A型ボツリヌス毒素製剤(ボトックス)

💉 A型ボツリヌス毒素製剤とは(基本情報)

A型ボツリヌス毒素製剤(ボトックス)

▲ ボトックスビスタ製剤(アラガン社)

A型ボツリヌス毒素製剤(通称:ボトックス)は、神経と筋肉のつなぎ目に作用して筋肉の動きを緩める薬剤です。
眼瞼痙攣や顔面神経麻痺、肩こり、下肢痙縮などの治療に加え、美容領域(表情ジワ・小顔・多汗症など)にも広く使用されています。

項目 内容
一般名 A型ボツリヌス毒素(Botulinum toxin type A)
代表的製剤 ボトックスビスタ®(アラガン社/厚労省承認)
剤形 注射剤(皮下注・筋注)
主な適応症 眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、下肢痙縮、脇汗・手汗、多汗症、
表情ジワ(眉間・額・目尻)、小顔(咬筋)、肩こり、ふくらはぎの張り など
保険適用 一部適応で○(痙縮、眼瞼痙攣等)/美容目的は自費
特徴 筋肉や汗腺の働きを一時的に抑えることで、症状の緩和や見た目の改善が期待できます。
効果は3〜6ヶ月持続し、繰り返しの注射で安定した効果が得られます。

● 美容医療では、シワ予防・小顔効果・肩こり改善・脚痩せ・多汗症治療など多彩な応用があります。
● 医療現場では、神経筋疾患・痙縮・けいれん性疾患などに対し保険適用で使用される重要な治療薬です。
● いずれの場合も、専門医による評価と投与設計が重要となります。

✅ 「ボトックス®」と「ボトックスビスタ®」の違いは?

A型ボツリヌス毒素製剤には、グラクソ・スミスクライン社(GSK)製の「ボトックス®」と、アラガン社(AbbVie傘下)製の「ボトックスビスタ®」の2つの名称があります。
実はこれらは本質的には同じ製剤であり、成分・製造ライン・品質管理は同一です。

項目 ボトックス®(GSK) ボトックスビスタ®(アラガン)
主な用途 保険診療(痙縮、眼瞼痙攣など) 美容診療(しわ、小顔、多汗症など)
販売元 グラクソ・スミスクライン株式会社(GSK) アラガン・ジャパン(現在はアッヴィ社傘下)
製造場所 いずれもアメリカ・アラガン社の工場で製造
成分・品質 成分・純度・製造管理は完全に同一
国内承認番号 保険医療用としての承認番号 美容医療用としての承認番号(2016年)

つまり、GSKの「ボトックス®」とアラガンの「ボトックスビスタ®」は、中身は同じですが、
使用目的(保険 or 美容)と販売会社が異なるだけです。
医療機関では用途に応じてそれぞれを使い分けており、どちらも高い安全性と信頼性を持った製剤です。

💉 A型ボツリヌス毒素製剤(ボトックス)の作用と使い方

■ 筋肉の過活動を抑える作用

A型ボツリヌス毒素は、神経と筋肉の接合部でアセチルコリンの放出を阻害することで、
筋肉の過度な収縮を抑制し、表情ジワや筋肉性の張りを改善します。

■ 美容医療での主な適応

額・眉間・目尻のシワ改善
エラ張り(咬筋)や肩の張り(僧帽筋)の緩和、小顔・華奢見せ効果
多汗症の制汗治療(腋窩、手掌、足底など)

■ 効果の発現と持続

● 効果は3〜5日後から徐々に発現し、2週間ほどで最大効果となります。
● 持続期間は3〜6ヶ月程度。定期的な施術で持続的な改善が期待できます。

■ 使用上の注意点と副作用

● 一時的な表情の違和感、内出血、頭痛などが起こる場合があります。
● 極めて稀に、薬剤に対する抗体形成や注射部位の左右差が起こることもあります。
妊娠中・授乳中の方には原則として施術不可です。

✅ ボトックスは医療機関でのみ使用が認められた医薬品であり、厚生労働省により安全性と有効性が承認されています。
医師による正確な評価と注入が、効果的で自然な仕上がりにつながります。

⚠ ボトックス注射時の注意点

ボトックスは、筋肉や汗腺の働きを一時的に弱めることで、しわの改善・多汗症の治療・エラの張り改善などに使用される治療法です。
安全で効果的な治療のためには、投与部位・量・注入方法に対する慎重な判断と、適切なアフターケアが重要です。

🟠 重要な注意点:
ボトックスは妊娠中・授乳中の方、神経筋疾患のある方には使用できません
また、注射部位の内出血・腫れ・筋力低下・表情の左右差などの副作用が出ることがありますので、施術後数日間は状態観察が必要です。

  • 施術当日は激しい運動・飲酒・長時間の入浴を避けてください
  • 注射部位は揉んだり押したりせず、メイクも数時間は控えましょう
  • 以前にボトックスでトラブルがあった方は必ず申告してください
  • 1週間以内に大事な予定がある場合は、タイミングを相談してください(稀に腫れや左右差が出るため)
  • 効果の発現は通常2~3日後、最大効果は1〜2週間後に現れます

💰 ボトックス注射の薬剤費用(保険診療)

  • ボトックス注用50単位:32,439円/瓶
  • ボトックス注用100単位:57,446円/瓶

※上記は保険診療で用いた場合の薬剤費です(2025年時点)。
自費診療では、薬剤の入手経路や価格、管理費用が医療機関によって異なるため、料金設定に差があります。
ご希望の施術内容に応じて、事前にご確認ください。

🌍 ボトックスの国際的使用状況とエビデンス

■ 国際的な使用状況

ボトックス(Botulinum toxin type A)は、米国FDA承認済みの生物製剤であり、美容医療および神経疾患治療の双方で世界的に広く使用されています

  • しわ改善・表情筋調整・多汗症・片頭痛・痙攣性疾患など、用途は多岐にわたります。
  • ● WHOの治療ガイドラインでも一部の適応に対して高い有効性が記載されています。

■ 臨床試験と注意点

  • ● 美容医療分野では、額・眉間・目尻のしわ改善において高い有効性が多くの研究で示されています。
  • ● 神経筋接合部を一時的に遮断することで、痙縮や眼瞼痙攣の治療にも有効です。
  • ● 一方で、妊娠中・授乳中・神経疾患のある方では慎重な判断が必要です。
  • Carruthers JD et al. (2015) によると、長期的な安全性と持続効果も確認されています。

■ エビデンスの出典(代表例)

✅ ボトックスは世界各国で承認され、長期的な使用実績を持つ安全性の高い治療法です。
効果を最大限に引き出すには、解剖学的知識と経験を持つ医師による注入が重要です。

👨‍⚕️ 医師からのコメント・監修

A型ボツリヌス毒素製剤(ボトックス)
「ボトックスは、美容医療だけでなく、頭痛・肩こり・食いしばりといった日常的な悩みにも効果を発揮する治療法です。
当院では解剖学に基づいた層別注入により、自然な仕上がりと高い満足度を両立することを重視しています。」

私は解剖・外科の専門的知見を活かし、顔面解剖や筋肉の動きに配慮した安全な注入技術を磨いてきました。
美容目的の小顔治療だけでなく、肩こりや咬筋肥大、多汗症などの機能的な悩みにも対応し、医学的根拠に基づいた治療をご提供しています。

監修:黒田揮志夫 医師(病理専門医/元外科専門医)
0th CLINIC 日本橋 院長
日本病理学会認定 病理専門医/元外科専門医/ボトックス治療を含む美容医療と一般診療の経験多数

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