トラネキサム酸
💊 トラネキサム酸とは(基本情報)

▲ トラネキサム酸錠
トラネキサム酸は、線溶系の過剰な活性を抑える作用により、出血抑制や炎症・アレルギーの緩和に広く使用される薬剤です。
美容目的では肝斑や色素沈着の改善で知られていますが、保険診療においては以下のような疾患にも適応があります。
項目 | 内容 |
---|---|
一般名 | トラネキサム酸(Tranexamic acid) |
剤形 | 内服錠/カプセル |
適応症 |
・肝斑、色素沈着(自費) ・全身性・局所性の線溶亢進による異常出血(白血病、再生不良性貧血、紫斑病、手術後出血、肺・腎・性器・鼻出血など) ・湿疹、蕁麻疹、薬疹などのアレルギー性皮膚疾患による紅斑・腫脹・そう痒 ・咽頭炎、扁桃炎による咽頭痛・充血・腫脹 ・口内炎による口腔内の痛みやアフター性病変 |
保険適用 | ○(美容目的は除く) |
特徴 |
抗プラスミン作用により、出血を抑えつつ、炎症・色素沈着も抑制します。 肝斑治療では、ハイドロキノン外用・光治療と併用されることが多く、総合的な美白・再発予防に有用です。 |
● 出血傾向がある方、口内炎や喉の炎症、アレルギー体質の方にも有効です。
● 美容目的の内服では自己判断での長期服用を避け、医師の管理のもとで使用することが推奨されます。
💊 トラネキサム酸の作用と使い方
■ 抗プラスミン作用と美白効果
トラネキサム酸は、プラスミンという炎症・出血に関与する酵素の働きを抑える薬です。
肝斑の原因であるメラニン産生促進因子(炎症性サイトカイン)をブロックすることで、美白や色素沈着の改善が期待されます。
■ 主な適応と使用目的
美容領域では肝斑・くすみ・色素沈着の改善に使われます。
医療保険では、出血傾向・湿疹・蕁麻疹・咽頭炎・口内炎などへの処方が認められています。
■ 肝斑治療での役割
肝斑の治療では、トラネキサム酸の内服に加えて、ハイドロキノンやトーニングの併用が一般的です。
炎症を抑えることで、肝斑の再発を防ぎ、肌全体のトーンを整える効果が期待されます。
■ 服用方法と注意点
● 通常は1日750〜1000mg(250mgを1回3回など)を内服
● 治療期間は8〜12週間程度が目安(医師と相談)
● 水分をしっかり摂り、血栓リスク(喫煙・既往歴)がある方は要注意
● 副作用として胃の不快感・発疹・頭痛がまれに報告されています。
■ 保険適応されるその他の疾患
● 白血病や手術後出血などの全身的出血傾向
● 鼻血や肺出血・性器出血・前立腺手術後などの局所的出血
● 湿疹・蕁麻疹・薬疹などのかゆみ・赤み
● 扁桃炎・咽頭炎による喉の腫れ・痛み
● 口内炎によるアフター性病変の痛み
✅ トラネキサム酸は肝斑・炎症性皮膚疾患・出血傾向に対する効果が期待できる内服薬です。
美容目的でも医療目的でも、正しい用量と継続が改善の鍵です。ご不安があれば医師にご相談ください。
⚠ トラネキサム酸内服時の注意点
トラネキサム酸は、炎症や出血、色素沈着の原因となるプラスミンの働きを抑える薬です。
服用のタイミングに大きな制限はありませんが、胃腸の弱い方は食後の服用をおすすめします。
🟠 重要な注意点:
トラネキサム酸は血液を固まりやすくする作用があるため、血栓症の既往がある方・喫煙者・ピル内服中の方は事前に医師へ相談してください。
長期連用する際も、定期的な医師の診察とリスク確認が必要です。
- 通常は1日2〜3回、250〜500mgを目安に服用します
- できるだけ毎日同じ時間帯に服用しましょう
- 吐き気や皮疹・むくみなどが見られた場合は、服用を中止し医師へ相談してください
🌿 美白内服薬の比較(科学的根拠に基づく)
肝斑・くすみ・炎症後色素沈着などに対して、以下の内服薬が美白目的で用いられます。
それぞれ異なる作用機序があり、単独または併用療法で使用されます。
成分名 | 作用機序 | 効果が期待される症状 | エビデンス |
---|---|---|---|
トラネキサム酸 | プラスミンを抑制し、メラノサイト刺激因子をブロック | 肝斑、色素沈着の抑制 | 複数のRCTで有効性を証明(J Dermatol. 2007) |
