コラム

膀胱炎で言われる「感受性検査」って何?──結果の見方と、なにに役立つか【医師監修】

膀胱炎で言われる「感受性検査」って何?──結果の見方と、なにに役立つか【医師監修】

感受性検査(薬剤感受性試験)は、尿培養で見つかった菌にどの抗菌薬が効くかを調べる検査です。
むずかしい専門用語をやさしく解説し、結果の読み解き方治療での活かし方をまとめました。

感受性検査ってなに?(超要約)

尿の中の菌を培養して種類(例:大腸菌)を特定し、いくつかの抗菌薬を当ててみて「効く(=菌が育たない)か」を確かめます。
結果は通常2〜3日でまとまり、いま飲んでいる薬を続ける/切り替える/やめるなどの判断に使います。

結果の見方:S / I / R ・ SDD と MIC

用語のミニ解説
  • S(感性):通常量でよく効くことが期待。
  • I(中間)部位で濃縮される薬高用量なら効く場合あり。
  • SDD(用量依存的感性)高めの用量・頻回投与など特別な投与設計で有効。
  • R(耐性):通常の使い方では効きにくい
  • MIC最小発育阻止濃度。菌の増殖を止めるのに必要な薬の濃さ(数値が小さいほど効きやすい目安)。
  • ブレイクポイント:MICや試験結果をS/I/Rに区切る基準(CLSI/EUCAST等)。

同じ「I」でも薬や部位で意味合いが違うことがあります。解釈は主治医と確認を。

レポートの読み方(例)
  • 分離菌Escherichia coli(大腸菌)
  • コロニー数:105 CFU/mL(感染を示す量)
  • 感受性
    • セファレキシン:S
    • レボフロキサシン:I(高用量で可の注記)
    • ホスホマイシン:S
    • アモキシシリン/クラブラン酸:R

→ この例なら「S」表示の薬が第一候補。「I/SDD」は条件つき「R」は避けます

なにに役立つ?(治療を最適化する7つの場面

  1. 薬の選び直し:飲みはじめた抗菌薬が合っているかを確認し、必要なら切り替え
  2. 狭域化(デエスカレーション):広く効く薬→必要最小限の薬へ。
  3. 投与設計SDD/ Iの場合は用量・間隔を調整。
  4. 合併症の見極めRばかりや効果不十分なら、腎盂腎炎・結石・他疾患を再評価。
  5. 再発予防:過去のデータを院内アンチバイオグラムに集約し、経験的治療の精度UP。
  6. 安全性の向上効かない薬の長期使用を避け、副作用や耐性化を減らす。
  7. 公衆衛生:地域の耐性菌の監視に貢献(JANIS等)。

注意:結果だけで決めないポイント

  • 部位による違い:同じ薬でも膀胱には効くが腎臓には届きにくいなど、部位で事情が異なります。
  • 体質・相互作用:アレルギー、妊娠、腎機能、他の薬との飲み合わせも重要。
  • 検体の質:採り方次第で菌が出ない/混じることがあります(必要なら取り直し)。
  • 先に抗菌薬を飲むと、培養が陰性化することがあります。受診前の自己使用は避けましょう。

よくある質問(Q&A)

菌が出なかったのに症状があります
採尿の影響や、別の病気(膣炎・間質性膀胱炎・結石 等)の可能性があります。再採尿や他の検査を検討します。
「I」や「SDD」でも使えますか?
条件つきで使える場合があります。高用量・投与間隔の調整や、部位(膀胱/腎臓)を考えて主治医が判断します。
数値(MIC)が小さいほど良いの?
一般に小さい方が効きやすい目安ですが、ブレイクポイントでS/I/Rに区切られます。数値だけで薬を選ぶのはNGです。
結果はどれくらいで出ますか?
通常2〜3日。重症や合併症が疑われる場合は、結果を待たずに経験的治療を開始し、後から調整します。

医師監修

0th CLINIC 日本橋 医師(内科/泌尿器・感染症)
最終更新:

信頼できる根拠(公的機関中心)

本文は上記の公的資料・政府系サイトに基づいて作成しています。解釈は施設の採用基準(CLSI/EUCAST)により差が出るため、最終判断は主治医と行いましょう。

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本記事は一般的な情報提供です。症状の強さ、高熱、背部痛、妊娠中、持病や服薬がある場合は早めに受診してください。研究・推奨にはCOI(利益相反)や出版バイアスの影響があり得ます。個別判断は診察・検査結果に基づきます。

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