高浸透圧高血糖症(HHS)のご相談なら|日本橋の内科 0th CLINIC(ゼロスクリニック)
高浸透圧高血糖症(HHS)|「脱水と高浸透圧」を安全に是正し、合併症を防ぐ
HHSは著明な高血糖・重度の脱水・高浸透圧が特徴の救急疾患。輸液・電解質・インスリン・誘因治療を適切な順序で行います。
HHSとは(Hyperosmolar Hyperglycemic State)
HHSは、極めて高い血糖(多くは600mg/dL超)に伴う高度脱水と高浸透圧(有効/総浸透圧の上昇)を主徴とし、ケトーシスやアシドーシスは軽微であることが多い救急疾患です。高齢者や2型糖尿病で多く、感染症・ステロイド・向精神薬・栄養管理(経管/TPN)などが誘因となります。
HHSはDKAよりも死亡率が高いことが知られており、迅速な医療機関受診・入院管理が必要です。
緊急性と初期対応
- 迷ったら救急要請:強い口渇・多尿/無尿、ふらつき、錯乱/意識障害、痙攣、発熱や感染徴候があれば直ちに119番または救急外来へ。
- 自宅での応急:可能なら安静臥床、糖分を含まない水分を少量ずつ。運動は厳禁。SGLT2阻害薬内服者は自力判断での追加内服をしない。
- 持参情報:常用薬、インスリン/センサー機器、最近の採血/血糖記録、発熱・下痢など誘因の手掛かり。
診断基準(代表例)
項目 | HHSの目安 | 補足 |
---|---|---|
血糖 | ≧ 600 mg/dL(33.3 mmol/L) | しばしば極端に高値 |
血清浸透圧 | 有効または総浸透圧 ≧ 320 mOsm/kg | ナトリウム補正を考慮 |
pH / HCO3– | pH > 7.30、HCO3– > 15 mEq/L | アシドーシスは軽微/なし |
ケトン | 尿/血中で陰性〜軽度 | 混合(HHS+DKA)もあり得る |
臨床 | 著明な脱水、意識変容(錯乱〜昏睡) | 神経学的症状に注意 |
DKAとの違い(簡易比較)
指標 | HHS | DKA |
---|---|---|
血糖 | > 600 mg/dL | > 250 mg/dL |
血清浸透圧 | > 320 mOsm/kg | 多くは正常〜軽度上昇 |
pH | > 7.30 | ≦ 7.30 |
重炭酸(HCO3–) | > 15 mEq/L | < 18 mEq/L |
ケトン | 陰性〜軽度 | 陽性 |
主な病態 | 脱水・高浸透圧 | ケトーシス・アシドーシス |
好発 | 2型・高齢 | 1型・若年(ただし2型でも発症) |
死亡率 | 高い(10–20%程度) | 低い(概ね1–5%程度) |
HHSとDKAの混合(overlap)も一定割合で存在し、死亡率が上がるため入院管理下での厳密な評価が必要です。
治療の全体像(入院・モニタリング下)
- 輸液(最優先):等張食塩水で循環再建。まずは血圧・尿量を安全に回復し、浸透圧の下降は3–8 mOsm/kg/時を目安に緩徐に。
- 電解質補正:特にK+。3.5–5.5 mEq/Lを保つよう補正(腎機能・尿量を前提)。Na+は24時間で10 mmol/L以内の低下を目安。
- インスリン:輸液で血糖低下が頭打ちになってから持続静注を開始(過速な浸透圧変化<脳浮腫・循環虚脱>を回避)。血糖は最初の24時間は150–270 mg/dL(10–15 mmol/L)帯へ緩徐に。
- 誘因治療:感染症(抗菌薬)、心血管イベント、薬剤(ステロイド・向精神薬・免疫抑制薬)、栄養管理(経管/TPN)などを是正。
- 予防的対応:VTE予防、足病変ケア、誤嚥・せん妄対策、圧迫/褥瘡予防。
- モニタリング:血糖は毎時、血液ガス/電解質・浸透圧は2–4時間毎を目安に(病態により短縮)。
改善までの目安(日数)と予後
- 24時間での目標:循環動態の安定、尿量≧0.5 mL/kg/時、血糖10–15 mmol/L(180–270 mg/dL)帯、浸透圧は3–8 mOsm/kg/時で緩徐に低下。
- HHSの「解消」基準(代表例):総/有効浸透圧 < 300 mOsm/kg、血糖 < 250–270 mg/dL、尿量回復、意識レベルが発症前に復す。
- 完全是正の所要:電解質・浸透圧の完全正常化には48–72時間かかることがあります。
- 予後:HHSの院内死亡率は概ね10–20%と報告され、DKAより高い傾向。混合型(HHS+DKA)ではさらに不良例があり、早期治療が重要です。
再発予防(退院後)
- 誘因の再評価:薬剤(ステロイド・向精神薬・免疫抑制薬等)の最適化、感染症コントロール、脱水予防。
- 血糖自己管理:SMBG/CGMでの発熱・下痢・食思不振時(シックデイ)対応。インスリン/基礎薬は勝手に中止しない。
- 教育・連携:低/高血糖時の自己対処、緊急受診の判断、かかりつけとの連絡体制。
よくある質問
どれくらいで良くなりますか?
