粉瘤の病理検査で何がわかる?悪性との違い
粉瘤の病理検査で何がわかる?悪性との違い
粉瘤(ふんりゅう/アテローム)は皮膚の下にできる袋状の良性腫瘍です。標準的には局所麻酔下で被膜ごと切除し、必要に応じて病理検査(顕微鏡診断)に提出して、診断の最終確認や他疾患の除外を行います。本稿では、病理で何がわかるのか、良性と悪性の違い、どんな時に提出を検討するかをわかりやすく解説します。
病理検査で「具体的に」わかること
- 診断の確定:粉瘤(表皮嚢腫)か、類似疾患(脂肪腫、皮様嚢腫、毛包嚢腫〈トリキレーマ嚢腫〉、ステアトシストーマ 等)かを判定。
- 炎症・感染の有無:嚢腫破裂や肉芽組織の形成、細菌感染の示唆など。
- 取り切れている可能性:被膜残存を疑う所見がないか(病理だけで100%断定はできませんが、参考になります)。
- 稀な腫瘍の見落とし防止:ごく稀に類表皮癌(扁平上皮癌)様変化、増殖性毛包腫瘍(Proliferating trichilemmal tumor)など、追加評価が必要な所見がみつかることがあります。
※病理所見は標本部位・採取状態(破裂の有無等)により解釈が変わります。最終判断は総合的に行います。
良性と悪性の違い(病理学的視点の概要)
項目 | 良性(粉瘤など) | 悪性が疑われる場合の所見(例) |
---|---|---|
基本構造 | 角化を伴う嚢腫壁(表皮様上皮)と内容物(角質) | 浸潤性増殖、構造異型、壊死を伴う不規則な増殖 |
細胞の性状 | 細胞異型は軽微〜なし | 核異型・核分裂像の増加、角化傾向の異常(扁平上皮癌様) |
周囲組織 | 破裂に伴う炎症性変化・肉芽形成はあり得る | 神経・血管・脂肪層への明らかな浸潤、広範な破壊性増殖 |
臨床経過 | ゆっくり増大、炎症時に腫脹痛み | 急速増大、潰瘍化、止血困難、固定化など(臨床で要注意) |
※上記は概略です。個々の症例で所見は異なり、臨床像(大きさ・速度・部位)と合わせて判断します。
どんな時に病理検査を検討する?
- 典型像から外れる、または急速に大きくなっている
- 繰り返す感染・破裂で周囲の瘢痕が強い
- 顔面・外陰部・手指など重要部位での再発や異常な経過
- 視診・触診・超音波で他疾患が疑われる(脂肪腫・血管腫など)
- 患者さまが診断の確証を希望される場合
当院では、切除標本を適切に処理し、連携病理に提出します。結果は後日、画像や図を用いてわかりやすくご説明します。
切除と再発予防の考え方
粉瘤は袋(嚢腫壁)を残さずに切除することが再発予防の基本です。炎症が強い時期は被膜が脆く、まず切開排膿で落ち着かせてから根治切除を計画することがあります。傷の大きさ・部位・出血リスクに応じて、最もバランスのよい術式を選択します。
受診・ご予約のご案内
0th CLINIC 日本橋の皮膚科では、保険診療で粉瘤の診察・外来切除・病理提出・結果説明まで一貫対応します。
LINE予約はこちら(24時間)
※当日の処置可否は、症状・部位・混雑状況などにより医師が個別に判断します。
よくある質問(病理と悪性鑑別)
Q. 粉瘤は必ず病理検査が必要ですか?
A. 典型像では必須でない場合もありますが、臨床像が非典型・急速増大・再発などの場合は提出を検討します。
Q. 悪性の粉瘤はありますか?
A. 「粉瘤が悪性化する」というより、粉瘤に似た悪性腫瘍が紛れ込むことを想定します。臨床像と病理で丁寧に鑑別します。
Q. 結果はいつわかりますか?
A. 通常は数日〜2週間程度で説明可能です(病理機関や追加染色の有無で前後します)。
Q. 再発を防ぐには?
A. 炎症が落ち着いたタイミングで被膜ごと切除すること、術後の創管理・テープ固定・摩擦の回避が役立つ場合があります。
※本コラムは一般的な情報提供です。診断・治療の可否や手術時期は、診察のうえ医師が個別に判断します。緊急性が高い症状(急速な腫脹・強い疼痛・発熱・出血など)がある場合は、速やかに医療機関へご相談ください。