前立腺癌(Prostate Cancer)
概要:PSAからの“正確な評価”と、個別最適な治療選択
前立腺癌は高齢男性で頻度が高いが、多くは無症状で健康診断や人間ドックのPSA高値から見つかります。MRI→前立腺生検→病理(Gleason/Grade Group)で過不足ない精査を行い、病期・再発リスクに応じて監視・手術・放射線・薬物を選びます。治療は効果・副作用・生活(仕事/性機能/排尿)のバランスで決めます。
※診療時間はお知らせをご確認ください。
受診・救急の目安
救急へ:まったく尿が出ない(完全尿閉)/激しい背部痛+発熱(感染・閉塞の疑い)/肉眼的血尿で排尿困難
早めの受診を:PSA高値を指摘された/排尿が弱い・途切れる(BPH合併など)/骨痛・体重減少・倦怠(進行所見の可能性)
主な症状(早期は無症状が多い)
| 無症状 | 健診でPSA高値のみ—血液検査の経過で気づくことが多い。 |
|---|---|
| 下部尿路症状 | 頻尿・尿勢低下・残尿感などは前立腺肥大症と重なるため、BPHの評価も並行。 |
| 進行例 | 骨痛、むくみ、体重減少、貧血、背部痛など(骨転移・リンパ節腫大等の可能性)。 |
検査:PSA→MRI→生検→病理(Grade Group)
| PSA(血液) | 血液検査。年齢・前立腺体積・前立腺炎の影響も考慮し、再検・PSA密度・PSA推移を確認。 |
|---|---|
| 直腸診(DRE) | 硬結・左右差の有無を触診(痛みが少ないよう配慮)。 |
| MRI | 画像検査。PI-RADS評価で「狙うべき部位」を抽出し、過剰生検を回避。 |
| 前立腺生検 | 病理/細胞診。系統生検+MRI標的(融合)生検で診断精度を向上。 |
| 病理 | GleasonスコアからGrade Group(1〜5)を決定。治療選択の中核情報。 |
| 病期評価 | 局所(MRI/超音波)+必要に応じてCT/骨シンチ/PSMA-PET等で転移検索。 |
病期・リスク分類(イメージ)
| 限局癌 | 前立腺内にとどまる。PSA・Grade Group・触診/MRIでさらに低/中/高リスクに層別。 |
|---|---|
| 局所進行 | 被膜外浸潤・精嚢浸潤など。 |
| 転移性 | リンパ節・骨・内臓転移。 |
実際の判定は総合所見で行い、治療の目的(根治/延命・症状緩和)を明確化します。
治療:効果・副作用・生活のバランスで個別化
| 監視療法(AS) | 低リスクで選択。PSA・DRE・MRI・再生検を計画的に行い、進行サインがあれば切替。 |
|---|---|
| 手術 | 前立腺全摘(開腹/腹腔鏡/ロボット)。局所制御に優れ、病理で確定評価。尿失禁・勃起機能への影響に配慮。 |
| 放射線治療 | 外照射(IMRT等)/小線源(適応選択)。同等の根治性が期待できる症例が多い。腸炎・頻尿などに注意。 |
| 薬物治療 | アンドロゲン遮断(ADT)±ARPI、化学療法等。転移性・再発時や照射併用などで選択。 |
| 支持療法 | 骨転移対策(骨修飾薬)・痛みのコントロール・リハビリ・栄養支援。 |
意思決定では再発時の次の一手や仕事/家族計画も見据え、長期の見通しを共有します。
副作用と対策(要点)
手術関連
- 尿失禁:骨盤底リハの併用(骨盤底リハ)。
- 勃起機能:神経温存可否・補助療法の検討。
- リンパ漏・感染等:術式・施設差の説明と早期対応。
放射線・薬物関連
- 頻尿・排尿痛・直腸症状:時間経過と対症療法。
- 更年期様症状・代謝異常:ADT/ARPIで体重・筋力・骨密度ケア。
- 疲労感・貧血:血液検査と栄養・運動療法。
術後・照射後の経過観察(PSAを軸に)
| PSAモニタリング | 一定間隔で測定し、再発サイン(PSA再上昇)を早期に把握。 |
|---|---|
| 画像・症状の確認 | 骨痛・体重変化・疲労など。必要に応じて画像で再評価。 |
| 副作用フォロー | 尿失禁・勃起機能・腸症状・代謝。生活・仕事の再開タイミングも伴走。 |
費用の目安(保険/自費の考え方)
| 診察+PSA等の血液検査 | 保険(自己負担は保険種別・項目で変動) |
|---|---|
| MRI・CT等の画像検査 | 保険(症状・PSA・医師判断により実施) |
| 前立腺生検(病理含む) | 保険(必要時) |
| 手術・放射線・薬物 | 保険(適応により判断/詳細は診察で説明) |
当院は自費は性感染症の一部のみ、前立腺癌の診療は保険で対応します。
FAQ:よくある質問
PSAが高い=前立腺癌ですか?
必ずしもではありません。前立腺肥大症や前立腺炎でも上がります。再検/MRI/必要時生検で正確に評価します。
監視療法は“治療しない”のですか?
いいえ。きめ細かく経過を見て、進行サインがあれば速やかに根治治療へ切り替える“積極的な観察”です。
手術と放射線の違いは?
根治性は症例により同等が期待できます。副作用の質が異なるため、生活・仕事・価値観に合わせて選びます。
性機能や尿失禁が心配です。
術式・照射方法・リハ・補助療法で対策を行います。リスクは事前に丁寧に共有します。
👨⚕️ 医師監修
荘子 万可 医師(日本泌尿器科学会認定 泌尿器科専門医/日本抗加齢医学会専門医/テストステロン治療認定医)
0th CLINIC 日本橋 泌尿器科
本ページの医学的内容(受診目安・検査・治療の考え方)を確認しています。
- 監修日:2025-10-31
- 最終更新日:2025-10-31
- 監修範囲:本文全体(FAQ・費用方針を含む)
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