死亡率はどのくらいですか?
インスリンは最初からたくさん使いますか?
DKAとの違いを一言で?
関連ページ(院内リソース)
👨⚕️ 医師からのコメント・監修(HHS)

「HHSは“急がば回れ”。まず輸液で循環と浸透圧を安全に整え、過度に速い補正を避けることが合併症を減らします。」
- 浸透圧の低下目標は3–8 mOsm/kg/時。Na+は24時間で10 mmol/L以内の変化に。
- インスリンは輸液の効果を評価してから開始。混合型(HHS+DKA)では早期から必要となる場合も。
- VTE・せん妄・足病変など院内合併症予防を同時に。
0th CLINIC 日本橋 院長/医学博士(心臓血管外科学)
日本病理学会認定 病理専門医/元外科専門医/日本プライマリケア連合学会認定 プライマリケア認定医
💊 糖尿病治療薬の種類と特徴
糖尿病治療では、血糖値を下げるための薬を使うことがあります。
病態や合併症の有無に応じて、内服薬や注射薬を適切に組み合わせて治療します。
🔷 主な内服薬(経口血糖降下薬)
- ビグアナイド薬(メトホルミンなど)
─ 肝臓での糖の産生を抑える。体重が気になる方にも適応されます。 - SGLT2阻害薬
─ 尿から糖を排出する薬。体重減少や血圧改善も期待されます。 - DPP-4阻害薬
─ 食後のインスリン分泌を助ける薬。低血糖を起こしにくいのが特徴です。 - スルホニル尿素薬(SU薬)
─ インスリン分泌を促進する薬。やや低血糖を起こしやすいので注意。 - α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)
─ 糖の吸収をゆっくりにすることで、食後高血糖を抑えます。
💉 注射薬(インスリン・GLP-1受容体作動薬)
- インスリン製剤
─ 血糖値を直接下げるホルモンを補う薬。1型糖尿病や重症の2型糖尿病で使用。 - GLP-1受容体作動薬
─ インスリン分泌を促進し、食欲を抑える注射薬。週1回の製剤もあり、肥満のある方にも有効です。
📋 副作用や注意点
- 低血糖(特にSU薬・インスリン使用中)
- 吐き気・食欲不振(GLP-1受容体作動薬)
- 尿路感染症・脱水(SGLT2阻害薬)
- 腎機能や肝機能の状態により、使用できない薬もあります
🏥 通院・血液検査が大切です
糖尿病は「症状が出にくい」慢性疾患です。
自己判断で薬を中断せず、定期的に診察・HbA1cや腎機能の検査を受けて、合併症を予防しましょう。
💊 糖尿病治療薬の種類と特徴
糖尿病の治療薬は多岐にわたります。以下は、日本国内で使用される代表的な薬剤とその特徴をまとめたものです。
🟢 経口血糖降下薬(内服薬)
① ビグアナイド薬(Biguanides)
- メトホルミン(メトグルコ®、グリコラン®):肝臓での糖新生抑制、第一選択薬。下痢などの副作用に注意。
② スルホニル尿素薬(SU薬)
- グリベンクラミド(オイグルコン®)
- グリクラジド(グリミクロン®)
- グリメピリド(アマリール®):低血糖と体重増加に注意。
③ 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド系)
④ α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)
⑤ チアゾリジン薬(TZD)
- ピオグリタゾン(アクトス®):インスリン抵抗性改善。浮腫や体重増加に注意。
⑥ DPP-4阻害薬
⑦ SGLT2阻害薬
💉 注射薬(インスリン・GLP-1受容体作動薬)
① GLP-1受容体作動薬
- リラグルチド(ビクトーザ®)
- デュラグルチド(トルリシティ®)
- セマグルチド(オゼンピック®、ウゴービ®)
- チルゼパチド(マンジャロ®):GIP/GLP-1デュアル作動薬。強力な血糖・体重コントロール。
② インスリン製剤(分類別)
- 超速効型インスリン(食事直前に使用)
アスパルト(ノボラピッド®) / リスプロ(ヒューマログ®) / グルリジン(アピドラ®) / フィアスプ® / ルムジェブ® - 速効型インスリン(食前30分投与)
レギュラーインスリン(ノボリンR®、ヒューマリンR®) - 混合型インスリン(プレミックス)
ノボラピッド®30ミックス・50ミックス・70ミックス / ヒューマログ®ミックス25・50 - 中間型インスリン
NPHインスリン(ノボリンN®、ヒューマリンN®) - 持効型インスリン(持続時間:約24時間)
グラルギン(ランタス®、ランタスXR®) / デグルデク(トレシーバ®) / デテミル(レベミル®) - 配合注射(インスリン+GLP-1受容体作動薬)
