テルミサルタン(ミカルディス)

テルミサルタン|高血圧・心不全・腎保護に|0th CLINIC

💊 テルミサルタンとは(基本情報)

テルミサルタン(ミカルディス)

▲ テルミサルタン錠(Micardis)

テルミサルタンは、高血圧症や心不全・腎症の進行抑制に使用される、ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)です。
血管を拡張して血圧を下げ、心血管イベントや腎障害のリスクを軽減します。

項目 内容
一般名 テルミサルタン(Telmisartan)
剤形 内服錠(20mg, 40mg, 80mg)
適応症 高血圧症、心不全、糖尿病性腎症の進行抑制
保険適用 ○(保険診療にて処方可能)
特徴 半減期が長く、1日1回投与で安定した効果が期待できる薬剤です。
糖尿病や慢性腎臓病(CKD)患者にも適応があり、臓器保護作用にも注目されています。

● 主な副作用にはめまい、低血圧、高カリウム血症、腎機能障害などがあります。
● 他の降圧薬(CCB、利尿薬など)との併用も多く、腎機能をモニタリングしながら継続投与されることが一般的です。

💡 テルミサルタンの作用と使い方

■ 血圧を下げるしくみ(ARB:アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)

テルミサルタンはARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)に分類され、血管を収縮させるホルモン「アンジオテンシンⅡ」の働きをブロックすることで、血管を拡げて血圧を下げる薬です。

■ 糖尿病や腎臓病にも有用

テルミサルタンは糖尿病性腎症や心血管疾患のリスク低減にも使われる薬で、臓器保護作用が期待できる点が特徴です。
高血圧治療の中でも心血管イベント予防に力を発揮します。

■ 服用方法と注意点

● 通常は1日1回、朝食後に40mg~80mgを内服します(症状に応じて調整)。
● 体液量が不足している場合は初回から低用量で慎重に開始する必要があります。
高カリウム血症や腎機能障害に注意が必要です。

■ よくある副作用

主な副作用にはめまい、低血圧、倦怠感があります。
また、まれに高カリウム血症や腎機能悪化を引き起こすことがあるため、定期的な採血によるモニタリングが重要です。

■ 効果の実感まで:1週間程度

一般的には数日~1週間で血圧が徐々に低下していきます。
塩分制限や体重管理など、生活習慣の見直しと合わせることで、より効果が高まります。

✅ テルミサルタンは腎臓や血管を守りながら血圧を下げる薬です。
継続的な服用と生活習慣の改善を組み合わせることで、長期的な健康維持につながります。

💊 テルミサルタンの適応疾患と使い分け

テルミサルタンは、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)に分類され、血管を収縮させるホルモン「アンジオテンシンⅡ」の作用をブロックすることで、血圧を下げ、腎臓や心血管の保護にも寄与します。

✅ 主な適応疾患

疾患名 解説
高血圧症 血管拡張とRA系抑制による降圧作用。第一選択薬の一つ。
糖尿病性腎症 尿中アルブミンを減らし、腎機能の進行抑制が期待される。
心不全(軽度~中等度) 心臓の負荷軽減と心機能維持に使用される。
高リスクの心血管疾患予防 動脈硬化や脳心血管イベントのリスク低減目的で処方される。

✅ 他の降圧薬との使い分け

分類 主な薬剤 使い分けのポイント
CCB アムロジピン など 動脈硬化・狭心症に優れ、ARBと併用されることが多い。
ACE阻害薬 エナラプリル など 空咳などの副作用が出た場合はARBへ変更される。
利尿薬 ヒドロクロロチアジド など 体液量の調整が必要な場合に併用される。
β遮断薬 ビソプロロール など 心疾患や頻脈のある症例に適応される。

✅ テルミサルタンが向いている患者

  • 糖尿病や蛋白尿を伴う高血圧の方
  • ACE阻害薬で空咳が出た方
  • 心血管疾患の予防を重視する方
  • 腎機能低下のリスクを伴う患者

テルミサルタンは臓器保護作用に優れ、腎疾患や心血管リスクの高い患者にとって非常に有用な薬剤です。
高カリウム血症や腎機能の変化には注意しながら、長期的なコントロールを目指しましょう。

