胃排出遅延(胃不全麻痺)|“過剰検査を避けつつ、症状に効く”連携型アプローチ
胃排出遅延(胃不全麻痺)|“過剰検査を避けつつ、症状に効く”連携型アプローチ
当院には内視鏡設備はありません。上部内視鏡(機械的閉塞の除外)、胃排出シンチグラフィ(標準化食・4時間評価)、 必要に応じて13C呼気試験や栄養評価は連携医療機関で実施し、
当院は適応判断・紹介手配・結果の丁寧なご説明、食事/薬物/血糖・栄養管理、 難治例のG-POEM等の検討まで一貫管理します。
脱水・持続嘔吐・著明な体重減少・電解質異常・黒色便/血便などの警告徴候がある場合は、 救急/連携先での迅速評価(内視鏡・画像・補液)を優先します。
評価・検査は連携先で実施/当院が紹介状作成・手配・結果説明・治療設計・フォローまで伴走
LINEで24時間受付 ※内視鏡・胃排出シンチ等は連携先で実施します 概要(胃排出遅延の要点)
- 定義:機械的閉塞がないにもかかわらず、固形食の胃排出が遅延し、吐き気・嘔吐・食後膨満・早期飽満感・腹部膨満・食欲低下・体重減少などが持続する状態。
- 主症状:吐き気/嘔吐、食後の重さ・膨満、早期飽満感、腹痛、腹部膨満/ガス、体重減少、血糖変動の増悪(糖尿病例)。
- 基本姿勢:不要な検査を避けつつ上部内視鏡で閉塞を除外し、胃排出シンチで客観評価。食事療法・運動促進薬・制吐薬・血糖/栄養管理を段階的に組み合わせます。
受診/精査の目安(Red Flags)
- 持続嘔吐・脱水・電解質異常・腎機能悪化
- 著明な体重減少・貧血・発熱・黒色便/血便
- 50歳以上の新規症状、消化器がん家族歴、激しい上腹部痛や急性発症
警告徴候があれば迅速な内視鏡・画像評価と補液/入院管理を優先します。
病因・鑑別(機械的閉塞の除外が前提)
- 病因:特発性、糖尿病性、術後(迷走神経障害・胃切除/抗反転術後など)、薬剤性(オピオイド・抗コリン薬・一部のGLP-1受容体作動薬など)、感染後/自己免疫など。
- 鑑別:幽門狭窄・胃出口部閉塞、胃炎・潰瘍、機能性ディスペプシア、上腸間膜動脈症候群、甲状腺機能異常、電解質異常、妊娠悪阻など。
- 重症度:経口摂取量(固形→半固形→液体)と栄養状態、救急受診歴、血糖変動で層別化。
評価・検査(当院/連携先の役割)
- 当院で実施:詳細問診(食事・体重・薬剤歴・糖尿病/術歴)、身体診察、基本採血(代謝/栄養/甲状腺/炎症)、薬剤調整(遅延因子の見直し)、食事指導の初期介入、血糖マネジメントの調整。
- 連携先で実施: 上部内視鏡(機械的閉塞の除外、残渣所見評価)、 胃排出シンチグラフィ(標準化食・4時間評価)、 必要に応じ13C呼気試験、画像検査(重症例)、 難治例では幽門機能評価やG-POEMの適応検討。
- 検査前の注意:高血糖は胃排出を遅らせるため血糖最適化を図り、運動促進薬・抗コリン薬・オピオイド等は事前休薬を検討(連携先の指示に従います)。
治療(食事・薬物・血糖・栄養の“合わせ技”)
- 食事療法:少量頻回、低脂肪・低繊維(不溶性)、固形より半固形/液体の活用、よく噛む・ピューレ化、炭酸・アルコールの調整。
- 薬物療法(症状とリスクで選択): 運動促進薬(例:メトクロプラミド※錐体外路症状/長期使用に注意、ドンペリドン※QT延長リスクに注意、エリスロマイシン※短期)、 制吐薬(必要時)、 痛み対策は非オピオイド中心。
- 糖尿病管理:血糖変動の是正(インスリン調整・低血糖回避)。
- 栄養サポート:経口が難しい場合は高エネルギー液体の併用、重症例では経腸栄養(空腸投与)や減圧目的の胃瘻/空腸瘻を連携で検討。
- 処置/手術(難治例):G-POEM(内視鏡的胃内視鏡下幽門筋切開術)、外科的幽門形成術、胃電気刺激療法などを専門施設と協議。
- 再評価:3–8週で症状・体重・栄養・QOLを評価し、介入を強化/見直しします。
連携フロー(当院が窓口となり伴走します)
- ① 初診評価:閉塞の可能性・重症度・栄養/血糖状態を把握、初期の食事/薬物介入
- ② 紹介手配:上部内視鏡→胃排出シンチ(必要に応じ13C呼気)を優先度順に調整
- ③ 結果統合(当院):検査結果の解説と治療計画の最適化(食事・薬物・血糖・栄養)
- ④ フォロー:症状・体重・血糖・副作用/QTをトラッキング、難治例はG-POEM等を再検討
よくある質問
胃カメラだけで診断できますか?
