尿検査
🚽 一般的な尿検査について
尿検査は、体内の老廃物や異常を手軽にチェックできる基本的な検査のひとつです。
特に腎臓や尿路系の異常、糖やたんぱくの排出の有無などが反映されやすく、生活習慣病や感染症の早期発見にも役立ちます。
■ 尿検査でわかること
- ✅ 腎機能や膀胱・尿路の異常(尿たんぱく・潜血など)
- ✅ 糖尿病や高血糖の兆候(尿糖の有無)
- ✅ 脱水・電解質バランスの変化
- ✅ 尿路感染症や膀胱炎の有無
- ✅ 肝機能や黄疸の兆候(ビリルビン・ウロビリノーゲン)
■ こんな方におすすめです
- ● 健康診断で尿に異常を指摘された方
- ● むくみやだるさが気になる方
- ● 頻尿・排尿時の痛みなど尿に関する症状がある方
- ● 糖尿病や高血圧をお持ちの方
- ● 妊娠中の方(妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病のスクリーニング)
💡 尿は体の“状態を映す鏡”ともいわれます。
定期的な尿検査で、腎臓や体内バランスの変化を早期にキャッチしましょう。
🚻 尿検査の前後に気をつけていただきたいこと
尿検査で正確な結果を得るために、以下の点をご確認ください。
■ 検査前の注意点(当日朝〜直前)
項目 | 内容 |
---|---|
採尿のタイミング | なるべく起床後、朝一番の尿が理想です(成分が濃く正確)。 |
中間尿 | 最初の尿を少し捨てて中間部分を採取してください(混入を避けるため)。 |
飲食 | 通常の食事で問題ありませんが、直前の過剰な水分摂取は避けてください。 |
薬の服用 | 一部の薬は尿検査に影響を与えることがあります。医師の指示に従ってください。 |
月経中 | 可能であれば月経中の尿検査は避けるか、スタッフにお知らせください。 |
■ 検査後の注意点
- ✅ 通常の生活に戻って問題ありません。
- ✅ 採尿容器はフタをしっかり締めて提出してください。
- ✅ 異常な色・にごり・泡立ちに気づいた場合は、医師にお伝えください。
■ 検査結果に影響する主な要因
検査項目 | 影響する要因 |
---|---|
尿糖 | 直前の糖質摂取・糖尿病 |
尿たんぱく | 運動・発熱・脱水 |
尿潜血 | 激しい運動・月経 |
ビリルビン・ウロビリノーゲン | 肝機能異常・食事内容 |
💡 尿検査は簡便で非侵襲的な検査ですが、結果の信頼性は正しい採取方法によって支えられています。
ご不明な点はお気軽にスタッフまでお声かけください。
🚻 尿検査はどのようにして行いますか?(検体提出の流れ)
尿検査は、腎臓・膀胱・前立腺・尿道など泌尿器の状態を調べるための基本的な検査です。
泌尿器科では診察の前にルーチンで行われることもあります。クリニック内で数分程度で完了する簡便な検査です。

① 受付・問診
受付時または診察前に、尿検査が必要か確認されます。採尿コップが渡され、トイレにご案内されます。

② 採尿の説明
中間尿(最初と最後を避けた尿)をコップに採るように案内されます。トイレには掲示もあるので安心です。

③ 検体提出
採尿が終わったら、所定の場所(回収棚など)にフタを閉めた状態で提出します。名前のラベルが付いているかご確認ください。

④ 検査・診察へ
検体はその場で検査され、診察時に結果が反映されます。異常があればさらに詳しい検査を行うこともあります。
💡 採尿前はできるだけ清潔にし、中間尿を採取することが重要です。
生理中の女性や排尿困難がある方は、スタッフにご相談ください。
🚽 採尿した尿はどこへ行く?
〜尿検査の種類と流れ〜
尿検査は、腎臓・膀胱・前立腺・尿道など泌尿器系の状態を調べる重要な検査です。
採尿後にどのように検査が行われるか、代表的な検査方法も含めてご紹介します。
■ 採尿から検査・報告までの流れ
- ① 採尿(院内トイレ)
清潔な専用カップに中間尿を採取していただきます。採尿前の陰部の清潔も重要です。 - ② ラベル貼付・検体管理
尿容器に個人識別のバーコードラベルを貼付し、検査部門へ回収されます。 - ③ 院内テステープ検査
検体はまず専用のテステープ(尿試験紙)で検査され、糖・蛋白・潜血・pH・白血球・亜硝酸塩などの異常を確認します。数分で結果がわかります。 - ④ 必要に応じた追加検査
異常が認められた場合や感染症が疑われる場合は、PCR検査や尿培養検査を追加実施します。 - ⑤ PCR・培養検査(外部機関)
外注先の検査会社で、性感染症や特定病原菌(淋菌・クラミジアなど)の精密検査が行われます。結果は数日〜1週間程度で返送されます。 - ⑥ 結果確認・ご説明
院内または外部検査の結果を医師が確認し、診察時にご説明いたします。
⏱️ テステープ検査は即日診察に反映され、
感染症のPCRや培養検査は3〜7日ほどで結果がわかります。お急ぎの方は事前にご相談ください。
■ プライバシーと検体管理の安全性
- ✅ 採尿容器には氏名ではなくバーコード管理を徹底しています。
- ✅ PCRなど外注検体は密封容器で適切に輸送されます。
- ✅ 全検体は検査終了後に医療廃棄物として適切に処理されます。
尿検査は痛みのない簡単な検査でありながら、多くの病気を早期に見つける力があります。
気になる症状がある方や、診察前のスクリーニングとしても、お気軽にお受けいただけます。
🧪 尿検査(テステープ)項目のまとめ
尿検査は、簡便かつ非侵襲的に体調や臓器の異常を把握できる検査です。
テステープ(尿試験紙)では、複数の項目を同時に確認でき、腎臓・膀胱・肝機能・糖代謝などの状態を知る手がかりとなります。

