コラム
【注意喚起】百日咳の流行情報
2025年5月現在、東京都内では百日咳(百日せき)の感染が拡大しており、特に10代の若年層を中心に報告数が増加しています。この状況を受け、成人における百日咳の予防接種の重要性が再認識されています。以下に、百日咳の概要、症状、治療法、予防接種に関する情報をまとめました。
百日咳とは?
百日咳は、百日咳菌(Bordetella pertussis)による急性呼吸器感染症で、特有の激しい咳発作が特徴です。乳児が感染すると重症化しやすく、無呼吸や肺炎、脳症などの合併症を引き起こす可能性があります。成人では症状が軽微なことが多く、気づかないうちに乳児への感染源となることがあります。
📈 東京都内の感染状況(2025年5月時点)
- 2025年4月27日時点で、東京都内の百日咳報告数は800件を超え、2024年の年間報告数(400件)の2倍以上となっています。
- 年齢別では、10~19歳が全体の約60%を占め、次いで5~9歳が約21%と、学齢期の子どもたちを中心に感染が拡大しています。
- 乳児では重症化のリスクが高く、無呼吸発作や肺炎、脳症などを引き起こす可能性があるため、特に注意が必要です。
🤧 症状と経過
百日咳は、以下の3つの時期に分けられます:
- カタル期(約2週間):風邪のような症状(くしゃみ、鼻水、軽い咳)から始まります。
- 痙咳期(約2~3週間):激しい連続的な咳発作が特徴で、咳の後に「ヒュー」という吸気音が聞かれることがあります。
- 回復期(約2~3週間):咳発作が徐々に減少し、回復に向かいます。
成人では、典型的な咳発作が見られないこともあり、長引く咳のみが症状となる場合があります。
💊 治療法
- マクロライド系抗菌薬(エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど)が第一選択薬として使用されます。
- 抗菌薬は、症状の軽減と感染拡大の防止のため、医師の指示に従って処方された期間を守って服用することが重要です。
- 近年、マクロライド耐性百日咳菌(MRBP)の報告もあり、治療効果が得られにくいケースも確認されています。
💉 予防接種と免疫維持
🔹 小児向け定期接種
- 五種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)が生後2か月から定期接種として実施されています。
- 接種スケジュールは、生後2か月から4週間隔で3回接種し、1歳時に追加接種を行います。
🔹 成人向け追加接種
- 日本では、成人用三種混合ワクチン(Tdap)は未承認ですが、小児用三種混合ワクチン(DTap:トリビック®)を成人に使用することが可能です。
- トリビック®は、日本国内で成人にも接種が認められている三種混合ワクチンで、特に乳児や高齢者を守るために重要な役割を果たします。
- ただし、トリビック®は成人に対して副反応が多いとされています。Tdapは成人用に容量を調整してあるため副反応が少ないです(TdapとDTapトリビック)。
- 接種が推奨される方:
- 乳児と接する機会のある方(保護者、祖父母、保育士など)
- 医療従事者
- 海外渡航予定者(特に米国など、接種が推奨されている国)
- 前回の百日咳ワクチン接種から10年以上経過している方
🔹 妊婦への接種
- 日本では、成人用三種混合ワクチン(Tdap)は未承認のため、妊婦さんへの百日咳ワクチン接種は個別に判断されています。
- 一部の医療機関では、妊娠27週から36週の間にトリビック®の接種を提案しています。
- 妊娠中にワクチンを接種することで、母体から胎児へ抗体が移行し、生後間もない赤ちゃんを百日咳から守る効果が期待されています。
🏥 接種可能な医療機関
現在、当院では入手困難な状況にあります。接種を希望される場合は、事前に医療機関へお問い合わせの上、在庫状況や予約方法をご確認ください。
百日咳は、成人でも感染し、特に乳児への感染源となることが問題視されています。自身と周囲の大切な人々を守るため、適切な時期に予防接種を受けることが重要です。