糖尿病合併妊娠(既往糖尿病妊娠)|日本橋の内科 0th CLINIC(ゼロスクリニック)
糖尿病合併妊娠(既往糖尿病妊娠)|母体と赤ちゃんを守るチームケア
1型/2型糖尿病の方が妊娠を希望・成立した場合、厳格かつ安全な血糖管理と合併症スクリーニング、周産期連携が重要です。
当院は糖尿病クリニックとして、情報提供と血糖面のサポートを行います。
一方で、妊娠の医学管理・分娩管理は、婦人科(産科)が併設された病院での受診・管理をお願いいたします。
ご希望に応じて周産期センター等への紹介状作成・情報連携を迅速に行います。
受診・連携について(重要)
- 当院は糖尿病専門外来としての情報提供・血糖調整(インスリン/CGM最適化、薬剤見直し)を担当します。
- 妊婦健診・胎児評価・分娩管理は、婦人科(産科)併設の病院でのご受診をお願いいたします。
- 初回受診時から紹介状・検査結果の共有を行い、以後も周産期センターと双方向で情報連携します。
- 夜間・休日を含む急変時は、産科救急の受け入れ体制がある病院へご案内します。
概要(既往糖尿病妊娠:1型/2型)
高血糖は先天奇形・流早産・巨大児・肩甲難産・新生児低血糖などのリスクを高めます。妊娠前から血糖を整え、妊娠中は安全な低血糖回避と厳格な目標の両立が鍵です。
救急受診の目安(Red Flags)
- 嘔吐を伴う高血糖・ケトン陽性(DKA疑い)
- 持続する低血糖や意識障害
- 重度の高血圧(例:収縮期≥160 / 拡張期≥110 mmHg)、激しい頭痛・視覚異常・上腹部痛(子癇前症疑い)
- 胎動の著明な減少、破水・出血、強い腹痛 など
迷ったら早めに連絡・受診してください(産科救急体制のある病院へ当院から連携します)。
妊娠前準備(プレコンセプション)
- 血糖目標:可能ならHbA1c < 6.5%(低血糖なく安全に達成)。CGM推奨。
- 葉酸:400–800 µg/日(NTD既往など高リスクは医師指示で高用量)。
- 合併症評価:網膜・腎機能・甲状腺・血圧・脂質、薬剤レビュー。
- 薬剤見直し:ACE阻害薬/ARB・スタチン・SGLT2は中止へ。安全な代替に切替。
- 体重・生活:適正体重化、禁煙、ワクチン(季節性インフル等)確認。
血糖・血圧の目標(妊娠中)
指標 | 目標 | 補足 |
---|---|---|
CGM TIR(63–140 mg/dL) | > 70% | 理想は > 70–80%。TBR<63 mg/dL <4%、<54 mg/dL <1% |
HbA1c | < 6.0%(安全に可能なら) | 低血糖リスクが高い場合は個別化(例:6.0–6.5%) |
血圧 | < 135/85 mmHg 目安 | 降圧はラベタロール/メチルドパ/ニフェジピン等を個別選択 |
体重増加 | BMIに応じて適正範囲 | 栄養士と目標設定(過・過小増加は合併症リスク) |
数週単位でHbA1c・体重、日単位でCGM/SMBGを確認し、治療を調整します。
薬剤の整理(続行/中止の目安)
区分 | 代表薬 | 妊娠中の扱い |
---|---|---|
糖尿病治療 | インスリン | 第一選択(基礎/追加。必要に応じ持続皮下注/スマートペン/CSII+CGM) |
メトホルミン | 状況により併用検討可(日本の適応/ラベルに留意) | |
SGLT2、SU、TZD など | 原則中止(妊娠判明時点で見直し) | |
降圧 | ACE阻害薬/ARB | 禁忌(他剤へ変更) |
ラベタロール、メチルドパ、徐放ニフェジピン等 | 個別に使用 | |
脂質 | スタチン | 中止 |
抗血小板 | 低用量アスピリン | 12–16週開始を目安(子癇前症高リスク:糖尿病は適応) |
妊娠中の評価スケジュール(例)
妊娠期 | 実施の目安 | 主な内容 |
---|---|---|
1期(〜13週) | 初診〜 | 基礎評価(網膜/腎・尿蛋白/甲状腺/血圧)、薬剤見直し、葉酸、栄養指導、低用量アスピリン開始検討(12–16週) |
2期(14–27週) | 4週ごと | 血糖データ最適化、詳細超音波(18–22週)、必要に応じ胎児心エコー(20–22週) |
3期(28週〜) | 2–4週ごと | 胎児発育評価(28週以降4週ごと)、NST/BPP(32–34週〜個別化)、分娩計画の確定 |
治療(栄養・運動・インスリン/CGM・アスピリン)
- 栄養:過不足ない総エネルギー、等間隔の炭水化物、就寝前補食の検討。
- 運動:産科許可の範囲で有酸素+レジスタンスを軽〜中等度に。
- インスリン/CGM:基礎/追加の調整をこまめに。CGMでTIR/TBR/TARを週次レビュー。
- 低用量アスピリン:子癇前症予防目的で適応時に導入。
- 低血糖対策:ブドウ糖携行、家族へ対応共有、夜間アラート設定。
合併症管理(母体・胎児)
