セフトリアキソンナトリウム水和物(ロセフィン)

💉 セフトリアキソンとは(基本情報)

セフトリアキソンナトリウム水和物(ロセフィン)

▲ セフトリアキソン注射製剤

セフトリアキソンは、第3世代セフェム系抗菌薬で、注射剤として使用される広域スペクトラム抗生物質です。
特に尿路感染症や性感染症(淋菌など)に有効であり、1日1回の投与で長時間効果を発揮します。

項目 内容
一般名 セフトリアキソン(Ceftriaxone)
剤形 注射剤(筋注・静注)
適応症 淋菌感染症(性器・咽頭・直腸)、尿道炎、腎盂腎炎、膀胱炎、前立腺炎、
虫垂炎、胆嚢炎、腹膜炎、肺炎、髄膜炎、中耳炎、皮膚感染症など
保険適用 ○(保険診療で使用可)
特徴 広範囲の細菌に対して効果があり、特に淋菌に対する第1選択薬として使用されます。
半減期が長いため1日1回の投与で済むのも大きな利点です。

性感染症の即日治療(淋菌など)として単回筋注が行われるケースが多く、パートナー同時治療の際にも用いられます。
虫垂炎・胆嚢炎などの外科的感染症でも用いられ、入院・外来を問わず重要な抗菌薬の一つです。
● 腎機能低下時にも比較的安全に使える薬剤として知られています。

💡 セフトリアキソンの作用と使い方

■ 広範囲に有効な抗菌スペクトラム

セフトリアキソンは、第3世代セフェム系抗生物質であり、グラム陽性菌および陰性菌の幅広い細菌に対して抗菌作用を示します。
特に淋菌性尿道炎や腎盂腎炎、膀胱炎など、泌尿器科でよく見られる感染症に対して効果的です。

■ 即効性が求められる性感染症にも適応

淋菌性尿道炎や咽頭・直腸淋菌感染症など、性感染症(STI)の即日治療として単回筋注されることが多く、
パートナー治療にも適応される薬剤です。

■ 投与法と使用期間

● 通常は1gを筋肉注射または静脈注射で1日1回投与されます。
● 感染の種類や重症度により、1日2回投与や長期投与が必要な場合もあります。
● STIの場合は、単回1回の筋注(250mg〜1g)で完結することもあります。

■ 虫垂炎・腹膜炎など外科的感染にも

セフトリアキソンは、単純性虫垂炎・腹膜炎・胆道系感染症などの消化器系感染症にも広く使用されており、
緊急手術前後の経験的治療(empirical therapy)としても信頼性の高い薬剤です。

■ 副作用と注意点

● 比較的安全性が高い薬ですが、下痢・注射部位の疼痛・アレルギー反応には注意が必要です。
● 特にペニシリンアレルギーの既往がある方は、事前に医師に申告してください。
カルシウム製剤との同時投与は禁忌(沈殿形成のリスクあり)です。

✅ セフトリアキソンは広域かつ即効性のある注射用抗菌薬として、性感染症・尿路感染症・外科的感染症に有効です。
安全に使用するために、医師の指導に従い正確な投与を受けましょう

⚠ セフトリアキソン注射時の注意点

セフトリアキソンは注射剤(筋肉内または静脈内)として使用され、即効性と高い有効性を持つ抗生物質です。
投与にあたっては、いくつかの重要な注意点があり、安全な治療のために患者さんへの説明と管理が必要です。

🟠 重要な注意点:
セフトリアキソンはカルシウム製剤との同時投与が禁忌です(特に新生児では致死的な結晶沈着の報告あり)。
また、注射部位の疼痛や硬結、下痢などの副作用が起こることがありますので、投与後の観察が必要です。

  • 注射後15〜30分は安静にし、局所の腫れやアレルギー症状の有無を確認
  • 他剤アレルギーの既往(特にペニシリン)を必ず事前に確認
  • 治療期間中は定期的な血液検査(肝機能・腎機能)を行う場合があります
  • 妊娠中や授乳中の方は、事前に医師へ申告してください

