アジルサルタン(アジルバ)
💊 アジルサルタンとは(基本情報)

▲ アジルサルタン錠(Azilva®)
アジルサルタンは、高血圧症の治療に使用される、ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)のひとつです。
他のARBと比べて強力かつ持続的な血圧降下作用を示し、1日1回の内服で血圧を安定的にコントロールできます。
項目 | 内容 |
---|---|
一般名 | アジルサルタン(Azilsartan) |
剤形 | 内服錠(20mg, 40mg) |
適応症 | 高血圧症 |
保険適用 | ○(保険診療にて処方可能) |
特徴 |
強い受容体親和性を持ち、早期からの降圧効果と長時間の持続が期待されます。 他剤で十分な降圧が得られなかった場合の選択肢としても有用です。 |
● 主な副作用には低血圧、めまい、高カリウム血症、腎機能障害などがあります。
● 他の降圧薬(カルシウム拮抗薬、利尿薬など)との併用で相乗効果が期待でき、治療抵抗性高血圧への対応にも有効です。
💡 アジルサルタンの作用と使い方
■ 血圧を下げるしくみ(ARB:アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)
アジルサルタンはARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)に分類され、血管を収縮させるホルモン「アンジオテンシンⅡ」の作用をブロックすることで、血管を拡張し、血圧を低下させる薬です。
■ 強力で持続的な降圧作用
アジルサルタンはARBの中でも特に強力な降圧効果を持ち、持続時間も長いのが特徴です。
他の降圧薬で効果不十分だった方にも、切り替えで効果が得られるケースがあります。
■ 服用方法と注意点
● 通常は1日1回、朝に20mgまたは40mgを内服します(年齢・症状に応じて調整)。
● 初期投与時は低血圧に注意し、腎機能やカリウム値を確認しながら使用します。
● 利尿薬やカリウム保持薬との併用時は高カリウム血症のリスクに注意が必要です。
■ よくある副作用
主な副作用にはめまい、ふらつき、倦怠感があります。
高カリウム血症、腎機能の悪化もまれに起こるため、定期的な血液検査で安全性を確認します。
■ 効果の実感まで:比較的早い
服用開始から数日で降圧効果が現れ始め、1~2週間で安定することが多いです。
塩分制限や運動習慣の改善と併せて行うことで、より高い治療効果が得られます。
✅ アジルサルタンは強力かつ長時間作用する降圧薬で、治療抵抗性高血圧への有効な選択肢です。
生活習慣の改善と併せて継続的に服用することで、合併症の予防にもつながります。
💊 アジルサルタンの適応疾患と使い分け
アジルサルタンは、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)に分類され、アンジオテンシンⅡによる血管収縮を強力にブロックすることで、持続的かつ強力な血圧降下作用を発揮します。
また、心血管リスクを抱える患者に対しても有用とされます。
✅ 主な適応疾患
疾患名 | 解説 |
---|---|
高血圧症 | ARBの中でも特に強力な降圧効果があり、持続時間も長い。 |
治療抵抗性高血圧 | 他の降圧薬で効果不十分な場合に検討される。 |
心血管疾患の一次予防 | 血圧の正常化によって動脈硬化の進行を抑制。 |
✅ 他の降圧薬との使い分け
分類 | 主な薬剤 | 使い分けのポイント |
---|---|---|
CCB | アムロジピン など | 動脈硬化予防・心拍コントロールに有効。併用が多い。 |
ACE阻害薬 | エナラプリル など | ACE阻害薬で咳などの副作用が出た場合はARBに切り替え。 |
利尿薬 | ヒドロクロロチアジド など | アジルサルタン配合剤(アジルバ配合錠)も存在。 |
β遮断薬 | ビソプロロール など | 虚血性心疾患や心不全併発例での併用が検討される。 |
✅ アジルサルタンが向いている患者
- 他のARBで十分な降圧効果が得られなかった方
- 治療抵抗性高血圧や高リスク心血管疾患を有する方
- 1日1回の内服で血圧を安定させたい方
- ACE阻害薬で副作用が出た方
✅ アジルサルタンは高い降圧効果と持続性を兼ね備え、特にコントロールが難しい高血圧患者に有用な薬剤です。
適切なモニタリングを行いながら、合併症の予防と生活習慣改善を並行して進めましょう。
💊 ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)の比較一覧
ARBはすべて高血圧に適応がありますが、半減期や臓器保護作用、心血管イベント抑制効果などに違いがあります。患者の状態に応じて最適な薬剤を選択することが重要です。
薬剤名 | 商品名(代表例) | 作用時間 | 特徴・適応 | リンク |
---|---|---|---|---|
