コラム
HbA1cがすぐ下がらない理由|“平均”と“乱高下”を専門医が解説
HbA1cがすぐ下がらない理由
— “平均”と“乱高下”の違いを専門医が解説
HbA1cは過去1〜2か月の平均血糖。
「がんばっているのに下がらない…」ときは、“乱高下(変動)”が隠れている可能性があります。
本稿は平均(HbA1c)では見えない血糖の動きを“見える化”し、来院後に実行する手順を示します。
1. なぜHbA1cは“すぐ”下がらない?(平均の性質)
- HbA1cは“過去1〜2か月の平均血糖”の移動平均:直近の改善が徐々に反映されます。1〜2週間の努力では大きく動かないのが普通です。
- 赤血球寿命(約120日)の影響:古い赤血球も混じるため、反映には時間差が生じます。
- “平均は良くても”食後だけ高い…:空腹時が良くても、食後高血糖が強いとHbA1cは下がりにくいことがあります。
2. 平均だけでは見えない“乱高下” — Time in Range(TIR)
“同じHbA1c”でも、毎日が安定(緩やかな波)の人と、乱高下(大きな波)の人がいます。改善の鍵はTIR(目標範囲内時間)を増やすこと。
指標 | 意味 | 目安(例) | 対策の方向性 |
---|---|---|---|
TIR(Time in Range) | 目標範囲(例:70–180mg/dL)内にいた割合 | 70%以上を目標(個別化) | 食後ピークを抑える/低血糖を避ける |
TBR(低血糖時間) | 低血糖域(例:<70mg/dL)にいた割合 | できるだけ低く(重症はゼロ目標) | SU/インスリンの調整、補食ルール |
TAR(高血糖時間) | 高血糖域(例:>180mg/dL)にいた割合 | できるだけ低く | 食事配分・運動・薬物の最適化 |
※本稿は“変動の考え方”に特化。CGMの装着・読み方・指導は来院後に個別化します。
3. HbA1cが“当てはまらない”ことがあるケース
以下ではHbA1cが実態より高く/低く見えることがあります。来院時に検査設計を個別化します。
- 鉄欠乏性貧血/溶血・出血の直後(赤血球の“質と寿命”が変わる)
- 腎不全・透析/妊娠/ステロイド使用中
- ヘモグロビン異常症(検査法によってズレ得る)
必要に応じてGA(グリコアルブミン)や経口ブドウ糖負荷試験などで補完します。
4. 今日からできる“下げるための実践プラン”
- 食後ピーク対策:主食量の見直し、順番食(野菜→たんぱく→主食)、ゆっくり食べる。
- 運動は“少量×高頻度”:食後10分歩行/平日合計30〜40分、週末にまとめすぎない。
- 低血糖ゼロ方針:SU/インスリン併用中は補食ルールと用量調整を確認。
- 薬の“地図”を知る:メトホルミン→SGLT2→GLP-1…といった分岐の考え方を理解(詳細は薬ページへ)。
- フォローの頻度:最初の3か月は2〜4週ごとに調整→安定したら間隔延長。
日本橋・東京駅・茅場町から通院しやすい立地です。まずは適切な検査と、無理のない計画づくりから。
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黒田 揮志夫(Kishio Kuroda, MD, PhD)|0th CLINIC 日本橋 院長(病理学/総合診療)
糖尿病・内分泌代謝の連携診療を推進。患者さんの生活導線に合わせ、過剰検査を避けつつ“効く施策”に集中する方針です。
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5. よくある質問(FAQ)
Q1. どれくらいの期間でHbA1cは下がりますか?
A. 多くは1〜3か月の取り組みで“確かな変化”が見え始めます。短期の努力は遅れて反映されます。
Q2. 空腹時は良いのにHbA1cが下がらないのは?
A. 食後高血糖(乱高下)が原因のことがあります。食事配分・食後の短い歩行・薬剤調整でTIR改善を目指します。
Q3. 貧血や腎機能でHbA1cはズレますか?
A. はい。貧血や透析、妊娠、ヘモグロビン異常症ではズレる場合があり、代替指標(GAなど)を併用します。
Q4. 低血糖を避けながら下げるコツは?
A. SU/インスリンの用量調整や補食ルールの確認が大切です。独断の増減は避けましょう。