ビタミンC(アスコルビン酸) | チロシナーゼ活性阻害、抗酸化作用 | くすみ、炎症後色素沈着 | メラニン合成抑制に関する基礎研究あり(J Invest Dermatol. 2001) |
L-システイン | メラニン前駆物質の流れをフェオメラニン優位に変化 | シミ、そばかす、くすみ | 日本皮膚科学会の推奨薬(肝斑ガイドライン2023) |
グルタチオン | 抗酸化+チロシナーゼ阻害+メラニン代謝促進 | 全体的な肌の明るさ、美白 | 美白効果を示す小規模RCTあり(J Dermatolog Treat. 2014) |
✅ 美白内服は適切な成分の選択と継続的な服用が重要です。
単剤でも併用でも、医師の診断のもとで安全に行いましょう
参考文献・出典:
- J Dermatol. 2007;34(11):718-723. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18021663/
- J Invest Dermatol. 2001;116(4):587–593. https://doi.org/10.1046/j.0022-202x.2001.01296.x
- J Dermatolog Treat. 2014;25(6):503–507. https://doi.org/10.3109/09546634.2012.742958
-
日本皮膚科学会「肝斑治療ガイドライン 2023」
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/kanpan_2023.pdf
トラネキサム酸の副作用について
トラネキサム酸は、抗プラスミン作用により出血抑制や美白、抗炎症効果が期待される薬剤です。
比較的安全性が高い薬ですが、以下のような副作用が報告されています。とくに長期内服時には注意が必要です。
消化器症状
- 食欲不振
- 胃のむかつき
- 悪心・嘔吐
- 下痢
軽度なものが多く、服用の継続により改善することがあります。
皮膚・アレルギー症状
- 発疹
- かゆみ
- じんましん
皮膚症状が出た場合は、アレルギーの可能性があるため医師に相談してください。
血栓関連(注意が必要な副作用)
- 深部静脈血栓症(DVT)
- 肺塞栓症(息切れ・胸痛など)
- 脳梗塞・心筋梗塞(極めてまれ)
トラネキサム酸は血液凝固系に作用するため、血栓症のリスクがわずかにあります。
喫煙者、ピル服用者、既往歴がある方は医師に申告しましょう。
その他の報告例
- めまい
- 倦怠感
- 視覚障害(霧視など)
- 色覚異常(ごくまれ)
まれに神経系の副作用が報告されているため、異常を感じた場合は服用を中止してください。
服用時の注意点
- 長期服用の際は、医師による定期的な評価を受けましょう
- 血栓症の家族歴・既往がある方は必ず医師へ申告を
- ピルとの併用はリスクが上がるため、医師と相談の上使用
※トラネキサム酸は多くの方に安全に使われていますが、症状が出た場合は医師に相談し、無理に自己判断で継続しないことが大切です。
🌍 トラネキサム酸の国際的使用状況とエビデンス
■ 国際的な使用状況
トラネキサム酸(Tranexamic acid)は、止血剤・抗炎症剤・肝斑治療薬として、日本をはじめ多くの国で医療用として承認・使用されています。
美白・色素沈着治療としての応用は、アジア圏を中心にエビデンスが蓄積されています。
- ● 日本、韓国、シンガポールでは美白・肝斑治療薬として広く使用
- ● 欧米では出血性疾患・外科領域における止血剤として認可済
- ● WHO必須医薬品リストにも収載(止血目的)
■ 臨床試験と推奨治療法
- ● 肝斑に対してトラネキサム酸内服が有効であることを示すRCTが複数報告されています。
- ● 1日750〜1500mgを8〜12週投与することで、有意な色素改善効果が確認されています。
- ● 外用薬やレーザー治療と併用することで治療効果の相乗効果があると報告。
