感染性腸炎(急性下痢)|“重症を見逃さず、適切に治す”連携型アプローチ
感染性腸炎(急性下痢)|“重症を見逃さず、適切に治す”連携型アプローチ
当院には内視鏡設備はありません。内視鏡検査・入院治療は連携医療機関で実施し、
当院は適応判断・紹介手配・結果の丁寧なご説明、補液・抗菌薬/整腸剤の選択、感染対策と再発予防まで一貫管理します。
重度脱水・意識障害・持続する血便・激しい腹痛などは救急連携を優先します(緊急検査/入院は連携先で実施)。
検査は連携先で実施/当院が紹介状作成・手配・結果説明・治療フォローまで伴走
LINEで24時間受付 ※内視鏡・入院は連携先で実施します
概要(感染性腸炎の要点)
- 定義:病原体(ウイルス/細菌/寄生虫)や抗菌薬関連(C. difficile)による腸管炎症。下痢・腹痛・発熱・嘔吐・血便などを呈します。
- 重症化の軸:脱水・電解質異常、菌血症/毒素性合併(例:STECのHUS、CDIの中毒性巨大結腸症)。
- 基本姿勢:重症を先に見極めて補液→原因推定と便検査の選択→必要時のみ抗菌薬。内視鏡/入院は連携先で実施、当院は前方整理とフォローを担います。
受診/救急の目安(Red Flags)
- 重度脱水(口渇・尿量低下・立ちくらみ/失神)、意識障害
- 高熱(≳38.5℃)・持続する血便、激しい腹痛/反跳痛
- 高度の倦怠・動悸/息切れ(貧血/電解質異常を疑う)
- 免疫不全・高齢・妊娠、抗菌薬内服中/直後(CDI疑い)
- STEC疑い(激しい腹痛+血便):抗菌薬・止瀉薬は原則回避
赤旗症状では救急連携→連携先で補液/検査/入院を優先します。
主な原因(ウイルス/細菌/寄生虫・抗菌薬関連)
- ウイルス:ノロ/ロタ/アデノなど。嘔吐・水様便主体、接触・飛沫で集団発生。
- 細菌:カンピロバクター、サルモネラ、志賀菌、STEC(O157等)、ビブリオ、エルシニアほか。
- 寄生虫:ジアルジア、赤痢アメーバ、クリプトスポリジウム等(旅行・海外滞在/井戸水/性的接触など)。
- 抗菌薬関連:Clostridioides difficile感染(CDI):抗菌薬/長期入院/高齢/PPIなどがリスク。
評価・検査(当院/連携先の役割)
- 当院で実施:重症度/脱水評価、血液(血算・電解質・腎機能・炎症)、必要に応じ便検査(多項目PCR/培養・O抗原、寄生虫抗原/鏡検)。CDI疑いではGDH+トキシンEIA±NAATのアルゴリズムを選択。感染対策/就業制限の助言。
- 連携先で実施:重症例の補液・入院、腹部画像、内視鏡(重症/鑑別必要時)、CDI重症例の入院管理。
- 注意:STEC疑いでは抗菌薬・止瀉薬を避ける。偽陰性を避けるため便採取は早期に。
治療(補液・抗菌薬・感染対策の“合わせ技”)
- 補液:経口補水(ORS)を基本、重症は連携先で静脈補液。
- 対症療法:制吐薬。止瀉薬は血便/高熱/重症疑いでは回避。
- 抗菌薬:適応例(重症カンピロバクター/志賀菌/チフス/旅行者下痢重症など)に限り選択。STECは原則投与しない。
- 寄生虫:ジアルジア(メトロニダゾール等)、赤痢アメーバ(メトロニダゾール+ルミナル薬)を連携しつつ適正投与。
- 公衆衛生/感染対策:手洗い・トイレ/キッチン消毒、便が固まるまでの就業/登校調整(食品関連は厳格)。
C. difficile関連(偽膜性腸炎)
- 典型:抗菌薬使用中~数週以内の水様便・腹痛・発熱。WBC↑、Cr↑で重症度評価。
- 検査:GDH+トキシンEIAの二段階法、判定不明時はNAAT(PCR)で補完。便検査は下痢便に限定。
- 初回治療:フィダキソマイシン推奨(代替:バンコマイシン内服)。軽症~中等症で外来可能例は当院で導入、重症/合併症は連携先で入院管理。
