【肝斑は注意】ルメッカ(IPL)との付き合い方|診断・当院方針・代替と併用
ルメッカ × 肝斑(メラズマ)
— 診断の落とし穴を避け、安全・現実的な治療設計へ —
- まず正確な診断:肝斑かどうかを見極める(誤診が多い)
- 低出力IPLの“慎重適応”:TXA/HQと組み合わせ、増悪回避
- 代替・併用:ピコトーニング・ピーリングなど非炎症性オプション
- 増悪時フロー:悪化したら“即停止→整える”が原則
まず、肝斑かどうか?(セルフ/問診チェック)
肝斑ではない色素斑(老人性色素斑、炎症後色素沈着、ADMなど)を肝斑と誤認しているケースが少なくありません。以下の情報を診断の手掛かりにします:
- 年齢(発症は30〜40代に多い)
- 出産歴/妊娠歴(妊娠・産後で悪化しやすい)
- ホルモン剤(経口避妊薬/更年期治療等の服用歴)
- シミが出始めた年齢と経過
- 既往治療(トーニング、IPL/レーザー、ピーリング、外用)
- 生活要因:紫外線・可視光・熱、摩擦、香料/刺激物
VISIAなどの画像評価とあわせ、肝斑の分布(ほほの左右対称、境界やや不明瞭)か、他疾患との混在かを確認。
肝斑エリアをマッピングして、他治療では外して照射できるのがメリットです。
当院の基本方針:“まず整える → 慎重照射”
- 整える(4〜8週):トラネキサム酸(TXA)内服、ハイドロキノン(HQ)外用、紫外線・可視光遮断、摩擦/熱のコントロール。
- 慎重照射:肝斑エリアは原則回避。周囲の色素斑や赤み/質感に低出力IPLでアプローチ。
- 評価と最適化:VISIA前後比較で悪化兆候があれば照射中止し、整えるフェーズへ戻す。
低出力IPL(ルメッカ)の位置づけ
IPLは色調全体の調整に有効ですが、肝斑そのものを直接ねらうと増悪しやすいため、当院では次のように運用します。
- 適応:周囲の老人性色素斑/炎症後色素沈着、赤み・質感の調整。
- 設定:低出力・短パルス・十分な冷却。肝斑マスクを設定し、直接照射は避ける。
- 併用:TXA内服・HQ外用を並行し、炎症とメラニン生成を抑制。
- 回数/間隔:30〜45日間隔で経過を見ながら最小限で調整。
※ 文献レビューでは、IPLは補助療法として有効な一方、再発・増悪リスクにも留意が必要とされています。
代替・併用:炎症を起こしにくい選択肢
増悪リスクと、起きた時のフロー
IPLは熱刺激により、肝斑の一時的な濃色化/拡大を招くことがあります。多くは数週で鎮静化しますが、対処を誤ると長引くことがあります。
- 即時対応:照射を中止し、冷却・保湿・厳格な光防御を徹底。
- 薬物療法:TXA内服とHQ外用(刺激が強ければ休止/調整)。
- 評価:2〜4週ごとにVISIAなどで客観評価。改善が安定するまで機器治療は控える。
- 再開基準:炎症所見がなくなり、色調がベースラインへ戻った後に段階的再開。
よくある経過:
数日〜1週で濃く見える→2〜4週で落ち着く傾向。
再燃を繰り返す場合は、機器主体から外用/生活指導主体へ切替えます。
※ 肝斑は慢性疾患で再発しやすく、どの治療でもメンテナンスが必要になります。
よくある質問
肝斑にルメッカは全くダメ?
厳密には“慎重適応”です。肝斑部位は回避し、周囲のシミや赤み・質感を低出力で調整する設計にします。外用/内服を先に整えると安全性が上がります。
TXA内服はどれくらい続けますか?
まず4〜12週で反応を評価。副作用/既往歴を確認し、必要に応じて延長や休薬を行います(医師の判断)。
ハイドロキノンは毎日ずっと塗ってよい?
刺激性があるため、短期集中+休薬期間を設ける運用が一般的です。濃度・頻度は個別に指示します。
再発を防ぐコツは?
広域スペクトルの日焼け止め+可視光対策(酸化鉄入り)、摩擦/熱の回避、外用の継続。季節で強度を調整します。
参考文献(エビデンス)
- Jiryis B, et al. Management of Melasma: Laser and Other Therapies. J Clin Med. 2024;13(5):1468. Link
- Trivedi MK, et al. A review of laser and light therapy in melasma. 2017. PMC
- Yun WJ, et al. Split-face randomized study: fractionated IPL vs conventional IPL for melasma. 2015. PubMed
- Neagu N, et al. Melasma treatment: a systematic review. 2022. PubMed
- Philipp‑Dormston WG, et al. Melasma: Step-by-step multimodal approach. 2024. PMC
- Mayo Clinic Q&A: Treating melasma(IPLの増悪リスクに言及). 2019. Link
※ 研究間で結果は一様ではありません。再発しやすい疾患特性を踏まえ、組み合わせ療法とメンテナンスが前提です。
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👨⚕️ 医師からのコメント・監修

「ルメッカはシミや赤み、くすみに対する総合的な美肌治療です。
従来のIPLよりも高いピークパワーを持ち、少ない回数で実感できる治療効果が魅力です。
肌質や症状に合わせて、安全かつ効果的な出力設定で治療を行うことが大切です。」
当院では、VISIA肌診断などを用いて、色素斑や毛細血管の状態を正確に評価した上でルメッカ治療を行っています。
シミ・そばかす・赤ら顔・毛穴の開きなど、複数のお悩みを同時に改善したい方におすすめです。
施術前後のスキンケアや、他治療とのコンビネーションについても丁寧にご案内いたします。
0th CLINIC 日本橋 院長
日本病理学会認定 病理専門医/総合診療、救急科での診療歴10年以上
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