- ● Lee JH et al. (2007) では肝斑への有効性がプラセボと比較して明確に示されました。
■ エビデンスの出典(代表例)
- ・Lee JH, et al. Oral tranexamic acid in the treatment of melasma: a randomized controlled trial. J Dermatol. 2007
- ・日本皮膚科学会「肝斑治療ガイドライン2023」
- ・WHO Model List of Essential Medicines(止血剤として)
- ・トランサミン(第一三共)添付文書・インタビューフォーム
✅ トラネキサム酸は色素沈着や肝斑、美白治療において注目される内服薬です。
出血疾患への使用実績も豊富で、安全性・有効性の両面から世界的に評価されています。
肝斑やくすみが気になる方は、お気軽にご相談ください。
❓ トラネキサム酸に関するよくある質問(FAQ)
トラネキサム酸は以下の症状・疾患に対して使用されます:
● 肝斑・色素沈着の改善
● 湿疹や蕁麻疹などの皮膚炎に伴う炎症・かゆみ
● 口内炎・扁桃炎などの炎症性疾患
● 鼻出血・月経過多などの出血傾向
美白や肝斑改善では、美容皮膚科でも広く使用されています。
通常は1日2〜3回、食後に服用されることが多いです。
肝斑治療では8〜12週間程度の継続内服が推奨されます。
美白目的の長期使用は、医師の管理のもとで行いましょう。
トラネキサム酸は一般的に安全性の高い薬ですが、以下の副作用がまれに起こることがあります:
● 吐き気・胃の不快感・下痢
● 発疹・かゆみ・じんましん
● 血栓症(極めてまれ):脚の腫れ・胸の痛みなどが出た場合はすぐに受診してください。
トラネキサム酸は血液を固まりやすくする作用があるため、
● 経口避妊薬(ピル)
● ホルモン治療薬、血栓リスクのある薬
との併用には注意が必要です。医師に服用中の薬を必ずお伝えください。
妊娠中・授乳中の使用については、医師の判断のもとで慎重に使用されることがあります。
美容目的での使用は避け、出血や炎症などの明確な適応がある場合に限られます。
💊 トラネキサム酸の薬価と当院での扱いについて
トラネキサム酸は、止血や抗炎症、美白目的など幅広い用途で使われる内服薬です。
一般的には保険診療下で使用されることが多い薬剤ですが、当院では「肝斑治療」など美容目的に限定して自費処方を行っております。
■ 一般的な薬価(保険適用時・2024年時点)
製剤名 | 薬価(単価) | 服用量の例(30日分) | 薬剤費(3割負担) |
---|---|---|---|
トラネキサム酸錠 500mg(後発品) | 11.4円/錠 | 60錠(1日2錠×30日) | 約205円 |
■ 当院での取り扱い方針
- ● 肝斑・美白目的: 自費診療として処方を行っております。
- ● 咽頭炎・湿疹などの保険適応疾患: 当院では処方を行っておりません。
- ● 咽頭炎・湿疹などに関して有効性が明確ではないからです。
✅ トラネキサム酸は肝斑改善や美白目的において有用な内服薬ですが、血栓症リスクがあるため、医師の管理のもとで服用してください。
ご希望の方は美容皮膚科外来にてご相談を承っております。
👨⚕️ 医師からのコメント・監修

「肝斑の治療は“刺激を抑えながら、継続して改善を図る”ことが重要です。
トラネキサム酸はメラニン生成の抑制に働きかける成分として、美白内服の中心的存在です。」
当院では、肝斑や美白目的でトラネキサム酸を自費で処方しています。
継続的に使用することで効果が期待できる一方で、血栓リスクや副作用への配慮も大切です。
他の治療との併用や中止のタイミングも含め、医師と相談しながら使っていくことをおすすめします。
0th CLINIC 日本橋 院長
日本病理学会認定 病理専門医/総合診療、救急科での診療歴10年以上
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