アカラシア・食道運動障害(Achalasia / Esophageal Motility Disorders)|“固形も液体もつかえる”を的確に診断・治療|日本橋の消化器内科 0th CLINIC
アカラシア・食道運動障害|“固形も液体もつかえる”を原因から解決
アカラシアは下部食道括約筋(LES)弛緩不全と食道蠕動消失を特徴とし、
食道運動障害にはEGJ出口部通過障害(EGJOO)、遠位食道けいれん(DES)、ジャックハンマー食道などが含まれます。
当院では内視鏡で器質疾患を除外 → HRM/TBE/FLIPで病型同定 → POEM・LHM+F・PD等を個別最適化し、術後の逆流管理まで一貫フォローします。
当院で初期評価・薬物最適化を行い、必要に応じてPOEM・ヘラー筋切開+噴門形成・気圧拡張(PD)や嚥下リハを、提携施設と連携して提供します。
概要(アカラシア・食道運動障害の要点)
- 主症状:固形・液体の嚥下困難、食物の逆流・夜間嘔吐、胸痛/胸やけ、体重減少。
- 鑑別:逆流性狭窄・好酸球性食道炎・薬剤性狭窄・腫瘍性狭窄(偽アカラシア)。
- 診断の柱:上部内視鏡+高解像度食道内圧検査(HRM)(Chicago v4.0)、タイムドバリウム造影(TBE)、必要に応じFLIP。
救急の目安(Red Flags)
- 唾液も通らない/強い胸痛を伴う急性閉塞(食物栓塞・穿孔リスク)
- 数週間〜数か月で急速に悪化する嚥下障害+体重減少(偽アカラシア/腫瘍の可能性)
- 反復する誤嚥性肺炎、脱水・電解質異常を伴う嘔吐
赤旗所見では、前倒しで内視鏡/造影/CTを手配し、閉塞解除・原因精査を行います。
病型(Chicago v4.0)と特徴
| 病型 | 特徴(HRM/TBE) | 治療の要点 |
|---|---|---|
| アカラシア Type I(無蠕動・IRP高値) | 蠕動消失、バリウム停滞 | POEM / LHM+F / PD を選択(施設経験・希望で) |
| アカラシア Type II(圧迫性収縮+IRP高値) | 全長圧上昇(pan-pressurization) | いずれの治療も奏効率高い(POEM/LHM+F/PD) |
| アカラシア Type III(スパスム優位・IRP高値) | 遠位スパスム、胸痛が目立つ | 長尺筋切開が可能なPOEMの優位性を検討 |
| EGJOO(EGJ出口部通過障害) | IRP高値だが蠕動温存。補助検査で支持所見が重要 | 経過観察〜拡張/ボツリヌス/POEM(支持所見・症状で選択) |
| DES / ジャックハンマー | 反復スパスム/過収縮。胸痛・間欠的つかえ | 薬物(CCB/硝酸薬/TCA等)±選択的POEM |
評価・検査(段階的アプローチ)
- 上部内視鏡:残渣貯留・食道拡張・EGJ開大不良の確認。狭窄/腫瘍(偽アカラシア)除外が最優先。
- HRM(Chicago v4.0):IRP・蠕動・スパスムの客観評価で病型確定。
- TBE(タイムドバリウム):3–5分後の柱高で通過度を可視化、治療前後の指標に。
- FLIP(EGJコンプライアンス):EGJ弛緩・径を補助評価(施設状況に応じて)。
- 付加検査:高リスク/急速進行例ではCT/EUS。術後の胸やけ/逆流疑いにpH-imp。
治療(POEM / LHM+F / PD・薬物の“合わせ技”)
- POEM(経口内視鏡的筋切開):病型・長さに応じて長尺化が可能で、特にType IIIに有用。術後逆流に注意しPPI等で管理。
- LHM + 噴門形成:腹腔鏡下ヘラー筋切開に半周/全周噴門形成を併施し、逆流を抑制。
- PD(気圧拡張):段階的拡張で良好な奏効を得られる選択肢(穿孔リスク説明の上、施設経験下で実施)。
- ボツリヌス毒素注射:高齢・ハイリスク例の短期緩和。
- 薬物療法:硝酸薬/CCB/鎮痙薬などは限定的効果。スパスム型には低用量TCA等も併用検討。
- 栄養・生活:食形態の工夫、就寝前の摂食回避、体位調整、体重・水分の管理。
フォローと再発時対応(目安)
| タイミング | 主なチェック | 補足 |
|---|---|---|
| 術/処置後 2–4週 | 嚥下状況・疼痛・発熱・出血 | 食形態段階アップ、PPI継続可否 |
| 1–3か月 | Eckardtスコア、逆流症状 | 必要に応じTBE/内視鏡、pH-imp |
| 以後 6–12か月ごと | 症状・体重・栄養 | 再発時は再POEM/再PD/LHMなど再評価 |
| 長期罹患/高リスク | がんリスクの相談 | 一律の内視鏡サーベイは限定的。個別に相談 |
よくある質問
POEM・ヘラー・気圧拡張はどう選びますか?
