ロコイド(ヒドロコルチゾン)

💊 ロコイドとは(基本情報)

ロコイドは皮膚の炎症を抑えるステロイド外用薬で、湿疹・かぶれ・アトピー性皮膚炎など幅広い皮膚疾患に使われています。
顔や首などの皮膚の薄い部位にも比較的使用しやすく、副作用が少ない「第2群(弱めの中等度)」に分類されます。

ロコイド(ヒドロコルチゾン)

ロコイド軟膏(油性)

ロコイド(ヒドロコルチゾン)

ロコイドクリーム(水分多め)

項目 内容
一般名 ヒドロコルチゾン酪酸エステル
ステロイド分類 第2群(弱めの中等度)
剤形の違い 軟膏:保湿性が高く、乾燥部位や刺激に弱い部位向け
クリーム:水分が多く、べたつきにくい。顔や日常使用に向く
使用部位の例 顔・首・手・肘・膝裏など(皮膚の薄い部位にも比較的使用可能)
保険適用 保険診療で処方可能

ステロイド外用薬は使用量・回数・塗布部位を守ることが大切です。
当院では、患者さまの肌状態に合わせて軟膏・クリームの選択を行い、副作用を最小限に抑える使用方法をご案内しています。

⚙️ ロコイドの効果と作用機序

ロコイド(成分名:ヒドロコルチゾン酪酸エステル)は、炎症やかゆみを抑えるステロイド外用薬です。
顔や首など皮膚の薄い部位にも比較的安全に使用でき、赤み・腫れ・かゆみなどの皮膚症状を効果的に改善します。

■ 炎症を抑える仕組み

ロコイドはステロイド薬として、炎症の原因物質(プロスタグランジンやサイトカイン)の働きを抑え、皮膚の炎症反応を鎮めます
これにより、赤み・かゆみ・腫れなどの症状が速やかに改善されます。

■ 外用薬のため全身への影響が少ない

ロコイドは皮膚に塗る薬であり、内服薬と比べて全身への影響が非常に少ないのが特徴です。
正しく使用すれば、副作用のリスクを最小限に抑えることができます。

■ 「中等度の強さ」だからこその使いやすさ

ロコイドはステロイドランクで第2群(中等度よりやや弱い)に分類されます。
顔・首・手指など繊細な部位でも比較的安全に使用可能で、初期治療や長期管理にも適しています。

■ 使用後、数日以内に効果を実感できることが多い

使用後数時間~数日で赤みやかゆみが改善されることが多く、即効性のある薬とされています。
ただし、漫然と長期間使い続けると副作用(皮膚萎縮など)のリスクがあるため、医師の指導に基づいて使用することが大切です。

✅ ロコイドは症状に合わせて短期間で使い切るタイプの外用薬です。
皮膚の状態を見ながら、使用部位・期間・回数を調整することが、安全で効果的な使い方のポイントです。

🗂 ステロイド外用薬のランクと基本的な塗布部位

ステロイド外用薬は、その作用の強さに応じて5段階に分類されており、使用する部位や症状の重さによって適切なランクを使い分けます。
以下の表は、各ランクの分類名・代表的な薬剤・基本的な使用部位をわかりやすくまとめたものです。

ランク 分類名 代表的な薬剤 基本の塗布部位
I群 ストロンゲスト(最も強い) デルモベート、ジフラール、ダイアコート 手のひら・足の裏・皮膚の厚い部位
II群 ベリーストロング(非常に強い) フルメタ、マイザー、アンテベート ひじ・ひざ・手足・体幹
III群 ストロング(強い) リンデロンV、ボアラ、ベトネベート 腕・脚・体幹・中等度の炎症部位
IV群 ミディアム(中等度) ロコイド、キンダベート、アルメタ 顔・首・耳・わき・こどもの皮膚
V群 ウィーク(弱い) プレドニゾロン、オイラゾン まぶた・口元・陰部・乳幼児

ステロイド外用薬は、強さと使用部位のバランスをとることが非常に大切です。
皮膚が薄い部位ほど、弱いランクの薬を慎重に短期間使うことが基本となります。

🎯 今回の主役:ロコイド(ヒドロコルチゾン酪酸エステル)

