ジファミラスト(モイゼルト)
💡 モイゼルト軟膏とは?
モイゼルト軟膏とは、アトピー性皮膚炎のかゆみや炎症を抑えるために使われる新しいタイプの外用薬です。
一般名はデルゴシチニブで、JAK阻害薬(ヤヌスキナーゼ阻害剤)に分類されます。
ステロイドや免疫抑制薬とは異なるメカニズムで、炎症やかゆみを引き起こす複数のサイトカインの信号伝達をブロックします。
そのためかゆみの強い症例にも効果が期待され、顔や首などにも使用しやすい薬剤です。
初期に軽い刺激感やかゆみを伴うことがありますが、多くは一過性で、安全性の高い薬として評価されています。

モイゼルト軟膏は0.5%濃度で1日2回塗布が一般的な用法です。
ステロイド外用薬や免疫抑制薬(プロトピックなど)と使い分けることで、より安全で継続しやすい治療が可能になります。
新しい作用機序を持ち、副作用の少なさと顔や小児にも使いやすい点が注目されている治療薬です。
🔬 モイゼルト軟膏の働きとは?
モイゼルト軟膏(デルゴシチニブ)は、皮膚に塗布されることで炎症を引き起こすシグナル伝達経路「JAK-STAT経路」をブロックします。
その結果、かゆみや赤みの原因となるサイトカインの作用を抑え、アトピー性皮膚炎などの症状を改善します。
- 🟢 JAK(ヤヌスキナーゼ)酵素:炎症に関わる複数のサイトカインの信号を伝える酵素。モイゼルトはこのJAKを阻害。
- 🔵 かゆみ伝達因子(IL-31など):JAK経路を介して神経にかゆみを伝える。これらの作用も抑制されるため、かゆみの軽減効果が高い。
- 🟣 炎症性サイトカイン(IL-4, IL-13, TSLPなど):アトピーの根本的炎症にも関与しており、JAK阻害により総合的に抑制される。

モイゼルトは、顔や首などのデリケートな部位や、小児の使用にも適している一方で、用法・用量を守ることが重要です。
また、他の外用薬との併用や長期使用の安全性も確立されつつあり、炎症・かゆみのコントロールを目的とした治療に広く用いられています。
💊 外用薬4種の比較表(アトピー性皮膚炎など)
ステロイド外用薬 | コレクチム軟膏 | プロトピック軟膏 | モイゼルト軟膏 | |
---|---|---|---|---|
分類 | 副腎皮質ホルモン | JAK阻害剤(デルゴシチニブ) | 免疫抑制剤(タクロリムス) | PDE4阻害剤(ジファミラスト) |
主な適応 | 湿疹・皮膚炎全般 | アトピー性皮膚炎(軽〜中等症) | アトピー性皮膚炎(中等症〜重症) | アトピー性皮膚炎(軽症) |
使用部位 | 全身(部位によって使い分け) | 顔・体いずれも可 | 顔・首などデリケート部位にも可 | 顔・体いずれも可 |
副作用 | 皮膚萎縮・毛細血管拡張など | 局所刺激感・ニキビ様発疹 | ヒリヒリ感・熱感(初期) | 刺激感・かゆみの増強 |
長期使用 | 注意が必要(特に顔・陰部) | 可能 | 可能(皮膚萎縮の心配なし) | 可能(長期的データあり) |
その他の特徴 | 即効性があり炎症全般に効果 | 非ステロイドで炎症と痒みに作用 | ステロイドが使いづらい部位で有用 | かゆみと炎症をやさしく抑える |
🧴 モイゼルト軟膏の使い方・正しい塗り方
モイゼルト軟膏(ジファミラスト)は、非ステロイド性のPDE4阻害薬で、アトピー性皮膚炎に伴うかゆみや炎症を抑える新しいタイプの外用薬です。
ステロイドを使いたくない方や、顔・首など皮膚が敏感な部位にも使用できます。
■ 使用する順番(スキンケアの流れ)
- ① 洗浄:患部をぬるま湯でやさしく洗い、水気をよく拭き取ります。
- ② 保湿剤の使用:肌の乾燥を防ぐため、先に保湿剤を塗ります。
- ③ モイゼルト塗布:赤みやかゆみがある部位に、薄く均一に塗ります。
※ 入浴や洗顔直後は刺激を感じやすいため、20〜30分あけてからの塗布が望ましいです。
■ 使用回数と期間
通常は1日2回(朝・夜)塗布します。
症状が改善してきたら、医師の指示により回数を減らす場合もあります。
※ 効果が現れるまでに数日〜1週間程度かかることがあります。
■ 塗る量と塗り方(FTU目安)
