NAFLD/NASH(脂肪肝)と糖尿病|“肝臓も血管も”守る総合ケア|日本橋の内科 0th CLINIC(ゼロスクリニック)
NAFLD/NASH(脂肪肝)と糖尿病|肝臓と心血管を同時に守る
脂肪肝(NAFLD/MASLD)は2型糖尿病に高頻度で合併し、肝線維化・肝がんだけでなく 動脈硬化(ASCVD)のリスクも上げます。重症度を見える化して、生活+薬物+併存症の多因子介入で進行を止めましょう。
NAFLD/NASHとは
飲酒によらない脂肪肝(NAFLD/MASLD)は、肝細胞に脂肪がたまる状態。炎症や線維化を伴う段階をNASH(非アルコール性脂肪肝炎)と呼び、 進むと肝硬変・肝がんの原因になります。糖尿病・肥満・高血圧・脂質異常と密接に関連します。
こんな時は早めに受診(救急/専門外来へ)
- 黄疸、腹部の強い腫れ(腹水)、黒色便/吐血(消化管出血の疑い)
- 意識のぼんやり・昼夜逆転(肝性脳症の疑い)
- 右上腹部痛+発熱(胆道感染など合併の可能性)
迷ったら早めに医療機関へ。普段の薬と飲酒量・サプリの情報をお持ちください。
スクリーニングと初期評価(糖尿病の方は積極的に)
- 血液検査:AST/ALT、血小板、Alb、空腹時脂質、HbA1c。
- 腹部超音波:脂肪肝の有無を評価。
- 非侵襲的線維化評価:FIB-4(年齢×AST /〔血小板×√ALT〕)、必要に応じエラストグラフィ(FibroScan®/Shear Wave)・MRE。
- 二次評価:高リスクでは肝専門医に連携し、精密検査(ELF、画像、まれに生検)を検討。
線維化リスク分類(FIB-4 ほかの目安)
カテゴリ | FIB-4の目安 | 推奨アクション |
---|---|---|
低リスク | < 1.3(※高齢者では閾値がやや上がる) | かかりつけで生活・代謝管理を継続。1〜2年ごとに再評価。 |
中間リスク | 1.3–2.67 | エラストグラフィなど二次評価を追加し、進行リスクを精査。 |
高リスク | > 2.67 | 肝専門医へ紹介。肝硬変合併の有無を評価し、サーベイランス開始。 |
FIB-4はスクリーニング指標であり、確定診断ではありません。数値のみで判断せず、画像や他指標と合わせて総合評価します。
治療(減量・運動・薬物・外科の“合わせ技”)
- 減量目標:体重5%で脂肪減少、7–10%で炎症改善、≥10%で線維化改善が期待。現実的な段階目標を共有。
- 食事:和食/地中海型ベース、砂糖入り飲料・果糖過多を控える。総エネルギーの見直し、たんぱく質は適正量。
- 運動:週150分の有酸素+週2–3回のレジスタンス。減量がなくても脂肪肝改善に有効。
- 糖尿病薬の最適化:GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬は体重・肝脂肪・心腎リスクの改善に有用。ピオグリタゾンはNASH改善にエビデンス(体重増加等の副作用に留意)。
- 脂質/血圧:スタチンは基本的に使用可(肝線維化進行例でもASCVD予防のため推奨)。RAAS阻害薬等で血圧最適化。
- ビタミンE:非糖尿病のNASHで検討されることがありますが、長期安全性や適応は主治医と要相談。
- 減量手術・内視鏡治療:高度肥満や内科的治療抵抗例で検討(適応基準に基づき専門施設と連携)。
- 飲酒・薬剤:飲酒は可能ならゼロに近づけ、肝毒性薬の併用は慎重に。
併存症・合併症の管理(肝臓+全身を守る)
- ASCVDリスク低減:禁煙、LDL最適化、血圧・血糖・体重の個別最適化。
- CKD・睡眠時無呼吸:同時管理で全身予後を改善。
- 肝硬変/高度線維化:肝がんサーベイランス(6か月毎エコー±AFP)、食道胃静脈瘤の評価、ワクチン(A型/B型肝炎)など。
フォロー間隔の目安(個別条件で前後します)
状態 | 目安 | 主なチェック |
---|---|---|
低リスク(FIB-4低) | 6–12か月 | 体重・腹囲、AST/ALT、HbA1c、脂質、FIB-4再計算 |
中間リスク | 3–6か月 | 上記+エラストグラフィで硬度推移、薬剤調整 |
高リスク/線維化進行 | 1–3か月+肝専門医連携 | 合併症スクリーニング、HCCサーベイランス、禁酒支援 |
よくある質問
どのくらい痩せれば効果がありますか?
スタチンは肝臓に悪い?
お酒は全くダメですか?