ロコイドは、ステロイド外用薬の「IV群(ミディアム:中等度)」に分類されるお薬です。
効き目はしっかりありながらも、顔や首、こどもの皮膚にも使用できる比較的マイルドなタイプです。

  • 分類ランク: IV群(中等度)
  • 主成分: ヒドロコルチゾン酪酸エステル
  • 剤形: 軟膏/クリーム/ローション/フォーム(部位や年齢によって選択)
  • 適応部位: 顔・首・耳まわり・わき・こどもの体・軽度の湿疹など

📌 使用のポイント

ロコイドは皮膚が薄く敏感な部位に適している反面、長期連用には注意が必要です。顔などに使う場合は、 1日1回・短期間・必要最小量で使用することが基本です。

✅ 医師の指示がない限り、自己判断での長期連用や広範囲使用は避けましょう
特に顔・目元・首などは、副作用(毛細血管の拡張や皮膚萎縮)が出やすいため注意が必要です。

🧴 ロコイドの使い方・使用方法

ロコイドは湿疹や皮膚炎の赤み・かゆみを抑える外用ステロイド薬です。
症状の程度や部位に応じて適切な回数・期間で使用することが大切です。

■ 使用する順番(スキンケアの流れ)

  1. 洗浄:石けんやボディソープでやさしく洗い、よくすすいでから水気をふき取ります。
  2. 保湿:患部以外の乾燥部位には保湿剤を塗布します。
  3. ロコイド塗布:赤みやかゆみのある部分に薄く塗ります。

※ 掻き壊しがある場合は、軟膏タイプの使用が推奨されます。

■ 使用回数とタイミング

赤みやかゆみが強い間は、1日2回(朝・夜)の使用が推奨されます。
症状が改善してきたら、1日1回に減らして維持するのが基本です。

※ 肉眼的に赤みが改善しても、内部の炎症は続いている可能性があるため、すぐにやめずに継続使用することが重要です。

■ 塗る量と範囲

  • ● 1FTU(人差し指の第一関節までの量)で、手のひら約2枚分の範囲に塗れます。
  • やさしくなでるように薄く均一に塗りましょう(すり込む必要はありません)。

※ 厚く塗っても効果が高まることはありません。必要十分量を守りましょう。

ロコイド(ヒドロコルチゾン)

▲ 1FTU(フィンガーチップユニット)のイメージ

■ 使用時の注意点とトラブル時の対応

  • 顔や首など皮膚が薄い部位に使用する場合は、長期連用を避けましょう。
  • 症状が強くても、2週間以上連続して使用する際は医師の確認を。
  • 💡 赤みやかゆみがぶり返す場合は、早めに医師へ相談してください。

✅ ロコイドは“炎症をコントロールする薬”です。
目に見える赤みが消えても、適切な期間の継続使用が再発防止につながります。

✋ FTU(1回量の目安)とは?

FTU(フィンガーチップユニット)とは、チューブから絞り出した軟膏が大人の人差し指の第一関節分に相当する量のことです。
およそ0.5g(5mm径ノズル使用時)で、手のひら2枚分の面積に塗るのが適量とされています。

ロコイド(ヒドロコルチゾン)

▲ 人差し指の第一関節までチューブを押し出した長さが1FTU

部位 FTUの目安量
顔全体 約1 FTU(手のひら2枚分)
片腕全体 約3 FTU
片脚全体 約6 FTU
背中+お尻 約6 FTU
▶外用薬の塗り方をチェックする。

(提供:マルホ株式会社|外部サイトが開きます)

✅ ステロイドは少なすぎても効果が不十分になり、多すぎれば副作用のリスクがあります。
適切なFTUを守って、安全に使用しましょう。

🧴 顔にロコイドを塗るときのスキンケアとメイクアップの考え方

顔に赤みやかゆみが出ているときは、医師から処方された薬(ロコイドなど)を中心にケアすることが基本です。
しかし実際には、スキンケアやメイクを完全にやめることが難しい場合もあります。
以下は、肌を守りながら生活を送るための、現実的なスキンケアとメイクのポイントです。

■ ロコイド使用中のスキンケアの基本

  • 🛁 洗顔:刺激の少ない弱酸性・アミノ酸系洗顔料を使用し、ぬるま湯で優しく洗い流します。
  • 💧 保湿:必要な場合は低刺激の保湿剤(ワセリン・ヘパリン類似物質・セラミドなど)を患部以外に使用可。
  • 💊 ロコイド:洗顔・保湿後、患部が乾いてから薄く塗布します。すり込まず“置くように”塗るのが基本です。

※ 化粧水・美容液などは無理に使わず、シンプルケアを意識しましょう。

■ メイクアップはOK?

