低血糖(Hypoglycemia)|日本橋の内科 0th CLINIC(ゼロスクリニック)
低血糖(Hypoglycemia)|「すぐ対処」と「再発予防」で日常を安全に
血糖が70 mg/dL未満になったら要注意。15-15ルール・グルカゴン・薬の見直し・CGM活用で、重症化と再発を防ぎます。
低血糖とは(Hypoglycemia)
糖尿病治療中に起こりやすい血糖の下がりすぎの状態。放置するとけいれん・意識障害などの重症化や転倒・事故の原因になります。治療のもう一つの重要な目標は低血糖を避けることです。
重症度レベル(ADA推奨の3段階)
レベル | 血糖 | 説明 |
---|---|---|
Level 1 | < 70 かつ ≥ 54 mg/dL | 臨床的に重要。早めに補食で対処。 |
Level 2 | < 54 mg/dL | 神経低糖症状が出やすい。直ちに是正。 |
Level 3 | 数値に関わらず | 意識障害/介助が必要な重症。グルカゴンや救急対応。 |
Level分類は治療判断と再発予防の設計に役立ちます。
症状(人によって出方が違います)
- 交感神経症状:動悸・冷汗・ふるえ・強い空腹感・不安
- 中枢神経症状:ぼーっとする・錯乱・集中できない・視覚異常・けいれん・意識障害
- 低血糖無自覚(気づきにくい)に要注意:頻回の低血糖や長期糖尿病で起こりやすい
原因・誘因
- 薬剤:インスリン、SU薬、グリニド、アルコール併用など
- 食事・運動:食事量不足、遅延、欠食/予定外の運動、入浴
- 併存症:腎機能低下・肝機能障害・高齢・感染症・下痢/嘔吐
- 時間帯:夜間・明け方、インスリン/薬のピーク時
すぐやること(家庭・外来)
- 測定:血糖またはセンサー値を確認(判断が難しいときはまず安全に補食)。
- 15-15ルール:ブドウ糖15 g(目安:ブドウ糖タブレット3〜4錠、ブドウ糖ジェル1袋、砂糖不使用のスポーツドリンクではなく「糖分を含む飲料」半分コップ 等)→15分後に再測→70 mg/dL未満なら繰り返す。
- 食事の補強:改善後は主食+たんぱく質/脂質を少量とり、再低下を防ぐ。
- 注意:アカルボース等のαGI内服中は、砂糖(ショ糖)では効きが遅いため、ブドウ糖(デキストロース)で対応。
- 受診/救急の目安:意識障害や嘔吐で経口摂取不可、繰り返す低血糖、SU薬服用中の重い低血糖は救急要請(グルカゴン使用)を。
グルカゴンの使い方(Level 3/経口摂取不可)
- 対象:介助が必要な重症低血糖、経口摂取が難しい場合。
- 製剤:使い切りの鼻腔投与やプレフィルド注射などの準備不要タイプが推奨。
- 家族/周囲の方へ:事前に使い方を練習し、投与後は救急要請と医療機関受診を。
グルカゴンを処方された方は、携行と期限管理を。嘔吐時の誤嚥に注意し回復後の補食も重要です。
夜間低血糖と運転の注意
- 夜間対策:就寝前の血糖確認、必要に応じて軽食/基礎インスリンやSU薬の用量・タイミング調整、CGMアラートの活用。
- 運転:運転前に血糖確認。低血糖の疑いがあれば運転中止→補食→再測定。十分に回復しないうちは再開しない。
CGM活用と目標(TIR/TBR)
- TIR(70–180 mg/dL)目標:>70%を目指す。
- TBR <70 mg/dL:<4%、TBR <54 mg/dL:<1%を目標に。
- 10–14日間・装着率≧70%のデータで評価すると有用。
再発予防(薬・食事・運動・アルコール)
- 薬剤調整:低血糖を起こしやすい薬(SU/グリニド/過量のインスリン)を減量・中止・置換。高齢者や腎機能低下では特に配慮。
- 食事:欠食回避、主食の量配分、飲酒時は食事と一緒に少量+就寝前確認。
- 運動:運動前後の測定と補食、ボーラス/基礎の調整(ポンプ/スマートピンの機能も活用)。
- 教育:低血糖無自覚への対策(しばらく厳格目標を緩める、夜間アラート設定、家族教育)。
フォローアップ(外来の目安)
- 受診間隔:頻回の低血糖がある間は1–4週に設定し、安定後は1–3か月へ。
- 確認項目:低血糖の頻度・時間帯・誘因、薬歴、腎肝機能、CGMのTBR/TIR。
- 紹介/連携:重症/反復例、低血糖無自覚、妊娠、腎不全・肝不全は連携強化。
よくある質問
低血糖はどのくらいで回復しますか?
砂糖やジュースで治せばよいですか?
グルカゴンは誰が使いますか?
再発を防ぐコツは?