ロサルタン | ニューロタン | 中程度(6~9時間) | ARB初の薬剤。尿酸排泄促進の作用が特徴。 | ▶ 詳細 |
バルサルタン | ディオバン | 中程度(6~24時間) | 心不全・心筋梗塞後にも適応。 | ▶ 詳細 |
カンデサルタン | ブロプレス | 長め(9~12時間) | 心不全や高血圧両方で使用される代表薬。 | ▶ 詳細 |
オルメサルタン | オルメテック | 長め(13時間以上) | 強力な降圧作用。若年者の本態性高血圧にも。 | ▶ 詳細 |
テルミサルタン | ミカルディス | 非常に長い(24時間以上) | 心血管疾患予防効果が明示された数少ないARB。 | ▶ 詳細 |
アジルサルタン | アジルバ | 非常に長い(30時間以上) | ARBの中で最も強力な降圧作用。比較的新しい薬。 | ▶ 詳細 |
✅ すべてのARBは高血圧の第一選択薬ですが、腎疾患、心疾患、心不全、若年者、高齢者など、個別の病態に応じて選択されます。
作用時間が長い薬剤は、服薬アドヒアランス(継続率)向上にもつながります。
💊 アムロジピン・ARB・利尿薬の比較(高血圧治療)
高血圧治療では、患者の病態や合併症に応じて降圧薬を使い分けます。以下は、主要な3薬剤クラス(アムロジピン、ARB、利尿薬)の比較です。
分類 | 代表薬剤 | 作用機序 | 主な適応・使い分け | 副作用・注意点 |
---|---|---|---|---|
カルシウム拮抗薬 | アムロジピン | 血管平滑筋のCa²⁺流入を抑制 → 血管拡張 | 高齢者・腎機能低下・冠動脈疾患・夜間高血圧に | むくみ、動悸、歯肉肥厚(長期使用) |
ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬) | ロサルタン、テルミサルタンなど | アンジオテンシンⅡによる血管収縮・アルドステロン分泌を阻害 | 糖尿病、蛋白尿、心不全合併例、腎保護目的に | 高K血症、腎機能低下、妊娠禁忌 |
利尿薬 | ヒドロクロロチアジド、トリクロルメチアジド | Na⁺・水分排泄促進 → 循環血液量減少 | 高齢者、心不全、浮腫合併、夜間高血圧に | 低K血症、高尿酸血症、耐糖能悪化 |
✅ 一般的にはアムロジピン+ARBの併用が標準的であり、浮腫が強い場合は利尿薬追加など、症例に応じて調整します。
✅ 特に、腎保護目的や蛋白尿・糖尿病合併のある患者ではARBが優先される傾向があります。
■ おすすめの方
- ✔️ 高血圧がなかなか下がらない方
- ✔️ 長時間の降圧効果を期待する方(1日1回の服用で効果が持続)
- ✔️ ARBによる腎保護や心血管リスクの軽減を期待する方
■ 注意が必要な方
- ⚠️ 腎動脈狭窄がある方(腎機能悪化の恐れ)
- ⚠️ 高カリウム血症の既往がある方
- ⚠️ 重度の腎障害・肝障害のある方
- ⚠️ 利尿薬や他の降圧薬と併用中の方(血圧低下が強く出ることがあります)
- ⚠️ 高齢者や脱水状態にある方
■ 服用できない方(禁忌)
- ❌ アジルサルタンにアレルギーのある方
- ❌ 妊娠中または妊娠の可能性がある方
- ❌ 重度の肝障害がある方
- ❌ アリスキレンを服用中の糖尿病患者
■ 主な副作用
比較的よくある副作用:
- ・ふらつき、めまい(降圧による)
- ・頭痛、倦怠感
- ・咳、胃部不快感など
重大な副作用(まれですが注意が必要):
- ・高カリウム血症(手足のしびれ、不整脈など)
- ・急性腎障害・腎不全
- ・肝障害(AST・ALTの上昇など)
- ・アナフィラキシー様反応
■ 他のお薬との併用について
- ・NSAIDsとの併用は腎機能悪化の可能性があります
- ・カリウム保持性利尿薬、カリウム製剤との併用で高カリウム血症のリスクが高まります
- ・アリスキレンは糖尿病患者との併用禁忌
- ・他の降圧薬(CCB、利尿薬など)と併用可能ですが、低血圧に注意が必要です
■ 食事・生活上の注意
- ・塩分の摂りすぎを避けることが重要です
- ・カリウムが多く含まれる食品(バナナ、ほうれん草、納豆など)の摂取量に注意
- ・脱水に注意し、水分補給を心がけましょう(医師の指示がある場合を除く)
- ・定期的な血圧測定や血液検査(腎機能・電解質)を続けましょう
✅ アジルサルタン(アジルバ)は、強力かつ持続的な降圧効果を持つARBです。
医師の指導のもと、定期的なフォローアップとともに、安全に服用を続けましょう。
■ アジルサルタンのエビデンスと推奨事項
- ● ARBの中でも特に強力かつ持続的な降圧効果があり、1日1回投与で24時間安定した血圧コントロールが可能です。
- ● 従来のARBと比較して高い降圧作用がAZTEC試験などで示されており、治療抵抗性高血圧にも有効です。
- ● 高リスク心血管疾患や糖尿病を有する高血圧患者にも第一選択薬のひとつとして使用可能とされます。
■ 代表的なエビデンスと出典
