先天性不整脈(QT延長症候群・ブルガダ症候群)|原因・症状・診断・治療|0th CLINIC 日本橋
夜間の失神・原因不明の意識消失…それ、ブルガダ症候群(Brugada Syndrome)かもしれません
ブルガダ症候群は遺伝性心電気異常(Naチャネル異常など)により、致死性心室性不整脈(VT/VF)を起こしうる疾患です。
心電図では右側胸部誘導(V1–V3)のcoved型ST上昇が特徴。発熱・睡眠中・安静時に発作が出やすいことが知られています。
診断は12誘導ECG・薬剤負荷(Naチャネル遮断薬)・家族歴評価・電気生理学的検査などで行い、治療はリスク層別化・ICD(植込み型除細動器)・薬物療法が中心です。
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目次
🔍 ブルガダ症候群とは
遺伝性のイオンチャネル異常(SCN5Aなど)を背景に、致死性心室性不整脈(VT/VF)をきたしうる疾患です。
右側胸部誘導(V1–V3)でcoved型ST上昇を呈するType 1心電図が診断上最重要。
発熱、睡眠中、アルコール摂取後、安静時にイベントが起こりやすく、突然死の既往や家族歴が手掛かりになります。
🩺 主な症状・危険サイン
- 失神・前失神・けいれん様の動き(夜間・発熱時に多い)。
- ドキッとする動悸、胸部不快感、目の前が暗くなる。
- 家族に若年突然死やブルガダ診断者がいる。
・発熱に伴う失神/意識消失 ・持続する動悸や胸痛、呼吸困難 ・AEDが必要な心停止歴
🧪 検査の流れ(ECG・薬剤負荷・EPS)
- 12誘導ECG: 右側胸部V1–V3でType 1(coved型ST上昇)を確認。高位肋間(V1・V2を1〜2肋間上)での記録が有用。
- 薬剤負荷試験: Naチャネル遮断薬でType 1の誘発を確認(専門施設)。
- Holter/イベント記録: 発作性VT/VFの検出。
- 電気生理学的検査(EPS): 不整脈誘発性評価、リスク層別化の補助。
- 家族歴・遺伝学的検査: 必要に応じて実施。
📊 心電図型とリスク層別化
- Type 1(coved型ST上昇): 診断的。自発出現はリスク高。
- Type 2/3(saddleback): 典型でなく、薬剤負荷でType 1誘発を評価。
- 高リスク所見: 過去のVF/VT、失神歴、家族の突然死、自発Type 1、EPSでのVF誘発など。
💊 治療の全体像(体温管理・薬物・ICD)
1) 急性期(Electrical Stormを含む)
- 直ちに除細動(VF/不安定VT)。
- イソプロテレノール持続静注や過駆動ペーシングを検討(専門施設)。
- 発熱コントロール: 解熱剤で厳格に体温管理。
2) 長期管理・再発予防
- ICD(植込み型除細動器): VF/持続性VTの既往、失神+高リスク、自発Type 1等で検討。
- 薬物療法: 再発抑制にキニジンを用いることがある(専門管理)。
- カテーテルアブレーション: 一部の難治例で右室流出路の基質に対して検討。
🌱 生活習慣・再発予防(避ける薬剤 含む)
- 発熱時は早めに解熱剤(アセトアミノフェン等)で体温管理。
- 過度の飲酒・脱水・睡眠不足を避ける。規則正しい生活を。
- 薬剤に注意: 一部の抗不整脈薬・三環系抗うつ薬・抗精神薬・局所麻酔・抗ヒスタミンなどで悪化しうるため、処方時はブルガダ既往を必ず伝える。
- 適度な有酸素運動は可。めまい・動悸時は安全を優先し中止。
🔄 フォローアップと緊急受診の目安
- 再診: 症状の有無に応じて数か月ごと。発熱イベント後は早期受診。
- 再評価: ECG・Holter、必要に応じて薬剤負荷、デバイスチェック(ICD)。
- 家族歴の更新: 新規の突然死や発作歴があれば必ず共有。
・発熱に伴う失神/前失神 ・持続する胸痛や激しい動悸 ・ICDショックが作動した/頻回に作動する
🏥 当院でできること(0th CLINIC 日本橋)
- 初期評価: 12誘導ECG(高位V1–V2含む)・Holter・血液検査・心エコー。
- 発熱時の対応: 解熱・水分補給の指導、早期受診体制。
- 専門連携: 薬剤負荷試験・EPS・ICD適応評価・カテーテルアブレーションを連携施設で実施。
- 長期管理: 生活指導・薬剤レビュー・ICD遠隔/外来チェック。
❓ よくある質問(Q&A)
Q:運動はしても大丈夫?