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💊 糖尿病治療薬の種類と特徴
糖尿病治療では、血糖値を下げるための薬を使うことがあります。
病態や合併症の有無に応じて、内服薬や注射薬を適切に組み合わせて治療します。
🔷 主な内服薬(経口血糖降下薬)
- ビグアナイド薬(メトホルミンなど)
─ 肝臓での糖の産生を抑える。体重が気になる方にも適応されます。 - SGLT2阻害薬
─ 尿から糖を排出する薬。体重減少や血圧改善も期待されます。 - DPP-4阻害薬
─ 食後のインスリン分泌を助ける薬。低血糖を起こしにくいのが特徴です。 - スルホニル尿素薬(SU薬)
─ インスリン分泌を促進する薬。やや低血糖を起こしやすいので注意。 - α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)
─ 糖の吸収をゆっくりにすることで、食後高血糖を抑えます。
💉 注射薬(インスリン・GLP-1受容体作動薬)
- インスリン製剤
─ 血糖値を直接下げるホルモンを補う薬。1型糖尿病や重症の2型糖尿病で使用。 - GLP-1受容体作動薬
─ インスリン分泌を促進し、食欲を抑える注射薬。週1回の製剤もあり、肥満のある方にも有効です。
📋 副作用や注意点
- 低血糖(特にSU薬・インスリン使用中)
- 吐き気・食欲不振(GLP-1受容体作動薬)
- 尿路感染症・脱水(SGLT2阻害薬)
- 腎機能や肝機能の状態により、使用できない薬もあります
🏥 通院・血液検査が大切です
糖尿病は「症状が出にくい」慢性疾患です。
自己判断で薬を中断せず、定期的に診察・HbA1cや腎機能の検査を受けて、合併症を予防しましょう。
💊 糖尿病治療薬の種類と特徴
糖尿病の治療薬は多岐にわたります。以下は、日本国内で使用される代表的な薬剤とその特徴をまとめたものです。
🟢 経口血糖降下薬(内服薬)
① ビグアナイド薬(Biguanides)
- メトホルミン(メトグルコ®、グリコラン®):肝臓での糖新生抑制、第一選択薬。下痢などの副作用に注意。
② スルホニル尿素薬(SU薬)
- グリベンクラミド(オイグルコン®)
- グリクラジド(グリミクロン®)
- グリメピリド(アマリール®):低血糖と体重増加に注意。
③ 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド系)
④ α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)
⑤ チアゾリジン薬(TZD)
- ピオグリタゾン(アクトス®):インスリン抵抗性改善。浮腫や体重増加に注意。
⑥ DPP-4阻害薬
⑦ SGLT2阻害薬
💉 注射薬(インスリン・GLP-1受容体作動薬)
① GLP-1受容体作動薬
- リラグルチド(ビクトーザ®)
- デュラグルチド(トルリシティ®)
- セマグルチド(オゼンピック®、ウゴービ®)
- チルゼパチド(マンジャロ®):GIP/GLP-1デュアル作動薬。強力な血糖・体重コントロール。
② インスリン製剤(分類別)
- 超速効型インスリン(食事直前に使用)
アスパルト(ノボラピッド®) / リスプロ(ヒューマログ®) / グルリジン(アピドラ®) / フィアスプ® / ルムジェブ® - 速効型インスリン(食前30分投与)
レギュラーインスリン(ノボリンR®、ヒューマリンR®) - 混合型インスリン(プレミックス)
ノボラピッド®30ミックス・50ミックス・70ミックス / ヒューマログ®ミックス25・50 - 中間型インスリン
NPHインスリン(ノボリンN®、ヒューマリンN®) - 持効型インスリン(持続時間:約24時間)
グラルギン(ランタス®、ランタスXR®) / デグルデク(トレシーバ®) / デテミル(レベミル®) - 配合注射(インスリン+GLP-1受容体作動薬)
ソリクア®(グラルギン+リキシセナチド) / ゾルトファイ®(デグルデク+リラグルチド)
それぞれの薬剤は、患者さんの体質・合併症・ライフスタイルに応じて選択されます。
詳しくは医師にご相談ください。
GLP-1受容体作動薬の作用メカニズム

GLP-1受容体作動薬は、インスリン分泌促進、食欲抑制、胃の排出遅延などの作用を通じて血糖値をコントロールします。
また、体重減少効果もあることから、2型糖尿病や肥満治療にも用いられます。
こんな方はご相談ください
- のどが渇く、水をたくさん飲む
- 尿の量や回数が増えた
- 食欲があるのに体重が減る
- 疲れやすい、だるい
- 手足のしびれ
- ケガが治りにくい
- 健康診断で血糖値やHbA1cが高いと言われた
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NAFLD/NASH(脂肪肝)と糖尿病:エビデンス&ガイドライン・実務