- ● 1FTUで手のひら2枚分に塗布可能。
- ● 軽くのばすように、こすらずに塗布。
- ● 原則として症状がある部位のみに局所的に使用します。
※ 顔など皮膚が薄い部位には少量で十分です。
■ 注意点・副作用
- ⚠ 一部の方で刺激感・かゆみが一時的に増すことがあります。
- ⚠ かぶれや赤みが強く出た場合は使用を中止し医師に相談してください。
- ✅ モイゼルトは皮膚萎縮を起こしにくく、長期使用も比較的安全とされています。
✅ モイゼルトはかゆみや炎症の悪循環を断ち切る効果が期待できる薬です。
医師の指示に従って、毎日のスキンケアと併用しながら継続的に使いましょう。
▶ 詳しくは、モイゼルトの正しい使い方(大塚製薬公式サイト)もご参照ください。
✋ FTU(1回量の目安)とは?
FTU(フィンガーチップユニット)とは、チューブから絞り出した軟膏が大人の人差し指の第一関節分に相当する量のことです。
およそ0.5g(5mm径ノズル使用時)で、手のひら2枚分の面積に塗るのが適量とされています。

▲ 人差し指の第一関節までチューブを押し出した長さが1FTU
部位 | FTUの目安量 |
---|---|
顔全体 | 約1 FTU(手のひら2枚分) |
片腕全体 | 約3 FTU |
片脚全体 | 約6 FTU |
背中+お尻 | 約6 FTU |
(提供:マルホ株式会社|外部サイトが開きます)
✅ ステロイドは少なすぎても効果が不十分になり、多すぎれば副作用のリスクがあります。
適切なFTUを守って、安全に使用しましょう。
🧴 プロトピック軟膏の使用方法と注意点
■ 使用回数の目安(1日に何回塗る?)
基本は1日1〜2回の塗布が推奨されます。
症状が強い場合は1日2回、改善してきたら1日1回、または週数回の維持療法へ切り替えます。
※ 医師の指示に従って使用してください。
💡 モイゼルト軟膏の使い方と注意点
■ どのくらいの期間使い続ける?
モイゼルト軟膏は、長期使用が比較的安全とされる外用薬です。
症状が改善しても自己判断で中止せず、医師と相談しながら継続や減量を決めましょう。
※ 症状が再燃しやすい場合は、再度塗布の再開が推奨されます。
■ 塗るタイミングとポイント
- 入浴や洗顔後、20~30分程度あけてから塗布すると、刺激感を感じにくくなります。
- 患部が清潔な状態で、炎症のある部分にのみ薄く塗布しましょう。
- 保湿剤との併用は可能で、保湿後にモイゼルトを塗るのが基本です。
■ 顔に塗る場合の注意点
- 顔・首などの皮膚が薄い部位にも使用可能です。
- プロトピックよりも刺激感は少ないとされていますが、目や口の周囲はごく薄く塗布しましょう。
- 赤みやヒリヒリ感、にきび様の変化がみられた場合は医師に相談してください。
■ かゆみのコントロールと間欠使用
モイゼルトは、PDE4阻害により炎症とかゆみを根本から抑制します。
症状が軽快した後も、再発を防ぐために間欠的使用を行うケースもあります。
維持使用のタイミングや頻度は医師の指示に従って調整してください。
✅ モイゼルト軟膏は、非ステロイドでありながらかゆみの抑制に優れた新しい治療薬です。
適切な使用方法と日々のスキンケアを併用して、肌の炎症を安定させましょう。
⚠ モイゼルト軟膏(ジファミラスト)の注意点と副作用
モイゼルト軟膏は、PDE4(ホスホジエステラーゼ4)阻害作用を持つ非ステロイドの外用薬で、アトピー性皮膚炎による炎症やかゆみを抑える効果があります。
顔や首などのデリケートな部位や、小児にも使用可能ですが、年齢や濃度に応じた注意が必要です。
■ 使用時の注意点
- 📌 1日2回、清潔な患部に適量を塗布します。
- 📌 目の周囲、粘膜、傷口への使用は避けてください。
- 📌 保湿剤と併用する場合は、保湿後にモイゼルトを塗るのが基本です。
- 📌 小児では0.3%または1.0%を症状に応じて使い分けます(長期使用は0.3%推奨)。
- 📌 15歳以上の成人には1.0%製剤のみが適応で、0.3%製剤は使用できません。
■ 主な副作用
- 🔹 刺激感・かゆみ:塗布部位に軽いヒリヒリ感やかゆみを感じることがあります。
