肥大型心筋症(HCM|閉塞性/非閉塞性)|原因・症状・検査・治療|0th CLINIC 日本橋
息切れ・胸痛・失神…それ、肥大型心筋症(HCM)かもしれません
肥大型心筋症は原因不明の左室肥厚を特徴とし、拡張障害や左室流出路狭窄(LVOT)を伴って 息切れ・胸痛・動悸・失神を来します。
診断は心エコー・心臓MRI(LGE)・ホルターを中心に、必要に応じ運動負荷・遺伝学的検査を追加。 治療はβ遮断薬/非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬/ジソピラミド、心筋ミオシン阻害薬、中隔減量術、ICDなどを個別最適化します。
⚠️ 失神、持続する動悸、安静時胸痛、急な息切れの増悪は救急受診を
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目次
🔍 肥大型心筋症とは
サルコメア遺伝子異常などを背景に左室壁が肥厚し、拡張障害や左室流出路狭窄(LVOT)を来す心筋症です。 僧帽弁前尖のSAM(収縮期前方運動)により逆流(MR)を伴うこともあります。
安静時または誘発時のLVOT圧較差:≥30 mmHgで閉塞性を示唆、≥50 mmHgは介入検討の目安になります。

🩺 主な症状・危険サイン
- 労作時の息切れ・易疲労(拡張障害/LVOT狭窄)
- 胸痛・胸部圧迫感(微小循環障害/需給不均衡)
- 動悸・めまい・失神(VT/VF、LVOT増悪、AF)
- 収縮期駆出性雑音:立位・バルサルバで増強
🧪 診断と検査(エコー/MRI・負荷・遺伝学)
- 心エコー: 壁厚分布、SAM、LVOT圧較差(安静・バルサルバ・起立・運動)、弁機能、拡張能。
- 心臓MRI(LGE/T1/T2): 線維化の評価(LGEの範囲はイベント予測に有用)。
- 心電図/ホルター: NSVT、AF、伝導障害の検出。必要時イベントレコーダ。
- 運動負荷試験: 労作時の圧較差・血圧反応・誘発不整脈。
- 遺伝学的検査: サルコメア遺伝子変異の有無。家族スクリーニング計画に活用。
- 鑑別目的: 冠動脈評価、Fabry/アミロイド・高血圧性肥大・運動選手心との鑑別。
📊 病型と合併症(閉塞性/非閉塞性・心尖部型ほか)
- 閉塞性HCM(HOCM): 安静または誘発時のLVOT圧較差≥30 mmHg。MR合併、失神・胸痛。
- 非閉塞性HCM: 拡張障害主体。運動時の呼吸困難やAFを合併しやすい。
- 心尖部型: 巨大陰性T波、胸痛・VT。心尖部瘤や血栓形成に注意。
- 中部閉塞型: 心尖部圧上昇、瘤形成のリスク。
合併症:心房細動(抗凝固の適応)、心室性不整脈、心不全、脳塞栓症、心尖部瘤など。
⚡ 突然死(SCD)リスク層別化
- 既往: VT/VF・心停止の既往(二次予防ICD適応)。
- 家族歴: 若年突然死の家族歴。
- 壁厚: 最大壁厚 ≥30 mm。
- 失神: 非迷走神経性・不整脈疑いの失神。
- 不整脈所見: NSVT(ホルター)、持続性VT。
- 画像所見: 広範なLGE、心尖部瘤、LVEF < 50% など。
💊 治療(薬物・ミオシン阻害薬・中隔減量・不整脈管理)
薬物療法
- 第一選択: β遮断薬/ベラパミル・ジルチアゼム(症状と圧較差を改善)。
- 追加薬: ジソピラミド(抗コリン副作用に注意)。
- 心筋ミオシン阻害薬: マバカムテン等(地域・時期で適応差あり)。
- 注意: 強い前/後負荷低下薬や過度の利尿はLVOT悪化の恐れ(個別調整)。
侵襲的治療(閉塞性・薬剤抵抗例)
- 中隔肥厚切除術(Morrow法)/アルコール中隔焼灼術:LVOT圧較差と症状を改善。
- 僧帽弁装置の評価(弁下構造)を含め、最適術式を選択。
不整脈・合併症管理
- ICD: 一次/二次予防で適応検討。
- 心房細動: 抗凝固(CHA2DS2-VAScに加えHCMの背景も考慮)、アブレーションの適応。
- 心不全: 病態に応じて薬物最適化、最終段階では補助循環・移植を専門施設と連携。
🌱 生活の工夫(運動・脱水回避 等)
- 脱水回避: 暑熱・飲酒・サウナでの圧較差悪化に注意。十分な水分補給。
- 運動: 高強度の等尺性・競技レベルは回避。主治医の範囲で有酸素運動を段階的に。
- 薬の自己調整をしない: 症状の増減で内服を変えず、医師へ相談。
- 家族教育: 家族歴がある場合はスクリーニングと遺伝カウンセリングを推奨。
🔄 フォローアップと緊急受診の目安
- 再診頻度: 症状/圧較差/不整脈負荷に応じて3–12か月毎。年1回以上の心エコー、適宜MRI。
- 再評価: 体重・NYHA・BNP、エコー(壁厚/LVOT/弁逆流)、Holter/ICDログ、LGEの推移。
🏥 当院でできること(0th CLINIC 日本橋)
- 初期評価: 問診・身体診察、心電図、必要に応じ血液検査。
- 画像・検査: 提携施設でTTE/TEE・心臓MRI・運動負荷・Holterを迅速手配。
- 治療最適化: 薬物調整、ミオシン阻害薬や中隔減量術・ICDの適応評価。
- 家族支援: 家族スクリーニングと遺伝カウンセリングの導入。
- 長期フォロー: 症状・画像・不整脈負荷の総合評価と生活支援。
❓ よくある質問(Q&A)
Q:薬だけで治せますか?