NAFLD(近年はMASLDとも表記)/NASH は2型糖尿病で高頻度に合併し、肝線維化・肝がんだけでなく 動脈硬化(ASCVD)リスクにも関わります。非侵襲的スコア(FIB-4等)とエラストグラフィで重症度を見える化し、 減量・食事・運動に加えて糖尿病薬の最適化(GLP-1RA/SGLT2・ピオグリタゾン等)、脂質・血圧管理まで多因子で介入します。 改善は数週〜数か月をかけて段階的に進むのが一般的です。
🏛 学会・専門ガイドライン(標準の考え方)
- AASLD:NAFLD/MASLDのスクリーニング〜線維化リスク分層、生活・薬物療法の推奨。
- EASL-EASD-EASO:代謝合併症を含めた包括管理、非侵襲的評価の活用。
- 国内関連学会:日本肝臓学会/日本糖尿病学会の提言・地域連携の整備。
🔍 スクリーニング(対象と頻度)
対象 | 初回の目安 | その後の目安 |
---|---|---|
2型糖尿病/メタボ肥満 | 診断時にFIB-4+AST/ALT・血小板、必要に応じ腹部エコー | 年1回(低リスクは1〜2年) |
1型糖尿病+代謝異常 | 代謝リスクに応じ評価 | 異常や体重増加時は短縮 |
肝酵素↑/脂質異常/高血圧 | 契機にFIB-4で線維化スクリーニング | 所見に応じ3〜12か月 |
飲酒・薬剤(アミオダロン、タモキシフェン等)・ウイルス肝炎も鑑別。FIB-4は「スクリーニング」指標であり、確定診断ではありません。
🗂 線維化リスク分類:FIB-4の目安
カテゴリ | FIB-4 | 推奨アクション |
---|---|---|
低リスク | < 1.3(65歳以上では< 2.0目安) | かかりつけで生活・代謝管理を継続、1〜2年ごと再評価 |
中間リスク | 1.3–2.67 | エラストグラフィ(FibroScan®等)やMREなど二次評価 |
高リスク | > 2.67 | 肝専門医へ紹介、F2–F4相当の評価とサーベイランス検討 |
🎯 目標とモニタリング
- 体重/腹囲:体重5%・7–10%・≥10%の段階目標。
- 肝酵素:AST/ALTの正常化を目標(ALTは8–12週で変化を確認)。
- 線維化指標:FIB-4、エラストグラフィ(弾性値の低下)を3–12か月ごとに追跡。
- 代謝合併症:HbA1c、脂質、血圧、睡眠時無呼吸の評価。
💊 治療の全体像(肝と心血管を同時に守る)
- 減量:5%で脂肪減少、7–10%で炎症改善、≥10%で線維化改善が期待。
- 食事:和食/地中海型、砂糖入り飲料・果糖過多を避ける。タンパク質は適正量。
- 運動:週150分の有酸素+週2–3回のレジスタンス(減量なしでも肝脂肪改善)。
- 糖尿病薬の最適化:GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬は体重・肝脂肪・心腎リスク改善に有用。ピオグリタゾンはNASH改善のエビデンス(体重増加等に留意)。
- 脂質/血圧:スタチンは原則使用可(線維化進行例でもASCVD予防の利益大)。RAAS阻害薬等で血圧最適化。
- ビタミンE:非糖尿病NASHで検討されることあり。適応と長期安全性は個別判断。
- 減量手術・内視鏡治療:高度肥満や内科抵抗例で検討(専門施設と連携)。
- 飲酒・薬剤:可能なら禁酒に近づけ、肝毒性薬は慎重に。
- ワクチン:A型/B型肝炎ワクチンを検討(未接種なら)。
🌿 生活とセルフケア(続けやすく)
- 一口メモ:「清涼飲料→ゼロ」、「外食はまず野菜/汁物」など実践カードを共有。
- 睡眠/ストレス:睡眠時無呼吸の評価、過食誘発のストレス管理。
- シックデイ:脱水回避、薬剤(SGLT2・利尿薬等)の一時調整は指示に沿って。
- 黄疸・腹水増悪、黒色便/吐血(消化管出血)、意識の混濁(肝性脳症疑い)→ 救急へ
- 右上腹部痛+発熱/悪寒(胆道感染など)→ 早めに受診
- 受診時は服薬リスト・飲酒/サプリ・最近の検査結果を持参
📈 改善にかかる期間・予後の目安
- 肝酵素(ALT):介入後8–12週で低下傾向、脂肪肝は数週で改善が見えることも。
- 線維化:≥10%減量で6–12か月以降に指標改善が期待(個人差あり)。
- 長期予後:体重・代謝の最適化と禁煙/禁酒の継続で、肝関連イベントと心血管イベントの双方を低減。
🗓 フォロー間隔の目安(個別条件で前後します)
状態 | 目安 | 主なチェック項目 |
---|---|---|
低リスク(FIB-4低) | 6〜12か月 | 体重・腹囲、AST/ALT、HbA1c、脂質、FIB-4再計算 |
中間リスク | 3〜6か月 | 上記+エラストグラフィ硬度、薬剤調整 |
高リスク/線維化進行 | 1〜3か月+肝専門医連携 | 合併症スクリーニング、HCCサーベイランス(6か月ごと) |
🤰 妊娠を考える方へ(薬剤の注意)
- GLP-1RA・SGLT2・スタチンなど、妊娠に適さない薬剤があります。妊娠前から計画的に見直しましょう。
- 妊娠中は安全第一の生活療法と血糖・血圧管理を優先し、産科・肝臓・糖尿病チームで連携します。
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