片頭痛の原因とメカニズム|CGRP・三叉神経血管系・前兆(CSD)
片頭痛の原因とメカニズム
片頭痛は「血管が拡張するだけ」の病気ではありません。三叉神経血管系の過敏化や、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などの神経ペプチド、前兆に関係する皮質拡延性抑制(CSD)など、神経と血管が複雑に関わる疾患です。仕組みを知ることで、治療や予防をより効果的に選べます。
全体像:片頭痛は「神経 × 血管 × 環境」の相互作用
- 素因(体質):家族歴や遺伝的要因により、痛み経路が過敏になりやすい。
- 引き金(環境):睡眠・ストレス・天候・ホルモン・食事・感覚刺激。
- メカニズム:三叉神経末端からCGRP等が放出→血管周囲の炎症・拡張→痛み信号が増幅。
- 経過:前駆期→前兆→頭痛期→回復期と移行し、各期で症状が異なる。
図解:片頭痛を引き起こす流れ(概念)
- 誘因が重なる → 神経の閾値が低下
- 三叉神経末端が活性化 → CGRPなど放出
- 血管周囲の無菌性炎症・拡張 → 拍動性痛
- 脳幹・視床で感作が進む → 光・音・におい過敏
※概念図。診断や治療は個別に最適化します。
三叉神経血管系とCGRP:片頭痛の「中心回路」
顔面や頭部の感覚を担う三叉神経の末端は、頭蓋内外の血管周囲に広く分布しています。発作時にはここからCGRP・サブスタンスPなどが放出され、血管周囲の炎症や拡張を引き起こし、脈打つ痛みが生じます。最近はCGRP経路を標的にした薬(急性期:ゲパント、予防:抗CGRP抗体など)が登場し、治療選択が広がりました。
前兆(オーラ)と皮質拡延性抑制(CSD)
チカチカ・ギザギザなどの視覚症状や、しびれ・言語のもつれといった前兆は、脳の皮質で起きる皮質拡延性抑制(Cortical Spreading Depression; CSD)が関係すると考えられています。CSDは神経活動の波が広がったのち一過性に抑制される現象で、視覚皮質で起これば典型的な視覚前兆になります。
※前兆があるからといって重大疾患とは限りませんが、赤旗(危険サイン)があれば画像検査を検討します。
中枢感作:痛みが強く感じやすくなる仕組み
発作の反復や急性期薬の過量使用で、脳幹・視床・皮質の痛み経路が敏感になる中枢感作が進みます。これにより、光・音・におい・触覚など多感覚の過敏が生じ、痛みの閾値が下がります。治療では、予防療法で発作頻度を下げることや、急性期薬の適正使用(回数の管理)が重要です。
よくある誘因(トリガー)
- 睡眠不足・寝だめ
- 食事時間の乱れ・低血糖
- 水分不足・脱水
- 精神的ストレス/ストレスからの解放
- 天候・気圧・温度差・強い光や音・におい
- 長時間の画面注視・姿勢不良(肩こり)
- カフェイン過多/急な断ち
- アルコール
- 一部の食品・添加物(個人差あり)
トリガーは「単独」より複数が重なった時に発作閾値を超えやすくなります。発作日記(トリガー記録)が有用です。
ホルモン・ライフステージとの関係
- 月経関連片頭痛:エストロゲン低下時に悪化しやすい。急性期薬の早期内服+必要に応じて短期予防(パルス)を計画。
- 妊娠・産褥:薬の選択に配慮が必要。赤旗があれば検査を検討。
- 更年期以降:経過が変わることがあり、治療の見直しでコントロール改善が期待できます。
※個別の薬剤選択は受診時にご相談ください(治療)。
合併しやすい症状・疾患
- めまい・乗り物酔い・動揺病
- 不眠・睡眠時無呼吸・過眠傾向
- 肩こり・頸部痛・顎関節症
- 不安・抑うつ・自律神経の不調
- 過敏性腸症候群(IBS)など機能性疾患
- 光・音・においなど感覚過敏
薬剤過剰使用頭痛(MOH)
急性期薬の使用日数が多すぎる状態が続くと、頭痛が慢性化・難治化します。月の使用上限や、予防療法への切り替えを早めに検討します。MOHが疑われる時は、計画的に減量し、代替手段を用意します。
次のステップ:仕組みを理解して治療・予防へ
治療に生かすコツ
- 急性期薬は早期・適正用量で。
- 発作頻度や生活支障が大きければ予防療法を検討。
- トリガー管理(睡眠・カフェイン・天候・姿勢)。
当院では、症状評価→赤旗確認→必要最小限の検査→治療→予防の流れで再発を減らす現実的な計画を立てます。まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 片頭痛は血管が拡張するから起こるのですか?
A. 血管の拡張だけでは説明できません。三叉神経末端からのCGRP放出による神経―血管の相互作用が中心と考えられています。
Q. 前兆(オーラ)があるのは危険ですか?
A. 多くは片頭痛の一部ですが、赤旗があれば画像検査を検討します。症状・経過の記録が診断に役立ちます。
Q. 気圧や天候で悪化します。対策は?
A. 睡眠・食事・カフェイン・運動などのリズムを安定させ、天候アプリで変化を予測。必要に応じて早期内服や予防療法を併用します。
関連ページ:症状の特徴|再発予防|片頭痛FAQ(詳細)
関連リンク
- 片頭痛トップ
- 診断と検査(赤旗・CT/MRI)
- 治療(急性期・予防)
- 再発予防と生活調整
- 薬剤ページ:スマトリプタン/ウブロゲパント/エレヌマブ
- 症状から:頭痛が続く/吐き気を伴う
👨⚕️ 医師からのコメント・監修

「片頭痛は、少しの痛みでも生活に支障をきたします。
だからこそ、症状のないうちから予防と管理に取り組むことが重要です。
検査データや生活背景まで丁寧に確認し、“納得して続けられる医療”を心がけています。」
0th CLINICの片頭痛治療では、生活スタイルにあわせた選択肢を複数選択できるように、忙しい現代人にも続けやすい医療設計を行っています。
未来の病気を防ぐ「未病医療」を、あなたの日常に無理なく取り入れていきましょう。
0th CLINIC 日本橋 院長
医学博士(心臓血管外科学)
日本病理学会認定 病理専門医/元外科専門医/プライマリケア認定医
総合診療・救急・心臓血管外科領域での診療経験10年以上
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