- 母体:低血糖/DKA、子癇前症、感染症。網膜症の増悪は急速な血糖改善で起こり得るため定期眼科。
- 胎児:奇形(高HbA1cで上昇)、巨大児、羊水過多、子宮内発育遅延(血管症併存時)。
- 新生児:低血糖、多血症、高ビリルビン血症、呼吸障害。
出産計画(時期・方法の目安)
状況 | 分娩時期の例 | 補足 |
---|---|---|
良好コントロール・合併症なし | 39–40週 | 経腟分娩を基本に個別判断 |
血糖不良/合併症あり | 37–39週 | 周産期センターで管理・計画分娩 |
巨大児疑い | 個別化 | 推定体重が高値の場合は帝王切開を検討 |
分娩・入院中の管理は婦人科(産科)併設の病院で行います。必要に応じて当院から紹介・情報共有を行い、分娩時は持続インスリン/ブドウ糖で血糖を厳密管理(各施設プロトコルに準拠)。
産後ケア・授乳
- インスリン量:出産後は妊娠前の30–50%減を目安に再設定(T1D)。T2Dは食事・授乳状況で個別化。
- 授乳:多くの糖尿病薬は授乳で使える選択肢あり(個別に確認)。低血糖リスクに注意。
- 血圧/薬剤:ACE阻害薬などの再開は授乳適合を確認して選択。
- 避妊:次妊娠に向けた計画的な選択(IUD/ピル等を個別提案)。
- 長期予防:体重・運動・食事・睡眠の最適化、心腎リスク評価。
よくある質問
メトホルミンは続けられますか?
低用量アスピリンは全員必要?
CGMは必須ですか?
関連ページ(院内リソース)
💊 糖尿病治療薬の種類と特徴
糖尿病治療では、血糖値を下げるための薬を使うことがあります。
病態や合併症の有無に応じて、内服薬や注射薬を適切に組み合わせて治療します。
🔷 主な内服薬(経口血糖降下薬)
- ビグアナイド薬(メトホルミンなど)
─ 肝臓での糖の産生を抑える。体重が気になる方にも適応されます。 - SGLT2阻害薬
─ 尿から糖を排出する薬。体重減少や血圧改善も期待されます。 - DPP-4阻害薬
─ 食後のインスリン分泌を助ける薬。低血糖を起こしにくいのが特徴です。 - スルホニル尿素薬(SU薬)
─ インスリン分泌を促進する薬。やや低血糖を起こしやすいので注意。 - α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)
─ 糖の吸収をゆっくりにすることで、食後高血糖を抑えます。
💉 注射薬(インスリン・GLP-1受容体作動薬)
- インスリン製剤
─ 血糖値を直接下げるホルモンを補う薬。1型糖尿病や重症の2型糖尿病で使用。 - GLP-1受容体作動薬
─ インスリン分泌を促進し、食欲を抑える注射薬。週1回の製剤もあり、肥満のある方にも有効です。
📋 副作用や注意点
- 低血糖(特にSU薬・インスリン使用中)
- 吐き気・食欲不振(GLP-1受容体作動薬)
- 尿路感染症・脱水(SGLT2阻害薬)
- 腎機能や肝機能の状態により、使用できない薬もあります
🏥 通院・血液検査が大切です
糖尿病は「症状が出にくい」慢性疾患です。
自己判断で薬を中断せず、定期的に診察・HbA1cや腎機能の検査を受けて、合併症を予防しましょう。
💊 糖尿病治療薬の種類と特徴
糖尿病の治療薬は多岐にわたります。以下は、日本国内で使用される代表的な薬剤とその特徴をまとめたものです。
🟢 経口血糖降下薬(内服薬)
① ビグアナイド薬(Biguanides)
- メトホルミン(メトグルコ®、グリコラン®):肝臓での糖新生抑制、第一選択薬。下痢などの副作用に注意。
② スルホニル尿素薬(SU薬)
- グリベンクラミド(オイグルコン®)
- グリクラジド(グリミクロン®)
- グリメピリド(アマリール®):低血糖と体重増加に注意。
③ 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド系)
④ α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)
⑤ チアゾリジン薬(TZD)
- ピオグリタゾン(アクトス®):インスリン抵抗性改善。浮腫や体重増加に注意。
⑥ DPP-4阻害薬
⑦ SGLT2阻害薬
💉 注射薬(インスリン・GLP-1受容体作動薬)
① GLP-1受容体作動薬
- リラグルチド(ビクトーザ®)
- デュラグルチド(トルリシティ®)
- セマグルチド(オゼンピック®、ウゴービ®)
- チルゼパチド(マンジャロ®):GIP/GLP-1デュアル作動薬。強力な血糖・体重コントロール。
② インスリン製剤(分類別)
- 超速効型インスリン(食事直前に使用)
アスパルト(ノボラピッド®) / リスプロ(ヒューマログ®) / グルリジン(アピドラ®) / フィアスプ® / ルムジェブ® - 速効型インスリン(食前30分投与)
レギュラーインスリン(ノボリンR®、ヒューマリンR®) - 混合型インスリン(プレミックス)