いいえ。内視鏡は機械的閉塞の除外が主目的で、診断には胃排出シンチ(4時間評価)などの客観的検査が必要です。
どのくらいで改善しますか?
個人差はありますが、3–8週で反応性を評価し、効果のある介入(食事・運動促進薬・血糖/栄養)を強化します。完全寛解だけでなくQOLの改善も治療目標です。
糖尿病とどんな関係がありますか?
高血糖は胃排出を遅らせやすく、血糖管理の最適化が症状緩和に重要です。食事タイミングと薬剤調整も併せて見直します。
GLP-1受容体作動薬は使えますか?
一部で胃排出を遅らせることがあり、症状悪化時は用量/投与間隔の調整や切替えを主治医と相談します。検査前の休薬が必要になる場合もあります。
手術や処置は必要ですか?
多くは保存的治療で対応可能ですが、難治例では連携施設でG-POEMや幽門形成術、胃電気刺激療法を検討します。
関連ページ(機能性消化管障害の他ページ)
胃排出遅延(胃不全麻痺):外部エビデンスまとめ
閉塞除外→胃排出シンチ(標準化食・4時間)を基本に、食事療法・運動促進薬・血糖/栄養管理、難治例でG-POEM。
📘 総論・診断
- ガストロパレシスの定義と重症度評価(栄養・経口摂取)
- 標準化食による4時間胃排出シンチ(連携機関で実施)
- 高血糖・薬剤の影響を考慮した前処置
💊 治療の柱
- 少量頻回・低脂肪/低繊維・液体栄養の活用
- 運動促進薬(適応と副作用管理)/制吐薬
- 血糖最適化・栄養サポート(経腸栄養を含む)
- 難治例のG-POEM・幽門形成術・胃電気刺激療法
👨⚕️ 医師からのコメント・監修(胃排出遅延/連携型)

「胃排出遅延は閉塞の除外→胃排出の客観評価が大切です。少量頻回・低脂肪/低繊維・液体栄養と 運動促進薬・制吐薬・血糖管理を組み合わせ、栄養状態を守りながら改善を目指します。
難治例は専門施設と連携し、G-POEM等の選択肢も含めて中長期の見通しを一緒に検討します。」
0th CLINICは“過剰検査を避けつつ、症状に効く”連携型で、患者さん一人ひとりに合う実践的なケアを提供します。
監修:黒田 揮志夫 医師(プライマリケア認定医/病理専門医/皮膚病理医)
0th CLINIC 日本橋 院長/医学博士/日本病理学会認定 病理専門医/総合診療・救急科での診療歴10年以上
0th CLINIC 日本橋 院長/医学博士/日本病理学会認定 病理専門医/総合診療・救急科での診療歴10年以上
関連コラム
ただいま準備中です。少々お待ちください。