ベンジルペニシリンベンザチン(ステルイズ)
⚠ ジャーリッシュ・ヘルクスハイマー反応(JHR)について
ステルイズ注射(持続性ペニシリン製剤)による梅毒治療の初期に、一時的に症状が悪化するような反応がみられることがあります。これは「ジャーリッシュ・ヘルクスハイマー反応(JHR)」と呼ばれるもので、細菌が急速に死滅する過程で体内に放出される毒素や炎症物質による反応です。
■ どんな症状が出るの?
- ・発熱(38~39℃)
- ・寒気・悪寒
- ・筋肉痛・関節痛
- ・頭痛や倦怠感
- ・皮疹の一時的な増悪や紅斑
- ・まれに、めまいや動悸、呼吸苦を伴うことも
これらの症状は、治療後6〜12時間以内に出現し、通常は24時間以内に自然に軽快します。
特に初期梅毒やスピロヘータの量が多い状態では起こりやすい傾向があります。
■ どのように対処するの?
- ● 安静にして水分をしっかり補給してください。
- ● 症状がつらい場合は、解熱鎮痛薬(例:アセトアミノフェン)を内服して対応します。
- ● 強い症状や不安がある場合は、すぐにクリニックへご連絡ください。
✅ JHRは治療が効いているサインでもありますが、初めて経験する方には不安に感じられることがあります。
ご不安な場合は、いつでも当院スタッフまでご相談ください。
💊 ステルイズとは(基本情報)

ステルイズ注射(ベンザチンベンジルペニシリン)は、梅毒に対する第一選択薬として知られる持続性の注射用ペニシリン製剤です。
1回の筋肉注射で2〜3週間にわたる血中濃度の維持が可能で、特に早期梅毒に対して高い治癒効果を発揮します。
項目 | 内容 |
---|---|
一般名 | ベンザチンベンジルペニシリン(Benzathine Benzylpenicillin) |
剤形 | 筋肉注射剤(粉末/懸濁液) |
適応症 | 梅毒(早期・晩期)、先天梅毒、再発梅毒など |
保険適用 | ○(保険診療で使用可) |
特徴 |
|
● 早期梅毒では、単回2.4MUの筋肉注射で治療が完結することが多く、再検査と経過観察が重要です。
● 晩期や神経梅毒の場合は、複数回の投与や別剤(例:アモキシシリン+プロベネシド)が用いられることもあります。
● 治療初期にジャーリッシュ・ヘルクスハイマー反応(発熱・悪寒・全身倦怠感など)が見られることがあります。
✅ ステルイズ注射は、確実な治療効果とシンプルな投与スケジュールを両立できる薬剤です。
早期診断・適切な治療介入が重要な疾患だからこそ、疑わしい場合は速やかに専門医へご相談ください。
💡 ステルイズ(持続性ペニシリン)の作用と使い方
■ 梅毒の第一選択薬
ステルイズ(成分名:ベンザチンベンジルペニシリン)は、梅毒に対する第一選択の治療薬として使用されています。
1回の筋肉注射で持続的に血中濃度を維持でき、梅毒トレポネーマに対して高い殺菌効果を発揮します。
■ 単回投与で完結する治療も
梅毒の病期(早期 or 晩期)によって、単回投与(早期)または週1回を3週間継続(晩期)する注射が行われます。
