フロセミド(ラシックス)
💊 フロセミドとは(基本情報)

▲ フロセミド錠(Lasix®)

▲ フロセミド注射剤(20mg/2mL等)
フロセミドは、ループ利尿薬(高力価利尿薬)に分類される薬剤で、心不全・腎不全・肝硬変に伴う浮腫や、高血圧緊急症などで使用されます。
ヘンレ係蹄上行脚におけるNa⁺-K⁺-2Cl⁻共輸送体を阻害することで、強力な利尿作用を発揮し、短時間で体液量を減少させる効果があります。
項目 | 内容 |
---|---|
一般名 | フロセミド(Furosemide) |
剤形 | 錠剤(20mg, 40mg)、注射剤(静注・筋注) |
適応症 | 浮腫(心性、腎性、肝性)、高血圧緊急症 |
保険適用 | ○(保険診療で処方可能) |
特徴 |
● 強力な利尿作用により、短期間で体液を減らせる ● 注射剤による即効性の治療も可能 ● 電解質異常(特に低K⁺・Na⁺)に注意が必要 |
● 投与量は、通常成人で1回20〜40mg(内服)から開始し、状態に応じて調整されます。
● 注射薬は静脈内または筋肉内に投与され、急性期の浮腫コントロールに用いられます。
● 主な副作用には、脱水、低カリウム血症、低ナトリウム血症、腎機能悪化、めまいなどがあります。
● 長期投与では、高尿酸血症や難聴にも注意が必要です。
● 食塩制限や体重管理、他の降圧薬や利尿薬との併用を行うことで、より安全で効果的な治療が可能です。
💊 フロセミドの適応疾患と使い分け
フロセミドは、ループ利尿薬(高力価利尿薬)に分類され、腎臓のヘンレ係蹄上行脚に作用して強力な利尿作用を発揮する薬剤です。
心不全や腎疾患などでの浮腫軽減、急性の体液過剰の改善、高血圧緊急症への即効性治療などに幅広く用いられます。
✅ 主な適応疾患
疾患名 | 解説 |
---|---|
慢性心不全 | 体液貯留・肺うっ血の改善を目的に、急性増悪期や慢性管理の一環で使用。 |
腎不全・ネフローゼ症候群 | 浮腫・体重増加への対応。高用量が必要になることもあります。 |
肝硬変に伴う腹水 | スピロノラクトン などとの併用で、腹水や浮腫のコントロールに用いられます。 |
高血圧緊急症 | 注射剤により急速に血圧と循環血液量をコントロール。 |
✅ 他の利尿薬・降圧薬との使い分け
分類 | 主な薬剤 | 使い分けのポイント |
---|---|---|
サイアザイド系利尿薬 | トリクロルメチアジド、 インダパミド | 軽度の高血圧や浮腫に使用。フロセミドはより強力な利尿が必要な場合に選択。 |
カリウム保持性利尿薬 | スピロノラクトン、 エプレレノン | K⁺保持のためにフロセミドと併用されることが多い。 |
トルバプタン | バソプレシンV2受容体拮抗薬 | 水貯留が主体の症例で使用。フロセミドと併用で体液管理を最適化。 |
ACE阻害薬・ARB | エナラプリル、 バルサルタン | 心不全・高血圧に併用し、前後負荷・RAAS抑制を組み合わせた治療が可能。 |
✅ フロセミドが向いている患者
- 体重が急に増加し、浮腫・むくみが顕著な方
- 心不全の悪化により肺うっ血や呼吸困難を起こしている方
- ネフローゼや肝硬変に伴う体液貯留がある方
- 高血圧緊急症により早急な血圧コントロールが必要な方
✅ フロセミドは、急性・慢性を問わず浮腫の第一選択薬として、心不全・腎疾患・肝疾患の現場で広く用いられています。
適切な用量調整とモニタリングにより、安全かつ確実な体液管理が可能になります。
💊 利尿薬の比較一覧(種類・特徴・使い分け)
分類 | 代表薬剤 | 特徴・使い方 |
---|---|---|
ループ利尿薬 |
フロセミド(Lasix) アゾセミド |
・強力な利尿作用(ヘンレ係蹄上行脚) ・急性心不全、肺うっ血、腎不全などで使用 ・低K⁺血症・脱水に注意、体重モニタリングが重要 |
サイアザイド系 |
トリクロルメチアジド インダパミド |
・中等度の利尿作用(遠位尿細管) ・高血圧の第一選択肢として使用されることも多い ・高尿酸血症・耐糖能異常に注意 |
カリウム保持性利尿薬 |
スピロノラクトン エプレレノン |