💊 ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)の比較一覧

ARBはすべて高血圧に適応がありますが、半減期や臓器保護作用、心血管イベント抑制効果などに違いがあります。患者の状態に応じて最適な薬剤を選択することが重要です。

薬剤名 商品名(代表例) 作用時間 特徴・適応 リンク
ロサルタン ニューロタン 中程度(6~9時間) ARB初の薬剤。尿酸排泄促進の作用が特徴。 ▶ 詳細
バルサルタン ディオバン 中程度(6~24時間) 心不全・心筋梗塞後にも適応。 ▶ 詳細
カンデサルタン ブロプレス 長め(9~12時間) 心不全や高血圧両方で使用される代表薬。 ▶ 詳細
オルメサルタン オルメテック 長め(13時間以上) 強力な降圧作用。若年者の本態性高血圧にも。 ▶ 詳細
テルミサルタン ミカルディス 非常に長い(24時間以上) 心血管疾患予防効果が明示された数少ないARB。 ▶ 詳細
アジルサルタン アジルバ 非常に長い(30時間以上) ARBの中で最も強力な降圧作用。比較的新しい薬。 ▶ 詳細

✅ すべてのARBは高血圧の第一選択薬ですが、腎疾患、心疾患、心不全、若年者、高齢者など、個別の病態に応じて選択されます。
作用時間が長い薬剤は、服薬アドヒアランス(継続率)向上にもつながります。

💊 アムロジピン・ARB・利尿薬の比較(高血圧治療)

高血圧治療では、患者の病態や合併症に応じて降圧薬を使い分けます。以下は、主要な3薬剤クラス(アムロジピン、ARB、利尿薬)の比較です。

分類 代表薬剤 作用機序 主な適応・使い分け 副作用・注意点
カルシウム拮抗薬 アムロジピン 血管平滑筋のCa²⁺流入を抑制 → 血管拡張 高齢者・腎機能低下・冠動脈疾患・夜間高血圧に むくみ、動悸、歯肉肥厚(長期使用)
ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬) ロサルタン、テルミサルタンなど アンジオテンシンⅡによる血管収縮・アルドステロン分泌を阻害 糖尿病、蛋白尿、心不全合併例、腎保護目的に 高K血症、腎機能低下、妊娠禁忌
利尿薬 ヒドロクロロチアジド、トリクロルメチアジド Na⁺・水分排泄促進 → 循環血液量減少 高齢者、心不全、浮腫合併、夜間高血圧に 低K血症、高尿酸血症、耐糖能悪化

✅ 一般的にはアムロジピン+ARBの併用が標準的であり、浮腫が強い場合は利尿薬追加など、症例に応じて調整します。
✅ 特に、腎保護目的や蛋白尿・糖尿病合併のある患者ではARBが優先される傾向があります。

■ おすすめの方

  • ✔️ 高血圧症のコントロールを目指す方
  • ✔️ 心筋梗塞や脳卒中の再発予防をしたい方
  • ✔️ 糖尿病性腎症の進行を予防したい方(RAAS系抑制による腎保護)

■ 注意が必要な方

  • ⚠️ 腎動脈狭窄がある方(腎機能の悪化に注意)
  • ⚠️ 高カリウム血症の既往がある方
  • ⚠️ 重度の腎障害や肝障害がある方
  • ⚠️ 利尿薬と併用している方(過度な血圧低下に注意)
  • ⚠️ 血圧が低めの方や脱水傾向にある方

■ 服用できない方(禁忌)

  • ❌ テルミサルタンの成分にアレルギーのある方
  • ❌ 妊娠中、または妊娠の可能性がある方
  • ❌ 重度の肝機能障害(胆汁うっ滞性肝疾患を含む)のある方
  • ❌ アリスキレンを服用中の糖尿病患者

■ 主な副作用

比較的よくある副作用:

  • ・めまい、ふらつき
  • ・疲労感、頭痛、消化不良

重大な副作用(まれですが注意が必要):

  • 高カリウム血症(しびれ、不整脈)
  • 腎機能障害、急性腎不全
  • 肝障害(黄疸やAST/ALT上昇など)
  • アナフィラキシー反応

■ 他のお薬との併用について

  • NSAIDsとの併用は、腎機能悪化の可能性があるため注意
  • カリウム製剤、カリウム保持性利尿薬との併用で高カリウム血症のリスクあり
  • アリスキレンとの併用は、糖尿病がある方では禁忌
  • ・他の降圧薬(CCB、利尿薬)と併用可能だが、過度な血圧低下に注意

■ 食事・生活上の注意

  • 塩分を控えることが治療効果を高めます
  • カリウムを多く含む食品(例:バナナ、ほうれん草、納豆)の過剰摂取に注意
  • ・水分バランスを保つため、脱水にならないよう気をつける
  • ・定期的な血圧測定や血液検査(特に腎機能・カリウム)を受けましょう

✅ テルミサルタンは、高血圧や心血管リスクのコントロールにおいて有用なARBです。
自分に合った服薬を安全に続けるために、医師の指導と定期的なフォローアップを大切にしましょう。