- 🔹 紅斑(赤み):一過性の赤みが出ることがあります。
- 🔹 にきび様皮疹:まれに皮膚の毛包が刺激され、吹き出物が出ることがあります。
- 🔹 アレルギー性接触皮膚炎:成分に対してかぶれを起こす場合があります。
※ 副作用が気になる場合は、自己判断で中止せず、必ず医師へご相談ください。
✅ モイゼルトは、ステロイドに代わる新しいアプローチとして期待される外用薬です。
正しい使い方と医師の指導により、肌に優しく効果的な炎症コントロールが可能になります。
💡 プロトピックの「ひりひり感」と「リンパ腫リスク」について
■ 使用初期の“ひりひり感”の原因と対応
プロトピックを塗布した際に感じる灼熱感(ひりひり・ピリピリ感)は、皮膚バリアの弱った部位に有効成分(タクロリムス)が作用することで一時的に生じるものです。
- 🔹 使用初期に多く見られるが、数日〜1週間で軽減するのが一般的です。
- 🔹 冷蔵庫で冷やして塗ることで刺激を抑えやすくなります。
- 🔹 入浴直後は避ける(血行が良く、刺激が強く出るため)
- 🔹 保湿剤を先に塗る
💡 モイゼルト軟膏の適応と使い方
■ モイゼルト軟膏の濃度と対象年齢
- モイゼルト軟膏には 0.3% と 1.0% の2種類の濃度があります。
- チューブは 各10g包装 で提供されます。
🧒 小児(生後3ヶ月~14歳)
- 0.3%または1.0%のいずれかを使用できます。
- 1.0%製剤の使用は短期間にとどめ、改善後は0.3%への変更を検討します。
🧑 成人(15歳~70歳)
- 使用可能なのは1.0%製剤のみです。
- 0.3%製剤は使用対象外となります。
■ 使用方法
- 小児・成人ともに1日2回、適量を患部に塗布します。
- 1回あたりの塗布量に制限はありません。
- 保湿剤を併用する場合は、保湿後にモイゼルトを塗布するのが基本です。
✅ モイゼルトは、非ステロイドのPDE4阻害薬として炎症とかゆみを効果的に抑える新しい治療選択肢です。
濃度や年齢によって使い分ける必要があるため、必ず医師の指導のもとで正しく使用しましょう。❓ よくある質問(FAQ)
モイゼルトは目の周囲やまぶたへの使用は推奨されていません。
デリケートな部位は刺激が出やすいため、使用を避け、必要な場合は必ず医師に相談してください。モイゼルトは比較的低刺激ですが、ニキビ様皮疹が副作用として報告されることもあります。
皮脂が多い部位には注意して使用し、異常があれば医師にご相談ください。プロトピックほどではありませんが、モイゼルトでも日焼け対策は推奨されます。
日中の外出時は、帽子・長袖・日焼け止めなどで紫外線対策を行いましょう。動物実験で胎児への影響は報告されていませんが、妊娠中は慎重投与とされています。
授乳中は使用可能とされていますが、乳房への塗布は避ける必要があります。併用は可能ですが、同じ部位に同時に塗布することは避け、時間を空けて使うか部位を分けて使用します。
詳しくは医師の指示を仰いでください。モイゼルトは生後3ヶ月以上の小児に使用可能です。
0.3%と1.0%の製剤がありますが、1.0%は短期間の使用が原則です。
症状が改善した場合は0.3%に切り替えることが推奨されています。⚠ モイゼルト軟膏の使用期間と副作用・長期使用に関する注意点
■ 一般的な使用期間の目安
- 1日2回、数週間の継続使用で炎症を抑えることが基本です。
- 症状が落ち着いた後は、週数回の維持療法(プロアクティブ療法)で再発を予防することが可能です。
- 顔・首などのデリケートな部位にも使用可能ですが、医師の指導のもとで使用してください。
※ ステロイドと異なり、皮膚萎縮のリスクは低いとされています。
■ 長期使用における注意点と副作用
モイゼルトはPDE4阻害薬として新しい作用機序を持ち、長期使用にも配慮されています。副作用は少ないとされていますが、以下の点には注意しましょう。
- 局所のヒリヒリ感・そう痒感(一時的な刺激)
- ニキビ様皮疹・毛包炎
- 皮膚の赤み(紅斑)
- かぶれ・接触皮膚炎様の反応