・アルドステロン拮抗作用あり(集合管) ・K⁺保持のため、ループ系との併用が多い ・高K⁺血症・女性化乳房(スピロノラクトン)に注意 |
その他 | トルバプタン(V2受容体拮抗薬) |
・水利尿作用を持ち、Na⁺は排泄しにくい ・心不全・肝硬変の難治性腹水に使用 ・血清Na⁺上昇や口渇、尿量の急増に注意 |
※ 利尿薬の選択は、基礎疾患や電解質バランス、腎機能などを総合的に評価して決定されます。自己判断せず、医師の指導のもとで使用してください。
💊 フロセミド(Lasix)の特徴まとめ
■ 効果・効能
フロセミドは、ループ利尿薬に分類され、心不全、腎不全、肝硬変、ネフローゼ症候群などによる浮腫や、高血圧緊急症の治療に使用されます。
ヘンレ係蹄上行脚にあるNa⁺-K⁺-2Cl⁻共輸送体を阻害し、短時間で強力な利尿作用を発揮します。
■ おすすめの方
- ✔️ 心不全で体液貯留(むくみ・息苦しさ)がある方
- ✔️ 急な体重増加・浮腫の悪化がみられる方
- ✔️ 腎疾患・肝疾患で水分管理が必要な方
- ✔️ 血圧が極端に上がってしまった方(高血圧緊急症)
■ 注意が必要な方
- ⚠️ 腎機能が低下している方(利尿効果や副作用への注意)
- ⚠️ 電解質異常(低K⁺、低Na⁺)がある方
- ⚠️ 糖尿病や痛風の既往がある方(血糖・尿酸上昇の可能性)
- ⚠️ 高齢者・脱水傾向のある方(低血圧やふらつきに注意)
- ⚠️ 妊娠・授乳中の方は必ず医師に相談
■ 服用できない方(禁忌)
- ❌ フロセミドに対する過敏症の既往がある方
- ❌ 無尿の方(腎不全で尿が全く出ない状態)
- ❌ 電解質の著しい異常(特に低Na⁺、低K⁺)がある方
- ❌ 重度の肝性昏睡のある方
■ 主な副作用
比較的よくある副作用:
- ・頻尿、脱水、めまい、倦怠感
- ・低カリウム血症、低ナトリウム血症
- ・耳鳴りや聴力低下(特に急速静注時)
重大な副作用(まれですが注意が必要):
- ・重度の電解質異常による不整脈
- ・腎機能障害・急性腎不全
- ・肝性脳症、ショック、アナフィラキシー
- ・横紋筋融解症、高尿酸血症による痛風発作
■ 他のお薬との併用について
- ・カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトンなど)と併用し、低K⁺を防ぐことがあります。
- ・ACE阻害薬・ARBと併用し、心不全の治療に活用されます。
- ・NSAIDs(痛み止め)との併用で腎機能悪化に注意が必要です。
- ・糖尿病薬や血糖降下薬の効果に影響する場合があるため、血糖値の観察が必要です。
■ 食事・生活上の注意
- ・水分・塩分の摂取バランスを調整(自己判断せず医師と相談)
- ・カリウムを含む食品(バナナ、芋類、ほうれん草など)を取り入れる場合は医師と相談
- ・体重を毎日測定し、急激な増減に注意
- ・起立時のふらつきやめまいに注意して、ゆっくり動く
✅ 体重が急激に増えた/減った、尿が出にくい、ふらつきや意識低下などの症状がある場合は、すぐに医師に相談してください。
フロセミドは適切に使えば非常に効果的な利尿薬ですが、定期的な血液検査とモニタリングが安全な治療のカギです。
■ フロセミドのエビデンスと推奨事項
- ● 急性・慢性心不全、腎疾患、肝硬変による浮腫の第一選択薬として長年使用され、安全性と有効性が確立されています。
- ● 利尿による体液量コントロールにより、うっ血症状の改善・心不全増悪の予防・入院回避に貢献します。
- ● 欧米・日本のガイドラインで標準治療薬として明記されており、注射剤による急速な利尿にも対応可能です。
■ 代表的なエビデンスと出典
- ・ESC Guidelines 2021(心不全):European Heart Journal, 2021; 42(36): 3599–3726
- ・日本循環器学会ガイドライン(2021):慢性心不全治療ガイドライン(抜粋PDF)
- ・UpToDate解説ページ:Furosemide – Drug Information (UpToDate)
- ・PMDA医薬品情報:フロセミド錠 インタビューフォーム(PMDA)
✅ フロセミドはうっ血性心不全や体液貯留の標準治療薬として長年にわたり使用されており、利尿効果と即効性に優れています。