- 重症/劇症:バンコマイシン経口(±直腸)、メトロニダゾール静注併用、外科/IVRコンサルト(中毒性巨大結腸症など)。
- 再発予防:リスク例でベズロトクスマブの併用を検討(連携先と協議)。再発例はレジメン変更や便微生物移植(FMT)を専門施設で検討。
- 共通:原因抗菌薬の中止/切替、接触予防策(手袋/ガウン、石けん手洗い)、止瀉薬は原則回避。
連携フロー(当院が窓口となり伴走します)
- ① 初診評価:重症度判定・脱水評価・疫学聴取(食事/渡航/接触/抗菌薬)
- ② 検査選択:便PCR/培養/寄生虫、CDIアルゴリズム、必要な血液検査
- ③ 治療開始:ORS/対症療法、適応例に抗菌薬、CDIは初回から標準治療
- ④ 紹介手配:重症・合併症例は連携先へ入院/内視鏡/画像を手配
- ⑤ 結果説明・再発予防:検査結果の解説、就業/登校の目安、感染対策・ワクチン/食品衛生の助言
よくある質問
抗菌薬は必ず必要ですか?
いいえ。多くのウイルス性腸炎は抗菌薬不要で、補液と対症療法が基本です。細菌性でも軽症は自然軽快することがあります。重症/血便/高熱/基礎疾患がある場合は適応を検討します。
下痢止めは使ってよい?
水様便で発熱や血便がなく脱水が軽度なら短期使用可。ただし血便・高熱・CDI/大腸炎疑いでは悪化の恐れがあり使用しません。
C. difficile(偽膜性腸炎)とは?
抗菌薬や入院を契機に腸内細菌叢が乱れ発症。GDH+トキシンEIA±PCRで診断し、フィダキソマイシン/バンコマイシンで治療します。再発例ではベズロトクスマブやFMTを専門施設と連携します。
どれくらいで出勤/登校できますか?
解熱・嘔吐/下痢の改善後、便が固まってからを目安に。食品関係や集団施設はより厳格な基準を適用します(行政や職場ルールに従います)。
家族にうつさないためには?
トイレ後と調理前後の石けん手洗い、共有タオル回避、吐物/便の適切な処理と消毒、十分な加熱(中心温度75℃1分以上)を徹底しましょう。
関連ページ(院内リソース)
感染性腸炎:外部エビデンスまとめ
急性下痢の検査適応・抗菌薬の適正使用、CDIの診断アルゴリズムと初回/再発治療、感染対策の要点。
📘 総論・診断/治療
- 急性下痢の評価と抗菌薬の適正使用(国際/国内ガイドライン)
- STEC疑いでは抗菌薬/止瀉薬回避、脱水補正を優先
🧪 C. difficile(CDI)
- GDH+トキシンEIA±NAATの二段階診断
- 初回はフィダキソマイシン(代替バンコマイシン)、再発でベズロトクスマブ/FMTを選択
- 接触予防策(手袋/ガウン、石けん手洗い)
👨⚕️ 医師からのコメント・監修(感染性腸炎・連携型)

「感染性腸炎はまず脱水と重症度の評価が最重要です。原因が疑わしい場合のみ便検査を選び、不要な抗菌薬は避ける一方、C. difficileのように治療介入が必要な病態は見逃さないことが肝要です。
当院は適応判断・紹介手配・結果説明に加え、補液/薬物療法・感染対策・就業調整まで一貫して伴走します。」
0th CLINICは“重症を見逃さず、適切に治す”連携型で、必要な検査/治療へ最短でつなぎます。
監修:黒田 揮志夫 医師(プライマリケア認定医/病理専門医/皮膚病理医)
0th CLINIC 日本橋 院長/医学博士/日本病理学会認定 病理専門医/総合診療・救急科での診療歴10年以上
0th CLINIC 日本橋 院長/医学博士/日本病理学会認定 病理専門医/総合診療・救急科での診療歴10年以上
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