タクロリムス軟膏(プロトピック)
💡 プロトピック軟膏とは?
プロトピック軟膏とは、アトピー性皮膚炎などの慢性的な皮膚炎に使用される免疫抑制外用薬です。
一般名はタクロリムスで、ステロイドを含まない抗炎症剤として位置づけられています。
ステロイド外用薬と同様に赤み・かゆみ・炎症を抑える効果がありますが、長期間でも皮膚の萎縮を起こしにくいという特長があり、顔や首など皮膚が薄い部位にも使われやすい薬です。
塗布初期にヒリヒリ感や熱感が出ることがありますが、数日で治まることが多く、継続使用が可能です。

プロトピックは年齢や皮膚の状態によって濃度が異なる2種類(0.1%、0.03%)があり、医師が適切な処方を行います。
ステロイドと併用または切り替えながら、症状を抑えつつ皮膚バリアを保つ治療が可能です。
ステロイドに抵抗感がある方や、長期の外用が必要な場合に特に有用な選択肢の一つです。
🧬 プロトピック軟膏(タクロリムス)の作用機序とは?
プロトピック軟膏(一般名:タクロリムス)は、免疫の過剰反応を抑えることで炎症を鎮める非ステロイド系の外用薬です。
ステロイドとは異なる作用点を持ち、アトピー性皮膚炎などの慢性的な炎症の治療に広く用いられています。
タクロリムスは皮膚内のT細胞(リンパ球)に直接作用し、サイトカイン(炎症性物質)の産生を抑制することで、かゆみや赤みを和らげます。
■ 皮膚内での働きの仕組み
プロトピックは、皮膚に塗布された後に表皮内の免疫細胞へ選択的に作用します。
- 🟠 T細胞(リンパ球):タクロリムスがカルシニューリンという酵素を阻害し、サイトカイン(IL-2など)の放出を抑制。
- 🔵 マスト細胞:ヒスタミンなどの放出を抑え、かゆみ反応を抑制。
- 🟣 好酸球:アレルギー炎症に関与する細胞の活性を低下させ、慢性炎症を沈静化。

ステロイドに比べて皮膚の萎縮を起こしにくく、顔や首などのデリケートな部位にも使用しやすい薬ですが、塗布初期にピリピリ感や熱感を感じることがあります。
免疫調整作用を適切に活かすために、用法・用量を守って継続的に使用することが重要です。
💊 プロトピックと他の外用薬との比較
項目 | プロトピック軟膏 | ステロイド外用薬 | コレクチム軟膏 | モイゼルト軟膏 |
---|---|---|---|---|
分類 | 免疫抑制剤(タクロリムス) | 副腎皮質ホルモン | JAK阻害剤(デルゴシチニブ) | PDE4阻害剤(ジファミラスト) |
主な適応 | アトピー性皮膚炎(中等症〜重症) | 湿疹・皮膚炎全般 | アトピー性皮膚炎(軽〜中等症) | アトピー性皮膚炎(軽症) |
使用部位 | 顔・首などデリケート部位にも可 | 全身(ただし部位によって使い分け) | 顔・体いずれも可 | 顔・体いずれも可 |
副作用 | ヒリヒリ感・熱感(初期) | 皮膚萎縮・毛細血管拡張など | 局所刺激感・ニキビ様発疹 | 刺激感・かゆみの増強 |
長期使用 | 可能(皮膚萎縮の心配なし) | 注意が必要(特に顔・陰部) | 可能 | 可能 |
その他の特徴 | ステロイドが使いづらい部位で有用 | 即効性があり炎症全般に効果 | 非ステロイドで炎症と痒みに作用 | かゆみと炎症をやさしく抑える |
🧴 プロトピック軟膏の使い方・正しい塗り方
プロトピック軟膏(タクロリムス)は、アトピー性皮膚炎の炎症やかゆみを抑える非ステロイド性の外用免疫抑制剤です。
ステロイドに抵抗がある方や、顔・首などのデリケート部位にも使用できますが、独自の注意点もあるため、正しい使用法が重要です。
