スピロノラクトン(アルダクトン)
💊 スピロノラクトンとは(基本情報)

▲ スピロノラクトン錠(25mg/50mg)
スピロノラクトンはカリウム保持性利尿薬に分類される薬剤で、アルドステロン受容体を拮抗することで、ナトリウム排泄とカリウム保持を促します。
心不全・高血圧・原発性アルドステロン症、および低カリウム血症の補正などに使用されます。
項目 | 内容 |
---|---|
一般名 | スピロノラクトン(Spironolactone) |
剤形 | 錠剤(25mg, 50mg, 100mg) |
適応症 | 高血圧症、心性浮腫、肝硬変性浮腫、原発性アルドステロン症、低カリウム血症など |
保険適用 | ○(保険診療で処方可能) |
特徴 |
● アルドステロン拮抗によりカリウム保持作用がある ● 他の利尿薬との併用で低K⁺予防に有用 ● 高K⁺血症や女性化乳房などの副作用に注意 |
● 通常、成人では1日25〜100mgから開始され、疾患や体調に応じて調整されます。
● 慢性心不全の補助療法として、予後改善効果が報告されています。
● 主な副作用には、高カリウム血症、女性化乳房、乳房痛、月経異常、腎機能悪化などがあります。
● 定期的な血清K⁺・Crのモニタリングが重要です。
● 他の利尿薬(ループ利尿薬など)との併用により、相互補完的な治療が可能です。
💊 スピロノラクトンの適応疾患と使い分け
スピロノラクトンは、アルドステロン受容体拮抗薬(カリウム保持性利尿薬)に分類され、ナトリウム排泄とカリウム保持を促進する作用があります。
心不全や高血圧、原発性アルドステロン症、肝硬変による腹水など、さまざまな病態で体液・電解質バランスの調整に用いられます。
✅ 主な適応疾患
疾患名 | 解説 |
---|---|
慢性心不全 | RAA系を抑制し、予後改善効果あり。他の利尿薬と併用される。 |
原発性アルドステロン症 | 過剰なアルドステロンにより高血圧・低K血症が生じる症例に有効。 |
肝硬変に伴う腹水 | フロセミドと併用し、Na保持による腹水を抑える。 |
低カリウム血症の補正 | K⁺保持作用を活かし、他の利尿薬によるK喪失を防ぐ。 |
✅ 他の利尿薬・降圧薬との使い分け
分類 | 主な薬剤 | 使い分けのポイント |
---|---|---|
ループ利尿薬 | フロセミド | 強力な利尿効果あり。K保持のためスピロノラクトンと併用される。 |
サイアザイド系利尿薬 | トリクロルメチアジド | 軽度高血圧に。K喪失が懸念されるため併用で相互補完が可能。 |
エプレレノン | エプレレノン | スピロノラクトンより性ホルモンへの影響が少ない選択肢。 |
ACE阻害薬・ARB | エナラプリル、 バルサルタン | RAA系抑制を補完し、心不全の進行抑制に貢献。 |
✅ スピロノラクトンが向いている患者
- 慢性心不全でRAA系抑制が必要な方
- 高血圧とともに低K⁺血症がある方
- 肝硬変による腹水を繰り返す方
- 原発性アルドステロン症が疑われる方
✅ スピロノラクトンは心不全や腹水の管理において、他の利尿薬と補完し合う重要な治療薬です。
血清カリウムや腎機能を定期的にモニターしながら、安全な治療を行いましょう。
💊 利尿薬の比較一覧(種類・特徴・使い分け)
分類 | 代表薬剤 | 特徴・使い方 |
---|---|---|
ループ利尿薬 |
フロセミド(Lasix) アゾセミド |
・強力な利尿作用(ヘンレ係蹄上行脚) ・急性心不全、肺うっ血、腎不全などで使用 ・低K⁺血症・脱水に注意、体重モニタリングが重要 |
サイアザイド系 |
トリクロルメチアジド インダパミド |
・中等度の利尿作用(遠位尿細管) ・高血圧の第一選択肢として使用されることも多い ・高尿酸血症・耐糖能異常に注意 |
カリウム保持性利尿薬 |
スピロノラクトン エプレレノン |
・アルドステロン拮抗作用あり(集合管) ・K⁺保持のため、ループ系との併用が多い ・高K⁺血症・女性化乳房(スピロノラクトン)に注意 |
