寒暖差が「血管の寿命」を縮める?
冬の生活を思い出してみてください。
- 暖かいリビングから、冷え切った脱衣所・浴室へ移動する
- 布団から起きて、冷たい空気の中で慌ただしく身支度をする
- 冬の朝、凍えるようなトイレや洗面所に行く
こうした「急な寒暖差」は、血管にとって大きなストレスになります。 冷たい環境では、体温を保つために血管がギュッと縮まり、血圧は上がります。 逆に急に温まると、血管が一気に広がり、今度は血圧が下がりやすくなります。
この血圧の急上昇・急降下が繰り返されることで、 脳卒中(脳出血・脳梗塞)や心筋梗塞、不整脈などのリスクが高くなることがわかっています。
ヒートショックとは?
ヒートショックとは、
「暖かい部屋 → 冷えた脱衣所・浴室 → 熱いお風呂」
のような急な温度変化によって血圧が大きく上下し、
めまい・失神・脳卒中・心筋梗塞などを引き起こす状態を指します。
典型的な流れは次のようなイメージです。
- 冷えた脱衣所・浴室に入る → 血管が収縮して血圧がグッと上がる
- 熱いお湯に肩まで一気につかる → 血管が急に広がり血圧がストンと下がる
- その途中で脳への血流が急に変化し、失神・意識消失や、心筋梗塞・脳卒中を起こしうる
特にリスクが高いのは、
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症がある方
- 心臓病や脳卒中の既往がある方
- 75歳以上の高齢の方
- 一人暮らしで長風呂の習慣がある方
モーニングサージ(早朝血圧上昇)とは?
血圧は一日中一定ではなく、 夜〜明け方はやや低め、起床前後にグッと上昇し、日中は活動に合わせて変動する という1日のリズムを持っています。この中でも、 「朝の血圧の上がり幅が大きい状態」を「モーニングサージ」と呼びます。
研究からは、
- 早朝に血圧が急に高くなる人ほど、脳卒中(特に脳出血)や心筋梗塞のリスクが高い
- 家庭血圧(起床後1時間以内)で上が135mmHg以上、ときどき150〜160mmHg以上出る場合は注意が必要
冬の朝はモーニングサージが強くなりやすい
冬の朝は、
- 室温・外気温が低く、血管が縮まりやすい
- 起床に伴い血圧が上がりやすい時間帯である
- 冷えたトイレ・洗面所・玄関への移動が多い
といった条件が重なるため、 モーニングサージ(朝の血圧の急上昇)が出やすい状況と言えます。 ここにヒートショックが重なると、脳卒中や心筋梗塞、不整脈のリスクがさらに高まると考えられています。
今日からできる「寒暖差+モーニングサージ」対策
1)浴室・脱衣所・トイレを「極端に寒くしない」
- 脱衣所に安全な小型ヒーターを置き、入浴前から温めておく
- 浴室暖房があれば、シャワーや入浴の前から使用する
- シャワーで浴室全体を温めてから湯船につかる
- トイレ・洗面所にも、可能な範囲で暖房器具を設置する
「どこか一か所だけ極端に寒い場所」を作らないことが大切です。
2)お風呂の入り方を見直す
- お湯の温度は41℃以下を目安にする
- いきなり肩までつからず、足→腰→胸と、ゆっくり段階的に浸かる
- 長時間の熱いお湯は避ける
- 食後すぐや飲酒直後、深夜の長風呂は控える
- 入浴前後にコップ1杯の水分補給をする
3)布団の中でできる「自転車こぎ体操」で、温まってから起きる
モーニングサージ対策として、「布団の中で軽く体を温めてから起きる」という方法があります。 いきなり冷たい空気の中で立ち上がるよりも、血圧の変動をゆるやかにしやすくなります。
一例として、次のような体操があります。
- 目が覚めたら、すぐに起き上がらず仰向けのままにします。
- 両膝を軽く曲げて、布団の中で自転車をこぐようにゆっくり足を動かします(30秒〜1分ほど)。
- 次に、両腕を少し大きめに振るように動かしたり、肩まわりや股関節をゆっくり回したりして、脇(腋窩)や鼠径部(足の付け根)の周辺を動かすイメージで体をほぐします。
- 体が少しポカポカしてきたら、ゆっくり横向きになってから、手で支えながら起き上がります。
脇の下や鼠径部には、腕や下肢へ向かう比較的太い動脈が走っています。 そこを動かして周囲の筋肉を使うことで、体の中心部からじんわり温まりやすくなり、 いきなり冷たい空気にさらされるよりも血圧の変動が緩やかになることが期待されます。
※股関節や膝に強い痛みがある方、医師から安静を指示されている方などは、無理に行わず、 主治医と相談のうえでご自身に合った範囲でお試しください。
4)その他の朝の工夫
- 起きたらすぐに立ち上がらず、「横向き → 座る → 立つ」と段階を踏む
- まずはエアコンや暖房をつけて部屋を温めてから動き出す
- 朝食を抜かず、血糖・血圧の乱高下を防ぐ
- 家庭血圧計があれば、起床後1時間以内に1〜2回測って記録する
5)生活リズムを整える
最近の研究では、「就寝・起床時刻をできるだけ一定にするだけでも血圧が改善する」ことが示されています。 平日・休日を問わず、寝る時間・起きる時間を大きくずらさないことが大切です。
- 寝る時間・起きる時間をできるだけ一定にする
- 寝る前のスマホ・強い光・カフェインを控える
- 夜更かしを習慣化しない
- 家庭血圧(起床後1時間以内)で、上(収縮期)が135mmHg以上が続く
- ときどき150〜160mmHg以上の高い値が出る
- 冬の朝に、頭痛・動悸・胸の痛み・息切れ・ふらつき・立ちくらみ・めまいを感じることがある
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症・睡眠時無呼吸症候群を指摘されている
- 心臓病・脳卒中の既往がある、または家族に多い
- 一人暮らしで、冬場に長風呂をする習慣がある
「年齢のせい」「冬だから仕方ない」と我慢する前に、 いまの血圧パターンがどのくらいリスクになっているのかを一度確認しておくことをおすすめします。
医療機関では何ができる?
受診していただくと、例えば次のようなことが行えます。
- 家庭血圧の記録の見方・測り方のチェック
- モーニングサージ(早朝高血圧)の有無の評価
- 動脈硬化・心臓病・腎臓病などの合併症チェック(血液検査・尿検査・心電図・必要に応じて心エコーなど)
- 必要に応じたお薬の開始・調整
- 入浴や生活習慣の具体的なアドバイス
- 他院(循環器内科・脳神経内科など)との連携
「いま、どれくらい危ないのか分からない」という不安を減らすことが、 将来の脳卒中・心筋梗塞予防の第一歩です。