関連ページ(院内リソース)
👨⚕️ 医師からのコメント・監修(低血糖)

「低血糖は“早く・適切に直す”こと、そして“もう起こさない”設計が同じくらい大切です。薬・食事・運動・テクノロジーを患者さんごとに最適化します。」
- Level分類で判断を標準化、15-15ルールとグルカゴンをセットで教育。
- TBR目標(<70: <4%、<54: <1%)とTIR>70%をCGMでモニタ。
- 高齢者・腎障害・SU内服中は再発リスクが高いため、目標緩和や薬剤デエスカレーションを検討。
0th CLINIC 日本橋 院長/医学博士(心臓血管外科学)
日本病理学会認定 病理専門医/元外科専門医/日本プライマリケア連合学会認定 プライマリケア認定医
💊 糖尿病治療薬の種類と特徴
糖尿病治療では、血糖値を下げるための薬を使うことがあります。
病態や合併症の有無に応じて、内服薬や注射薬を適切に組み合わせて治療します。
🔷 主な内服薬(経口血糖降下薬)
- ビグアナイド薬(メトホルミンなど)
─ 肝臓での糖の産生を抑える。体重が気になる方にも適応されます。 - SGLT2阻害薬
─ 尿から糖を排出する薬。体重減少や血圧改善も期待されます。 - DPP-4阻害薬
─ 食後のインスリン分泌を助ける薬。低血糖を起こしにくいのが特徴です。 - スルホニル尿素薬(SU薬)
─ インスリン分泌を促進する薬。やや低血糖を起こしやすいので注意。 - α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)
─ 糖の吸収をゆっくりにすることで、食後高血糖を抑えます。
💉 注射薬(インスリン・GLP-1受容体作動薬)
- インスリン製剤
─ 血糖値を直接下げるホルモンを補う薬。1型糖尿病や重症の2型糖尿病で使用。 - GLP-1受容体作動薬
─ インスリン分泌を促進し、食欲を抑える注射薬。週1回の製剤もあり、肥満のある方にも有効です。
📋 副作用や注意点
- 低血糖(特にSU薬・インスリン使用中)
- 吐き気・食欲不振(GLP-1受容体作動薬)
- 尿路感染症・脱水(SGLT2阻害薬)
- 腎機能や肝機能の状態により、使用できない薬もあります
🏥 通院・血液検査が大切です
糖尿病は「症状が出にくい」慢性疾患です。
自己判断で薬を中断せず、定期的に診察・HbA1cや腎機能の検査を受けて、合併症を予防しましょう。
💊 糖尿病治療薬の種類と特徴
糖尿病の治療薬は多岐にわたります。以下は、日本国内で使用される代表的な薬剤とその特徴をまとめたものです。
🟢 経口血糖降下薬(内服薬)
① ビグアナイド薬(Biguanides)
- メトホルミン(メトグルコ®、グリコラン®):肝臓での糖新生抑制、第一選択薬。下痢などの副作用に注意。
② スルホニル尿素薬(SU薬)
- グリベンクラミド(オイグルコン®)
- グリクラジド(グリミクロン®)
- グリメピリド(アマリール®):低血糖と体重増加に注意。
③ 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド系)
④ α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)
⑤ チアゾリジン薬(TZD)
- ピオグリタゾン(アクトス®):インスリン抵抗性改善。浮腫や体重増加に注意。
⑥ DPP-4阻害薬
⑦ SGLT2阻害薬
💉 注射薬(インスリン・GLP-1受容体作動薬)
① GLP-1受容体作動薬
- リラグルチド(ビクトーザ®)
- デュラグルチド(トルリシティ®)
- セマグルチド(オゼンピック®、ウゴービ®)
- チルゼパチド(マンジャロ®):GIP/GLP-1デュアル作動薬。強力な血糖・体重コントロール。
② インスリン製剤(分類別)
- 超速効型インスリン(食事直前に使用)
アスパルト(ノボラピッド®) / リスプロ(ヒューマログ®) / グルリジン(アピドラ®) / フィアスプ® / ルムジェブ® - 速効型インスリン(食前30分投与)
レギュラーインスリン(ノボリンR®、ヒューマリンR®) - 混合型インスリン(プレミックス)
ノボラピッド®30ミックス・50ミックス・70ミックス / ヒューマログ®ミックス25・50 - 中間型インスリン
NPHインスリン(ノボリンN®、ヒューマリンN®) - 持効型インスリン(持続時間:約24時間)
グラルギン(ランタス®、ランタスXR®) / デグルデク(トレシーバ®) / デテミル(レベミル®) - 配合注射(インスリン+GLP-1受容体作動薬)
ソリクア®(グラルギン+リキシセナチド) / ゾルトファイ®(デグルデク+リラグルチド)
それぞれの薬剤は、患者さんの体質・合併症・ライフスタイルに応じて選択されます。
詳しくは医師にご相談ください。