図:テステープによる尿検査のイメージ
検査項目 | 項目説明 | 正常値 | 陽性・異常のとき |
---|---|---|---|
尿蛋白 | 尿中のタンパクの有無 | (−) | 腎疾患、発熱、運動後など |
尿糖 | 尿中のグルコースの有無 | (−) | 糖尿病、腎性糖尿など |
尿潜血 | 尿中の赤血球の有無 | (−) | 尿路感染、腎炎、結石、腫瘍など |
尿ウロビリノーゲン | 肝機能や溶血の指標 | ± | 肝疾患、溶血性貧血など |
尿ビリルビン | 胆汁色素の有無 | (−) | 肝障害、閉塞性黄疸など |
尿ケトン体 | 脂肪の分解産物の検出 | (−) | 糖尿病、飢餓状態、ダイエットなど |
尿亜硝酸塩 | 細菌の存在を示す | (−) | 尿路感染症 |
尿白血球(LE) | 白血球の酵素を検出 | (−) | 膀胱炎、腎盂腎炎など |
尿pH | 尿の酸性・アルカリ性を反映 | 5.0〜7.5 | 尿路結石、感染症、食事内容による影響 |
尿比重 | 尿の濃さ・腎の濃縮機能 | 1.010〜1.030 | 脱水、腎機能障害、飲水過多 |
🔬 尿沈渣検査とは?
尿沈渣(ちんさ)検査とは、尿を遠心分離して沈殿物(尿中の細胞や結晶など)を顕微鏡で観察する検査です。
尿路感染症・腎炎・結石・出血の有無など、さまざまな異常の手がかりとなります。

図:尿沈渣で観察される代表的成分
項目 | 意味・所見 | 疑われる病態 |
---|---|---|
赤血球 | 尿中に血液が混ざっている状態(血尿) | 腎炎、尿路結石、膀胱炎、腫瘍 |
白血球 | 尿路で炎症が起きている状態(膿尿) | 膀胱炎、腎盂腎炎、STI |
上皮細胞 | 尿路や膀胱の内壁から剥がれた細胞 | 軽度な刺激や感染、腫瘍性変化 |
円柱 | 腎臓の尿細管内で形成された物質 | 腎炎、ネフローゼ症候群、腎障害 |
細菌 | 感染を示唆。尿中に細菌が検出される | 膀胱炎、腎盂腎炎、性感染症 |
酵母・真菌 | カンジダなどの真菌感染を示唆 | 糖尿病、免疫低下、抗菌薬使用後 |
結晶 | 尿中の塩類が析出。体質や食事にも影響 | 尿路結石、代謝異常 |
粘液・粘液糸 | 尿道からの分泌物。軽度であれば生理的 | 膀胱刺激、軽い炎症など |
📌 尿沈渣検査は、テステープ検査と組み合わせることでより正確な診断が可能です。
「見えない異常」を発見する大切な検査として、多くの泌尿器疾患で実施されています。
🧫 尿PCR検査とは?
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査は、感染症の原因となる微生物のDNAやRNAを増幅して検出する検査です。
尿PCRでは、尿を用いて性感染症(STI)や結核菌などの病原体を高感度で調べることができます。

図:尿を用いた性感染症PCR検査の流れ
検査項目 | 検出対象 | 主な疾患 | 所要日数 | 備考 |
---|---|---|---|---|
クラミジアPCR | Chlamydia trachomatis(クラミジア) | クラミジア尿道炎・子宮頸管炎 | 1〜3日 | 無症状でも陽性の場合あり |
淋菌PCR | Neisseria gonorrhoeae(淋菌) | 淋菌性尿道炎・子宮頸管炎 | 1〜3日 | 同時検査推奨(クラミジアと) |
マイコプラズマPCR | Mycoplasma genitalium | 非クラミジア性尿道炎 | 2〜5日 | 耐性菌も多く、抗菌薬選定が重要 |
ウレアプラズマPCR | Ureaplasma urealyticum など | 非特異性尿道炎、不妊の原因 | 2〜5日 | 自覚症状に乏しい |
結核菌PCR(尿) | Mycobacterium tuberculosis | 腎結核、尿路結核 | 3〜7日 | 血尿や難治性膀胱炎がヒントに |
⚠️ PCR検査は高感度・高精度な検査ですが、検出限界以下の場合は陰性となることもあります。
検査結果は医師の診察や症状とあわせて総合的に判断します。
🧫 尿培養検査と薬剤感受性検査とは?
「尿培養検査」とは、尿の中に含まれる細菌を培養して特定する検査です。
また「薬剤感受性検査」は、検出された細菌に効く抗菌薬を調べる重要な検査です。

