コラム
アトピーの“保湿土台”は注入で作れる?皮膚科学と実臨床
アトピーの“保湿土台”は注入で作れる? 皮膚科学と実臨床
アトピー性皮膚炎の基本は炎症コントロールと外側からの保湿。いっぽうで、ボライト=保湿(形を変えない保湿特化ヒアルロン酸)という内側からの“保湿土台”の考え方に注目が集まっています。
本稿は、皮膚科学の基礎と当院の実臨床を踏まえ、「どこまで注入で“保湿土台”を補えるのか」をわかりやすく解説します。
※本記事は医療情報の提供を目的としたもので、診断・治療の最終判断は必ず医師の診察に基づきます。
1. 皮膚科学の基礎:なぜ“保湿土台”が効くのか
アトピーでは角層の水分保持能低下とバリア機能低下が生じやすく、外部刺激に敏感になります。角層水分が保たれると、キメと光の反射が整い、かゆみやつっぱり感も緩和されやすくなります。
“保湿土台”とは、外側の保湿に加えて内側の保湿(ボライト=保湿)で水分保持のベースを底上げし、質感と日常のケアのしやすさを高める考え方です。
2. ボライトとは? “形は変えずに保湿”の注入
ボライトはアラガン社製ジュビダーム ボライト(国内承認品)で、当院は正規品のみを使用しています。
特徴は形を変えない=輪郭形成を目的としない点。水分保持(保湿)・弾力・キメ・ツヤの底上げを主眼に、浅層へ点状分散注入します。
目安の持続は6〜9か月(個人差あり)。ボライト=保湿という役割を明確にし、過度な期待にならないよう設計します。
3. どんな人に向く?(適応の目安と禁忌)
- 適応の目安:炎症が落ち着いた時期で、乾燥・インナードライ・ツヤ低下・ちりめんが主訴。日中の化粧のり不安定や粉ふきが続く方。
- 禁忌・回避:活動性の炎症・感染部位、妊娠/授乳中、重篤な基礎疾患、強い接触皮膚炎がある部位など。
- 注意:膿疱・強い紅斑・掻破直後など炎症が強い部位は注入回避し、標準治療を優先。
4. どう使う?(実臨床の設計とスケジュール)
- 診察・計画:アトピーの活動性、外用歴、トリガー、保湿状況を評価し実施可否を判定。
- 注入:保湿目的で浅層に微量分散。顔全体や頬・口周り・目元などを個別設計。
- アフターケア:数日は低刺激の保湿中心・摩擦/紫外線を回避。詳細はこちら
- 見直し:体感・再燃の有無を確認し、6〜9か月を目安に維持検討(個人差)。
5. 標準治療との分業:外用・保湿剤と“内側の保湿”
| 役割 | 主担当 | ポイント |
|---|---|---|
| 炎症コントロール | 保険診療(外用:ステロイド/タクロリムス/デルゴシチニブ等) | 炎症期はまずこちらを優先 |
| 外側の保湿 | 保湿剤・低刺激スキンケア | 入浴後3–5分以内の塗布、こすらない生活 |
| 内側の保湿(質感) | ボライト=保湿 | 形を変えず水分保持の“土台”を補助(補助的併用) |
6. できること/できないこと(限界と注意)
- できること:保湿ベースの補助、ツヤ・キメの体感向上、化粧のりの安定化を狙う(個人差)。
- できないこと:炎症の直接治療、強い掻破や急性増悪の改善、深いシワの矯正。
- 安全面:赤み・内出血・むくみ等は数日で改善が多い。炎症強い部位は回避し、判断は医師が行う。
7. 症例イメージと撮影・表示方針
- 無加工:症例はリサイズ以外のレタッチなし。
- 同条件撮影:距離・角度・WB・露出・照明(5,600K相当)を統一。
- キャプション:撮影日・経過日数・併用の有無を明記。
- 個人差:結果には個人差があり、保証はできません。
詳細:ビフォーアフター掲載方針
8. よくある質問(ミニQ&A)
- Q. ボライトでアトピーは治りますか?
- いいえ。ボライトは“保湿(質感)”の補助であり、炎症治療は保険の標準治療が主担当です。
- Q. いつ実施すべき?
- 炎症が安定している時期。炎症強い部位は回避し、医師が個別に時期・範囲・量を判断します。
- Q. 外用保湿剤とどう違う?
- 外用は外側からの保湿、ボライトは形を変えず内側からの保湿ベース補強。役割が違うため併用が前提です。
- Q. ダウンタイムや持続は?
- 赤み・内出血などが数日で改善することが多く、持続は6〜9か月が目安(個人差)。アフターケアを参照。
参考リンク(公的情報)
※外部サイトの最新情報は随時更新されます。最終判断は診察でご確認ください。
