タミフル(オセルタミビル)

タミフル(オセルタミビル)|インフルエンザの予防内服と治療

まずはワクチンが基本 インフルエンザの最重要対策は予防接種です。
タミフル(一般名:オセルタミビル)は、合併症リスクが高い方など、限られた状況で 「補助的」に用いる抗インフルエンザ薬です(予防内服/治療いずれも医師が個別判断)。

概要(はじめに)

季節性インフルエンザは A 型または B 型ウイルスによる急性呼吸器疾患です。 ワクチン接種が最重要で、抗ウイルス薬はそれを代替するものではありません。 ただし、曝露状況や基礎疾患によっては、予防内服早期治療が有用となる場面があります。

薬の位置づけ

  • 用途:予防(曝露前/曝露後)と治療
  • 対象:重症化リスクが高い方や、家庭・施設内で濃厚接触があった方など
  • 他剤:ザナミビル(吸入)、バロキサビル(単回内服・主に曝露後)等が状況により選択肢

濃厚接触のめやす

  • 患者と同居/看護、向かい合って会話、飛沫にさらされる環境 等
  • マスク着用でリスクは低減しますが、状況により個別判断します

予防内服(化学予防)の考え方

予防内服は補助策です。まずはワクチン+手指衛生・咳エチケットなど標準予防策が基本。 次のようなケースで、医師がリスクと利益を釣り合わせて提案します。

  • 曝露前(流行期):ハイリスク者でワクチン接種が禁忌/未接種/効果が期待しにくい場合の一時的対応など
  • 曝露後(48時間以内開始):家庭/施設で患者と接触があり、特にハイリスク者や未接種者(または接種直後で抗体未上昇)
当院の目安(成人)
目的用量・期間(成人)ポイント
曝露後予防 オセルタミビル 75mg 1日1回 × 7〜10日(家庭内は10日を選ぶ場面が多い) できるだけ早く(48時間以内)開始
流行期間の長期予防 オセルタミビル 75mg 1日1回6〜8週間など個別設定) 副作用・耐性化の観点から適応は慎重に

臨床運用メモ|インフルエンザ予防投与に必要な知識

感染経路

  • 飛沫・エアロゾル:近距離(目安6フィート/約2m以内)での大きな飛沫(≳100μm)や、エアロゾル(<100μm)を介して感染。
  • 空気感染の可能性:長時間・長距離で空中浮遊粒子による感染が延びる可能性はあるが、程度は不明。
  • 接触感染:汚染表面に触れた手で目・鼻・口の粘膜に触れることで感染。

潜伏期間・連続間隔

  • 潜伏期間:1〜4日(平均約2日)
  • 家庭内「連続間隔」:発症まで3〜4日が目安

ウイルス排出

  • 免疫正常:発症直前〜同時に開始、発症後24〜48時間でピーク、以後急速減少、5〜10日でほぼ検出されない
  • 高齢・慢性疾患・肥満・免疫抑制:数週間〜数か月と長期化することあり
予防策の期間(院内)
免疫正常・入院中の疑い/確定患者では、発症後7日または解熱+呼吸器症状消失後24時間まで、いずれか長い方で飛沫予防策を継続。

出勤・登校の目安

解熱後少なくとも24時間(解熱剤なし)は出勤停止が目安。

使用薬の整理

  • ノイラミニダーゼ阻害薬:オセルタミビル(経口)、ザナミビル(吸入)、ラニナミビル(吸入:イナビル)
  • エンドヌクレアーゼ阻害薬:バロキサビル(単回内服、主に曝露後)

暴露前予防

基本は推奨されません。ただし特例として、受験など社会的理由や、ワクチン禁忌/効果不十分が見込まれるハイリスクでは個別に検討。

暴露後予防(PEP)

  • 開始時期:できるだけ早く、48時間以内
  • 期間:通常7日間(家庭内など継続曝露が想定される場合は10日を選ぶ場面あり)
  • 補足:ワクチン未接種者は、PEPに加えて速やかな接種も行う
集団発生(施設内)での予防投与期間
オセルタミビル/ザナミビルは少なくとも14日間継続し、最後の確定患者の発症後7日までは継続する。

予防中に発症した場合

予防投与中に感染が疑われる場合は、予防を中止し、耐性プロファイルの異なる薬剤で治療へ切り替えを検討。

予防効果の目安

適切な適応・タイミングで行えば、発症頻度を約1/10まで低減できる可能性があります(薬剤・集団特性で変動)。

運用の要点|インフルエンザ予防投与に必要な知識

感染経路の整理

  • 飛沫・エアロゾル:近距離での飛沫/微小エアロゾルで感染。
  • 空気感染の可能性:長距離・長時間の空中浮遊粒子で感染距離が延びる可能性はあるが、程度は不明。
  • 接触感染:汚染表面→粘膜接触で感染。