症状がない場合も、血液検査での早期発見により、早期治療が可能です。
■ 投与法と投与量の目安
● 通常は、ステルイズ注射を筋肉内に1回240万単位を注射します。
● 晩期梅毒や神経梅毒では、複数回の注射または別の治療法が選択されることもあります。
■ 特徴と治療中の注意点
● 持続性が高く、1回の注射で約2〜3週間の効果が持続します。
● 治療開始から数時間〜1日以内にジャーリッシュ・ヘルクスハイマー反応が起こることがあります(発熱・発疹・悪寒など)。
● ペニシリンアレルギーのある方は、必ず申告してください。
✅ ステルイズは梅毒の標準治療薬として世界的にも認知されており、早期発見・早期治療によって完治が可能です。
性感染症の不安がある場合は、早めの受診と検査をおすすめします。
⚠ ステルイズ注射(持続性ペニシリン)の注意点
ステルイズ注射(ベンザチンペニシリン)は、梅毒治療の第一選択薬として世界的に用いられています。
強い殺菌力と長時間の効果を持つ一方で、投与時には特有の副反応や禁忌への配慮が必要です。
🟠 重要な注意点:
ステルイズ注射後、数時間以内に発熱や悪寒・倦怠感が出現する「ジャーリッシュ・ヘルクスハイマー反応」が起こることがあります。
特に治療初期の梅毒で多く、症状は一時的で自然に軽快しますが、事前に説明することが大切です。
- ペニシリンアレルギーの既往がある方には禁忌(重篤なアナフィラキシーの可能性)
- 注射後30分は医療機関内で経過観察を行い、アレルギーや反応を早期に把握
- 発熱・悪寒・筋肉痛などが出た場合は、対症療法(解熱鎮痛薬など)で対応
- 妊娠中の梅毒治療でも第一選択であり、胎児感染予防にも有効
- 注射部位の痛み・硬結が出ることがあるため、臀部など筋肉量の多い部位に投与
💉 梅毒治療に用いるペニシリン製剤の比較
梅毒治療の第一選択は持続性ペニシリン製剤(ステルイズ注射)です。
一方で、日本では入手困難な場合があるため、内服のアモキシシリン+プロベネシドによる代替治療も行われています。
以下は、注射製剤と内服治療の主な違いを比較した表です。
項目 | ステルイズ注射 (ベンザチンペニシリン) |
アモキシシリン内服 (+プロベネシド) |
---|---|---|
剤形 | 筋肉注射(持続型) | 内服薬(1日2〜3回) |
使用回数 | 1〜3回(週1回ごと) | 14日〜28日間連続服用 |
効果の安定性 | ◎ 長時間安定して血中濃度を維持 | △ 飲み忘れや吸収率の影響あり |
副作用・注意点 |
アナフィラキシー・ジャーリッシュ反応に注意 注射部位の疼痛あり |
下痢・発疹・肝機能障害など プロベネシドにより尿酸上昇あり |
日本国内の使用状況 | △ 医療機関により個人輸入対応 | ○ 標準的に使用可(保険適用あり) |
✅ 持続性注射剤は治療の確実性が高く第一選択ですが、アモキシシリン+プロベネシド併用療法も有効な代替治療です。
どちらを選択するかは、薬剤入手の可否・体質・通院状況などを考慮して、医師と相談の上で決定します。
❓ ステルイズによる梅毒治療のQ&A(よくある質問)