ソリクア®(グラルギン+リキシセナチド) / ゾルトファイ®(デグルデク+リラグルチド)
それぞれの薬剤は、患者さんの体質・合併症・ライフスタイルに応じて選択されます。
詳しくは医師にご相談ください。
GLP-1受容体作動薬の作用メカニズム

GLP-1受容体作動薬は、インスリン分泌促進、食欲抑制、胃の排出遅延などの作用を通じて血糖値をコントロールします。
また、体重減少効果もあることから、2型糖尿病や肥満治療にも用いられます。
こんな方はご相談ください
- のどが渇く、水をたくさん飲む
- 尿の量や回数が増えた
- 食欲があるのに体重が減る
- 疲れやすい、だるい
- 手足のしびれ
- ケガが治りにくい
- 健康診断で血糖値やHbA1cが高いと言われた
症状から探す
高浸透圧高血糖症(HHS)は、極端な高血糖・重度の脱水・高浸透圧を主徴とし、顕著なケトーシスやアシドーシスを欠く病態です。脳合併症や血栓症のリスクが高く、段階的な補液と慎重な浸透圧低下が鍵になります(改善は48–72時間かけて進むことが多い)。死亡率はDKAより高く、成人で10–20%と報告されています。:contentReference[oaicite:0]{index=0}
🏛 学会・専門ガイドライン(診断・治療の標準)
- 国際コンセンサス 2024(ADA/EASD/JBDS/AACE/DTS):HHSの診断基準・治療経路・解決(resolution)基準を更新。図表でHHS診断(血糖・有効浸透圧・βOHB・pH/HCO3)や治療パスを提示。:contentReference[oaicite:1]{index=1}
- JBDS 成人人HHSガイド 2023:5段階の時間軸(0–60分、1–6h、6–12h、12–24h、24–72h)、浸透圧低下目標 3–8 mOsm/kg/h、HHS解決基準(浸透圧<300、意識回復など)を明示。:contentReference[oaicite:2]{index=2}
- Endotext(2025改訂):HHS診断4要件(血糖>600 mg/dL、有効浸透圧>300または総浸透圧>320、顕著なケトーシス/アシドーシスなし)と、浸透圧低下 3–8 mOsm/kg/h、Na低下は24時間で≤10 mmol/Lなど実務目標を整理。:contentReference[oaicite:3]{index=3}
- ADA Standards of Care 2025:「高血糖クライシス」節が新設。ハイレベルな診療方針と図を提供。:contentReference[oaicite:4]{index=4}
🔎 HHSの診断エビデンス(基準と式)
- 診断4要件(成人):①血糖>600 mg/dL(33.3 mmol/L)、②高浸透圧(有効浸透圧>300 mOsm/kg または 総浸透圧>320 mOsm/kg)、③β-ヒドロキシ酪酸<3.0 mmol/L(尿ケトン<2+)、④pH≧7.3 かつ HCO3≧15 mmol/L。:contentReference[oaicite:5]{index=5}
- 計算法の実務:有効浸透圧 = 2×Na(mmol/L)+ 血糖(mg/dL)/18(※尿素は除外)。総浸透圧は 2×Na+血糖+尿素(mmol/L)で評価する施設もあります(JBDS基準は総浸透圧式を採用)。施設基準に従い統一して評価。:contentReference[oaicite:6]{index=6}
- 鑑別・誘因:感染、薬剤中止/不遵守、心血管イベント、膵炎、ステロイド・利尿薬・抗精神病薬等。混合型(DKA/HHS)の存在にも注意。:contentReference[oaicite:7]{index=7}
🧪 診断・スクリーニングの実務
- 初期検査:血糖・電解質(Na/Cl/K/HCO3)・BUN/Cr、浸透圧(有効/総)、βOHB(推奨)/尿ケトン、血液ガス、完全血球計算、培養・胸写等は臨床状況に応じて。:contentReference[oaicite:8]{index=8}
- 重症度:意識障害・ショック・腎不全・著明高Na/高浸透圧・合併症(脳浮腫/VTE/肺水腫)を評価。:contentReference[oaicite:9]{index=9}
💧 治療の基本:フェーズ設計と目標
- 時間軸:0–60分 → 1–6h → 6–12h → 12–24h → 24–72hの5段階(JBDS)。:contentReference[oaicite:10]{index=10}
