血液検査(泌尿器科)|腎機能・PSA・感染・ホルモン・腫瘍関連の基礎知識
概要:採血で「腎臓」「前立腺」「感染」「ホルモン」を俯瞰
血液検査は、腎臓の働き(eGFR)、前立腺のマーカー(PSA)、体内の炎症(CRP)、ホルモンバランス(テストステロンなど)、性感染症、手術前の安全確認などに役立ちます。画像検査や尿検査と組み合わせ、総合的に評価します。
検査の一覧(やさしい解説+英語名・略語)
| 分類 | 検査名(英語・略語) | どんな検査?何が分かる? | よく使う場面 |
|---|---|---|---|
| 腎機能・電解質 | クレアチニン(Serum Creatinine)/eGFR(推算糸球体濾過量) | 腎臓のろ過能力の指標。eGFRは年齢・性別などから計算する腎機能の目安。 | 造影CT前の安全確認/腎臓病の評価/薬剤量の調整 |
| BUN(Blood Urea Nitrogen) | たんぱく質代謝の最終産物。腎機能や脱水の影響を受けます。 | 腎機能評価/脱水の参考 | |
| Na・K・Cl(ナトリウム・カリウム・クロール) | 体液のバランスや心臓・筋肉の働きに関わる塩分類。 | 腎・心疾患の評価/利尿薬使用中/点滴前後 | |
| HCO₃⁻(重炭酸:Bicarbonate) | 酸塩基バランスの目安。腎機能低下や呼吸の影響で変化。 | 慢性腎臓病(CKD)/代謝性アシドーシスの確認 | |
| 炎症・感染 | CRP(C-Reactive Protein) | 体内の炎症の強さを表す値。高いと腎盂腎炎などの可能性も。 | 発熱・痛みの評価/治療効果のフォロー |
| 白血球数(WBC: White Blood Cell) | 感染や炎症で増加。薬剤や体質で変動することも。 | 尿路感染症(UTI)などの評価 | |
| プロカルシトニン(Procalcitonin, PCT) | 細菌感染の重症度の目安。全員に必要ではありません。 | 重症感染が疑わしいときの参考 | |
| 前立腺 | PSA(Prostate-Specific Antigen) | 前立腺から出るたんぱく。がんだけでなく肥大症や炎症でも上がることがあります。 | スクリーニング/経過観察/紹介・精密検査の判断 |
| Free PSA(遊離PSA)・比(%fPSA) | PSAのタイプを見分けて、がんの可能性の手がかりに。 | グレーゾーン時の追加情報 | |
| ALP・γ-GTP など(肝胆道) | 前立腺がんの転移評価などで、他の臓器の状態も確認。 | 進行がんの全身評価(画像と併用) | |
| ホルモン(男性) | テストステロン(Total / Free Testosterone) | 男性ホルモン。朝(午前中)採血で評価が安定します。 | 男性更年期・勃起機能の評価/治療前後の確認 |
| LH(黄体化ホルモン)・FSH(卵胞刺激ホルモン) | 脳(下垂体)からの指令ホルモン。精巣の働きとの関係をみます。 | 性腺機能低下症の鑑別 | |
| プロラクチン(PRL) | 高すぎると性機能に影響することがあります。 | 性機能の精査で必要に応じて | |
| SHBG(Sex Hormone-Binding Globulin) | ホルモンの「運搬役」。自由型テストステロンの解釈に関与。 | 詳細評価が必要なときに追加 | |
| 腫瘍関連 | AFP(Alpha-Fetoprotein) | 胚細胞腫瘍で上がることがある腫瘍マーカー。 | 精巣腫瘍の診断・治療効果の目安(画像と併用) |
| hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン) | 胚細胞腫瘍(特に絨毛がんなど)で上昇することがある。 | 同上 | |
| LDH(乳酸脱水素酵素) | 腫瘍の勢いの指標のひとつ。筋肉や肝でも変化。 | 精巣腫瘍の全身状態評価の補助 | |
| 全身状態 | 血算(CBC: Complete Blood Count) | 赤血球・白血球・血小板の数。貧血や感染の目安。 | 血尿が続くときの貧血評価/手術前 |