潜伏・連続間隔

  • 潜伏:1〜4日(平均2日)
  • 家庭内連続間隔:3〜4日

ウイルス排出

  • 免疫正常:発症直前〜同時開始、24〜48時間でピーク、5〜10日でほぼ消失
  • 高齢・慢性疾患・肥満・免疫抑制:長期化することあり
院内の予防策期間
免疫正常の入院患者では、発症後7日または解熱+呼吸器症状消失後24時間まで、長い方で飛沫予防策を継続。

出勤・登校目安

解熱後少なくとも24時間(解熱剤なし)は出勤停止。

使用薬の枠組み

  • NA阻害薬:オセルタミビル(本頁)、ザナミビル、ラニナミビル(イナビル)
  • エンドヌクレアーゼ阻害薬:バロキサビル(主に曝露後・単回)

暴露前予防

基本は非推奨。ただし、受験等の特例や、ワクチン禁忌/効果不十分が見込まれるハイリスクでは個別検討。

暴露後予防(PEP)

  • 開始:48時間以内に開始
  • 期間:原則7日間(継続曝露がある家庭内などは10日を選択する場面あり)
  • 併行:未接種者は速やかにワクチン接種
施設内の集団発生時
オセルタミビル/ザナミビルの予防投与は少なくとも14日継続し、最後の確定患者の発症後7日まで延長。

予防投与中に発症した場合

予防は中止し、プロファイルの異なる薬剤による治療へ切替を検討。

期待できる効果

適切な適応・タイミングでは、発症頻度を約1/10まで抑えられる可能性。

小児の目安(体重別)

※年齢・体重・腎機能で個別調整します。下記は一般的な目安で、最終決定は診察にて。

体重治療(1日2回×5日)予防(1日1回)
〜15kg30mg30mg
>15〜23kg45mg45mg
>23〜40kg60mg60mg
>40kg75mg75mg
腎機能低下時の調整(成人の目安)
eGFR/CrCl治療予防
31〜60 mL/min30mg 1日2回30mg 1日1回
11〜30 mL/min30mg 1日1回30mg 隔日
透析中 等個別調整(透析スケジュールに応じて)個別調整

※正確な用量は腎機能・体格・併用薬を踏まえ診察で決定します。

治療としての使い方(参考)

  • 成人:75mgを1日2回×5日(できるだけ48時間以内に開始)
  • 小児:体重別に1日2回×5日(上表参照)

※症状・基礎疾患・重症度によっては他剤(吸入ザナミビル、単回のバロキサビル等)を選択する場合があります。

副作用・禁忌・相互作用

よくある副作用

  • 吐き気・嘔吐、腹部不快感、頭痛 など(多くは軽度〜中等度)
  • まれに神経・精神症状(落ち着かない・錯乱など)が報告されます

禁忌・注意

  • 有効成分または添加物に過敏症の既往
  • 気道過敏のある方は吸入薬(ザナミビル)で気管支痙攣の報告あり
  • 腎機能低下:減量が必要(上表)
相互作用の注意
  • プロベネシドなど:オセルタミビル血中濃度が上がる可能性
  • 経鼻の生ワクチン(LAIV):抗ウイルス薬の前後で効果が下がる可能性があるため、接種の2週間前〜投与後48時間は併用を避けます(目安)

院内での流れ・費用の目安

  1. 一般内科で診察:暴露状況、基礎疾患、服薬歴、腎機能、妊娠可能性などを確認
  2. 適応があれば処方:予防内服または治療のいずれか(他剤を提案する場合あり)
  3. 内服開始:副作用や注意点をご説明し、ワクチン接種や標準予防策の継続もご案内
自費の目安
診察+オセルタミビル(10錠) 8,800円(税込)
※症状や処方内容で変動します。詳しくは当日ご案内します。

よくある質問

予防内服は誰でもできますか?

いいえ。ハイリスク者や家庭・施設での濃厚接触があった場面など、限られた状況で検討します。まずは医師にご相談ください。

ワクチンの代わりになりますか?

なりません。ワクチンは最も重要な予防策で、抗ウイルス薬はあくまで補助です。

妊娠中でも使えますか?

妊娠週数や症状、曝露状況により判断が異なります。まずは診察でご相談ください。

免責事項:本ページは一般向け情報です。具体的な可否・用量・期間・併用は診察で個別に判断します。本ページの薬剤名の記載は解説目的であり、広告・誘引を意図するものではありません。