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PSAが高いと言われた:直ちに生検?フォロー?

PSAが高いと言われた:直ちに生検?フォロー?|日本橋の泌尿器科コラム|0th CLINIC

PSAが高いと言われた:直ちに生検?フォロー?

健診や人間ドックでPSA(前立腺特異抗原)が高いと言われても、直ちに“前立腺がん=即生検”ではありません
再検の条件づくり → 再検 → MRI(必要時) → 生検の要否判断という順に、無駄を省きつつ見落としも避けることが大切です。

PSA高値=がんとは限らない:まず知るべき基礎

PSAは前立腺由来のたんぱくで、前立腺肥大症炎症(前立腺炎)、排尿トラブル、射精直後強いサドル圧(自転車)などでも一過性に上昇します。
「がんの可能性」評価に使えますが、単回の絶対値だけで結論は出しません。年齢、前立腺体積、既往、薬剤(5α還元酵素阻害薬など)を合わせて解釈します。

  • 赤旗症状:骨痛・体重減少・尿閉などがあれば早急に受診
  • 排尿症状が強い場合はまずBPH/炎症の評価を(泌尿器科トップ
  • 疾患の解説は 前立腺癌 に詳細、治療は個別最適化します

当日の正解:再検条件づくりと再検タイミング

再検までの整え方(例)
  • 48時間の禁欲(射精・激しい自転車走行を控える)
  • 発熱・排尿痛など炎症があれば治療後2〜6週で再検
  • 採血は同時間帯・同一ラボが望ましい(ばらつき低減)
  • 内服(5α還元酵素阻害薬)中はPSAが約半分に見えることがあるため補正が必要

再検でも高値・上昇傾向が続く場合、年齢・併存疾患・体積・家族歴を踏まえ、free/total比PSA密度、必要に応じてmpMRIで層別化します。

free/total・PSA密度・速度・体積の見方

  • free/total比:比が低いほど悪性の可能性が相対的に高いとされます(カットオフは施設差あり)。
  • PSA密度(PSAD):PSA ÷ 前立腺体積。体積が大きいとPSAは上がりやすい。密度で補正して判断。
  • PSA速度(PSAV):年間の上昇量。一時的上昇持続上昇の区別に有用。
  • 家族歴・人種・年齢:総合リスク評価に含めます。

MRIはいつ有効?PI-RADSと標的生検

再検後も基準超過や上昇傾向が続けば、マルチパラメトリックMRI(mpMRI)で要精査部位を探索します。
画像評価(PI-RADS)で3以上なら、標的生検の適応を具体的に検討します。

“今すぐ生検”が向くケース/待てるケース

生検を積極的に検討
  • PSAが大きく超過・持続上昇
  • free/totalが低い、PSA密度が高い
  • mpMRIでPI-RADS 3以上の病変
  • 家族歴・若年発症リスクなど背景因子
短期フォローが妥当
  • 再検で低下・安定、炎症所見の改善
  • PSA密度が低く、MRIで明らかな病変なし
  • 高齢・併存疾患で侵襲の利益が小さい

診断がついた後の治療選択は、前立腺癌 のページへ(積極的監視・手術・放射線など)。

フォローアップ:間隔と終了の目安

  • 3〜6か月間隔を基本にPSA・症状をチェック
  • 変動が続く場合は同一条件で再検/必要時MRIを追加
  • 安定が続き、リスクが低ければ間隔を延長

今日からできる「PSA高値」時の3ステップ

  1. 条件を整える:48時間は禁欲・強いサドル圧を避ける/発熱・排尿痛は先に治療
  2. 同条件で再検:同一ラボ・同時間帯。free/total比も同時に相談
  3. 層別化:必要時に超音波で体積→PSA密度→mpMRI→生検の要否を判断

よくある質問(短答)

PSAが4を少し超えただけ。様子見でも良い?
再検で低下・安定するケースは多いです。free/totalやPSA密度、MRIで層別化し、総合判断します。
抗菌薬で下がったら安心?
炎症が改善して下がることはありますが、「がんがない」という証明にはなりません。全体の文脈で評価します。
抗血栓薬内服中。生検は危険?
出血リスクは上がりますが、方法・薬剤によっては調整のうえ実施可能です。主治医と連携し安全策をとります。

受診〜検査〜結果説明の流れ(最短)

  1. 問診・直近の採血票確認(健診結果持参)
  2. 必要に応じて採血の再検・前立腺エコー(体積推定)
  3. 再検で高値ならmpMRIを連携手配 → 標的生検の要否判断
  4. 結果説明・治療/フォロー計画の合意形成

※当日できる検査:採血・尿検査・前立腺エコー(血液検査尿検査エコー)。CT/MRIは連携施設で調整(MRI)。

医師からのコメント・方針

PSAは「一度高かった=すぐ生検」ではありません。条件を整えた再検と、体積・密度・free/total・MRIを組み合わせ、必要な方だけに適切な生検を行うのが当院の基本方針です。
過剰検査を避けつつ、見逃しも避ける。そのための段階的な評価を一緒に進めましょう。

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※本コラムは一般的解説です。診断・治療は個別の症状・検査結果により異なります。気になる症状があれば受診のうえご相談ください。

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