GLP-1受容体作動薬の作用メカニズム

GLP-1受容体作動薬は、インスリン分泌促進、食欲抑制、胃の排出遅延などの作用を通じて血糖値をコントロールします。
また、体重減少効果もあることから、2型糖尿病や肥満治療にも用いられます。
こんな方はご相談ください
- のどが渇く、水をたくさん飲む
- 尿の量や回数が増えた
- 食欲があるのに体重が減る
- 疲れやすい、だるい
- 手足のしびれ
- ケガが治りにくい
- 健康診断で血糖値やHbA1cが高いと言われた
症状から探す
低血糖:エビデンス&ガイドライン・実務
低血糖は血糖の過度低下により神経低糖症状(錯乱・けいれん・意識障害)などを来す緊急性のある病態です。標準的には Level 1–3の3段階で重症度を分類し、迅速なブドウ糖補給(15-15ルール)と重症時のグルカゴン投与、 さらに再発予防(薬剤見直し・CGM活用)を行います。軽症は多くが15–30分で改善しますが、 SU薬(スルホニル尿素)内服や腎機能低下では遷延・反復に注意が必要です。
🏛 学会・専門ガイドライン(診断・治療の標準)
- ADA Standards of Care:低血糖のLevel分類、CGM指標(TBR/TIR)の運用、重症時グルカゴンの教育・携行を推奨。
- 国際コンセンサス(CGM/TIR):TIR(70–180 mg/dL)>70%、TBR <70 mg/dL <4%、TBR <54 mg/dL <1% を目標。
- JBDS(入院患者の低血糖):院内低血糖の標準アルゴリズムと観察・再評価の手順を提示。
🔎 低血糖の診断エビデンス(基準と閾値)
レベル | 血糖の目安 | 臨床的ポイント |
---|---|---|
Level 1 | < 70 かつ ≥ 54 mg/dL | 臨床的に重要。早めに補食で是正。 |
Level 2 | < 54 mg/dL | 神経低糖の閾値。直ちに是正。 |
Level 3 | 数値に依らず | 介助が必要な重症(意識障害・けいれん等)。グルカゴンや救急対応。 |
CGM評価は10–14日・装着率≥70%のデータで、TIR/TBRを併用します。頻回低血糖や長期糖尿病では低血糖無自覚に注意し、目標の一時緩和とアラート強化を検討します。
🧪 診断・スクリーニングの実務
- その場で測定:自己測定/ポイントオブケアで血糖確認(判断が難しければまず安全に補食)。
- 原因の把握:薬剤(インスリン、SU/グリニド)、欠食・飲酒・運動、腎機能低下・感染などを系統的に確認。
- 院内では:反復/重症例は採血(電解質・腎肝機能)と観察、プロトコルで再低下を予防。
💊 治療の基本:フェーズ設計と目標
- 15-15ルール:ブドウ糖15 g → 15分後に再測 → 70 mg/dL未満なら繰り返す。改善後は再低下予防に主食+たんぱく質/脂質を少量追加。
- αGI(アカルボース等)内服中:砂糖(ショ糖)は効きにくいため、ブドウ糖(デキストロース)で是正。
- Level 3/経口不可:グルカゴン(鼻腔または注射)を周囲が投与し、救急要請。投与手技は事前に教育・練習。
- 入院下:意識障害・嘔吐時は静注ブドウ糖を使用し、回復後の食事介入と観察を継続。
- 再発予防:SU/過量インスリンの減量・置換、運動/飲酒時の補食、CGMアラート設定と目標の一時緩和(高齢者・腎障害)。
- 迷ったら119番:意識障害・けいれん・嘔吐で経口不可、<54 mg/dLが持続、短時間に反復、SU内服中の重い低血糖は救急要請。
- 受診前メモ:血糖値、最終投薬時刻、飲酒/運動の有無、持参薬。運転は中止し、回復確認まで再開しない。
📈 改善にかかる時間・予後の目安
- 軽症:15-15ルールで15–30分程度で回復することが多い。
- 重症/反復例:SU薬・腎機能低下では長引きやすく、院内での持続糖補給と観察が必要。
- 長期予後:重症低血糖は転倒・不整脈・事故などのリスクを高めるため、教育+テクノロジー+薬剤最適化で再発を抑える。
🛠 実装の細則(院内フロー共有用)
- モニタリング:回復まで血糖を15–30分毎、その後も数時間は間隔を空けて再評価。
- 標準キット:低血糖ボックス(ブドウ糖ジェル/タブレット、グルカゴン、点滴セット、教育カード)を各所に常備。
- 薬剤調整:夜間・運動・飲酒関連の低血糖パターンに応じて、基礎/追加比率やSUの減量・中止を検討。
- CGMの活用:TBR抑制とアラート最適化で無自覚低血糖を減らす(TIR>70%、TBR<4%/<1%)。
🇯🇵 日本の公的情報・学会
- 日本糖尿病学会(JDS):診療ガイドライン・学術情報
- 厚生労働省 e-ヘルスネット:糖尿病の基礎知識・生活情報
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