくくできる場合があります。タイミングと設計が重要です。

9. 迷ったら早めにご相談ください

0th CLINIC では、洗浄・デブリドマン・培養採取必要に応じた抗菌薬処方破傷風・狂犬病の評価、そして整容を意識した縫合までワンストップで対応します。大きい傷でも、跡を少なくする工夫(層別縫合・張力分散・遅延一次縫合 等)を行います。オンラインで当日の相談も可能です。

※国内承認・供給状況、個々の既往・アレルギーにより選択は変わります。必ず診察で最終判断を行います。

参考・出典

  • IDSA:皮膚・軟部組織感染症 診療ガイドライン(動物咬傷の治療・テタヌス評価)。
  • CDC:破傷風ワクチン/IGの創傷管理ガイダンス。
  • AAFP:犬・猫咬傷の一次診療レビュー(予防抗菌薬の適応)。
  • Medscape:動物咬傷・ヒト咬傷の管理/予防投与期間。
  • CDC:Capnocytophaga(犬猫咬傷関連の重症例)。
  • MAFF/東京大学:日本の狂犬病法制度・国内リスク概説。
  • UCSF:咬傷のリスク層別と予防投与の適応(小児だが創分類に有用)。
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