イソトレチノインの副作用と対処|乾燥・鼻出血・眼乾燥・関節痛・肝機能・脂質
副作用の“起こり方”と“上手な対処”。中止せずに乗り切るコツ
乾燥・口唇炎・鼻出血・眼乾燥・関節/筋肉痛・肝機能/脂質変動、まれな合併症まで。
当院のモニタリングとセルフケア手順を、わかりやすくまとめました。
要点3行:
① 多くは予測可能で用量依存。保湿・日焼け対策で軽減
② 初回2–4週→以降8週ごとに検査/問診で安全確認
③ 強い頭痛/視覚異常/重度筋痛・腹痛は受診・連絡
よくある副作用とセルフケア
乾燥(口唇・皮膚)/落屑・そう痒
- 最も頻度が高い副作用。保湿は“重ね塗り”+低刺激(ワセリン/セラミド)
- 洗顔は低刺激・短時間、ぬるま湯。入浴後すぐ保湿
- メイクはノンコメドジェニックを選択
鼻出血・鼻の乾燥
- 生理食塩水スプレー+鼻孔内ワセリン
- 強いかさぶた剥がしは避ける/加湿器の併用
眼乾燥・刺激感(マイボーム腺機能低下)
- 人工涙液で点眼、コンタクト装用時間の短縮や一時中止
- まぶた周囲の保湿/症状が強ければ眼科相談
関節・筋肉痛
- 一過性が多い。運動強度を一時的に下げる
- 改善乏しければ受診。重度やCK上昇を疑う症状は早期評価
光線過敏/日焼けしやすい
- SPF30+を毎日。屋外は帽子・サングラス、2–3時間ごとに塗り直し
その他(まれ)
- 皮膚感染、爪周囲炎、化膿性肉芽腫、一時的脱毛、爪脆弱化 など
- 初期悪化(ニキビの一過性増悪)。重症化は別途評価
検査モニタリング(ALT/脂質/妊娠検査ほか)
当院の基本スケジュール
タイミング | 内容 |
---|---|
開始前(~1か月以内) | ALT・トリグリセリド(TG)/妊娠検査(該当者は2回)/内服・既往の確認 |
2–4週 | 症状確認(乾燥・頭痛・視覚・腹痛・筋痛 等)/用量調整 |
ピーク用量後(目安:開始2か月) | ALT・TGを再検。正常なら以後は原則不要(増量・症状出現時は都度) |
毎月(妊娠可能性あり) | 妊娠検査+カウンセリング(方針) |
異常値が出た場合の目安
項目 | 目安 | 対応 |
---|---|---|
ALT上昇 | 基準上限×3超 | 中止を含め医師判断で対応 |
TG 300–500 mg/dL | 軽~中等度 | 生活改善・経過観察(用量は原則継続) |
TG 500–800 mg/dL | 中等度 | 減量±脂質低下薬の追加を検討 |
TG ≥800 mg/dL | 高リスク | 膵炎回避のため中止を検討・精査 |
※新規症状(腹痛など)、新規内服/サプリ開始、増量時は追加検査を行うことがあります。
精神・腸の安全性(うつ/自殺・炎症性腸疾患)
うつ・自殺との関連
研究間で結論は一致せず、因果関係は確立していません。一方で、重症ニキビそのものが心理的苦痛を伴うことも知られています。私たちは、関連の可能性を説明し、気分変化・不眠・意欲低下・自殺念慮の兆候に注意してフォローします。
炎症性腸疾患(IBD)
観察研究では相反する結果がありますが、総合すると一律のリスク増加は示されていません。12–19歳など一部で信号が報告された解析もありますが、絶対リスクは小さいとされます。腹痛・血便など新規症状はご相談ください。
妊娠・避妊(最重要)
イソトレチノインは催奇形性があります。妊娠可能性のある方は、開始前・毎月・終了後の一定期間の妊娠検査と、確実な避妊(推奨:2法併用)を徹底します。男性はパートナー配慮に関する説明を行います。
同意・避妊・検査・中止基準 に詳細を掲載しています。
献血と手術予定
- 治療中~終了後一定期間は献血を控える
- 全身麻酔・眼科などの術前は、処方歴を必ず申告
禁忌・相互作用・アルコール
禁忌・注意
- 妊娠中/妊娠予定(治療中~終了後一定期間)
- 成分過敏症、重度の大豆アレルギー(カプセルに大豆油)
- 12歳未満は安全性・有効性確立せず
相互作用
- テトラサイクリン系:偽性脳圧亢進のリスク → 併用回避
- ビタミンA/サプリ:副作用増強 → 併用回避
- 新規薬・サプリ開始時は必ず相談
アルコール
- 禁忌ではないが、肝機能・TG上昇の一因。過度摂取は回避
皮膚処置(レーザー/ピーリング等)
近年のレビューでは、表在的ケミカルピーリング、表在的な皮膚剥離、皮膚手術、レーザー脱毛、フラクショナル(アブレイティブ/非アブレイティブ)について、画一的に延期を推奨する十分な根拠は乏しいとされます。一方、機械的皮膚剥離、全顔の深い剥離、完全切除レーザーはリスクに配慮して回避/延期を検討します。
処置内容・ダウンタイム許容度で判断が変わります。ピーリングや瘢痕治療は個別設計でご提案します。
受診・連絡の目安
- 強い頭痛+視覚異常、吐き気:偽性脳圧亢進を鑑別
- 高度の腹痛・嘔吐:膵炎などを鑑別(TG高値)
- 重度の筋肉痛・赤褐色尿:横紋筋融解を鑑別
- 激しい抑うつ気分・自殺念慮、新規の血便・下痢が続く
- 視力低下、夜間視力の変化
上記は一例です。迷ったらまずはLINEかお電話でご相談ください。
セルフケアで軽快することが多い副作用でも、我慢しすぎず早めに共有いただくと、用量調整やケア提案で中止せずに続けられます。
FAQ(よくある質問)
日焼け止めは何を選べば良い?
口唇のひび割れが辛い
コンタクトは装用できる?
飲酒は絶対だめ?
運動は休むべき?
いつ妊娠を計画できますか?
👨⚕️ 医師からのコメント・監修

「イソトレチノイン治療は、重症ニキビに対する非常に効果的な選択肢です。
特に皮脂腺を根本から抑制することで、再発しにくい肌質を目指すことが可能です。
避妊管理など注意点もありますが、正しい知識と医師の管理下で、安全かつ効果的に使用できます。」
当院では、イソトレチノインを使用したニキビ治療を導入しています。
内服量や期間は体重や症状に合わせて調整し、副作用や採血も管理しながら進めます。
ご不安がある方にも、事前にしっかりご説明いたしますのでご安心ください。
0th CLINIC 日本橋 院長
日本病理学会認定 病理専門医/総合診療・救急医療での診療歴10年以上
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