デルゴシチニブ(コレクチム)
💡 コレクチム軟膏とは?
コレクチム軟膏は、アトピー性皮膚炎の治療に使われる新しい外用薬です。
一般名はデルゴシチニブで、JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬というタイプに分類され、炎症やかゆみの元となるサイトカインの働きを抑えます。
ステロイド外用薬やプロトピックとは異なる作用機序で、かゆみや炎症に直接働きかける新しい治療選択肢です。
顔や首などの皮膚が薄い部位にも使いやすく、皮膚萎縮の副作用も起こりにくいとされています。

コレクチムは年齢や重症度に応じて用量・使用部位を調整することができ、小児(2歳以上)から使用可能です。
ステロイドやプロトピックが合わない場合や、副作用が心配な方にとって有用な選択肢となります。
塗布部位に軽度の刺激感(ピリピリ、かゆみ)が出ることがありますが、多くは一過性で自然に軽快します。
JAK阻害薬特有の作用により、ウイルス感染などへの注意が必要な場合もあります。
使用中に異常があれば、必ず医師にご相談ください。
🧬 コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)の作用機序とは?
コレクチム軟膏(一般名:デルゴシチニブ)は、かゆみや炎症の原因となる免疫シグナル(サイトカイン)をブロックするJAK阻害外用薬です。
ステロイドやプロトピックとは異なるメカニズムで、アトピー性皮膚炎に伴う慢性的な炎症やかゆみを改善します。
デルゴシチニブは、細胞内のJAK(ヤヌスキナーゼ)という酵素を阻害し、炎症性サイトカインの伝達をブロックすることで、過剰な免疫反応を抑制します。
■ 皮膚での炎症を抑える仕組み
コレクチム軟膏は皮膚に塗ることで、表皮や真皮の免疫細胞の内部でJAK-STAT経路を遮断します。
- 🔹 JAK阻害:炎症を引き起こす情報伝達(サイトカインシグナル)をカット。
- 🔸 IL-4、IL-13、TSLPなどのサイトカイン:かゆみやバリア障害に関与するサイトカインの作用を抑制。
- 🔺 炎症細胞の活性低下:T細胞、好酸球、肥満細胞などの過剰な反応が穏やかに。
ステロイドや免疫抑制剤(プロトピック)と異なり、細胞内のシグナルを直接ブロックするのが特徴です。
顔や首などの敏感な部位にも使用しやすく、皮膚萎縮などの副作用が少ないとされています。
一部の方では塗布時に軽い刺激感を感じることがありますが、多くは数日で慣れていきます。
用法・用量を守り、医師の指導のもとで継続的に使用することが効果的です。
💊 コレクチムと他の外用薬との比較
項目 | コレクチム軟膏 | プロトピック軟膏 | ステロイド外用薬 | モイゼルト軟膏 |
---|---|---|---|---|
分類 | JAK阻害剤(デルゴシチニブ) | 免疫抑制剤(タクロリムス) | 副腎皮質ホルモン | PDE4阻害剤(ジファミラスト) |
主な適応 | アトピー性皮膚炎(軽〜中等症) | アトピー性皮膚炎(中等症〜重症) | 湿疹・皮膚炎全般 | アトピー性皮膚炎(軽症) |
使用部位 | 顔・体いずれも可 | 顔・首などデリケート部位にも可 | 全身(部位により使い分け) | 顔・体いずれも可 |
副作用 | 局所刺激感・ニキビ様発疹 | ヒリヒリ感・熱感(初期) | 皮膚萎縮・毛細血管拡張など | 刺激感・かゆみの増強 |
長期使用 | 可能 | 可能(皮膚萎縮の心配なし) | 注意が必要(特に顔・陰部) | 可能 |
その他の特徴 | 非ステロイドで炎症と痒みに作用 | ステロイドが使いづらい部位で有用 | 即効性があり炎症全般に効果 | かゆみと炎症をやさしく抑える |
🧴 コレクチム軟膏の使い方・正しい塗り方
コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)は、アトピー性皮膚炎に対する新しい外用JAK阻害剤です。
非ステロイド・非免疫抑制薬として、顔や首などにも使いやすく、長期的な炎症コントロールに適しています。
■ 使用する順番(スキンケアの流れ)
- 洗浄:患部をやさしく洗って水分をよく拭き取ります。
- 保湿剤の使用:乾燥している部位に保湿剤を塗布します。
- コレクチム軟膏を塗布:炎症やかゆみのある箇所にやさしく塗り広げます。
※ 入浴直後は刺激を感じることがあるため、30分ほど空けてからの使用がおすすめです。
■ 使用回数と適用量
- 👤 成人: 0.5%製剤を1日2回患部に塗布(1回最大5gまで)
- 👦 小児: 通常は0.25%製剤を1日2回(必要に応じて0.5%も使用可)
- 🧠 注意: 小児は体表面積の30%以内の範囲に限定
※ 必ず医師の指示に従って使用してください。
■ 塗る量とポイント(FTUの目安)
- ● 1FTU=約0.5gで手のひら2枚分をカバーできます。
- ● 軽くなじませるように、擦らず均一に塗布してください。
- ● 顔などの皮膚が薄い部位には、少量でも十分効果があります。
※ チューブから指先第一関節まで出した量が1FTUです。

▲ FTU(フィンガーチップユニット)のイメージ
■ 注意点・副作用にご注意ください
- ⚠ 塗布部位に軽い刺激感・かゆみが出る場合があります。
- ⚠ 感染症(ヘルペスなど)が再発することがあります。異常を感じたら中止し受診を。
- 💡 紫外線対策(日焼け止め・帽子など)も忘れずに行いましょう。
✅ コレクチム軟膏は、ステロイドやプロトピックに不安がある方にも使いやすい治療薬です。
医師の指導のもと、正しく使って炎症をしっかり抑えましょう。
✋ FTU(1回量の目安)とは?