適切な用量管理とモニタリングによって、副作用を最小限にしつつ効果的な体液コントロールが可能です。
🗣️ フロセミドを使用した患者さんの声
心不全による足のむくみがつらくて処方されました。飲み始めて数時間で尿が出て、むくみが引いて楽に動けるようになりました。
※これはあくまで個人の感想であり、効果には個人差があります。
急に体重が増えたときに処方され、しっかり利尿が効いて入院せずにコントロールできました。
※これはあくまで個人の感想であり、効果には個人差があります。
❓ よくある質問(FAQ)
通常は朝1回または朝・夕の2回に分けて服用します。
利尿作用が強いため、就寝前の服用は避けるのが一般的です。
思い出した時点で1回分を服用してください。
ただし、次の服用時間が近い場合はスキップし、2回分をまとめて飲まないようにしてください。
主な副作用には脱水、低カリウム血症、低ナトリウム血症、めまいなどがあります。
定期的な血液検査で電解質バランスを確認しながら使用します。
はい。ただし腎機能に影響を与える薬(NSAIDsなど)との併用は注意が必要です。
また、カリウム保持性利尿薬や降圧薬との併用時は、電解質異常や低血圧に注意します。
原則として妊娠中・授乳中の使用は避けるべきとされています。
必要な場合は医師と十分に相談してください。
はい。フロセミドは慢性的な浮腫や心不全管理において継続投与されることが多い薬です。
定期的な検査と医師の診察を受けながら使用することが大切です。
💰 フロセミド(Lasix/利尿剤)の薬価と自己負担について
フロセミドはループ利尿薬に分類され、心不全、浮腫、高血圧などの治療に用いられます。急速かつ強力な利尿作用が特徴です。
以下に後発品と先発品の薬価、および3割負担時の1か月分(30日)の自己負担額の目安を示します。
■ 保険診療での薬価(2024年改定時点)
製剤名 | 薬価(単価) | 服用量(1ヶ月) | 薬剤費(3割負担) |
---|---|---|---|
フロセミド錠10mg(後発品) | 6.3円/錠 | 60錠(1日2回) | 約113円 |
フロセミド錠20mg(後発品) | 6.3円/錠 | 60錠 | 約113円 |
フロセミド錠40mg(後発品) | 6.6円/錠 | 60錠 | 約119円 |
ラシックス錠10mg(先発品) | 9.6円/錠 | 60錠 | 約173円 |
ラシックス錠20mg(先発品) | 10.1円/錠 | 60錠 | 約182円 |
ラシックス錠40mg(先発品) | 11.2円/錠 | 60錠 | 約202円 |
■ 自己負担の目安(30日分・1日2回の場合)
- ● 後発品(フロセミド20mg): 3割 → 約113円 / 1割 → 約38円
- ● 先発品(ラシックス20mg): 3割 → 約182円 / 1割 → 約61円
- ● ※ 実際の用量は医師の指示により異なります
- ● ※ 診察料・検査費・薬局調剤料などは別途かかります
✅ フロセミドは高い即効性とコストパフォーマンスに優れる利尿薬です。
低価格で使用できますが、電解質バランスや腎機能への影響に注意しながら、医師の指導のもとで継続しましょう。
👨⚕️ 医師からのコメント・監修

「フロセミドは、心不全や腎障害を伴う浮腫のコントロールにおいて長年使われ続けてきた、即効性と効果の高いループ利尿薬です。
急性期から慢性期まで幅広く対応でき、特に心不全の急性増悪時における第一選択薬として非常に信頼されています。」
当院では、電解質(特にカリウム・ナトリウム)と腎機能をこまめにチェックしながら、必要最小限の用量での使用を心がけています。
また、高齢の方や腎機能が低下している方では脱水リスクにも配慮し、場合によっては補液なども併用して管理しています。
利尿剤の中ではコストパフォーマンスに優れ、日常診療において不可欠な薬剤です。
0th CLINIC 日本橋 院長
日本病理学会認定 病理専門医/心不全・内科疾患の外来経験10年以上
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