症状軽減や圧較差低減は可能ですが、根治ではありません。薬剤抵抗例ではミオシン阻害薬や中隔減量術を検討します。
Q:スポーツはできますか?
個別評価が必要です。高強度の等尺性運動や競技レベルは避け、主治医の範囲で有酸素運動を行いましょう。
Q:家族も検査した方がよい?
HCMは遺伝性があり得ます。心電図・心エコー、必要に応じ遺伝学的検査を推奨します。
Q:妊娠・出産は可能ですか?
多くは可能ですが、圧較差・不整脈リスクを事前評価し、妊娠中の薬剤調整や分娩計画を多職種連携で立てます。
ほかにも気になる点があれば、ご受診時にお気軽にお尋ねください。
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📚 肥大型心筋症(HCM)に関する科学的根拠と外部リンク集
🔬 公的機関・国際機関
- NHS:Hypertrophic cardiomyopathy(患者向け)
- NHLBI(NIH):Hypertrophic Cardiomyopathy(基礎情報)
- MedlinePlus:Hypertrophic Cardiomyopathy(基礎情報)
🏛 学会・専門団体ガイドライン
- ACC/AHA 2020 Hypertrophic Cardiomyopathy Guideline: ACC Guidelines(HCMを含む一覧)
- ESC 2023 Cardiomyopathies Guideline(HCMを含む総合指針): ESC公式(本文/資材)
- ESC 2022 Ventricular Arrhythmias & SCD Guideline(HCMのSCD予防含む): ESC公式(本文/資材)
📖 学術レビュー・主要リソース
- NEJM Review:Hypertrophic Cardiomyopathy(総説)
- Nature Reviews Cardiology:HCM(最新レビュー)
- The Lancet:HCM(レビュー/総説)
🇯🇵 日本の公的情報・ガイドライン
🤝 参考:患者支援・生活の質(QOL)
- Hypertrophic Cardiomyopathy Association(HCMA:患者会)
- Cardiomyopathy UK:HCM(患者向け情報)
- AHA:Hypertrophic Cardiomyopathy(患者向け解説)
これらのリンクは、HCMの診断(心エコー・運動/バルサルバ負荷・心臓MRI[LGE]・遺伝学的検査)、 病型(閉塞性/非閉塞性・心尖部型等)、突然死(SCD)リスク層別(ICD適応)、 治療戦略(β遮断薬/非DHP-CCB・ジソピラミド・心筋ミオシン阻害薬・中隔減量術・AF管理)、 および長期フォロー(運動/脱水回避・家族スクリーニング)をカバーする一次/準一次情報です。
実際の方針は症状・LVOT圧較差・LGE量・不整脈負荷・家族歴を踏まえ、最新ガイドラインと 心不全・電気生理・心臓外科・遺伝カウンセリングの連携で総合決定されます。
👨⚕️ 医師からのコメント・監修(肥大型心筋症:HCM)

「肥大型心筋症(HCM)は、主にサルコメア遺伝子の変異に関連することが多い心筋症で、 左室肥厚を特徴とし、閉塞性(HOCM)と非閉塞性に大別されます。とくにHOCMでは 僧帽弁前尖のSAMにより左室流出路(LVOT)圧較差が生じ、労作時の息切れ・胸痛・失神の原因となります。
診断は心エコーでの最大壁厚・LVOT圧較差(安静/バルサルバ/運動)と弁機能評価が柱です。 心臓MRI(LGE)は線維化や心尖部型の把握に有用で、不整脈リスク層別に寄与します。 ホルター心電図でのNSVT検出、遺伝学的検査と家族スクリーニングも適応に応じて行います。
治療の第一選択はβ遮断薬または非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬(例:ベラパミル)です。 閉塞が持続する場合はジソピラミドの追加や、適応があれば心筋ミオシン阻害薬の選択肢もあります。 症状が強く薬剤抵抗性の場合は、経験豊富な施設での外科的中隔肥厚切除やアルコール中隔アブレーションを検討します。 突然死(SCD)予防では、家族歴・失神歴・極端な壁厚・LGEの広がり・NSVT・心尖部瘤・LVEF低下などを総合しICD適応を判断します。
生活面では脱水の回避・過度な無酸素的負荷の抑制が重要で、前負荷低下や血管拡張を強める薬剤の使い方にも注意が必要です。 心房細動を合併した場合は抗凝固療法を原則として検討します。」
0th CLINICでは症状・画像・電気生理・遺伝背景を統合し、心不全管理・SCD予防(ICD)・運動/生活指導まで 個別最適化します。必要に応じて心臓MRI・遺伝カウンセリング・アブレーションや 中隔減量術(外科/カテーテル)を専門施設と連携してご提案します。
0th CLINIC 日本橋 院長/医学博士/日本病理学会認定 病理専門医/総合診療・救急科での診療歴10年以上
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