- 補液:まず0.9%NaClを500–1000 mL/h(2–4時間)で開始し循環再建。最初の12時間で欠乏量の約50%補正、24–48時間で残りを補正(高齢者・心腎機能で調整)。:contentReference[oaicite:11]{index=11}
- 浸透圧/Na目標:有効浸透圧の低下 3–8 mOsm/kg/h、Na低下は24時間で≤10 mmol/Lを目安(急速補正は脳合併症リスク)。:contentReference[oaicite:12]{index=12}
- インスリン:補液で浸透圧が低下しなくなった段階で固定速度静注を開始(原則:0.05–0.1 U/kg/h。ケトン陽性なら即時)。血糖が 14 mmol/L(≈252 mg/dL)未満になれば5–10%ブドウ糖投与併用で低血糖回避。:contentReference[oaicite:13]{index=13}
- K管理:開始前にK>3.5 mmol/Lを確保。4–5 mmol/Lを維持するよう補充(20–30 mmol/Lを輸液毎に目安)。K<3.5なら補正完了までインスリン遅延。:contentReference[oaicite:14]{index=14}
- 抗凝固:VTEリスク評価のうえ、標準的な予防投与を検討(全例への治療量投与は推奨されず)。:contentReference[oaicite:15]{index=15}
- 目標の再掲:グルコース低下は1時間あたり最大 ~5 mmol/L(≈90 mg/dL)目安。完全な生化学的正常化は最大72時間要することあり。:contentReference[oaicite:16]{index=16}
🚑 緊急性・来院前対応(患者さん・ご家族向け掲示用)
- 迷ったら救急要請:強い口渇、極度のだるさ・意識低下、けいれん、嘔吐、尿量減少や発熱・咳・尿路症状など感染兆候がある場合は、速やかに119番。:contentReference[oaicite:17]{index=17}
- 受診前のポイント:可能なら血糖・体温・バイタルを記録。内服/インスリンの最終投与時刻、持病・服薬(ステロイド・利尿薬・抗精神病薬など)をメモ。脱水が強い場合は無理に多飲せず救急へ。:contentReference[oaicite:18]{index=18}
📈 改善にかかる日数・予後の目安
- 生化学的改善:適切な補液・インスリン・電解質是正で48–72時間程度かけて段階的に改善。:contentReference[oaicite:19]{index=19}
- 神経症状:意識変容は浸透圧の緩徐な是正とともに回復するが、基礎疾患(脳血管障害等)で遷延も。:contentReference[oaicite:20]{index=20}
- 死亡率:成人では10–20%と報告(DKAより高い)。高齢・合併症・遅延受診で上昇。:contentReference[oaicite:21]{index=21}
🛠 実装の細則(院内フロー共有用)
- モニタリング:血糖(毎時)、電解質/腎機能/浸透圧(2–4時間毎)、尿量、神経所見、体液バランス。
- 輸液の切替:補液のみで浸透圧が順調に低下 → 継続。停滞/悪化 → インスリン静注開始。Naが上昇・高Na持続時は0.45%NaClも選択肢(循環動態と総量で調整)。:contentReference[oaicite:22]{index=22}
- 低血糖/低K/脳浮腫の予防:浸透圧とNaの過速低下を避ける(有効浸透圧 3–8 mOsm/kg/h、Na ≤10 mmol/L/日)。:contentReference[oaicite:23]{index=23}
- 原因治療:感染・心血管イベント・薬剤の見直し(中止/減量の是非)を同時並行で。:contentReference[oaicite:24]{index=24}
🇯🇵 日本の公的情報・学会
- 日本糖尿病学会(JDS):診療ガイドライン・学術情報
- 厚生労働省 e-ヘルスネット:糖尿病の基礎知識・生活情報
HHSは「緩徐で安全な是正」が最重要です。0.9%NaClを軸に段階的な補液、電解質管理、適切なタイミングでのインスリン静注、そして浸透圧・Naの“下げすぎ”回避が合併症を減らします。JBDSの時間軸パスと国際コンセンサスの目標値を組み合わせ、48–72時間を視野に安全に改善を図ります。受診時にこのセクションをご提示いただければ、個別事情(高齢・心腎機能・混合型など)に合わせて迅速にプランを作成します。
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