不眠症のタイプと原因
入眠困難(寝つきに時間がかかる)
ベッドに入ってから眠りに入るまで30分以上要する状態が持続。就床前の強い光・スマホ、カフェイン/アルコールの遅い時間帯の摂取、昼寝過多、ストレスや不安、体内時計の後退(概日リズムの遅れ)などが関わります。
- まずは 睡眠衛生・刺激制御・入眠儀式の整備
- 体内時計のズレが疑わしい場合:起床時刻固定・朝の光曝露・夕方以降の強光を避ける
- 必要時の薬物療法候補: メラトニン受容体作動薬、 オレキシン受容体拮抗薬、 非ベンゾジアゼピン系(短期・適正)
※抑うつ・強い不安の併存が疑われる場合は 鑑別評価を優先。
中途覚醒(夜間に何度も目が覚める)
夜間に複数回の覚醒が起こり、再入眠に時間を要します。加齢、就床前飲酒、睡眠時無呼吸、夜間頻尿、慢性疼痛、胃食道逆流などの影響に注意。
- 生活調整:就床前の飲酒/過度の水分・カフェインを控える、痛みや逆流の治療
- 疑うべき併存疾患: 胃食道逆流症(GERD)、 夜間頻尿
- 必要時の薬物療法候補: オレキシン受容体拮抗薬、 非ベンゾジアゼピン系、 症状によりベンゾジアゼピン系(短期・漸減計画を前提)
早朝覚醒(予定よりかなり早く目覚める)
所定の起床時刻より大幅に早い覚醒が持続し再入眠困難。加齢による体内時計の前進や季節要因、抑うつのサインとして出現することもあります。
- 行動調整:就床時刻を早め過ぎない/朝の光は適度に・夜の強光を減らす/日中活動量の確保
- メンタルヘルス評価:抑うつ兆候がある場合は 問診・質問票で評価
- 必要時の薬物療法候補: オレキシン受容体拮抗薬、 メラトニン関連薬
熟眠感低下(眠っても回復した感じが乏しい)
睡眠時間は確保しているのに倦怠感・だるさが残るタイプ。睡眠の質低下(断片化)、睡眠時無呼吸や周期性四肢運動、疼痛、逆流、甲状腺機能異常、睡眠と覚醒のリズム不一致など広く鑑別します。
- 評価:睡眠日誌・質問票(AIS/PSQI)、必要に応じ終夜検査や他科連携
- 併存要因の是正:疼痛コントロール、GERD対策、就床環境の見直し
- 必要時の薬物療法候補: オレキシン受容体拮抗薬、 非ベンゾジアゼピン系 等を症状・背景に合わせ選択(短期・適正)
いずれのタイプでも、漫然投与は行わず、CBT-I を含む非薬物療法を基本に、薬は「必要な期間・用量」「減量/中止計画」まで設計します。
