アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)(エンレスト)

エンレスト(サクビトリル/バルサルタン)|ARNIの基本情報|0th CLINIC 日本橋

エンレスト®(サクビトリル/バルサルタン)〈一般情報〉

本ページは患者さん向けの一般情報です。処方の可否・用量・用法は診察と検査に基づき、医師が個別に判断します。特定の効果の保証や製品の優越性の主張は行いません。

アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)(エンレスト)

▲ エンレスト錠(サクビトリル/バルサルタン)

概要(剤形・適応・特徴)

  • 一般名:サクビトリル/バルサルタン(ナトリウム水和物)
  • 剤形:内用錠(50mg / 100mg / 200mg ほか)
  • 適応:慢性心不全(左室駆出率低下型 等)、本態性高血圧
  • 分類:ARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)
  • 特徴:血圧・体液バランスに関与する2経路へアプローチ(詳細は右欄)
  • 備考:保険診療での処方可否・用量は診察と検査で個別判断

※本情報は一般向けです。自己調整は避け、医師の指示に従ってください。

作用の考え方(ARNI)

エンレストはARB(バルサルタン)ネプリライシン阻害薬(サクビトリル)の合剤です。2つの経路に働き、血管や体液バランスに影響します。

  • RAAS抑制(ARB):アンジオテンシンIIの作用を抑え、血管収縮を抑制。
  • NP系サポート(NEP阻害):ナトリウム利尿ペプチドの分解を抑え、血管拡張・利尿に寄与。
取り扱いの要点(一般情報)
  • 心不全では1日2回で用いられることがあります/高血圧では1日1回開始が用いられる場合あり。
  • ACE阻害薬と併用不可。切替時は36時間以上空ける取り扱いが一般的。
  • 腎機能・電解質・血圧を定期モニタリング。自己判断での増減・中断は避ける。

使い方の基本(一般情報)

  • 開始量・増減は病状・併用薬・腎機能等を踏まえ個別設計します。
  • 服用忘れや体調変化時(発熱・脱水等)の対応は、受診時に取り決めます。
  • 定期的な受診と検査(血圧・電解質・腎機能)が重要です。

安全上の注意点

  • 注意が必要な症状:低血圧高カリウム血症腎機能の変化、咳 など。
  • 腎機能障害、電解質異常、脱水時などは用量調整や中止判断が必要となる場合があります。
  • 他薬・サプリの併用状況は必ずお知らせください(相互作用の確認)。

※緊急時は受診先の指示に従ってください。詳細は診察時に説明します。

適する可能性がある方(目安)

  • 心不全の経過や血圧に対し、医師が有用と判断した場合
  • ACE阻害薬で咳などの副作用が問題となった場合
  • 高血圧治療で、他の降圧薬からの切り替え・併用を検討する状況 など

適さない可能性がある方(目安)

  • 医師が禁忌・不適と判断する状態(例:ACE阻害薬との併用、重篤な高カリウム血症 など)
  • 重い腎機能障害や脱水が疑われる場合、低血圧が続く場合
  • 自己調整が難しく指示に従えない環境 など

表現は医療広告ガイドラインおよびプラットフォームのポリシーに適合するよう随時見直します。

💊 エンレストの適応疾患と使い分け

エンレストは、ARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)に分類され、RAAS系とナトリウム利尿ペプチド系の両方に働きかける新しい心血管治療薬です。
心不全や高血圧において、血圧低下・心臓の負担軽減・再入院予防などが期待されます。

✅ 主な適応疾患

疾患名 解説
慢性心不全(HFrEF) 駆出率が低下した心不全に対し、再入院率・死亡率の低下が示されています。
高血圧症 RAAS抑制と利尿ペプチド増加による相乗作用で持続的な血圧コントロールが可能です。

✅ 他の降圧薬との使い分け

分類 主な薬剤 使い分けのポイント
ARB バルサルタン など エンレストにも含有。ネプリライシン阻害薬との併用で効果を増強。
ACE阻害薬 エナラプリル など 心不全治療薬として併用されるが、エンレストとの併用は禁忌。
β遮断薬 ビソプロロール など 心不全ではエンレストと併用し、拍動・リモデリングの両面を抑制。
利尿薬 トルバプタン、フロセミド など 水分管理が重要な心不全において、併用で浮腫軽減や体重減少が期待されます。

✅ エンレストが向いている患者

  • 繰り返す心不全再入院を予防したい患者
  • RAAS抑制単独での治療が不十分な方
  • 血圧変動が大きく、安定的な降圧を希望する方
  • ACE阻害薬で咳などの副作用が出た方

エンレストは、心不全治療のスタンダードを変える革新的薬剤です。
血圧コントロールから予後改善まで、幅広く心血管保護に貢献します。

💊 高血圧治療薬の比較(代表的な分類と作用機序)