ノボラピッド®30ミックス・50ミックス・70ミックス / ヒューマログ®ミックス25・50 - 中間型インスリン
NPHインスリン(ノボリンN®、ヒューマリンN®) - 持効型インスリン(持続時間:約24時間)
グラルギン(ランタス®、ランタスXR®) / デグルデク(トレシーバ®) / デテミル(レベミル®) - 配合注射(インスリン+GLP-1受容体作動薬)
ソリクア®(グラルギン+リキシセナチド) / ゾルトファイ®(デグルデク+リラグルチド)
それぞれの薬剤は、患者さんの体質・合併症・ライフスタイルに応じて選択されます。
詳しくは医師にご相談ください。
GLP-1受容体作動薬の作用メカニズム

GLP-1受容体作動薬は、インスリン分泌促進、食欲抑制、胃の排出遅延などの作用を通じて血糖値をコントロールします。
また、体重減少効果もあることから、2型糖尿病や肥満治療にも用いられます。
こんな方はご相談ください
- のどが渇く、水をたくさん飲む
- 尿の量や回数が増えた
- 食欲があるのに体重が減る
- 疲れやすい、だるい
- 手足のしびれ
- ケガが治りにくい
- 健康診断で血糖値やHbA1cが高いと言われた
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糖尿病合併妊娠(既往糖尿病妊娠):外部エビデンスまとめ
公的機関・国際学会・主要ジャーナルからの一次文献・ガイドラインです(運用:プレコン→目標/モニタ→治療→周産期連携→分娩→産後)。
当院は糖尿病クリニックとして情報提供と血糖面の支援を行いますが、妊婦健診・胎児評価・分娩の実管理は婦人科(産科)併設の病院で受診ください(紹介・情報連携に対応)。
📘 総論・枠組み
- 【基準】ADA Standards of Care 2025「Management of Diabetes in Pregnancy」
- 【ガイドライン】NICE NG3「Diabetes in pregnancy」(プレコン〜産後)
- 【学会】ACOG Practice Bulletin「Pregestational Diabetes Mellitus」
🌱 プレコンセプション(妊娠前)
🎯 血糖目標とモニタリング(CGM/TIR)
- 【コンセンサス】妊娠中のTIR63–140 mg/dL:International CGM Targets(Diabetes Care 2019)(OA版:PMC)
- 【RCT】T1D妊娠でCGMが新生児アウトカム改善:CONCEPTT試験(Lancet 2017 / PubMed:PMID:28923465)
💊 治療(インスリン/経口薬/安全性)
- 【第一選択】妊娠糖尿病ではなく既往糖尿病の管理:インスリン中心(ADA Standards):該当章
- 【RCT】T2D妊娠へのメトホルミン併用:MiTy試験(Lancet Diabetes Endocrinol 2020 / PubMed:PMID:32946820)
- 【授乳期安全性】LactMed(NIH)—Insulin / Metformin/CDCの案内:Prescription meds & breastfeeding
🩺 高血圧・子癇前症予防
- 【NICE NG133】妊娠高血圧診療(降圧薬/目標135/85など):ガイドライン(ビジュアル要約:Visual summaries)
- 【ACOG】子癇前症(PB 222):Practice Bulletin 222
- 【低用量アスピリン】USPSTF(81mg/日、12週以降):Recommendation / ACOG Practice Advisory:解説
👶 胎児評価・スケジュール(例)
- 【枠組み】ADA Standards(詳細超音波・胎児心エコー・NST/BPPの導入時期の目安を含む運用):該当章
- 【産科枠組み】ACOG各種資材(妊娠高血圧/周産期安全ツール等):Topics hub
🗓 分娩時期・方法(目安)
- 【総論】ACOG Practice Bulletin「Pregestational Diabetes Mellitus」(分娩時期の目安含む):PB
- 【周産期連携】SMFM(Pregestational DM—Antepartum Careなどの患者安全リソース):Patient Safety
⚠️ DKA(妊娠時の注意)
🤱 産後(授乳・インスリン量再設定)
※ 各リンクは外部サイト(公的機関・国際学会・主要ジャーナル)です。推奨・目標・分娩計画は各ガイドライン本文に従い、産科(婦人科)併設の病院と連携のうえ個別最適化してください。
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