その他 | トルバプタン(V2受容体拮抗薬) |
・水利尿作用を持ち、Na⁺は排泄しにくい ・心不全・肝硬変の難治性腹水に使用 ・血清Na⁺上昇や口渇、尿量の急増に注意 |
※ 利尿薬の選択は、基礎疾患や電解質バランス、腎機能などを総合的に評価して決定されます。自己判断せず、医師の指導のもとで使用してください。
💊 スピロノラクトン(Aldactone)の特徴まとめ
■ 効果・効能
スピロノラクトンはカリウム保持性利尿薬かつアルドステロン拮抗薬であり、心不全・原発性アルドステロン症・高血圧・肝硬変による腹水などに用いられます。
腎集合管のアルドステロン受容体に作用し、ナトリウム排泄・カリウム保持を促進します。
■ おすすめの方
- ✔️ 心不全でRAA系の抑制が必要な方
- ✔️ 原発性アルドステロン症で高血圧や低K血症がある方
- ✔️ 肝硬変による腹水・浮腫を繰り返している方
- ✔️ 他の利尿薬でカリウムが下がってしまう方
■ 注意が必要な方
- ⚠️ 腎機能が低下している方(高K血症リスク)
- ⚠️ 高カリウム血症の既往がある方
- ⚠️ 他のRAA系阻害薬(ACE阻害薬・ARBなど)を使用中の方
- ⚠️ 高齢者(脱水や電解質異常に注意)
- ⚠️ 妊娠・授乳中の方は必ず医師に相談
■ 服用できない方(禁忌)
- ❌ スピロノラクトンにアレルギーがある方
- ❌ 高カリウム血症のある方
- ❌ 急性腎不全または無尿の方
- ❌ アジソン病(副腎皮質機能低下症)の方
■ 主な副作用
比較的よくある副作用:
- ・女性化乳房(男性)、月経異常(女性)
- ・高カリウム血症、疲労感、食欲不振
- ・発疹、頭痛、眠気
重大な副作用(まれですが注意が必要):
- ・高カリウム血症による致死性不整脈
- ・急性腎不全、重度の電解質異常
- ・肝機能障害、黄疸
- ・アナフィラキシー様反応
■ 他のお薬との併用について
- ・ACE阻害薬・ARBとの併用で心不全の進行抑制に有用だが、高K血症に注意
- ・NSAIDs(痛み止め)との併用で腎障害のリスク増加
- ・他のK保持性薬剤との併用で過度の高K⁺に注意
- ・リチウム、ジゴキシンとの併用で血中濃度変化の可能性あり
■ 食事・生活上の注意
- ・カリウムを多く含む食品(バナナ、干し芋、豆類など)の摂取は医師と相談
- ・水分・塩分管理は症状や体調に応じて調整
- ・体重や血圧を定期的にチェックする習慣を持ちましょう
- ・ふらつきや動悸などの異常があればすぐに受診を
✅ スピロノラクトンは心不全・腹水・高血圧など多くの場面で重要な治療薬です。
定期的な血液検査(カリウム・腎機能)を通じて、安全に継続していくことが大切です。
■ スピロノラクトンのエビデンスと推奨事項
- ● 心不全におけるRAA系抑制補助薬として、死亡率・入院率の低下に寄与すると科学的に示されています。
- ● 原発性アルドステロン症の治療薬としても第一選択薬であり、高血圧と低カリウム血症の是正に効果的です。
- ● 肝硬変による腹水治療にも有効とされ、日本消化器病学会のガイドラインにも掲載されています。
■ 代表的なエビデンスと出典
- ・RALES試験(心不全における死亡率低下):NEJM 1999; 341(10):709–717
- ・ESC Guidelines 2021(心不全):European Heart Journal, 2021; 42(36): 3599–3726
- ・UpToDate解説ページ:Spironolactone – Drug Information (UpToDate)
- ・PMDA医薬品情報:スピロノラクトン錠 インタビューフォーム(PMDA)
- ・日本高血圧学会ガイドライン(2019): 高血圧治療ガイドライン2019(JSH)
✅ スピロノラクトンは重症心不全、原発性アルドステロン症、肝硬変性腹水など多彩な領域で活用されており、死亡率低下に寄与する唯一の利尿薬として注目されています。