■ 使用する順番(スキンケアの流れ)
- 洗浄:患部をぬるま湯で清潔にし、水気をよく拭き取ります。
- 保湿剤の使用:乾燥している部分に保湿剤を塗ります。
- プロトピック塗布:赤み・かゆみがある部位に、薄く均一に塗ります。
※ 洗顔・入浴直後の肌は吸収が高まりヒリヒリしやすいため、30分程度あけてから塗布すると安心です。
■ 使用回数と期間
基本は1日1〜2回、医師の指示に従って継続使用します。
症状が落ち着いたら、週2〜3回の維持療法に切り替えることも可能です。
※ 効果が出るまでに数日〜1週間かかることがあります。焦らず継続しましょう。
■ 塗る量と塗り方(FTU目安)
- ● 1FTUで手のひら2枚分に塗布できます。
- ● 軽くなでるように、擦り込まずに塗ります。
- ● 症状がある部位のみ、狭い範囲に局所的に使うのが基本です。
※ 顔や首などの皮膚が薄い場所は少量でも十分です。

▲ FTU(フィンガーチップユニット)の目安
■ 注意点・副作用に注意
- ⚠ 塗布初期にヒリヒリ感・熱感を伴うことがありますが、通常数日で軽減します。
- ⚠ 長期使用しても皮膚萎縮は起きにくいですが、紫外線対策は必須です。
- 💡 にきび・酒さ様皮膚炎が出た場合は使用を中止し、医師に相談しましょう。
✅ プロトピック軟膏は、ステロイドが使いにくい部位や長期的な炎症コントロールに有効な選択肢です。
正しく使って、快適な肌状態を保ちましょう。
✋ FTU(1回量の目安)とは?
FTU(フィンガーチップユニット)とは、チューブから絞り出した軟膏が大人の人差し指の第一関節分に相当する量のことです。
およそ0.5g(5mm径ノズル使用時)で、手のひら2枚分の面積に塗るのが適量とされています。

▲ 人差し指の第一関節までチューブを押し出した長さが1FTU
部位 | FTUの目安量 |
---|---|
顔全体 | 約1 FTU(手のひら2枚分) |
片腕全体 | 約3 FTU |
片脚全体 | 約6 FTU |
背中+お尻 | 約6 FTU |
(提供:マルホ株式会社|外部サイトが開きます)
✅ ステロイドは少なすぎても効果が不十分になり、多すぎれば副作用のリスクがあります。
適切なFTUを守って、安全に使用しましょう。
🧴 プロトピック軟膏の使用方法と注意点
■ 使用回数の目安(1日に何回塗る?)
基本は1日1〜2回の塗布が推奨されます。
症状が強い場合は1日2回、改善してきたら1日1回、または週数回の維持療法へ切り替えます。
※ 医師の指示に従って使用してください。
■ どのくらいの期間使い続ける?
プロトピックは長期使用が可能な外用薬ですが、継続使用の可否は医師と相談の上決定しましょう。
初期にはヒリヒリ感が出ることがありますが、多くは数日で軽減します。
※ 症状が落ち着いても自己中止せず、計画的に減量・終了しましょう。
■ 塗るタイミングとポイント
- 入浴や洗顔後、30分ほど時間をあけてから塗布すると刺激を感じにくくなります。
- 清潔な皮膚に、症状がある部分のみに塗るのが原則です。
- 保湿剤と併用する場合は保湿後にプロトピックを塗るのが基本です。
■ 顔に塗る場合の注意点
- 顔や首などのデリケートな部位にも使用可能です(成人・小児用濃度あり)。
- 使用初期に刺激感(ヒリヒリ・熱感)が出やすいため、塗布タイミングに注意しましょう。
- 目元・口元にはごく薄く塗り、様子を見ながら調整してください。
- 赤み・ニキビ様変化・酒さ様皮膚炎が出た場合は医師へ相談しましょう。
■ プロアクティブ療法とは?
