性行為後の不安・曝露後対応

性行為後の不安・曝露後対応(After Exposure)

「コンドームが外れた」「不明な相手との性交渉」「口・肛門での接触」など、感染の不安がある直後〜数週間に確認すべきことを、時系列で分かりやすくまとめました。
72時間以内の方は、HIV曝露後予防(PEP)の可能性があるため、まずはご相談ください。

まず知っておきたい3点

  1. 72時間以内ならHIV曝露後予防(PEP)の適応を評価します(早いほど有効性が高まります)。
  2. 無症状でも感染はあり得ます。検査には“ウィンドウ期”があり、適切な時期の再検が大切です。
  3. B型肝炎ワクチンで予防可能です。未接種の方はスケジュールを組みます。

※抗菌薬の“予防内服”は原則推奨しません(耐性化・検査精度の低下)。必要時は医師が個別判断します。

時間帯別:いつ受診・何を検査?

0〜72時間以内

  • リスク評価(性行為の種類・相手状況・避妊具の有無など)
  • HIV PEPの適応判定・開始(必要時)
  • B型肝炎:既往抗体の確認/未接種はワクチン開始
  • 基準検査:HIV(Ag/Ab)・梅毒(RPR/TP)・B/C型肝炎・
    淋菌/クラミジア(尿・咽頭・直腸の核酸検査)

1〜2週間

  • 淋菌/クラミジア(NAAT)検出感度が上がる時期
  • 症状(排尿痛・分泌物・咽頭痛・肛門痛 等)があれば即検査
  • 梅毒の初期抗体は陰性のことあり ⇒ 後日の再検をセット

3〜6週間

  • 梅毒(RPR)の陽性化が進む
  • HIV 4週:第4世代(Ag/Ab)で多くが検出可能
  • 症状があれば随時評価(ヘルペス・尖圭コンジローマ 等)

6週間〜3か月

  • HIV/梅毒/B/C型肝炎の最終確認(時期は個別調整)
  • HPV関連病変は遅れて出現することがあり、視診フォロー

検査の“ウィンドウ期”目安

疾患 主な検査 検出可能目安 再検査の目安 関連ページ
HIV 第4世代 Ag/Ab 2–4週 6週〜3か月 HIV検査・予防(PrEP/PEP)
B型肝炎 HBsAg/抗HBs/抗HBc 3–6週 6週〜3か月 B・C型肝炎
C型肝炎 HCV抗体/核酸 4–8週(抗体) 12週〜 B・C型肝炎
梅毒 RPR/TP抗体 2–6週 6週〜3か月 梅毒
淋菌/クラミジア NAAT(尿/咽頭/直腸) 3–7日〜 1–2週で再検可 淋病クラミジア
ヘルペス 視診/PCR(病変時) 症状出現時 症状時に随時 性器ヘルペス

※上記は一般的な目安であり、暴露状況・既往・ワクチン歴により調整します。

HIV曝露後予防(PEP)とPrEP

PEP(Post-Exposure Prophylaxis)

  • 72時間以内に開始が原則(早いほど良い)
  • 28日間の内服と定期検査が必要
  • 薬剤相互作用・腎機能などを確認して処方
  • 費用は自費診療が基本(状況により異なる)

PrEP(Pre-Exposure Prophylaxis)

  • 将来の曝露リスクが継続する方へ事前予防の選択肢
  • 定期的な腎機能・B/C型肝炎・HIV検査が必須
  • 正しい内服・フォローで高い予防効果

B型肝炎はワクチンで予防できます

  • 抗体の有無(抗HBs)を確認し、未接種・抗体陰性なら接種をご案内
  • 通常 0・1・6か月の計3回接種(スケジュールは個別調整)
  • 相手がHBsAg陽性・不明など状況により、より迅速な対応を検討

当院での受診の流れ

  1. 問診・リスク評価(性行為の種類・時間・相手情報・既往など)
  2. 検査の選択(尿・咽頭・直腸のNAAT、採血:HIV/梅毒/B・C型肝炎 等)
  3. 必要な予防・治療(HIV PEP、B型肝炎ワクチン、症状に応じた治療)
  4. 再検査スケジュールの共有(1–2週、4–6週、3か月 等)
  5. パートナーへのお知らせの方法や再感染予防の相談

※性暴力に関わる事案は、専用支援窓口や警察との連携を含め、慎重に対応します。受診時に遠慮なくお伝えください。

保険・自費の考え方(概要)

  • 症状がある・診断のために必要な検査は保険適用の対象となることがあります。
  • スクリーニング目的の一部検査や、HIV PEP/PrEPは原則自費です。
  • 具体的な費用は受診時にご案内します(薬剤費は別途)。

よくある質問

無症状でも検査は必要?
必要です。性感染症は無症状で進行することがあり、適切な時期の検査と再検査が安心につながります。
いつまでに受診すればPEPが間に合いますか?
原則72時間以内です。早いほど有効性が高いため、迷ったらまずご連絡ください。
抗菌薬の“予防内服”はできますか?
原則推奨しません。耐性菌や検査精度低下の懸念があるためです。医師が必要と判断する特殊な状況では対応を検討します。
パートナーに何と伝えればよい?
匿名化を含めたお伝えの方法を一緒に考えます。検査の同時実施が再感染予防に有効です。

医師監修

本ページは医師が内容を確認しています。専門的記載は一般向けに簡略化しています。個別の判断は受診時に行います。

※本ページは一般向けの説明です。実際の対応は、症状・既往・薬剤歴・暴露状況などを踏まえた医師の判断により個別に決定します。診療内容・費用は予告なく変更となる場合があります。

関連コラム

    ただいま準備中です。少々お待ちください。