原則として炎症が強い間はメイクを控えるのが望ましいですが、どうしても必要な場面では以下のポイントを守ってください。

  • 💡 ベースメイク:患部にはパウダータイプのミネラルファンデなど、肌に負担の少ない製品を薄く使用。
  • 🚫 リキッド・コンシーラー:炎症部位には刺激となる可能性があるため使用を避ける
  • 🧼 クレンジング:オイル・リキッド系は避け、ミルクやバームタイプでやさしくオフしましょう。

※ 落とすときはこすらず、ふき取りを避けるのが鉄則です。

「何も塗らないのが理想」と分かっていても、現実には難しいこともあります。
肌の状態と生活のバランスをとりながら、スキンケア・メイクを工夫することも立派な自己管理です。
不安な場合は、メイクの種類や使用タイミングについても医師に相談してください。

⚠️ ロコイド使用中の注意事項とスキンケア・美容施術の注意点

ロコイド(ヒドロコルチゾン酪酸エステル)は顔にも使用できる比較的マイルドなステロイドですが、継続使用や併用スキンケアには注意が必要です。
肌を守りながら、炎症をコントロールしていくためのポイントをまとめました。

■ 使用中に避けるべきスキンケア・習慣

  • アルコール成分を含む化粧水:乾燥・かゆみを助長することがあります。
  • ピーリング成分配合(AHA・BHA):バリア機能が低下した肌には刺激が強すぎます。
  • スクラブ・摩擦の強い洗顔:物理的な刺激で症状が悪化する可能性があります。
  • 過剰な保湿・厚塗り:通気性が悪くなり、毛嚢炎などのリスクになります。

■ 長期使用・強めの使用で注意する点

  • 目のまわり:長期使用で皮膚が薄くなりやすく、眼圧上昇のリスクもあります。
  • 口周囲・鼻のわき:繰り返し使用でステロイドざ瘡(にきび様湿疹)が起こることがあります。
  • 顔全体:原則、広範囲使用は避け、赤みのある部位を中心に部分使用としてください。

■ 美容施術との組み合わせについて

ロコイドを使用中の肌は一見落ち着いて見えてもバリア機能が不安定です。以下のような美容施術を受ける際は、事前に医師と相談してください。

施術名 併用の可否 備考
ケミカルピーリング × 避ける 炎症やかゆみが悪化する可能性あり。赤みのある時期はNG
フラクショナルレーザー ⚠ 要相談 皮膚バリアが整っていないと色素沈着や炎症後悪化のリスク。
エレクトロポレーション ○ 条件付き可 刺激の少ない薬剤(EGF・保湿系)であれば可。
ハイドラフェイシャル ⚠ 慎重に 皮膚バリア回復後(目安:使用中止後3〜5日)が安全。

✅ ロコイドは赤み・かゆみの炎症をしっかり抑える薬ですが、“使い方”次第でトラブルにもなります
肌の状態が安定しない場合や、美容施術をご希望の場合は、必ず医師とご相談ください。

📚 ロコイドの効果と安全性に関するエビデンス

ロコイド(一般名:ヒドロコルチゾン酪酸エステル)は、ミディアムクラス(IV群)に分類されるステロイド外用薬で、 日本国内では1970年代より広く使用されている皮膚治療薬です。
特に顔面・首・小児の皮膚炎に対する安全性と有効性が評価されており、皮膚科処方の基本薬とされています。

■ 日本国内の評価

  • ● 厚生労働省にて承認済みの医療用医薬品(薬価基準収載)であり、保険診療で使用可能
  • ● 日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」では、 顔や首に推奨される中等度ステロイドとして紹介されています(推奨度A)。