高血圧治療薬は、患者の状態や合併症に応じて使い分けられます。ここではエンレストを含む代表的な薬剤の分類・作用機序・使い分けポイントを一覧で整理しています。

分類 代表薬剤 作用機序 主な適応・使い分け 副作用・注意点
ARNI エンレスト(サクビトリル+バルサルタン) RAAS抑制+ネプリライシン阻害による利尿ペプチド増加 高血圧+心不全に有効。持続的降圧と心保護に◎ 高K血症、腎機能低下、ACE阻害薬との併用禁忌
ARB オルメサルタン
テルミサルタン
アンジオテンシンⅡ受容体を遮断し血管拡張 腎保護作用あり。糖尿病や心血管リスク高に推奨 高K血症、腎動脈狭窄では慎重投与
ACE阻害薬 エナラプリル
リシノプリル
ACE阻害によりRAAS系を抑制 心不全や蛋白尿のある高血圧患者に有効 空咳、血管浮腫に注意。エンレストと併用不可
Ca拮抗薬(CCB) アムロジピン
ニフェジピン
Caチャネル遮断による血管平滑筋弛緩 高齢者・腎機能低下例・収縮期高血圧に有効 浮腫、動悸、歯肉肥厚など
利尿薬 ヒドロクロロチアジド
フロセミド
Na再吸収抑制により体液量を減少 浮腫・心不全合併例・塩分過多に適応 電解質異常、脱水、腎機能悪化に注意
β遮断薬 ビソプロロール
カルベジロール
交感神経の抑制により心拍数・心拍出量低下 高心拍・不整脈合併例に有効。心保護目的でも使用 徐脈、低血圧、喘息持ちでは注意

エンレストはRAAS抑制と利尿ペプチド増加の二重作用を持つ唯一の降圧薬であり、心不全治療薬としての保険適応もある点が特徴です。
患者の背景(心不全、蛋白尿、高K血症など)を考慮し、他剤との併用や使い分けを行うことが重要です。

■ エンレストのエビデンスと推奨事項

  • HFrEF(駆出率低下型心不全)における心血管死・心不全入院リスク低減が示され、ガイドラインで第一選択薬として推奨されています。
  • RAAS抑制とナトリウム利尿ペプチドの増加による二重作用を持つ唯一の治療薬です。
  • 日本人を含む多国籍試験においても降圧効果と安全性が確認されており、高血圧症への適応も拡大されています。

■ 代表的なエビデンスと出典

✅ エンレストは心不全の新しいスタンダード治療薬として位置づけられ、再入院率・死亡率を有意に低下させることが示されています。
高血圧においても、長時間持続型の降圧作用が期待され、特に心血管リスクの高い患者に有効とされています。

💰 エンレスト(サクビトリル/バルサルタン)の薬価と自己負担について

エンレストは心不全や高血圧の治療に用いられる新規作用機序の薬剤であり、RAAS抑制+ナトリウム利尿ペプチド分解抑制という2つの作用を併せ持ちます。
以下に各製剤の薬価と、3割負担時の1か月分(30日)での自己負担額の目安を示します。

■ 保険診療での薬価(2024年改定時点)

製剤名 薬価(単価) 服用量(1ヶ月) 薬剤費(3割負担)
エンレスト錠50mg 60.9円/錠 60錠(1日2回) 約1,096円
エンレスト錠100mg 106.9円/錠 60錠(1日2回) 約1,924円
エンレスト錠200mg 188.2円/錠 60錠(1日2回) 約3,388円
エンレスト粒状錠 小児用12.5mg 21.4円/個 60個 約385円
エンレスト粒状錠 小児用31.25mg 43.2円/個 60個 約777円

■ 自己負担の目安(30日分・1日2回の場合)

  • エンレスト錠200mg: 3割 → 約3,388円 / 1割 → 約1,129円
  • エンレスト錠100mg: 3割 → 約1,924円 / 1割 → 約641円
  • エンレスト錠50mg: 3割 → 約1,096円 / 1割 → 約365円
  • ● ※ 診察料・検査費・薬局調剤料などは別途かかります

✅ エンレストは心不全に対する新たな選択肢として重要な役割を果たします。
高価ではありますが、症状の改善や入院リスクの低下が期待できる薬です。費用と効果のバランスを考慮し、主治医と相談の上で使用を検討しましょう。

👨‍⚕️ 医師からのコメント・監修

アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)(エンレスト)
エンレストは従来のRAAS抑制薬に加え、心不全治療に革新をもたらした画期的な薬剤です。
ナトリウム利尿ペプチドの分解抑制という新たな作用により、心不全の進行抑制と予後改善が期待できます。
とくに、ACE阻害薬やARBでは効果が不十分だった患者さんにおいて、新たな選択肢となります。」

当院では、心不全の病態や血圧、腎機能などを多角的に評価し、安全に導入できるタイミングを見極めたうえで処方を検討しています。
高血圧を合併している方にも適応があり、血圧の管理と心不全の治療を同時に行える点が大きな利点です。
服薬中は、電解質異常や腎機能の変化に注意しながら、定期的なモニタリングを行います。

監修:黒田揮志夫 医師(病理専門医/総合診療医)
0th CLINIC 日本橋 院長
日本病理学会認定 病理専門医/心不全・高血圧管理の外来経験10年以上
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