💉 クリニックで使われる注射抗菌薬の比較

外来での点滴治療や緊急対応時に使用される注射用抗生剤には、それぞれ異なる適応や特徴があります。
以下は、使用頻度の高い抗生剤(セフトリアキソン・セフォタキシム・クラビット注・ユナシンなど)の比較表です。

項目 セフトリアキソン
(ロセフィン®)
セフォタキシム
(クラフォラン®)
レボフロキサシン注
(クラビット注®)
スルバクタム・アンピシリン
(ユナシン®)
系統 第3世代セフェム 第3世代セフェム ニューキノロン系 βラクタマーゼ阻害剤併用ペニシリン
主な適応 尿路感染症、性病、虫垂炎、呼吸器感染 呼吸器感染症、髄膜炎、敗血症 尿路・肺炎・皮膚感染 咽頭炎、膀胱炎、扁桃炎、歯性感染
特徴 1日1回投与可。
腎機能に依存しにくい
TID投与が基本。
中枢移行性が良い
肺組織移行性◎。
単回投与も可
抗菌スペクトル広め。
軽症感染に◎
注意点 カルシウム製剤との同時投与禁忌 注射回数が多く患者負担に注意 腎機能低下時に用量調整必要 下痢・アレルギーに注意
保険適用

✅ 外来での注射抗生剤は、症状・感染部位・患者背景(腎機能・アレルギーなど)を考慮して選択されます。
ご不明な点があれば、診察時に医師へお尋ねください。

🌍 セフトリアキソンの国際的使用状況とエビデンス

■ 国際的な使用状況

セフトリアキソン(Ceftriaxone)は、第3世代セフェム系注射用抗生剤であり、世界中の医療機関で使用されている標準的な広域抗菌薬です。

  • ● 米国FDAやWHOの必須医薬品リストにも収載されており、肺炎・尿路感染・性行為感染症・敗血症などに対応します。
  • 1日1回の投与が可能で、入院・外来の双方で広く用いられています。

■ 臨床試験と注意点

  • ● 高い組織移行性と長い半減期により、多くの細菌感染症で有効性が証明されています。
  • ● 一方で、カルシウム含有製剤との併用禁忌胆泥形成(仮性胆石)リスクなどの注意も必要です。
  • Pichichero ME et al. (2001) によると、小児の中耳炎や肺炎治療にも有効で、安全性も高いとされています。

■ エビデンスの出典(代表例)

✅ セフトリアキソンは世界的にも信頼性の高い注射用抗菌薬として位置づけられています。
使用にあたっては併用薬や投与対象者のリスク評価を十分に行い、医師の管理下での適正使用が重要です。

泌尿器領域におけるセフトリアキソンの使い方

泌尿器科でのセフトリアキソンの使用

💉 主な適応疾患

  • 急性膀胱炎・腎盂腎炎
  • 淋菌性尿道炎・子宮頸管炎
  • 性感染症予防(DOX-PEP併用)
  • 前立腺炎・精巣上体炎など

特に淋菌感染症に対しては第一選択薬であり、耐性株にも効果が期待できる単回筋注が推奨されています。

🌍 国際的ガイドラインでの推奨

アメリカCDCでは、淋菌感染症の標準治療としてセフトリアキソン 500mg IM 単回投与が推奨されています。

👉 CDC 淋病治療ガイドライン

📚 セフトリアキソンのエビデンス

❓ よくある質問(Q&A)

