大動脈疾患(解離・瘤・IMH・PAU・炎症性・先天性)|原因・症状・検査・治療|0th CLINIC 日本橋
突然の胸背部痛・冷汗・失神…それ、大動脈疾患のサインかもしれません
大動脈疾患は、急性大動脈症候群(大動脈解離/内膜下血腫/穿通性粥腫性潰瘍)や、胸部/腹部大動脈瘤、炎症性・遺伝性の大動脈病変、大動脈縮窄症などを含む総称です。
診断は造影CT(CTA)を中心に、必要に応じてTEE/MRI/腹部エコーを組み合わせます。治療は厳格な血圧・心拍管理、血管内治療(TEVAR/EVAR)、外科手術を適切なタイミングで選択します。
⚠️ 裂けるような胸背部痛、失神、片麻痺・言語障害、下肢の冷感/蒼白は救急受診を
大動脈疾患(疾患別ガイド)
目次
🔍 大動脈疾患とは
大動脈は全身に血液を送る最大の動脈です。壁構造の破綻や変性により、急性大動脈症候群(AAS:大動脈解離・内膜下血腫・穿通性粥腫性潰瘍)や、大動脈瘤(胸部/腹部)、炎症性/遺伝性疾患、大動脈縮窄症などを来します。
AASは時間との勝負で、迅速な画像診断と厳格な血圧・心拍管理、外科/血管内治療が必要です。

🩺 主な症状・危険サイン
- 突発の激しい胸背部痛(移動性)・冷汗・不安感
- 失神・ふらつき、血圧左右差・脈拍の左右差
- 神経症状(片麻痺/失語)や四肢の蒼白・疼痛(臓器/肢虚血)
- 呼吸困難・嗄声・嚥下障害(瘤の圧迫・AR合併など)
- 拍動性腹部腫瘤、腹痛・腰背部痛(AAA)
🧪 検査の流れ(CTA中心に迅速評価)
- 造影CT/CTA(全大動脈):解離フラップ、偽腔灌流、IMH厚、PAU深達度、瘤径、破裂徴候を評価。
- 経食道/経胸壁エコー(TEE/TTE):上行大動脈・大動脈弁・心嚢液・AR合併の確認。
- MRI/MRA:造影制限時や慢性期フォローで有用(造影なしプロトコルも可)。
- 腹部エコー:AAAスクリーニングとフォロー。
- 血液検査:炎症反応・臓器障害・貧血/腎機能、必要時遺伝学的検査。
📊 代表的な種類(解離/IMH/PAU/瘤/炎症/遺伝性/縮窄)
- 大動脈解離(Stanford A/B):内膜裂口から偽腔形成。Aは緊急外科が原則。
- 内膜下血腫(IMH):壁内出血主体。短期間での再画像が重要。
- 穿通性粥腫性潰瘍(PAU):粥腫が中膜へ穿通。破裂/拡大リスクで介入検討。
- 大動脈瘤(TAA/AAA):壁の限局拡張。径・増大速度で介入を判断。
- 大動脈炎症候群:高安病/巨細胞性動脈炎などの血管炎。
- 遺伝性大動脈疾患:マルファン/Loeys–Dietz など。早期介入閾値が低め。
- 大動脈縮窄症(成人先天性):峡部狭窄。ステント/外科+長期フォロー。
※ 閾値は体格・リスク(遺伝性・弁疾患合併等)で調整します。個別最適化が前提です。
💊 治療の考え方(内科・血管内・外科)
内科治療(全例の基礎)
- Anti-impulse療法: β遮断薬で心拍低下→必要に応じ降圧薬を追加。強い疼痛は早期に鎮痛。
- 危険因子管理: 厳格な血圧・脂質・禁煙、体重管理。
- 血栓/抗血小板: AASでは原則ルーチン適用しない(他適応がある場合のみ個別判断)。
血管内治療
- TEVAR:合併症を伴うStanford B解離、PAU/IMHの高リスク、下行TAAに有用。
- EVAR:解剖学的条件が適合するAAAで低侵襲に修復。
外科治療
- 上行/弓部のA解離・破裂/切迫破裂・巨大瘤などで早期手術。
- 遺伝性疾患・二尖弁合併では径閾値を下げて予防的手術を検討。
🌱 再発予防・生活の工夫(血圧・禁煙)
- 血圧管理: 自宅で測定し、主治医と目標値を共有。
- 禁煙・脂質管理: 動脈硬化進展を抑制。
- 運動: 主治医の指示範囲で有酸素中心。高強度の等尺性負荷(重い持ち上げ)は回避。
- 服薬遵守: β遮断薬/降圧薬などの自己中断は避ける。
🔄 フォローアップと緊急受診の目安
- 再診頻度: AAS後は早期(例:退院後1–3か月)→6–12か月毎。瘤は径・増大速度で3–12か月間隔。
- 再評価: CTA/MRAで径・偽腔灌流/エンドリーク確認、血圧・腎機能、症状の変化。
- 術後/ステント後: プロトコルに沿って画像フォロー(早期→半年→年1回など)。
🏥 当院でできること(0th CLINIC 日本橋)
- 初期評価: 問診・身体診察・血圧/脈診・心電図、必要時血液検査。
- 画像手配: 提携施設でのCTA/MRA/TEE/TTE/腹部エコーを迅速調整。
- 治療方針: 内科管理(降圧・鎮痛)/血管内治療(TEVAR/EVAR)/外科治療の適応を心臓血管外科と協議。
- 長期フォロー: 画像フォロー計画、再発予防、生活指導、薬物調整。
❓ よくある質問(Q&A)
Q:痛みが落ち着けば様子見で良い?
