糖尿病網膜症|早期発見と適切治療で「見え方」を守る

糖尿病網膜症|早期発見と適切治療で「見え方」を守る

多くは初期自覚症状なし定期検査血糖・血圧・脂質の最適化、必要に応じて 抗VEGF注射・レーザー(PRP/フォーカル)・硝子体手術を組み合わせて進行を抑えます。

糖尿病網膜症とは

長期の高血糖や血圧・脂質異常などで網膜の微小血管が傷み、出血・浮腫・虚血を起こす合併症です。 初期は無症状でも進行すると視力低下・見えにくさにつながります。早期発見・早期治療で予後が大きく変わります。

こんな時はすぐ受診(眼科・救急へ)

  • 突然の視力低下、片眼が見えにくい/かすむ
  • 飛蚊症の急増(黒い点・すすのような影が急に増えた)、光が走る(光視症)
  • 視野のカーテン症状(網膜剥離・硝子体出血が疑わしい)
  • 強い眼痛や充血・吐き気を伴うとき(他疾患も含め至急)

迷ったら早めに眼科へ。運転は控えてください。

検診スケジュール(初回のタイミングと頻度)

対象初回の目安その後の目安
2型糖尿病診断時異常なし+良好な血糖なら1〜2年ごと。所見ありは少なくとも年1回以上。
1型糖尿病発症5年以内に初回(若年発症は10歳以降)以後は上記に準ずる(所見により短縮)。
妊娠を予定/妊娠中妊娠前または初回妊婦健診時トリメスターごと、必要に応じ産後1年まで継続フォロー。

院内・連携施設での散瞳眼底検査が基本です。眼底写真による遠隔スクリーニングも状況により活用します。

病期と用語(NPDR / PDR / DME)

  • NPDR(非増殖糖尿病網膜症):微小血管瘤・点状出血・軟性白斑など。中等度〜重症では進行リスク高
  • PDR(増殖糖尿病網膜症):虚血で異常新生血管が生じ、硝子体出血や牽引性網膜剥離の原因に。
  • DME(糖尿病黄斑浮腫):黄斑(ものを見る中心)が腫れて視力低下。中心窩を含む「中心窩関与DME」は治療優先度が高い。

検査(何を見ている?)

  • 散瞳眼底検査:病変の有無・部位・重症度を評価。
  • OCT:黄斑浮腫の厚み・範囲を立体的に評価。
  • 蛍光眼底造影:虚血域・新生血管・漏出の範囲を把握(必要時)。
  • カラー眼底写真/遠隔スクリーニング:初期変化の拾い上げや経時比較に有用。

治療(症状・所見に合わせて選択)

  • 抗VEGF硝子体注射(アフリベルセプト/ラニビズマブ/ベバシズマブ): 中心窩関与DMEの第一選択。視力・浮腫の改善が期待できます(視力が悪いほどアフリベルセプト優位の場面あり)。
  • レーザー治療PRP(汎網膜光凝固)はPDRの標準治療。フォーカル/グリッドは黄斑周辺の漏出点に実施。
  • 硝子体手術: 硝子体出血の遷延、牽引性網膜剥離、黄斑牽引が強いときに検討。
  • 併用・切替: 抗VEGFとPRPを状況に応じて併用。通院困難・アドヒアランス不安がある場合はPRPを優先することも。

治療選択は「視力・OCT所見・通院状況・合併症」を総合判断します。最適解は人によって異なります。

進行を抑える全身管理(とても大事)

  • 血糖:目標HbA1cは個別化。厳格化で発症・進行を大幅に減少(長期的な“記憶効果”も)。
  • 血圧:降圧で進行リスク低下。腎疾患の併存にも注意。
  • 脂質:スタチンを基本に、必要に応じて他剤。フェノフィブラートは一部試験で進行抑制が示唆(適応や全身管理を主治医と相談)。
  • 禁煙・運動・睡眠:血管保護のベース。

妊娠と網膜症

  • 妊娠前〜初期に眼底検査。以後各トリメスターで経過観察、必要なら産後1年まで。
  • 妊娠で進行しやすいことがあるため、血糖・血圧の安全な最適化と連携診療が重要です。

生活・運転・お仕事

  • 運転:視力・視野基準に注意。視力低下や治療直後は安全確認を。
  • 仕事・学業:点眼・注射日程の調整、眩しさ対策(遮光レンズ)、書類作成に対応します。
  • デジタル負荷:輝度・コントラスト・休憩(20-20-20ルール)で眼精疲労を軽減。

フォロー間隔の目安(個別条件で前後します)