Q. セフトリアキソンはどのように投与されますか?
A. 通常、筋肉注射または点滴静注で投与されます。淋病などでは単回の筋肉注射が主流です。
Q. 痛みはありますか?
A. 筋注時に痛みを感じることがあります。リドカイン混合により軽減可能です。
Q. 妊娠中でも使えますか?
A. 比較的安全な抗菌薬とされており、妊娠中の性感染症治療でも使用されます
Q. 副作用はありますか?
A. 主な副作用は下痢・発疹・注射部位の痛みなどです。まれに胆泥やアナフィラキシーも報告されています。
消化器領域におけるセフトリアキソンの使い方

消化器領域でのセフトリアキソンの使用

🦠 適応疾患と使用例

  • 急性胆嚢炎・急性胆管炎(Grade II/III)
  • 重症虫垂炎・穿孔性虫垂炎
  • 細菌性腸炎(特に重症例や免疫低下例)
  • 肝膿瘍などの重症感染

消化器感染症においては、グラム陰性桿菌(大腸菌など)や嫌気性菌が関与することが多く、
セフトリアキソンは広範囲スペクトラムと1日1回投与での利便性

📖 ガイドラインでの評価

セフトリアキソンは、胆嚢炎・胆管炎の抗菌薬治療(TG18/TG23ガイドライン)で中等度以上の症例に推奨されています。

👉 TG18/TG23(日本消化器外科学会/日本肝胆膵外科学会)

📚 エビデンス・参考文献

❓ よくある質問(Q&A)

Q. 急性胆嚢炎にセフトリアキソンは単独で使用できますか?
A. 中等症以上の場合はメトロニダゾールなど嫌気性菌カバー薬との併用が一般的です。
Q. 点滴は1日何回ですか?
A. 通常は1日1回 1〜2g 点滴静注で投与されます。
Q. 入院中のみに使う薬ですか?
A. 多くは入院加療の初期治療として使用され、状態が安定すれば内服薬へ切り替えます(ステップダウン療法)。
Q. 副作用は?
A. 注射部位の疼痛、下痢、肝機能障害、胆泥(pseudocholelithiasis)、過敏症などが知られています。

💉 セフトリアキソンの薬価と自己負担について

セフトリアキソン(商品名:ロセフィン®など)は、中等症~重症の感染症に使用される注射用抗菌薬で、消化器・泌尿器・呼吸器領域など幅広く用いられます。以下は、薬価と3割負担時の自己負担額の目安です。

■ 保険診療での薬価(2024年改定時点)

製剤名 薬価(単価) 使用量(1日分) 薬剤費(3割負担)
セフトリアキソンNa点滴静注用バッグ1g 約967〜1,064円/キット 1キット(1g) 約290〜319円

■ 自己負担の目安(外来または入院投与)

  • 3割負担の方: 約290〜319円/回
  • 1割負担(高齢者)の方: 約97〜106円/回
  • ※ 点滴セット・技術料・診察料・入院料は別途かかります

✅ セフトリアキソンは重症感染症に対する第一選択薬のひとつとして広く使われており、1日1回の静脈点滴で投与できる利便性もあります。
状態が落ち着けば内服薬への切り替え(ステップダウン)も可能です。医師と相談のうえ適切に使用しましょう

👨‍⚕️ 医師からのコメント・監修

セフトリアキソンナトリウム水和物(ロセフィン)
「セフトリアキソンは、重症感染症の初期治療や外科術後の感染予防にも広く使用される信頼性の高い抗菌薬です。
当院では、耐性菌対策を重視しつつ、ガイドラインに基づいた適正な使用を心がけています。」

私は元外科専門医として、術後感染や消化器・胆道系感染症など外科領域の感染管理にも長年携わってきました。
現在は総合診療の立場から、泌尿器・消化器・皮膚・呼吸器など多様な領域における感染症治療を行っており、セフトリアキソンの投与判断についても、経験と科学的根拠の両面から適切に対応いたします。

監修:黒田揮志夫 医師(病理専門医/元外科専門医)
0th CLINIC 日本橋 院長
日本病理学会認定 病理専門医/元外科専門医/感染症診療・救急・総合診療における実地経験10年以上

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