- ・AZTEC試験:“Efficacy and safety of azilsartan compared with valsartan” Hypertens Res. 2010
- ・ASSURE試験:“Azilsartan medoxomil vs olmesartan for hypertension” J Clin Hypertens. 2011
- ・UpToDate解説ページ:Azilsartan – Drug Information (UpToDate)
- ・PMDA医薬品情報:アジルバ錠 インタビューフォーム(PMDA)
✅ アジルサルタンは強力な降圧作用と持続性を兼ね備えたARBであり、特にコントロール困難な高血圧患者において有用です。
他のARBで効果不十分な場合の切り替え候補としても推奨されます。
🗣️ アジルサルタンを使用した患者さんの声
これまで色々な降圧薬を試しましたが、アジルサルタンに変えてからは明らかに血圧が安定しました。
強すぎるかと心配でしたが副作用もなく続けられています。
※これはあくまで個人の感想であり、効果には個人差があります。
以前は利尿薬と2種類飲んでいましたが、アジルバ配合錠で1錠にまとまり、毎日の服薬が楽になりました。
朝の服用だけで1日効くのも嬉しいポイントです。
※これはあくまで個人の感想であり、効果には個人差があります。
❓ よくある質問(FAQ)
通常は朝1回の服用で24時間しっかり効く薬です。毎日同じ時間に服用しましょう。
気づいた時点で早めに服用してください。ただし、次の服用が近い場合は1回分をスキップし、2回分を一度に飲まないよう注意しましょう。
主な副作用はめまい、ふらつき、電解質異常(高カリウム血症)などです。
腎機能が低下している方は、定期的な血液検査が重要です。
はい。カルシウム拮抗薬や利尿薬との併用でより効果的な血圧コントロールが期待されます。
なお、ACE阻害薬やアリスキレンとの併用は原則避け、必要に応じて医師にご相談ください。
アジルサルタンは妊娠中の使用は禁止されています。
胎児に影響を及ぼす可能性があるため、妊娠の可能性がある方は必ず医師へ報告してください。
はい。アジルサルタンは長期的な血圧管理にも適しており、継続使用による安全性も確認されています。
医師の指導のもと、定期的な検査とともに服用を続けてください。
💰 アジルサルタン(アジルバ)の薬価と自己負担について
アジルサルタン(先発品名:アジルバ)は、高血圧治療に用いられるARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)の中でも強力な降圧作用が特徴です。以下に、2024年時点の薬価と自己負担の目安を示します。
■ 保険診療での薬価(2024年改定時点)
製剤名 | 薬価(単価) | 服用量(1ヶ月) | 薬剤費(3割負担) |
---|---|---|---|
アジルバ錠10mg | 50.1円/錠 | 30錠(1日1錠) | 約451円 |
アジルバ錠20mg | 76.3円/錠 | 30錠 | 約687円 |
アジルバ錠40mg | 112円/錠 | 30錠 | 約1,008円 |
アジルサルタンOD錠10mg「杏林」(後発品) | 18.2円/錠 | 30錠 | 約164円 |
アジルサルタンOD錠20mg「杏林」(後発品) | 27.4円/錠 | 30錠 | 約247円 |
アジルサルタンOD錠40mg「杏林」(後発品) | 40.9円/錠 | 30錠 | 約368円 |
■ 自己負担の目安(30日分)
- ● 先発品20mg: 3割 → 約687円 / 1割 → 約229円
- ● 後発品20mg: 3割 → 約247円 / 1割 → 約82円
- ● 医療機関での診察料・調剤料・薬局管理料などは別途必要です
✅ アジルサルタンは強力で持続的な降圧作用が特徴のARBです。
先発品(アジルバ)と後発品(杏林)の効果は基本的に同等であり、服用継続しやすいOD錠も用意されています。
医師の判断により適切な用量・製剤を選びましょう。
👨⚕️ 医師からのコメント・監修

「アジルサルタンはARBの中でも特に強力な降圧作用を持ち、持続性にも優れているため1日1回の服用で十分なコントロールが可能な薬剤です。
またOD錠(口腔内崩壊錠)もあり、高齢者でも服用しやすいのも利点です。」
当院では、他のARBで効果不十分な方や、治療抵抗性高血圧の方にアジルサルタンを使用することが多くあります。
強力な降圧を必要とする方においても、腎機能や心血管イベントのリスクを考慮しながら安全に使いやすい薬剤の一つです。
服薬のしやすさと生活習慣の改善を両立させながら、長期的な血圧管理を目指していきましょう。
0th CLINIC 日本橋 院長
日本病理学会認定 病理専門医/総合診療・救急医療における診療経験10年以上
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