状態目安
所見なし/軽症NPDR6〜12か月(良好コントロールかつ所見なしは1〜2年も可)
中等度NPDR3〜6か月
重症NPDR1〜3か月(網膜専門医に紹介)
PDR / DME早期(数日〜数週以内)に治療計画、以後は治療プロトコルに準拠

よくある質問

症状がなくても通院は必要?
必要です。初期は自覚症状に乏しく、検診でのみ見つかることが多いからです。
一度良くなったら再発しませんか?
全身状態や通院状況で再燃することがあります。定期検査と生活・薬剤の最適化を続けましょう。
注射とレーザー、どちらが良い?
病態で使い分けます。中心窩関与DMEは注射が第一選択、PDRはPRPが標準ですが、状況により併用も行います。

💊 糖尿病治療薬の種類と特徴

糖尿病治療では、血糖値を下げるための薬を使うことがあります。
病態や合併症の有無に応じて、内服薬や注射薬を適切に組み合わせて治療します。

🔷 主な内服薬(経口血糖降下薬)

  • ビグアナイド薬(メトホルミンなど)
    ─ 肝臓での糖の産生を抑える。体重が気になる方にも適応されます。
  • SGLT2阻害薬
    ─ 尿から糖を排出する薬。体重減少や血圧改善も期待されます。
  • DPP-4阻害薬
    ─ 食後のインスリン分泌を助ける薬。低血糖を起こしにくいのが特徴です。
  • スルホニル尿素薬(SU薬)
    ─ インスリン分泌を促進する薬。やや低血糖を起こしやすいので注意。
  • α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)
    ─ 糖の吸収をゆっくりにすることで、食後高血糖を抑えます。

💉 注射薬(インスリン・GLP-1受容体作動薬)

  • インスリン製剤
    ─ 血糖値を直接下げるホルモンを補う薬。1型糖尿病や重症の2型糖尿病で使用。
  • GLP-1受容体作動薬
    ─ インスリン分泌を促進し、食欲を抑える注射薬。週1回の製剤もあり、肥満のある方にも有効です。

📋 副作用や注意点

  • 低血糖(特にSU薬・インスリン使用中)
  • 吐き気・食欲不振(GLP-1受容体作動薬)
  • 尿路感染症・脱水(SGLT2阻害薬)
  • 腎機能や肝機能の状態により、使用できない薬もあります

🏥 通院・血液検査が大切です

糖尿病は「症状が出にくい」慢性疾患です。
自己判断で薬を中断せず、定期的に診察・HbA1cや腎機能の検査を受けて、合併症を予防しましょう。

💊 糖尿病治療薬の種類と特徴

糖尿病の治療薬は多岐にわたります。以下は、日本国内で使用される代表的な薬剤とその特徴をまとめたものです。

🟢 経口血糖降下薬(内服薬)

① ビグアナイド薬(Biguanides)

② スルホニル尿素薬(SU薬)

③ 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド系)

④ α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)

⑤ チアゾリジン薬(TZD)

⑥ DPP-4阻害薬

⑦ SGLT2阻害薬

💉 注射薬(インスリン・GLP-1受容体作動薬)

① GLP-1受容体作動薬

② インスリン製剤(分類別)

それぞれの薬剤は、患者さんの体質・合併症・ライフスタイルに応じて選択されます。
詳しくは医師にご相談ください。

GLP-1受容体作動薬の作用メカニズム

糖尿病網膜症|早期発見と適切治療で「見え方」を守る

GLP-1受容体作動薬は、インスリン分泌促進食欲抑制胃の排出遅延などの作用を通じて血糖値をコントロールします。
また、体重減少効果もあることから、2型糖尿病や肥満治療にも用いられます。

こんな方はご相談ください

  • のどが渇く、水をたくさん飲む
  • 尿の量や回数が増えた
  • 食欲があるのに体重が減る
  • 疲れやすい、だるい
  • 手足のしびれ
  • ケガが治りにくい
  • 健康診断で血糖値やHbA1cが高いと言われた

症状から探す

糖尿病網膜症:エビデンス&ガイドライン・実務

糖尿病網膜症は初期は自覚症状が乏しい一方、進行すると視力低下につながる合併症です。 定期検診全身管理(血糖・血圧・脂質)、必要に応じた抗VEGF注射・レーザー(PRP/フォーカル)・硝子体手術を組み合わせ、 「見え方」を守ることを目標にします。治療効果は数週〜数か月かけて現れることが多く、継続的なフォローが大切です。

🏛 学会・専門ガイドライン(標準の考え方)