これらの副作用は一般的に軽度ですが、持続・悪化する場合は医師に相談しましょう。
保湿剤や紫外線対策との併用も有効です。■ エビデンスに基づく見解
モイゼルト(ジファミラスト)の臨床試験では、小児から成人まで良好な効果と安全性が示されています。
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大塚製薬プレスリリース:モイゼルト軟膏 承認取得(2022年4月)
→ 国内第Ⅲ相試験において、有効性と良好な忍容性が確認されています。 -
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Efficacy and safety of topical difamilast (PubMed, 2022)
→ 炎症抑制作用があり、ステロイド外用薬と異なる新しい選択肢として期待されています。
✅ モイゼルト軟膏は、ステロイド以外の新しい治療選択肢として注目されています。
医師の指導のもとで、安全かつ効果的に長期管理を目指しましょう。💰 モイゼルト軟膏の薬価一覧(1gあたり)
製品名 有効成分 製造元 薬価コード 薬価(円/1g) 1本(10g)あたり モイゼルト軟膏1% ジファミラスト 大塚製薬 2699716M1024 146.3円 1,463円(自己負担:約438.9円) モイゼルト軟膏0.3% ジファミラスト 大塚製薬 2699716M2020 136.7円 1,367円(自己負担:約410.1円) ※ 上記の薬価は、保険診療での1gあたりの基準価格です。
窓口負担額は、保険負担割合(例:3割負担)に応じて異なります。🔗 モイゼルト軟膏(ジファミラスト)に関する信頼できる外部リンク集
モイゼルト軟膏をより安全・適切に使用するために、医療関係者・一般の方に有益な情報源を以下にまとめました。
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PMDA「モイゼルト軟膏 添付文書」
成分・効能・使用方法・副作用など、日本での正式な医薬品情報。 -
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日経メディカル「モイゼルト承認時の記事」
モイゼルトが登場した背景や、治療における位置づけの解説。 -
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NCBI論文「Difamilast in atopic dermatitis: a new PDE4 inhibitor」
ジファミラストの作用機序・有効性・安全性の最新評価。 -
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大塚製薬「モイゼルト軟膏のプレスリリース」
製造元による公式の発売情報と治療対象・特徴の概要。 -
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Dermatology Times「新しいPDE4阻害剤:ジファミラスト」
海外の皮膚科専門メディアによる解説と臨床的有用性の検討。
✅ これらの情報はモイゼルトの理解を深める一助となります。
使用に際しては必ず医師や薬剤師の指導を受けてください。👨⚕️ 医師からのコメント・監修
「モイゼルトはPDE4を選択的に阻害し、かゆみと炎症の両方に作用する新しい外用薬です。
顔や首などデリケートな部位にも使用しやすく、ステロイドや免疫抑制剤が使いづらいケースにも有用です。」当院では、小児から成人までのアトピー性皮膚炎に対して、モイゼルト軟膏を患者様ごとに適切に使い分けています。
初期のヒリつきや年齢・部位に応じた使い方についても、わかりやすく丁寧にご説明しています。監修:黒田揮志夫 医師(病理専門医/皮膚病理医)
0th CLINIC 日本橋 院長
日本病理学会認定 病理専門医/総合診療、救急科での診療歴10年以上
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