プロトピックもステロイド同様に、週2〜3回の間欠的使用による「プロアクティブ療法」が行われます。
再発を防ぎ、皮膚炎の長期的な安定化が期待されます。
必ず医師の指示に基づいて維持療法の継続・終了を判断しましょう。
✅ プロトピック軟膏は、ステロイドが使いにくい部位や慢性皮膚炎の長期管理に有効な治療薬です。
正しい使用方法と継続管理で、より良い皮膚の状態を目指しましょう。
⚠ プロトピック(タクロリムス軟膏)の注意点と副作用
プロトピックは、免疫反応を抑える非ステロイド外用薬として、特にアトピー性皮膚炎などの炎症に効果があります。
ステロイドとは異なる作用機序を持ちますが、特有の注意点や副作用もあるため、使用前に確認しましょう。
■ 使用時の注意点
- 📌 洗顔・洗浄後に塗布し、皮膚が乾いた状態で使用してください。
- 📌 日光や紫外線を避けるようにしてください。帽子や日焼け止めの併用を推奨します。
- 📌 目の周囲、粘膜、傷口への使用は避けるようにしましょう。
- 📌 一時的な刺激感(ヒリヒリ、熱感)はよくある反応で、通常数日で軽快します。
- 📌 医師の指示なしに長期・広範囲での使用は避けてください。
■ 主な副作用
- 🔹 刺激感(灼熱感・かゆみ):使用初期によく見られ、数日で軽減します。
- 🔹 紅斑(赤み):塗布部位が赤くなることがあります。
- 🔹 毛包炎(毛穴の炎症):細菌感染による小さなニキビ様の腫れが生じることがあります。
- 🔹 ヘルペス・水痘の悪化:免疫抑制作用により再発リスクが高まることがあります。
- 🔹 光線過敏:紫外線への感受性が上がるため、日焼けに注意が必要です。
※ 上記の副作用が現れた場合も、使用を自己判断で中止せず、医師にご相談ください。
✅ プロトピックは、ステロイドでは対応しにくい部位や慢性症状にも有効です。
適切な使用と医師の指導により、安全かつ効果的に炎症を抑える治療が可能です。
💡 プロトピックの「ひりひり感」と「リンパ腫リスク」について
■ 使用初期の“ひりひり感”の原因と対応
プロトピックを塗布した際に感じる灼熱感(ひりひり・ピリピリ感)は、皮膚バリアの弱った部位に有効成分(タクロリムス)が作用することで一時的に生じるものです。
- 🔹 使用初期に多く見られるが、数日〜1週間で軽減するのが一般的です。
- 🔹 冷蔵庫で冷やして塗ることで刺激を抑えやすくなります。
- 🔹 入浴直後は避ける(血行が良く、刺激が強く出るため)
- 🔹 保湿剤を先に塗ることで、刺激を緩和できる場合があります。
※ 刺激が強すぎる場合は使用を中止せず、医師に相談しましょう。
■ プロトピックとリンパ腫リスクの関係
一部の報告により、プロトピック(タクロリムス)と皮膚がんやリンパ腫との関連が懸念されましたが、現時点で明確な因果関係は証明されていません。
- 🔸 FDA(米国食品医薬品局)は、2006年にブラックボックス警告を追加
- 🔸 しかし、その後の研究では通常使用でのリスクは非常に低いと報告されています
- 🔸 日本皮膚科学会や厚生労働省も、正しく使用すれば安全性に問題はないとしています
※ 長期・広範囲での使用は、医師の管理下で行うことが推奨されます。
✅ プロトピックは、ステロイドに代わる安全な選択肢として広く使用されています。
医師の指導のもと、正しい使用方法を守って治療を進めましょう。
❓ よくある質問(FAQ)
使用可能ですが、非常に皮膚が薄く吸収率が高い部位のため、医師の指導が必要です。
ごく少量を短期間使用し、目に入らないよう十分に注意してください。
誤って目に入った場合はすぐに洗い流し、異常があれば眼科や皮膚科を受診してください。
通常の外用では、結膜には使用しません。
プロトピックはニキビや毛穴の炎症を悪化させる可能性があるため、ニキビのある部位には使用を避けるのが基本です。
アトピー肌とニキビが混在するケースでは、医師による適切な治療の組み合わせが必要です。
プロトピック使用中は光線過敏(ひかりに敏感)になることがあります。
外出時は日焼け止め・帽子・長袖などで紫外線対策を行いましょう。
屋内でも紫外線に注意するに越したことはありません。
一般的に妊娠中の使用は慎重にとされ、医師の判断が必須です。
授乳中の外用は、乳房への塗布を避ければ使用可能とされています。詳しくは医師にご相談ください。
状況によっては併用可能です。急性期にはステロイドで炎症を抑え、その後プロトピックへ移行する「ステロイド→プロトピック戦略」もあります。
必ず医師の処方・指示に従ってください。
🕒 プロトピックはどのくらい長く使っていいの?
