コラム
【皮膚科医師監修】口唇ヘルペスに対するPIT治療
口唇ヘルペスに対するPIT治療とは
口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)によって引き起こされるウイルス性疾患で、多くは唇やその周囲に水疱やびらんを形成します。発症すると痛みやかゆみが強く、審美的にも影響が大きいため、繰り返す再発に悩む方も少なくありません。
PIT(Patient Initiated Therapy)治療とは、再発の初期兆候(ピリピリ、ムズムズ、違和感)を患者自身が自覚した段階で、自己判断で抗ウイルス薬を内服する治療法です。医師の指導のもと、あらかじめ処方された薬を自宅に常備しておき、前兆を感じたタイミングで速やかに内服を開始するのが特徴です。
PIT治療の目的と効果
- 再発を最小限に抑える:ウイルスが活性化して症状が出る前に抑えることができる
- 症状の軽減・期間短縮:発疹の進行を止めたり、治癒までの時間を短くできる
- QOLの向上:症状の強さや見た目によるストレスを軽減
使用する薬剤
PIT治療で用いられる主な抗ウイルス薬は以下の通りです:
- ファムシクロビル(ファムビル)
- 初期症状が出現してから6時間以内に1回目を内服、その後12時間後に2回目を内服(計2回)
- 単回治療に近く、利便性が高い
- アメナメビル(アメナリーフ)
- 初期症状出現後6時間以内に1200mg(6錠)を食後に1回のみ内服
- HSVのDNAヘリカーゼ・プライマーゼ阻害薬
- 服薬は1回で完了するため利便性が非常に高い
PIT治療におけるファムビルとアメナリーフの違い
項目 | ファムビル | アメナリーフ |
---|---|---|
薬理作用 | DNAポリメラーゼ阻害 | DNAヘリカーゼ・プライマーゼ阻害 |
内服方法 | 6時間以内に1回目、その12時間後に2回目 | 6時間以内に1回、食後に1200mg(6錠) |
服用回数 | 2回 | 1回のみ |
即効性 | 高い | 高い |
利便性 | やや高い(2回服用) | 非常に高い(1回服用) |
PIT治療の適応と処方について
- PIT治療は「再発の前兆が明確に自覚できる患者さん」に適応されます。
- 初診時に診断と説明を行い、再発時に1回分のみ処方されます。
- 医師の指導のもと、必要に応じて継続的に処方を更新できますが、常用や予防内服はPITの対象ではありません。
PIT治療を成功させるコツ
- 前兆を見逃さない:ピリピリ、かゆみ、軽い痛みを感じた時点で服用開始
- 外用薬と併用することも:内服薬に加え、アシクロビル軟膏やアラセナ-A軟膏を局所に塗布すると効果的
- 常備薬の準備:処方後は携帯や自宅保管など、すぐに取り出せる状態に
- 自己判断での継続服用は避ける:症状が違う場合(帯状疱疹やニキビなど)と見誤ることもあるため、初回は必ず医師に相談
どこで処方されているか?
PIT治療は保険診療で対応可能であり、以下のような医療機関で処方されます:
- 皮膚科
- 内科・一般診療科
- 婦人科(性器ヘルペスの併発例も)
- 一部の美容皮膚科や自由診療クリニック
当院でもPIT治療を行っており、初回診察後に希望される方には予備薬を処方いたします。
費用(保険診療の目安)
- ファムシクロビル錠(500mg×3錠):3割負担で約900〜1,200円
- アメナメビル錠(200mg×6錠):約1,500〜2,000円前後
- 診察料+処方料含めて:初回は2,000〜3,000円前後
PIT治療の注意点と対策
- 効果がない・悪化する場合は受診を:他疾患の可能性や耐性の問題もあり
- 1年に何度も再発する場合は長期抑制療法も検討
- 性交渉・キスの回避:再発時は感染力が高まるため注意が必要
- 紫外線・ストレスの管理:再発を防ぐための生活指導も併せて実施
当院では、ヘルペスの再発でお悩みの方に対して、迅速かつ確実なPIT治療の導入をサポートしています。ご希望の方はお気軽にご相談ください。