| 肝機能(AST/ALT/ALP/γ-GTP など) | 薬の代謝や全身状態の確認。 | 手術前・薬物療法前/併存疾患の把握 | |
| 血糖・HbA1c | 糖尿病の有無・コントロールの指標。 | 感染リスクの把握/手術・創傷治癒リスク評価 | |
| 尿酸(UA: Uric Acid) | 高すぎると結晶ができやすい。腎臓にも影響。 | 腎機能や結石リスクの参考 | |
| 感染症(血液) | HIV 抗原/抗体 | HIV感染の有無。治療・手術前の安全確認にも。 | 性感染症の精査/手術前検査 |
| 梅毒(RPR/TP 抗体) | 梅毒の有無や治療効果の目安。RPRは活動性の指標、TPは既往を含む。 | 性感染症の精査/手術前検査 | |
| B型肝炎(HBs 抗原/抗体 など) | 現在の感染・免疫の有無を確認。 | 手術前/針を扱う処置前の確認 | |
| C型肝炎(HCV 抗体) | C型肝炎の既往・感染の有無。 | 同上 | |
| 手術前 | 凝固系(PT/INR・APTT) | 止血の働きのチェック。抗凝固薬内服時は特に重要。 | 生検・内視鏡・手術の前 |
| 血型・交差適合(必要時) | 輸血が想定される処置・手術の安全確保。 | 出血のリスクがある場合 |
※すべての方に全項目が必要というわけではありません。症状・病状に合わせて必要な項目のみを選びます。
当日の流れ・準備
| 食事・服薬 | 多くは普段どおりでOK。空腹(朝食なし)で必要な項目がある場合は事前にご案内します。 |
|---|---|
| 所要時間 | 採血自体は数分。結果は項目により当日〜数日でご説明します。 |
| 注意 | めまい体質の方はお知らせください。採血後は強い運動を避け、十分に休みましょう。 |
結果の見方(ポイント)
- 腎機能(eGFR)は年齢・体格・筋肉量で差が出ます。単回より経時変化を重視します。
- PSAは肥大症や炎症でも上昇します。MRI・生検など画像・組織検査とセットで判断します。
- CRP・白血球は感染・炎症で上がりますが、病気の種類は症状・尿検査・画像と総合評価が必要です。
- ホルモン(テストステロンなど)は採血の時間帯や薬で変動します。必要に応じ再検します。
安全性と限界
安全性
- 少量の採血。穿刺部に内出血が出ることがあります。
- 感染症の検査は同意に基づいて行います。
限界
- 血液だけで確定診断できない病気も多く、尿検査・エコー・CT/MRI・内視鏡などが必要です。
- 基準値内でも症状が強い場合は追加評価を行います。
費用の目安(保険/自費の考え方)
| 血液検査(腎機能・電解質・炎症など) | 保険(症状・診察所見に応じて必要項目を選択) |
|---|---|
| PSA・ホルモン・腫瘍関連 | 保険(適応に応じて) |
| HIV・梅毒・B/C型肝炎 | 保険/自費(目的・状況により説明します) |
当院は自費は性感染症の一部のみ、その他は原則保険で対応します。
FAQ:よくある質問
空腹で行く必要はありますか?
多くは不要ですが、脂質・血糖の詳細評価など一部は空腹採血が好ましいため、必要時にご案内します。
PSAが高い=前立腺がんですか?
必ずしもそうではありません。肥大症や炎症でも上がります。必要に応じてMRIや生検で確認します。
ホルモン検査はいつ採血が良いですか?
午前中(朝)の採血を推奨します。日内変動の影響を減らすためです。
性感染症の血液検査は誰でも受けられますか?
可能です。検査の目的・同意を確認し、性感染症の検査ページへご案内します。
👨⚕️ 医師監修
荘子 万可 医師(日本泌尿器科学会認定 泌尿器科専門医/日本抗加齢医学会専門医/テストステロン治療認定医)
0th CLINIC 日本橋 泌尿器科
本ページの医学的内容(検査の目的・限界・費用方針)を確認しています。
※診療時間はお知らせをご覧ください。
- 監修日:2025-11-01
- 最終更新日:2025-11-01
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