Q. ステルイズとはどんな薬ですか?
A. ステルイズは、ベンザチンベンジルペニシリンという持続性の注射用ペニシリン製剤で、主に梅毒の治療に用いられます。筋肉に注射することで、長期間にわたって体内に有効な濃度を保ちます。
Q. どのように投与されますか?
A. 通常は1回の筋肉注射で完結します。病期(第1期・第2期・潜伏期など)やHIV合併の有無によっては、複数回の注射が必要となることもあります。
Q. 注射後に副反応はありますか?
A. 注射後にジャーリッシュ・ヘルクスハイマー反応と呼ばれる、一時的な発熱・頭痛・筋肉痛などの反応が出ることがあります。これは細菌が急速に死滅することで起こるもので、通常は24時間以内に自然に軽快します。
Q. ジャーリッシュ反応が出たらどうすればいいですか?
A. 通常は安静と水分補給で対応可能ですが、38.5度以上の高熱が続く、強い全身症状がある場合は、医療機関にご連絡ください。解熱鎮痛薬(カロナールなど)が処方されることもあります。
Q. アレルギーのある人でも使用できますか?
A. ペニシリン系アレルギーの既往がある方には使用できません。必ず問診時にお伝えください。代替治療(ドキシサイクリンなど)を検討します。
Q. 妊娠中でも治療できますか?
A. はい。ステルイズは妊婦に対しても安全とされる唯一の第一選択薬であり、胎児の梅毒感染を防ぐためにも早期の治療が重要です。
💉 梅毒治療における持続性ペニシリン製剤の国際的使用とエビデンス
■ 国際的な使用状況
ベンザチンベンジルペニシリン(Benzathine benzylpenicillin)は、梅毒の第一選択薬として、世界中の医療機関で標準的に使用されている持続性注射薬です。
- ● WHOおよび米国CDCの梅毒治療ガイドラインで最も推奨される治療法です。
- ● 筋肉内注射で週1回投与(1〜3回)することで、有効血中濃度を長期間維持できます。
- ● コンプライアンスの高い治療として、特に服薬管理が困難な症例に優れた効果を示します。
■ 臨床試験と注意点
- ● 注射1回で最大3週間持続するため、1回または3回投与で治療が完結する症例も多く報告されています。
- ● 一方で、アナフィラキシーなどの重篤なアレルギー反応のリスクがあり、ペニシリンアレルギー既往の有無を必ず確認する必要があります。
- ● CDC(2021年)梅毒治療ガイドラインによれば、早期梅毒には2.4M単位の1回投与、晩期梅毒には3週間連続投与が標準です。
■ エビデンスの出典(代表例)
- ・CDC 2021 STI Treatment Guidelines – Syphilis
- ・WHO Guidelines for the Treatment of Treponema pallidum (2016) – WHO公式PDF
- ・Workowski KA, et al. “Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines” – MMWR 2021
- ・日本性感染症学会ガイドライン(2020年版)
✅ ベンザチンペニシリン(ステルイズ注射)は、国際的にも科学的根拠に基づいた第一選択薬です。
服薬忘れがない・確実な血中濃度維持・単回治療が可能という点で、特に治療の確実性が求められる梅毒において最も信頼されています。
💉 梅毒治療薬の薬価と自己負担額の比較
梅毒治療には、第一選択薬である持続性ペニシリン製剤(ステルイズ注射)と、代替療法として用いられるアモキシシリン内服があります。
それぞれの薬剤の費用と自己負担額の目安は以下の通りです。
■ 保険診療での薬価(2024年時点目安)
製剤名 | 薬価(単価) | 用法例 | 薬剤費(3割負担) |
---|---|---|---|
ベンザチンベンジルペニシリン(ステルイズ)2.4M単位 | 約10,025円/筒 | 1回筋注(1〜3回) | 約3,008円/回 |
アモキシシリンカプセル 250mg | 10.4円/カプセル | 1日3g(12カプセル)×14日 | 約437円/14日分 |
■ 比較と考慮点
- ● 注射薬(ステルイズ)は1回の自己負担は高額ですが、治療完了まで1〜3回で済むというメリットがあります。
- ● 内服薬(アモキシシリン)は非常に安価ですが、毎日の内服と通院管理が必要です。
- ● 確実性・再発リスク・患者背景を考慮して、医師と相談のうえ最適な治療を選択してください。
✅ ステルイズ注射は保険適用外(自費扱い)になる場合もあるため、事前に医療機関で費用確認が必要です。
保険適用されるかどうかは、診療体制・疾患の状況・医師の裁量により異なります。
👨⚕️ 医師からのコメント・監修

「梅毒治療は、確実に菌を除去するための治療計画と、再感染・パートナー治療のサポートが不可欠です。
当院では、1回で治療効果が期待できるステルイズ注射を用い、患者さまのライフスタイルや状況に応じた治療を行っています。」
プライバシー配慮を最優先に、性感染症に関するご不安やご質問にも丁寧にお答えしています。
一人で悩まず、安心してご相談ください。
0th CLINIC
・日本泌尿器科学会認定 泌尿器科専門医
・日本性感染症学会 会員
・性機能・男性更年期治療に精通

「梅毒の診断・治療は、早期発見と治療完遂が鍵となります。
ステルイズは一度の注射で治療効果が見込める点で、服薬コンプライアンスが心配な方にも有用な治療法です。」
血清学的フォローアップや再感染予防まで含めたトータルケアを大切にしています。
ご自身の健康と、大切なパートナーのためにも、専門医のサポートをぜひご活用ください。
0th CLINIC 日本橋 院長
医学博士/性感染症診療歴多数
性器病変の病理診断・治療に精通
関連コラム
ただいま準備中です。少々お待ちください。