FTU(フィンガーチップユニット)とは、チューブから絞り出した軟膏が大人の人差し指の第一関節分に相当する量のことです。
およそ0.5g(5mm径ノズル使用時)で、手のひら2枚分の面積に塗るのが適量とされています。

▲ 人差し指の第一関節までチューブを押し出した長さが1FTU
部位 | FTUの目安量 |
---|---|
顔全体 | 約1 FTU(手のひら2枚分) |
片腕全体 | 約3 FTU |
片脚全体 | 約6 FTU |
背中+お尻 | 約6 FTU |
(提供:マルホ株式会社|外部サイトが開きます)
✅ ステロイドは少なすぎても効果が不十分になり、多すぎれば副作用のリスクがあります。
適切なFTUを守って、安全に使用しましょう。
🧴 コレクチム軟膏の使用方法と注意点
■ 使用回数の目安(1日に何回塗る?)
通常、1日2回の塗布が基本です。
成人には0.5%製剤、小児には0.25%製剤が使用されます。
※ 医師の指示に従って、用量・製剤濃度を守って使用してください。
■ どのくらいの期間使い続ける?
コレクチムは長期使用が可能であり、皮膚の萎縮リスクも少ない外用薬です。
ただし、再燃・感染症リスクも考慮しながら、継続期間は医師と相談の上決定しましょう。
※ 軽快後も、安定維持のため間欠使用が勧められる場合があります。
■ 塗るタイミングとポイント
- 入浴・洗顔後の清潔な状態の皮膚に塗布してください。
- 皮膚への刺激が気になる場合は、30分ほど時間をあけてから塗布すると安心です。
- 保湿剤を併用する場合は、保湿後にコレクチムを塗るのが基本です。
- 1回あたりの塗布量は最大5gまでに制限されています。
■ 顔に塗る場合の注意点
- 顔や首などのデリケートな部位にも使用できます。
- 皮膚が薄い部位では、少量をやさしく塗布し、こすらずなじませてください。
- 刺激感やヒリヒリ感が出ることがありますが、通常は一過性です。
- 使用中にヘルペスの再発や赤み・発疹など異常が出た場合は医師へご相談を。
■ 維持療法(プロアクティブ的使用)について
コレクチム軟膏も、週数回の間欠的使用による維持療法が可能です。
症状の再燃予防や皮膚状態の安定化を図る目的で、医師の指示に基づいて使用量や回数を調整しましょう。
✅ コレクチム軟膏は、ステロイドに不安がある方にも使いやすく、長期管理にも適した治療薬です。
適切な用法・用量で、皮膚炎の安定コントロールを目指しましょう。
⚠ コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)の注意点と副作用
コレクチムは、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬として炎症反応を抑える新しい外用薬で、アトピー性皮膚炎の治療に用いられます。
ステロイドやタクロリムスと異なるメカニズムを持ち、副作用が比較的少ないとされていますが、安全に使用するための注意点があります。
■ 使用時の注意点
- 📌 入浴・洗顔後の清潔な皮膚に使用し、水分を拭き取ってから塗布しましょう。
- 📌 粘膜・傷口・眼の周囲には使用を避けるようにしてください。
- 📌 1回の塗布量は最大5g、1日2回までが推奨されています。
- 📌 紫外線曝露に注意し、日焼け対策を行いましょう。
- 📌 感染症や皮膚炎の再発部位には慎重に使用する必要があります。
■ 主な副作用
- 🔹 局所刺激感(かゆみ・ヒリヒリ感):まれに感じることがあります。
- 🔹 毛包炎・ニキビ様発疹:毛穴に一致した軽度の炎症がみられる場合があります。
- 🔹 ヘルペス・水痘の再活性化:免疫抑制作用による再発リスクに注意。
- 🔹 紅斑・腫脹:塗布部位が赤くなったり、腫れることがあります。
- 🔹 免疫抑制に伴う感染リスク:広範囲使用や長期使用時には注意が必要です。
※ 気になる症状が現れた際は、自己判断で中止せず、医師に相談してください。
✅ コレクチム軟膏は、顔・首などのデリケートな部位にも使いやすく、皮膚萎縮が起きにくい新しい選択肢です。
医師の指導のもと、安全に長期的な皮膚炎コントロールを目指しましょう。
❓ よくある質問(FAQ)
使用可能です。コレクチムは顔や首などのデリケートな部位にも使用が認められています。
ただし、目の粘膜や眼球には触れないように注意し、異常があれば医師に相談しましょう。
基本的に使用可能ですが、毛包炎やニキビ様発疹が副作用として起こることがあります。
気になる症状が出た場合は使用を中止し、医師にご相談ください。
コレクチムは光線過敏のリスクは比較的少ないとされていますが、皮膚の炎症を悪化させないためにも紫外線対策は推奨されます。
外出時は帽子や日焼け止めを活用してください。
妊娠中の使用は安全性が確立されていないため、医師の慎重な判断が必要です。
授乳中は乳頭部を避けて使用することで、使用が可能とされる場合もあります。必ず医師に相談してください。
基本的に同一部位への併用は避けるのが推奨されています。
症状や部位によって役割を分けて使うケースもあるため、医師の指示に従ってください。
コレクチムは長期使用による皮膚萎縮が少ないとされ、慢性的な皮膚炎の維持療法にも使用可能です。
ただし、症状が改善しても自己判断で中止・継続せず、医師の診察を受けながら使い続けましょう。
🕒 コレクチムはどのくらい長く使っていいの?