重労働や脱水を伴う環境は回避し、体調が良いときに無理のない有酸素運動を。症状があれば中止し受診を。
Q:発熱したら?
早めに解熱し、水分・電解質を補給。失神や動悸があれば救急受診を検討してください。
Q:薬は避けた方がいい?
一部薬剤で悪化する可能性があります。ブルガダ症候群であることを必ず医療者に共有し、自己判断での市販薬多用は避けてください。
Q:ICDは必須?
すべての方に必要ではありません。VF/VT既往・失神・自発Type 1などリスクに応じて主治医と検討します。
そのほかご不明点は受診時にお気軽にご相談ください。
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📚 先天性不整脈(QT延長症候群・ブルガダ症候群)・診断と治療に関する科学的根拠と外部リンク集
🔬 公的機関・国際機関
- NHLBI(米国国立心肺血液研究所):Long QT Syndrome
- MedlinePlus(NIH):Long QT Syndrome / Brugada Syndrome
- Cleveland Clinic:Long QT Syndrome(患者向け解説)
- Cleveland Clinic:Brugada Syndrome(患者向け解説)
🏛 学会・専門団体ガイドライン
- ESC 2022:心室性不整脈と突然死予防ガイドライン(LQTS・Brugada含む)
- AHA/ACC/HRS 2017:遺伝性不整脈の管理(LQTS・Brugada)
- Heart Rhythm Society(HRS):不整脈関連リソース
📖 学術レビュー・教科書
- StatPearls:Long QT Syndrome(包括的レビュー)
- StatPearls:Brugada Syndrome(包括的レビュー)
- MSD(Merck)Manual:Long QT Syndrome
- MSD(Merck)Manual:Brugada Syndrome
🇯🇵 日本の公的情報・ガイドライン
🤝 参考:患者支援・生活管理
- SADS Foundation(米国):突然死を防ぐための患者支援(LQTS・Brugada)
- British Heart Foundation:Long QT Syndrome(患者向け情報)
- British Heart Foundation:Brugada Syndrome(患者向け情報)
これらのリンクは、QT延長症候群とブルガダ症候群の診断とリスク評価、
遺伝学的背景、薬物療法・ICD植込み・生活管理
を体系的に学べる公的機関・学会ガイドライン・査読リソースです。
実際の治療方針は症候性か無症候性か、遺伝子型・心電図所見、
失神歴や家族歴を総合的に判断して決定します。
👨⚕️ 医師からのコメント・監修(先天性不整脈:QT延長症候群/ブルガダ症候群)
「QT延長症候群(LQTS)は心電図でQT間隔の延長を特徴とし、失神やtorsades de pointes(多形性心室頻拍)から心室細動へ移行し突然死の原因となることがあります。特に運動・驚愕・睡眠中など誘因により発作が起こる型があり、遺伝子型ごとにリスクや治療方針が異なります。治療はβ遮断薬(ナドロール、プロプラノロール等)が中心で、リスク例ではICD植込みも検討されます。
一方、ブルガダ症候群は右側胸部誘導(V1〜V3)のcoved型ST上昇を特徴とし、夜間や安静時に心室細動が出現しやすい疾患です。発熱や薬剤で誘発されることも多く、失神や突然死のリスクがあります。急性期にはイソプロテレノール投与が有効な場合があり、再発予防にはICDが推奨されます。
いずれも「症候性か無症候性か」、「家族歴」「遺伝子型」「心電図所見(QTc延長、Brugada型)」などを総合的に判断し、患者ごとのリスクに応じた管理が必要です。」
0th CLINICでは、12誘導心電図・Holter心電図で特徴的所見を確認し、必要に応じて薬剤負荷試験や遺伝子検査を行います。
QT延長症候群ではQTc時間の評価・誘因の回避指導を徹底し、ブルガダ症候群では発熱時の体温管理・禁忌薬の回避を指導します。
また、症例に応じて連携施設にて電気生理学的検査(EPS)やICD植込みをご提案し、患者さんに最適な治療戦略を提示します。
0th CLINIC 日本橋 院長/医学博士/日本病理学会認定 病理専門医/日本プライマリ・ケア連合学会認定 認定医/総合診療・救急科での診療歴10年以上
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