■ 国際的なエビデンス

  • ● 米国FDAでもmild to moderate inflammatory dermatosesに対して承認されており、 安全域の広さと皮膚萎縮の発現率が低いことが特徴です。
  • ● 英国NHS(国民保健サービス)でも、顔・首・わき・こどもの使用に適したfirst-line topical steroidとして位置づけ。

■ 臨床研究からの知見

  • Feldman SR et al.(2012) による研究では、 ロコイドの1日1回塗布での症状改善率がプラセボに比べ有意に高く、刺激・萎縮の副作用はほぼ認められず
  • ● 長期使用時の安全性についても、最長6か月までの使用で皮膚萎縮の兆候はみられなかったと報告されています。

✅ ロコイドは、顔や首などのデリケートな部位でも使用可能な安全性の高い外用ステロイドです。
軽度〜中等度の皮膚炎に対して、短期間・適量で使用することで副作用リスクを抑えながら効果を発揮します。

🗣️ ロコイドを使った患者さんの声・体験談

鼻の周りや頬の赤みが気になって使い始めました。2日ほどで赤みが落ち着き、かゆみも楽に。
※あくまで個人の体験であり、効果には個人差があります。

顔にステロイドを使うのは少し怖かったのですが、ロコイドは弱めと聞いて安心して使えました。医師の指示通りに5日間使っただけで赤みが改善しました。
※これは個人の感想であり、全ての方に当てはまるわけではありません。

❓ よくある質問(FAQ)

はい。ロコイドは中等度の強さ(ミディアム)のステロイドで、顔・首・小児の皮膚にも比較的安全に使えるとされています。
ただし長期連用や広範囲使用は避け、医師の指示に従いましょう。

一般的には数日〜1週間以内の使用が推奨されます。症状が改善したらすぐに中止するのが原則です。
長期使用は副作用(皮膚萎縮など)のリスクがあるため、必要な場合は必ず医師と相談してください。

洗顔後に保湿剤を先に使用し、その後にロコイドを患部にだけ塗布します。
メイクは薬がしっかり浸透してからにしましょう。
※刺激があるスキンケア(ビタミンCやピーリングなど)は避けましょう。

正しく使用すれば大きな副作用はほとんどありませんが、長期間や広範囲に使用すると皮膚が薄くなる、毛細血管が浮き出るなどの副作用が出ることがあります。
必ず指示された部位・回数で使い、症状が良くなったら中止してください。

はい、ロコイドは乳幼児にも使用実績がある比較的安全性の高い薬です。
ただし、皮膚が薄く吸収されやすいため、短期間かつ少量使用が原則です。

💰 ロコイドの薬価と自己負担額について

ロコイド(一般名:ヒドロコルチゾン酪酸エステル)は、軟膏・クリームともに薬価が1gあたり14.9円に設定されています。市販薬ではなく保険診療で処方されるため、健康保険の負担割合に応じて実際の支払い額は異なります

製剤 内容量 薬価(定価) 自己負担額(3割負担)
ロコイド軟膏/クリーム 5g 74.5円 約22.4円
ロコイド軟膏/クリーム 10g 149円 約44.7円

✅ ロコイドは、比較的安価かつ安全性の高い外用ステロイドです。症状の程度や塗布部位に応じて、医師が適切な量を処方しますので、安心してご相談ください。

👨‍⚕️ 医師からのコメント・監修

ロコイド(ヒドロコルチゾン)
「ロコイドは中等度の強さ(ミディアムクラス)のステロイド外用薬で、顔や首、こどもの皮膚など皮膚が薄い部位に安全に使える薬です。
ただし、長期使用や自己判断での使用は避ける必要があります。」

当院では、部位や症状の程度、患者さまのライフスタイルをふまえて、ステロイド外用薬の種類や使用方法を慎重に選択しています。
ステロイドに対して不安を感じる方も多いため、使用上の注意点や副作用についても丁寧にご説明いたします。

監修:黒田揮志夫 医師(病理専門医/皮膚病理医)
0th CLINIC 日本橋 院長
日本病理学会認定 病理専門医/総合診療、救急科での診療歴10年以上

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