コレクチム軟膏(デルゴシチニブ)は、JAK阻害外用薬として、アトピー性皮膚炎の炎症を効果的に抑える薬です。
非ステロイド・非タクロリムス系であり、新しい選択肢として注目されています。
■ 一般的な使用期間の目安
- 症状が強いときは1日2回、改善後は1日1回または間欠的に使用することが多いです。
- 長期使用可能な設計のため、慢性炎症の維持療法にも適しています。
- ステロイドに抵抗がある方や顔・首への使用を控えたい方にも選ばれています。
※ 18歳以上に適応。12歳以上の小児にも拡大中(2023年時点)。
■ 長期使用における注意点と副作用
コレクチムは一般に副作用の少ない外用薬ですが、以下の点に注意が必要です。
- 塗布部位のかゆみ・乾燥・軽度の刺激感(一時的)
- ニキビ様皮疹や毛包炎(稀)
- 免疫抑制に関連する感染症の増加(長期使用例では報告なし)
紫外線感受性の上昇は確認されておらず、日常的な光線過敏の心配は比較的少ないです。
■ エビデンスに基づく見解
以下の研究・文献において、コレクチムの安全性と有効性が報告されています。
-
🔗
Safety and efficacy of topical JAK inhibitor delgocitinib in atopic dermatitis (PMC, 2021)
→ 長期使用での安全性が確認され、重篤な有害事象は報告されていません。 -
🔗
Delgocitinib ointment in adult atopic dermatitis: A 52-week study (PubMed)
→ 52週間にわたる継続使用でも皮膚の構造に悪影響は見られず、良好な結果が得られました。
✅ コレクチムは皮膚萎縮や光線過敏の心配が少ない次世代型の外用治療薬です。
長期使用にも適しており、安心して継続できる治療の選択肢となります。
-
🔗
NCBI論文「Delgocitinib in atopic dermatitis: safety and efficacy」
デルゴシチニブ外用薬(コレクチム)のアトピー性皮膚炎に対する効果と安全性をまとめたオープンアクセスレビュー。 -
🔗
PubMed「Long-term safety and efficacy of delgocitinib ointment」
52週にわたる成人アトピー患者への長期使用データ。皮膚萎縮・光線過敏などのリスクは報告されていません。 -
🔗
PMDA「コレクチム添付文書(医療関係者向けPDF)」
添付文書に基づく用法・用量、禁忌、副作用、臨床試験結果の詳細情報。
✅ これらの情報を通じて、JAK阻害外用薬としてのコレクチムの特性や長期使用の安全性を理解し、安心して治療に取り組む手助けになります。
💰 コレクチム軟膏の薬価一覧(2025年6月時点)
コレクチム軟膏は0.25%および0.5%の2つの濃度があり、それぞれに対して薬価(1gあたり)および包装単位での価格が異なります。以下に薬剤費を一覧でまとめました。
製品名 | 規格 | 容量 | 薬価(円/g) | 薬剤費(円) |
---|---|---|---|---|
コレクチム軟膏 | 0.25% | 5g | 137.6 | 688 |
コレクチム軟膏 | 0.5% | 5g | 143.0 | 715 |
コレクチム軟膏 | 0.5% | 10g | 143.0 | 1430 |
※ 上記の金額は保険薬価に基づいており、2025年6月時点の情報です。変更の可能性があるため、最新の薬価は PMDA などでご確認ください。
「コレクチム軟膏はステロイド・タクロリムスが使いにくい方や部位に対しての新しい選択肢です。
JAK阻害という新しい作用機序で炎症を抑え、長期使用にも耐えうる安全性が報告されています。」
当院では、ステロイドに抵抗がある方や繰り返す慢性皮膚炎の管理において、コレクチム軟膏を安全に活用しています。
刺激感が少なく、皮膚萎縮や光線過敏の心配が少ないため、顔や首などの繊細な部位にも適応
0th CLINIC 日本橋 院長
日本病理学会認定 病理専門医/総合診療、救急科での診療歴10年以上
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