  • ADA Standards of Care:検診頻度と全身管理、DME/PDRに対する治療概略。
  • AAO Preferred Practice Pattern:NPDR/PDR/DMEの診療アルゴリズムと検査適応。
  • DRCR.net など臨床試験:DMEの第一選択として抗VEGF、PDRへのPRP/抗VEGFの位置づけ。

👀 検診スケジュール(初回のタイミングと頻度)

対象初回の目安その後の目安
2型糖尿病診断時に眼底検査異常なし・良好コントロールなら1〜2年ごと/所見ありは少なくとも年1回以上
1型糖尿病発症5年以内に初回(若年発症は10歳以降)以後は所見・全身状態に応じて間隔調整
妊娠予定/妊娠中妊娠前〜初回妊婦健診時に検査トリメスターごと+必要に応じ産後1年までフォロー

院内・連携施設での散瞳眼底検査が基本。状況により眼底写真の遠隔スクリーニングも活用します。

🗂 病期と対応(NPDR / PDR / DME)

区分主な所見推奨対応の例
NPDR(軽症〜重症) 微小血管瘤・出血・白斑/重症では広範囲虚血 全身管理の最適化。中等度〜重症は進行リスク高のため3〜6か月フォロー、必要時に専門医紹介
PDR(増殖) 異常新生血管、硝子体出血、牽引性網膜剥離 PRP(汎網膜光凝固)を基本に、症例により抗VEGF併用/早期に手術検討
DME(黄斑浮腫) 中心窩浮腫で視力低下しやすい 抗VEGF注射が第一選択。通院困難や反応不十分ではレーザー/ステロイド製剤/手術を検討

🧪 検査(何を見て、どう決める?)

  • 散瞳眼底検査:病期判定、出血・白斑・新生血管の分布を評価。
  • OCT:DMEの厚み・範囲・網膜構造を定量化し、治療効果をフォロー。
  • 蛍光眼底造影(/OCTA):虚血域や漏出の同定、治療計画の補助に。

💊 治療(症状・所見・通院状況で個別化)

  • 抗VEGF硝子体注射(アフリベルセプト/ラニビズマブ等): 中心窩関与DMEの第一選択。初期は月1回程度の導入後、反応に応じてTreat & Extendなどで間隔調整。
  • レーザー治療PRPはPDRの標準。フォーカル/グリッドは漏出点や黄斑周辺に。通院継続が難しい場合はPRPを優先することも。
  • 硝子体手術: 硝子体出血の遷延、牽引性網膜剥離、強い黄斑牽引などで検討。
  • ステロイド製剤(デキサメタゾンインプラント等): 抗VEGF反応不十分や併用の選択肢。眼圧上昇・白内障に留意。

最適な選択は「視力・OCT所見・合併症・通院可否」で変わります。方針は定期的に見直します。

🫀 進行を抑える全身管理(とても大切)

  • 血糖:目標HbA1cは個別化。厳格化は発症・進行を抑制(長期の“記憶効果”)。
  • 血圧:降圧で進行リスク低下。腎疾患や睡眠時無呼吸の合併に注意。
  • 脂質:スタチンを基本に必要時追加。フェノフィブラートが進行抑制に有用な報告あり(適応は主治医と相談)。
  • 禁煙・運動・睡眠:血管保護のベースを整える。
🚑 こんな時はすぐ受診(眼科・救急)
  • 突然の視力低下・かすみ、片眼の急な見えづらさ
  • 飛蚊症が急増した/光が走る(光視症)
  • 視野にカーテンがかかる(網膜剥離・硝子体出血が疑わしい)
  • 強い眼痛や吐き気を伴うとき(他疾患含め至急)

📈 改善にかかる期間・予後の目安

  • DME:抗VEGFの効果は数週〜数か月でOCT厚みや視力が改善。複数回投与が一般的。
  • PDR:PRPの効果は数週で安定化へ。硝子体出血は自然吸収に時間を要し、遷延時は手術検討。
  • 長期予後:早期発見・継続治療・全身管理の徹底で、視機能の維持が期待できます。

🗓 フォロー間隔の目安(個別条件で前後します)

状態目安
所見なし/軽症NPDR6〜12か月(良好コントロールかつ所見なしは1〜2年も可)
中等度NPDR3〜6か月
重症NPDR1〜3か月(網膜専門医に紹介)
PDR / DME早期(数日〜数週以内)に治療計画、以後は治療プロトコルに準拠

🇯🇵 日本の公的情報・学会

まとめ: 糖尿病網膜症は「早期発見」「切れ目ないフォロー」が鍵。 検診と全身管理を軸に、抗VEGF・レーザー・手術を適切に組み合わせ、無理のない通院計画で視機能の維持を目指します。

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