コラム
慢性副鼻腔炎を疑うサインと受診の目安【医師監修】
慢性副鼻腔炎を疑うサインと受診の目安【医師監修】
いわゆる「蓄膿症」。12週間以上つづく鼻づまり・鼻水(後鼻漏)・顔の痛み/圧感・におい低下のうち2つ以上があれば、慢性副鼻腔炎(CRS)を疑います。早めにクリニックで評価しましょう(内視鏡、必要に応じてCT)。
こんな症状なら慢性副鼻腔炎を疑います
次の4主症状のうち2つ以上(うち一つは鼻づまりまたは鼻水/後鼻漏)が12週間以上続けば、CRSを疑います。
- 鼻づまり(閉塞・詰まり感)
- 鼻水・後鼻漏(色のついた鼻汁が喉に落ちる、痰っぽい)
- 顔の痛み・圧迫感(頬・目の周り・額)
- においの低下/消失
※花粉症(アレルギー性鼻炎)と重なることも多く、くしゃみ・鼻かゆみ・目のかゆみが目立つ場合は併存を考えます。
受診の目安:いつ来院?どこで診る?
当院受診をおすすめ
- 12週間以上、上記症状が持続
- 年に4回以上の急性副鼻腔炎の反復(その都度は治るが再発する)
- 市販薬で改善せず、仕事・学業・睡眠に支障
- 嗅覚の低下が続く/ぶり返す
- 喘息、花粉症、アスピリン喘息(NSAIDsで悪化)などの併存がある
診察で行うこと
- 鼻内視鏡で炎症やポリープの有無を確認
- 必要に応じてCT(副鼻腔の病変・解剖の把握)
- アレルギー・歯性(奥歯の炎症)・免疫低下などの背景評価
要注意!すぐ受診/救急のサイン
- 眼の腫れ・赤み・強い痛み、物が二重に見える、眼が動かしにくい
- 39℃以上の高熱や強い頭痛・項部硬直、意識の変化
- 片側だけの症状が進行する/悪臭(壊死臭)を感じる
- 免疫抑制(抗がん剤・ステロイド長期など)や妊娠中で悪化が速い
※眼や脳に合併症が及ぶと重症化することがあります。ためらわず医療機関へ。
原因とタイプ:ポリープ有り/無し、アレルギー・喘息との関係
- CRSwNP(ポリープ有り):鼻づまり・嗅覚低下が目立つ。喘息やアスピリン喘息と関連。
- CRSsNP(ポリープ無し):痛み/圧感が目立つことも。
- 誘因:アレルギー、ウイルス後の炎症遷延、構造のゆがみ(鼻中隔弯曲 など)、歯性、喫煙、免疫低下など。
クリニックで行う検査と初期治療
検査
- 鼻内視鏡(膿・ポリープ・粘膜の腫れ)
- CT(必要に応じて)
- アレルギー評価、歯科病変の確認、免疫不全が疑わしい場合は血液検査
初期治療(基本)
- 生理食塩水での鼻洗浄(毎日)
- ステロイド点鼻薬(正しい使い方を指導)
- アレルギー合併時は抗ヒスタミン薬などを併用
- 細菌感染の増悪が疑われる時のみ、抗菌薬を短期で検討(自己判断の抗菌薬はNG)
- ポリープが強い場合:短期の内服ステロイドや、生物学的製剤の適応を専門医と検討
- 保存的治療で不十分なら内視鏡下副鼻腔手術(ESS)を検討
※治療はガイドラインに沿い、段階的に行います。重症度や合併症により個別化します。
よくある質問(Q&A)
風邪(急性副鼻腔炎)との違いは?
急性は通常4週間以内に改善。12週間以上続く場合は慢性を考えます。年に4回以上の強い急性発作は反復性急性と呼びます。
市販薬だけで様子を見てもいい?
改善が乏しい場合は自己判断を長引かせず受診を。点鼻ステロイド・鼻洗浄はガイドラインで推奨されます。抗菌薬は必要な時だけ短期に。
においは戻りますか?
原因(ポリープ・アレルギー・感染増悪)や重症度次第です。早期からの治療と、必要に応じ専門治療を行うことで、改善が期待できます。
医師監修
0th CLINIC 日本橋 医師(内科/耳鼻咽喉・アレルギー)
最終更新:
信頼できる根拠(公的・学会ガイドライン中心)
- EPOS 2020(欧州鼻科学会ポジションペーパー):CRSの定義(12週・4主症状)、CRSwNP/CRSsNPの分類、初期治療。PDF公開。
- AAO-HNS(米国耳鼻咽喉科学会):成人副鼻腔炎ガイドライン(診断・内視鏡/CTの位置付け、薬物療法、手術適応)。
- NHS/CDC:受診の目安、眼・脳合併症の警告症状(眼周囲腫脹、複視、高熱、意識変容など)。
- PMDA:鼻ポリープ合併CRSに対する生物学的製剤(デュピルマブ等)の承認情報。
本文は上記の公的資料・学会ガイドライン・一次文献に基づき作成しています。解釈は施設の診療方針により差が出るため、最終判断は主治医と行いましょう。
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本記事は一般的な情報提供です。目の腫れ・視力異常・強い頭痛/高熱・意識の変化などがあれば、すぐ医療機関へ。研究・推奨にはCOI(利益相反)や出版バイアスの影響があり得ます。個別判断は診察・検査結果に基づきます。