年齢・併存疾患・病型(特にType III)・施設経験・ご希望を総合し、POEM / LHM+F / PDから最適解をご提案します。
治療後の逆流は大丈夫?
POEM/LHM後は逆流が増えやすいため、PPIなどで管理します。症状や食道炎が持続すればpH検査で評価します。
再発したらどうなりますか?
再評価(HRM/TBE/内視鏡)のうえ、再POEM、追加拡張、外科など次の一手を検討します。
がんになりやすいですか?
長期罹患で食道がんリスクはわずかに上がる報告がありますが、一律の内視鏡サーベイは限定的です。症状・背景で個別に相談します。
関連ページ(院内リソース)
アカラシア・食道運動障害:外部エビデンスまとめ
学会ガイドライン・主要ジャーナルから、診断(HRM/Chicago v4.0・TBE・FLIP)/治療(POEM・LHM+F・PD)/スパスム型の管理まで、臨床で使う一次情報を厳選しました。
📘 総論・枠組み
- 【ACG】アカラシア診療ガイドライン(診断と治療の総則):Am J Gastroenterol 2020
- 【Chicago Classification v4.0】食道運動障害の国際基準:Neurogastroenterol Motil 2021
- 【ASGE/ESGE】気圧拡張・POEM・異物除去などの実践指針:各Practice Guideline
🔍 診断(HRM・TBE・FLIP・偽アカラシア除外)
- HRMでIRP/蠕動を定量化し病型確定、TBEで通過度と治療効果を可視化、FLIPでEGJコンプライアンスを補助評価。
- 急速進行・高齢発症ではCT/EUSで偽アカラシアを除外。
💡 治療(POEM / LHM+F / PD・薬物)
- POEM:Type IIIに特に有用。術後逆流はPPI等で管理。
- LHM+F:逆流抑制を組み合わせた標準外科選択肢。
- PD:段階的拡張で良好な奏効。穿孔リスクに留意。
- スパスム型(DES/ジャックハンマー):薬物(CCB/硝酸薬/TCA等)±選択的POEM。
※ 病型はChicago v4.0で標準化し、POEM/LHM+F/PDを患者背景・希望・施設経験で個別化。術後は逆流管理と症状スコア/TBE等で効果判定を継続してください。
👨⚕️ 医師からのコメント・監修(アカラシア・食道運動障害)
「アカラシアはLESの弛緩不全+蠕動消失により、固形も液体もつかえるのが特徴です。 診断の軸は上部内視鏡での器質病変除外と、HRM(Chicago v4.0)での病型同定です。 補助としてTBEやFLIPを併用し、偽アカラシアが疑わしい時はCT/EUSを加えます。
治療はPOEM、腹腔鏡下ヘラー筋切開+噴門形成、気圧拡張が三本柱です。 とくにType IIIでは長い筋切開が可能なPOEMが有力候補になります。 高齢・合併症が多い方にはボツリヌス注射で短期緩和を図ることもあります。 スパスム型(DES/ジャックハンマー)はまず薬物療法を試み、難治なら選択的POEMを検討します。
術後は逆流管理が重要で、PPIを中心に症状・内視鏡・必要時pH検査で評価します。 0th CLINICではHRM/TBE/内視鏡の結果をもとに、POEM・LHM+F・PDの最適化、 術後の栄養・生活指導と再発時の次の一手まで、チームで伴走します。」
0th CLINICでは内視鏡・HRM・TBE・FLIPの手配と報告書の解釈まで含め、 患者さんの背景とご希望に沿った治療選択をご提案します。治療後もEckardtスコア・TBE等で効果判定を行い、 必要に応じPPI最適化や再介入を迅速に検討します。
監修:黒田 揮志夫 医師(プライマリケア認定医/病理専門医/皮膚病理医)
0th CLINIC 日本橋 院長/医学博士/日本病理学会認定 病理専門医/総合診療・救急科での診療歴10年以上
0th CLINIC 日本橋 院長/医学博士/日本病理学会認定 病理専門医/総合診療・救急科での診療歴10年以上
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