病院・クリニックのトリアージと役割|災害医療ガイド
病院・クリニックのトリアージと役割
災害時、医療者は「目の前の一人を完璧に治す」ことだけでなく、限られた資源でより多くの命を救うという視点で動きます。
そのために行われるのが、トリアージ(重症度・緊急度による選別)です。
このページでは、トリアージの基本概念と、災害拠点病院・基幹病院、街のクリニック(0th CLINIC 日本橋など)の役割を整理します。
0th CLINIC 日本橋は、平時のかかりつけ機能に加え、災害時には軽〜中等症の診療・慢性疾患のフォロー・健康相談などを担うことを想定しています。 重症の方は災害拠点病院・基幹病院が優先されます。
※国や自治体のガイドライン・現場の判断により運用は変わります。このページは一般的な考え方をかみ砕いてお伝えすることを目的としています。
1. トリアージとは何か
トリアージとは、災害などで多数の傷病者が同時に発生したときに、
医療資源(人・時間・ベッド・手術室・薬・血液など)が足りなくなることを前提として、
誰をどの順番で治療するかを決める仕組みです。
平時の医療では、「来院された方を可能な限り平等に、丁寧に診る」ことが大切にされます。
一方、災害時には、一人の患者さんに医療資源を集中しすぎると、他の多くの方が救えなくなるというジレンマが生じます。
・「一人を完璧に治す」よりも、「より多くの人の命を救う」ことを優先する
・限られた資源で、救命できる可能性の高い人から先に治療を行う
・その結果として、軽症の方の待ち時間が長くなったり、治療が後回しになる場合がある
左側に大きな病院、右側に小さなクリニックを描き、
病院の上には「重症・集中治療」、クリニックの上には「軽症・慢性疾患フォロー」と吹き出しで表示。
下に赤・黄・緑のトリアージタグのアイコンを横一列に並べる。
2. 赤・黄・緑・黒の色分けのイメージ
トリアージでは、重症度や緊急度に応じて、色付きタグ(トリアージタグ)で患者さんを分類する方法がよく用いられます。
実際の運用は国や地域で異なりますが、ここではイメージしやすいように、代表的な意味を紹介します。
赤(第一優先)
- すぐに処置・手術を行えば助かる可能性が高い重症
- 呼吸困難・ショック・大量出血・重度の頭部外傷・重症外傷など
- 災害拠点病院・基幹病院での治療が優先される
黄(待機可能な重症〜中等症)
- 重症ではあるが、一定時間の待機が可能と判断される状態
- 複数の骨折・広くない熱傷など、モニタリングしながら順番を待つケース
緑(軽症)
- 命に関わる危険性は低く、歩行可能など比較的元気な方
- 軽い切り傷・打撲・ねんざ、軽度の体調不良など
- クリニックや後日受診で対応できることが多い
黒(救命困難/死亡)
- すでに死亡している、または現状の資源では救命が極めて困難と判断される場合
- 他の多くの命を救うために、積極的な治療を行えないケースが含まれる
※実際の現場では、経過に応じてタグの色が変更される(再トリアージ)こともあります。
※黒タグ=見捨てる、という意味ではなく、「極めて厳しい状況の方がいる」という現実を示すものです。
3. 災害拠点病院・基幹病院の役割
大規模災害時には、都道府県や市区町村が指定した災害拠点病院・基幹病院が中心となり、重症患者の受け入れ・治療を行います。
多数の重症患者の受け入れ
- 救急車・ドクターヘリなどから、赤・黄レベルの患者さんが集中して搬送される
- 救急外来の前や院内で、トリアージを繰り返しながら受け入れ順を調整
- 広範囲熱傷・重症外傷・多発外傷・重度の頭部外傷など、高い専門性が必要な治療を担当
手術・集中治療・高度な検査
- 手術室・ICU(集中治療室)・血管造影室などをフル活用し、救命に直結する処置を優先
- CT・MRIなど高度な画像検査を用いた、重症度評価と治療方針の決定
- 輸血・人工呼吸器管理・多職種チームによる全身管理
このように、災害拠点病院・基幹病院は「最も重い方の命を守る最後の砦」として機能します。
そのため、軽症の方が直接受診しようとしても、対応が難しかったり、非常に長い待ち時間となることがあります。
4. 街のクリニック(0th CLINIC)の役割
一方で、0th CLINIC 日本橋のような街のクリニックは、災害時に以下のような役割を担うことが想定されます。
軽〜中等症の診療・フォロー
- 切り傷・擦り傷・軽度のやけど・打撲など、緑〜黄レベルの一部を担当
- 自分でできる応急処置では対応しづらいケースの確認・処置
- 症状や検査所見から、高次病院紹介が必要かの判断
慢性疾患の薬調整・健康相談
- 糖尿病・高血圧・心不全・脂質異常症など、持病の悪化を防ぐためのフォロー
- 薬が切れそう・すでに切れてしまった場合の相談(できる範囲で代替処方など)
- 災害による生活変化に伴う体調不良の相談(睡眠・食欲・体重変化など)
メンタルサポート・生活支援への橋渡し
- 不眠・不安・食欲低下など、心身の不調の早期相談窓口として
- 必要に応じて、精神科・心療内科・公的相談窓口などへの紹介
- 避難生活や在宅避難での健康管理・感染症対策のアドバイス
0th CLINIC 日本橋の場合
- 日本橋駅・茅場町駅から徒歩すぐ、東京駅・人形町からも徒歩圏という立地を活かし、通勤・帰宅途中の方のかかりつけとして機能
- 外科・皮膚科・泌尿器科・内科などを統合し、軽〜中等症の幅広い相談に対応
- 建物・電力・スタッフの状況を見ながら、可能な範囲で地域の医療需要を支える
※実際の災害時には、クリニック自体が被災している可能性があります。診療の可否や時間帯については、公式サイトや自治体の情報をご確認ください。
5. 実際の運用イメージと患者さんへのお願い
トリアージが行われる現場では、患者さん・ご家族・医療者のすべてが強いストレスの中にいます。
その中で、具体的には次のような状況が起こりうります。
よくある状況のイメージ
- 「今日は重症の患者さんが多く、軽傷の方は数時間以上お待ちいただくか、後日の受診をお願いしています」
- 「検査機器が限られているため、症状の強い方から先に検査を進めています」
- 「クリニックも被災しており、出勤できていないスタッフがいるため、通常より診察枠が少なくなっています」
- 「高齢者・妊婦・持病の重い方を優先してお呼びすることがあります」
・医療者は、誰かを「軽んじている」わけではなく、より多くの命を守るために優先順位をつけざるを得ない状況にあります。
・クリニックのスタッフも、同じ災害の被災者であることが多く、自宅や家族の安全を気にかけながら勤務しています。
・そのうえで、可能な限り丁寧な説明と、限られた中での最善の医療を目指しています。
患者さん・ご家族には、次のような形でご協力をお願いできると、現場は大変助かります。
- 緊急性の低い症状であれば、数日〜数週間後の受診にずらすことも検討する
- 受診前に、地震発生直後の受診の目安 や 自分でできる応急処置 を確認する
- 待合室では、スタッフへの暴言・暴力・過度な要求は控える(皆が不安な状況であることを共有する)
6. 関連ページ・症状ページへのリンク
トリアージの理解は、平時の備え・災害直後の行動・自分でできる応急処置とセットで考えると、より実感を持って理解できます。
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