高K血症などの副作用に注意しつつ、定期的なモニタリングで安全に継続可能な薬剤です。
🗣️ スピロノラクトンを使用した患者さんの声
肝硬変による腹水がひどかったのですが、スピロノラクトンを飲み始めてから、徐々にお腹の張りが楽になりました。
※これはあくまで個人の感想であり、効果には個人差があります。
他の利尿薬と併用して使っていますが、血圧も安定し、夜間の呼吸困難も軽くなりました。
※これはあくまで個人の感想であり、効果には個人差があります。
❓ よくある質問(FAQ)
通常は朝または朝・夕の分割投与が一般的です。
食後に服用することで胃への負担を軽減できます。
気づいた時点で服用してください。
次の服用時間が近い場合は無理に2回分をまとめて飲まずにスキップしてください。
主な副作用には高カリウム血症、女性化乳房(月経異常)、倦怠感、低血圧などがあります。
血液検査による電解質チェックが重要です。
はい。ただしカリウム補充薬やACE阻害薬・ARBとの併用では高カリウム血症に注意が必要です。
NSAIDsとの併用でも腎機能低下のリスクが高まるため、慎重に管理されます。
一般的に妊娠中・授乳中は使用を避けるべき薬とされています。
医師と相談し、他の治療手段を検討することが望ましいです。
はい。慢性心不全やアルドステロン症などにおいて長期使用が推奨される薬です。
定期的な診察と血液検査により、安全に服用が継続可能です。
💰 スピロノラクトン(アルダクトンA/利尿薬)の薬価と自己負担について
スピロノラクトンはカリウム保持性利尿薬に分類され、心不全、肝硬変、原発性アルドステロン症などに使用されます。抗アルドステロン作用を持ち、ループ利尿薬との併用でバランスの取れた利尿が可能です。
■ 保険診療での薬価(2024年改定時点)
製剤名 | 薬価(単価) | 服用量(1ヶ月) | 薬剤費(3割負担) |
---|---|---|---|
スピロノラクトン錠25mg「日医工」(後発品) | 5.9円/錠 | 60錠(1日2回) | 約106円 |
アルダクトンA錠25mg(先発品) | 13.1円/錠 | 60錠 | 約236円 |
アルダクトンA錠50mg(先発品) | 27.2円/錠 | 30錠(1日1回) | 約245円 |
アルダクトンA細粒10%(先発品) | 49.1円/g | 30g(例) | 約442円 |
■ 自己負担の目安(30日分・一般的な服用量)
- ● 後発品(25mg×1日2回): 3割 → 約106円 / 1割 → 約35円
- ● 先発品(25mg×1日2回): 3割 → 約236円 / 1割 → 約79円
- ● 先発品(50mg×1日1回): 3割 → 約245円 / 1割 → 約82円
- ● ※ 実際の服用量や回数は患者ごとに異なります
- ● ※ 上記は薬剤費のみで、診察料・調剤料などは別途かかります
✅ スピロノラクトンは心不全や肝疾患における標準治療薬であり、高カリウム血症や女性化乳房などの副作用に注意しながら、安全に服用が可能です。
👨⚕️ 医師からのコメント・監修

「スピロノラクトンは、アルドステロン拮抗作用を持つカリウム保持性利尿薬として、心不全・肝硬変・高アルドステロン血症などの治療に広く使用されています。
近年では慢性心不全の生命予後を改善する薬剤としてもガイドラインで高く評価されています。」
当院では、高カリウム血症のリスク管理を重視しながら、腎機能に応じた投与調整を丁寧に行っています。
また、女性化乳房などの内分泌的副作用にも配慮し、必要に応じて他の利尿薬との併用・切替も検討します。
ループ利尿薬との併用により、電解質バランスを整えながら安全に体液管理を行える点もスピロノラクトンの利点です。
0th CLINIC 日本橋 院長
日本病理学会認定 病理専門医/心不全・内科疾患の外来経験10年以上
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