図:尿中の菌を培養し、感受性を測定する流れ
■ 尿培養検査とは
- 清潔に採尿した尿を、専用の培地に塗布して細菌の有無や種類を確認します。
- 結果が出るまでには2〜3日程度かかります。
- 無症状でも感染があることもあり、特に妊婦・高齢者・糖尿病患者では注意が必要です。
■ 薬剤感受性検査とは
- 培養された細菌に、さまざまな抗菌薬を反応させ効く薬/効かない薬を判別します。
- 結果は「S(感受性あり)」「I(中間)」「R(耐性あり)」で報告されます。
- これにより、最も適切な抗菌薬の選択が可能となります。
検査名 | 内容 | 目的 |
---|---|---|
尿培養検査 | 尿中に存在する細菌を検出・培養し、菌種を特定する | 尿路感染症の確定診断、起因菌の特定 |
薬剤感受性検査 | 検出された菌に対して複数の抗菌薬を試して効き目を確認 | 最適な抗菌薬を選択し、治療効果を高める |
🔍 感染症が疑われるが症状が曖昧なときや、抗菌薬が効かない(耐性菌)可能性があるときに重要な検査です。
適切な薬を選ぶことで治療の成功率が大きく変わります。
💡 よくあるご質問(尿検査編)
Q. 前日の性行為は尿検査に影響しますか?
はい、性行為の後は尿中に白血球や精子が混入し、炎症や感染を疑うような結果が出る場合があります。
検査前24時間程度は性行為を避けていただくのが理想です。
Q. 抗生剤を飲んでいると検査に影響しますか?
はい、抗生剤を服用中または直後の尿では、菌が抑えられて検出されないことがあります(偽陰性)。
尿培養や薬剤感受性検査を正確に行うには、抗生剤開始前の採尿が推奨されます。
Q. 朝イチの尿じゃないとダメですか?
基本的には朝一番の中間尿(最初と最後は捨てる)を推奨していますが、
急な症状がある場合はいつでも採尿可能です。医師の指示に従ってください。
Q. 尿の取り方がよくわかりません
採尿カップに「中間尿」を取るのがポイントです。
① 最初の少量の尿はトイレに流し
② そのあと中間の尿を採尿カップに取り
③ 最後の尿はまたトイレに流してください。
採尿前に外陰部を軽く洗うと、より正確な結果につながります。
Q. おしっこが出なくて困ったらどうすれば?
緊張や脱水、タイミングによって尿が出にくいことはあります。
その場合は、お水を少し飲んでから待機していただいたり、時間をおいてから再採尿も可能です。
どうしても難しい場合は、スタッフへご相談ください。
Q. 生理中でも尿検査はできますか?
生理中は尿に血液が混ざってしまうため、正確な判定が難しくなることがあります。
可能であれば、生理終了後の採尿が望ましいです。
📚 参考文献とエビデンス
血液検査に関する信頼性の高い情報源やエビデンスをご紹介します。
公的機関・大学・大手検査会社・国際的医療サイトなど、医学的な裏付けのあるページにリンクしています。
- 日本臨床衛生検査技師会(JAMT)|検査の種類と役割
- 日本臨床衛生検査技師会|検査のしおり(PDF)
- 東邦大学医療センター|血液検査の基礎知識
- 健栄製薬|血液検査の基礎知識
- 株式会社ビー・エム・エル(BML)|一般向け 検査解説ページ
- 株式会社エスアールエル(SRL)|臨床検査情報
- MedlinePlus(米国NIH)|Blood Tests Overview
- Mayo Clinic(メイヨークリニック)|Blood Test
- NHS(英国国民保健サービス)|Blood tests
- Lab Tests Online(米国検査技師会)|血液検査辞典
- Mindsガイドラインセンター|診療ガイドライン集
- UpToDate|血液検査に関する臨床解説(要ログイン)
- PubMed Central(PMC)|査読付き論文データベース
- Medscape|各種血液検査と疾患の解説
👨⚕️ 医師からのコメント・監修

「検査データは“病気のサイン”を読み解くための重要なヒントです。
健診や症状に応じた血液検査・画像検査は、早期発見や予防、治療効果の判定に欠かせません。
ただし、検査数値は体の状態やタイミングで変動するため、総合的に読み解くことが大切です。」
私は長年にわたり、病理診断と内科・救急領域の診療に携わってきました。
検査結果の「背景にある意味」まで解釈できるよう、このページではなるべくわかりやすく検査の意義をお伝えしています。
気になる数値があった場合でも、ひとつひとつを丁寧に見ていくことが必要です。
ご自身の健康状態を把握するきっかけとして、ぜひ役立てていただければと思います。
0th CLINIC 日本橋 院長
日本病理学会認定 病理専門医/総合診療・救急診療歴10年以上
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