急性大動脈症候群では痛みが変動することがあります。症状の消退=安全ではありません。画像診断と専門評価が必須です。
Q:IMHやPAUは解離と何が違いますか?
いずれも大動脈壁の急性障害ですが、形態が異なります。IMHは壁内出血、PAUは粥腫が中膜へ穿通。いずれも破裂/進展の監視が必要で、場合によりTEVAR等を検討します。
Q:TEVAR/EVARと開胸・開腹手術、どちらが良い?
解剖学的適合性、瘤/解離の部位、年齢・併存症、長期耐久性を総合評価します。チーム医療で個別最適を提案します。
Q:家族も検査した方が良い?
若年発症や遺伝性疾患の疑い(マルファン/Loeys–Dietz、二尖弁など)があれば、家族スクリーニング(心エコー/画像)が推奨されることがあります。
Q:運動や旅行の注意点は?
血圧コントロール下での有酸素運動は概ね可ですが、高重量挙上・息こらえは避けましょう。長距離移動では内服・血圧計・紹介状を携行してください。
ほかにも気になる点があれば、ご受診時にお気軽にお尋ねください。
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📚 大動脈疾患・診断と治療に関する科学的根拠と外部リンク集
🔬 公的機関・国際機関
- NHS:Aortic dissection(患者向け)
- NHS:Abdominal aortic aneurysm(AAA)(患者向け) / NHS:AAAスクリーニング
- NHLBI(NIH):Aortic Dissection(患者/専門家向け解説)
- NHLBI(NIH):Aortic Aneurysm(患者/専門家向け解説)
- CDC:Aortic Aneurysm(疫学・予防)
🏛 学会・専門団体ガイドライン
- ACC/AHA 2022 Aortic Disease Guideline: Circulation(本文)
- ESC 2014 Aortic Diseases Guideline: European Heart Journal(本文)
- SVS(米国血管外科学会)ガイドライン: Guidelines 一覧(AAA/TEVAR など)
- ESVS(欧州血管外科学会)ガイドライン: Guidelines 一覧(AAA/TAA 管理)
- NICE NG156:腹部大動脈瘤の診断と管理: 推奨(英国・AAA)
📖 学術レビュー・主要リソース
- StatPearls:Aortic Dissection(総説・オープンアクセス)
- StatPearls:Abdominal Aortic Aneurysm(総説・オープンアクセス)
- Cleveland Clinic J Med 2018:胸部大動脈瘤の最適な監視と治療(レビュー)
🇯🇵 日本の公的情報・ガイドライン
🤝 参考:患者支援・生活の質(QOL)
これらのリンクは、 急性大動脈症候群(大動脈解離・内膜下血腫・PAU)、胸部/腹部大動脈瘤、炎症性・遺伝性大動脈疾患の 診断(CTA/MRA・TEE)・血圧/心拍管理、血管内治療(TEVAR/EVAR)・外科治療の適応とフォローを幅広くカバーしています。
実際の治療方針は症状・解剖学的所見・臓器虚血・併存症、および患者さんの価値観を踏まえ、最新ガイドラインと 心臓血管外科・循環器内科・放射線科からなるチームで総合的に決定されます。
👨⚕️ 医師からのコメント・監修(大動脈疾患)

「大動脈疾患は、急性大動脈症候群(大動脈解離・内膜下血腫IMH・穿通性粥腫性潰瘍PAU)と 大動脈瘤(胸部/腹部)、炎症性/遺伝性疾患に大別されます。 とくに急性大動脈症候群は時間依存の緊急疾患で、突然の胸背部痛(裂けるような痛み)、 血圧左右差・脈拍欠損、神経症状/四肢虚血/腹痛があれば直ちに救急受診が必要です。
初期対応は血圧・心拍の厳格管理(まずβ遮断薬で心拍抑制、必要に応じて血管拡張薬を追加)と鎮痛です。 診断は造影CT(頸部〜骨盤まで)が基本で、循環動態不安定時はTEEが有用です。 Stanford A型は原則緊急手術、B型は合併症(破裂兆候・末梢虚血・持続疼痛・難治性高血圧など)があれば TEVAR等を検討、非合併症例は厳格な内科管理と密な監視が基本です。 IMH/PAUも同様のアルゴリズムで、形態や拡大速度により介入適応を判断します。
慢性期/瘤(TAA・AAA)ではサイズと増大速度、症状、解剖学的所見で 外科手術/血管内治療(TEVAR/EVAR)の適応を決めます。遺伝性(マルファン/Loeys–Dietz/二尖弁関連)や 炎症性(高安病・巨細胞性動脈炎)では、一般より低い径基準や免疫治療、妊娠計画を含む個別管理が重要です。
長期管理は、家庭血圧を含む降圧(β遮断薬/ARB等)、禁煙、体重管理、LDL管理に加え、 重いいきみ・瞬発的な高負荷運動の回避がポイントです。 画像フォローはCT/MRI/エコーを用い、急性期後は3–6か月、その後は6–12か月間隔を目安に個別調整します。」
0th CLINICでは危険サインのトリアージと迅速な判断を重視し、疑う場合は
救急搬送・高次施設での造影CTに直結します。
慢性期は血圧・脂質・生活習慣の最適化、画像フォローのスケジューリング、
遺伝学的評価の必要性の検討を行い、心臓血管外科・血管内治療チームと連携して
手術/TEVAR・EVARの適応とタイミングを丁寧にご説明します。炎症性大動脈疾患では
リウマチ・膠原病内科とも協力し、免疫療法と血管イベント予防を両立させます。
0th CLINIC 日本橋 院長/医学博士/日本病理学会認定 病理専門医/総合診療・救急科での診療歴10年以上
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