プロトピック軟膏(タクロリムス)は、アトピー性皮膚炎などに使用される非ステロイド系の免疫抑制外用薬です。
長期にわたって使用できる薬ですが、使い方には一定のルールがあります。
■ 一般的な使用期間の目安
- 症状が強い時期には、1日2回の使用を数週間続けることがあります。
- 症状が落ち着いた後は、週数回の“プロアクティブ療法”で再発予防が可能です。
- 顔や首、目の周りなど敏感な部位にも使用可能ですが、医師の指示のもとで慎重に行います。
※長期使用でもステロイドと比べて皮膚萎縮などのリスクは少ないとされています。
■ 長期使用における注意点と副作用
プロトピックは基本的に長期間の使用が可能とされますが、以下のような副作用に注意が必要です。
- 塗布初期のヒリヒリ感・灼熱感(通常は数日で軽快)
- 毛包炎(ニキビ様の腫れ)
- ウイルス感染の再活性化(ヘルペス、水痘など)
- 光線過敏(紫外線による刺激反応)
日焼け止めや保湿剤との併用でこれらを軽減することが可能です。
また、ステロイドと異なり皮膚萎縮の心配が少ないため、顔や首への使用にも適しています。
■ エビデンスに基づく見解
以下の信頼性ある資料では、プロトピックの長期使用に関する安全性が示されています。
-
🔗
Safety of topical tacrolimus: a review (NCBI, 2018)
→ 長期使用における重篤な副作用の発生率は低く、定期的なフォローのもとで安全に継続可能とされています。 -
🔗
American Academy of Dermatology: Tacrolimus long-term use
→ 小児・成人ともに、安全な選択肢として位置づけられています。
✅ プロトピックはステロイドに不安がある方にも有効な治療薬です。
正しい使用方法と医師のサポートにより、長期間でも安全に治療を続けることができます。
💰 プロトピック・タクロリムス軟膏の薬価一覧(1gあたり)
製品名 | 英語名 | 製造元 | 薬価コード | 薬価(円/1g) |
---|---|---|---|---|
プロトピック軟膏0.1% | Protopic Ointment | マルホ | 2699709M1028 | 58.4円 |
タクロリムス軟膏0.1%「PP」(後発品) | Tacrolimus Ointment 0.1% | サンファーマ | 2699709M1044 | 35.2円 |
プロトピック軟膏0.03%小児用 | Protopic Ointment for Pediatric | マルホ | 2699709M2024 | 72.6円 |
※ 上記の薬価は、保険診療時の1gあたりの基準価格です。
実際の窓口負担額は、患者様の保険負担割合(例:3割負担)によって異なります。
🔗 プロトピック(タクロリムス軟膏)に関する信頼できる外部リンク集
プロトピックをより正しく、安全に使っていただくために、以下の情報源をご紹介します。
医療従事者向けのガイドラインから、一般の方にも理解しやすい内容まで網羅しています。
-
🔗
PMDA「プロトピック軟膏 添付文書」
日本の医薬品医療機器総合機構による正式な使用上の注意・禁忌・副作用等を網羅。 -
🔗
米国FDA「プロトピック安全性情報」
ブラックボックス警告の背景、リンパ腫との関連リスクに関する安全性レビュー。 -
🔗
AAD(米国皮膚科学会)「長期使用に関する見解」
タクロリムス・ピメクロリムスの長期使用における有効性と安全性についての見解。 -
🔗
NCBI論文「Safety of topical tacrolimus」
医学的レビューに基づく、副作用・光線過敏・がんリスクなどの網羅的な評価。 -
🔗
UpToDate「タクロリムスとピメクロリムスの臨床使用」
臨床現場での使い分け・プロアクティブ療法・併用療法についての専門的解説。
✅ これらの情報は、医師の説明と合わせて読むことで理解が深まり、安心して治療に取り組む手助けになります。
👨⚕️ 医師からのコメント・監修

「プロトピックはステロイドでは対処が難しい部位や慢性症状に有効な薬です。
正しく使えば長期的にも比較的安全に使用できますが、紫外線対策や刺激感などへの注意が必要です。」
当院では、ステロイドが不適な部位や繰り返す皮膚炎に対して、プロトピックを適切に使用しています。
使用初期のヒリヒリ感や紫外線の影響についても、患者さまに合わせて使用方法をご案内しております。
0th CLINIC 日本橋 院長
日本病理学会認定 病理専門医/総合診療、救急科での診療歴10年以上
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