■ テルミサルタンのエビデンスと推奨事項

  • 24時間以上持続する降圧効果を持ち、1日1回の服用で安定した血圧コントロールが可能です。
  • 心血管イベントの再発予防に関する有効性が、ONTARGET試験でプラセボおよびACE阻害薬と比較され示されています。
  • ● ARBの中でも糖尿病性腎症や心血管疾患リスクを持つ患者に適応がある薬剤として位置づけられています。

■ 代表的なエビデンスと出典

✅ テルミサルタンは長時間作用型ARBの代表薬として、心血管リスクの高い患者に対してもエビデンスに基づく使用が可能です。
特にACE阻害薬に不耐な患者への代替としても重要な位置を占めています。

🗣️ テルミサルタンを使用した患者さんの声

他の降圧薬で咳が出ていたのですが、テルミサルタンに変えてから副作用もなく調子がいいです。1日1回の服用で済むのも便利です。
※これはあくまで個人の感想であり、効果には個人差があります。

糖尿病の合併症予防としてテルミサルタンを使っています。医師からも心臓や腎臓を守る作用があると説明されて納得して服用を続けています。
※これはあくまで個人の感想であり、効果には個人差があります。

❓ よくある質問(FAQ)

通常は朝1回の服用で効果が持続します。毎日同じ時間帯に服用することが望ましいです。

気づいた時点で早めに服用してください。ただし、次の服用時間が近い場合は1回分を飛ばしてください
※2回分を一度に飲むことは避けましょう。

主な副作用はめまい、低血圧、電解質異常(高カリウム血症)などです。
異常を感じた場合はすぐに医師に相談してください。

はい。カルシウム拮抗薬や利尿薬などと併用することで、より効果的な血圧コントロールが可能です。
ただし、ACE阻害薬やアリスキレンとの併用は腎障害や高カリウム血症のリスクがあるため注意が必要です。

テルミサルタンは妊娠中には使用できません。胎児への影響があるため、妊娠の可能性がある場合は必ず医師に相談してください。

はい。長期使用においても有効性と安全性が確認されている薬剤です。
定期的な血液検査と血圧測定を行いながら、医師の指示に従って服用を継続してください。

💰 テルミサルタン(ミカルディス)の薬価と自己負担について

テルミサルタン(先発品名:ミカルディス)は、高血圧や心血管リスク管理に用いられるARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)です。以下に代表的な製剤の薬価と自己負担額の目安(3割・1割)を示します。

■ 保険診療での薬価(2024年改定時点)

製剤名 薬価(単価) 服用量(1ヶ月) 薬剤費(3割負担)
ミカルディス錠20mg 20.7円/錠 30錠(1日1錠) 約186円
ミカルディス錠40mg 32.1円/錠 30錠 約289円
ミカルディス錠80mg 42.9円/錠 30錠 約386円
テルミサルタン錠20mg「ケミファ」(後発品) 10.4円/錠 30錠 約94円
テルミサルタン錠40mg「ケミファ」(後発品) 17.3円/錠 30錠 約156円
テルミサルタン錠80mg「ケミファ」(後発品) 25.6円/錠 30錠 約230円

■ 自己負担の目安(30日分)

  • 先発品20mg: 3割 → 約186円 / 1割 → 約62円
  • 後発品20mg: 3割 → 約94円 / 1割 → 約31円
  • ● 医療機関での診察料・調剤料・薬局管理料などは別途必要です

✅ テルミサルタンは1日1回の服用で24時間効果が持続する便利なARBです。
先発品(ミカルディス)と後発品の効果は基本的に同等であり、コスト面から後発品を選ぶ患者さんも多くいます。
心血管イベントの予防にも効果が期待される薬剤ですので、医師の指示に従って継続的に服用しましょう。

👨‍⚕️ 医師からのコメント・監修

テルミサルタン(ミカルディス)
「テルミサルタンは24時間作用が持続するARBの中でも、特に心血管イベント予防効果が示された薬剤です。
肝代謝型であることから、腎機能が低下している方にも比較的使いやすい点が特徴です。」

当院では、生活習慣や合併症の有無、他の降圧薬との相性を踏まえて、テルミサルタンを選択することが多くあります。
特に高リスクな高血圧患者さんにおいて、長期的な予防効果も期待できる重要な薬剤の一つです。
ご自身に合った降圧治療を一緒に考えていきましょう。

監修:黒田揮志夫 医師(病理専門医/総合診療医)
0th CLINIC 日本橋 院長
日本病理学会認定 病理専門医/総合診療・救急医療における診療経験10年以上

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