膵性糖尿病(3c型糖尿病/Pancreatogenic Diabetes)のご相談なら|日本橋の内科 0th CLINIC(ゼロスクリニック)

膵性糖尿病(3c型糖尿病/Pancreatogenic Diabetes)のご相談なら|日本橋の内科 0th CLINIC(ゼロスクリニック)

膵性糖尿病(3c型糖尿病)|膵の治療・栄養と“インスリン中心”の安全管理

慢性膵炎・膵切除・膵癌・嚢胞性線維症などに伴う糖尿病。膵酵素補充・栄養低血糖を避ける血糖管理並走させます。

3c型糖尿病とは(Pancreatogenic Diabetes / Type 3c DM)

膵実質の障害により外分泌不全(消化吸収障害)内分泌不全(インスリンとグルカゴンの欠乏)が併存して生じる糖尿病です。 そのため低血糖に脆弱で、栄養不良や脂溶性ビタミン不足を伴いやすいのが特徴です。

主な原因

  • 慢性膵炎(アルコール性・特発性・自己免疫性 など)
  • 膵切除(膵頭十二指腸切除、遠位膵切除、全摘)
  • 膵癌・膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN) 等の膵疾患
  • 嚢胞性線維症(CFRD)、遺伝性膵炎 など

アルコール・喫煙は膵障害の進行要因。禁酒・禁煙が治療の基盤です。

特徴(高血糖・低血糖・消化吸収)

  • 高血糖:インスリン欠乏主体。炎症・感染・疼痛で悪化。
  • 低血糖リスク↑グルカゴン欠乏と栄養不足で“揺れやすい血糖”になりやすい。
  • 外分泌不全:脂肪便・腹部膨満・体重減少・脂溶性ビタミン不足(A/D/E/K)。

診断と鑑別(当院の基本ステップ)

  1. 病歴・手術歴・飲酒/喫煙歴、膵炎の再燃歴・疼痛コントロール状況。
  2. 基本検査:HbA1c、空腹時/随時血糖、腎肝機能、脂質、尿糖・尿ケトン、栄養指標(Alb、亜鉛、脂溶性Vit)。
  3. 外分泌評価便中エラスターゼ、脂肪便、栄養評価。
  4. 画像:造影CT/MRCP/超音波 などで膵の形態評価。
  5. 鑑別:1型/2型/MODYとの鑑別に自己抗体・Cペプチド等を適宜実施。

“膵疾患+外分泌不全の所見+糖代謝異常”の組み合わせを重視します。

治療の全体像(膵のケア × 栄養 × 血糖)

  • 原因治療:膵炎再燃予防、疼痛・胆道膵管ドレナージ、腫瘍/術後フォロー。
  • 基盤整備:禁酒・禁煙、膵酵素補充と栄養療法、ビタミンD含む骨代謝の評価。
  • 血糖管理インスリン中心に個別化。低血糖教育とグルカゴン製剤の備え。
  • テクノロジー:短期装着センサー/CGMでTime in Rangeを改善。

栄養療法・膵酵素補充(PERT)

  • 少量頻回食+十分なたんぱく質を基本に、エネルギー不足を回避。
  • 膵酵素補充:脂肪便・腹部症状・体重減少がある場合に検討。食事ごとに適切量を内服。
  • 脂溶性ビタミン(A/D/E/K)や亜鉛・鉄の欠乏を補正。骨粗鬆症評価。
  • アルコール・喫煙は厳格に回避。再燃・栄養障害の悪化を防ぎます。

薬物療法(インスリン中心の個別設計)

  • インスリン:基礎-追加・混合・日中カバーなどを食事/栄養状態に合わせて調整。
  • 経口薬の位置づけ(症例により併用):
    • メトホルミン:耐糖能改善が必要で腎機能・栄養状態が許せば選択肢。
    • SGLT2阻害薬正ケトアシドーシスのリスクに留意。周術期・絶食時は休薬方針を明確に。
    • GLP-1受容体作動薬:膵炎既往・活動性膵炎では慎重に。消化器症状や体重への影響を個別評価。
    • SU薬/グリニド:低血糖に注意。栄養摂取が不安定な症例では慎重。
    • DPP-4阻害薬:食後高血糖優位で低血糖回避を重視する際の選択肢。

薬剤選択は栄養状態・腎機能・膵炎活動性・周術期などを総合評価して決定します。

低血糖対策・シックデイルール

  • 低血糖:ブドウ糖15g→15分後再測の15ルールグルカゴン製剤を常備し、家族・職場と共有。
  • シックデイ基礎インスリンは止めない/水分・電解質確保/血糖・ケトン頻回測定。
  • 入院目安:強い嘔吐・脱水・持続する高血糖/低血糖、感染症合併など。

センサー/CGM活用

  • 上がる/下がる時間帯”を可視化し、用量と食事のタイミングを最適化。
  • Time in Range・変動幅・低血糖指標(LBGI)を確認し、過不足のない調整。

禁酒・禁煙・生活

  • 禁酒:再燃予防と栄養改善の要。専門外来と連携します。
  • 禁煙:膵障害進行のリスク低減に必須。
  • 運動:体力・栄養状態に応じて段階的に。有酸素+レジスタンス、低血糖対策をセットで。
  • 睡眠・ストレス:再燃予防のための整え。

妊娠・授乳

  • 妊娠計画時は栄養評価・酵素補充の適正化と、インスリン中心の管理へ。
  • 体重・ビタミン・甲状腺・血圧を含む全身評価を事前に整えます。

手術・入院・周術期

  • 絶食・点滴時は静注インスリン/血糖モニタを計画。
  • 術後は経腸栄養+酵素補充を適正化し、低血糖を避ける用量設計。
  • SGLT2阻害薬は周術期休薬を原則とし、eDKAを回避。

フォローアップ(外来の目安)

  • 受診間隔:導入・調整期は2〜8週、安定後は3〜6か月。
  • 検査:HbA1c、体重、栄養指標、脂溶性ビタミン、骨代謝、腎機能・尿アルブミン。
  • 合併症管理:網膜・腎・神経のスクリーニングは一般糖尿病に準じて実施。

よくある質問

膵酵素補充で血糖も良くなりますか?
消化吸収が改善し栄養状態が整うと、インスリンの効き方や必要量の予測が安定し、低血糖の回避にもつながります。
3c型はインスリン必須ですか?
中等度〜重症ではインスリンが第一選択です。軽症・抵抗性優位では経口薬を併用する場合もあります。
GLP-1やSGLT2は使えますか?
症例により検討します。膵炎の活動性や栄養状態、周術期の有無を評価し、安全性に配慮して個別判断します。
食事の脂質は制限が必要?
原則は十分なカロリーと蛋白を確保。脂肪は膵酵素補充を前提に、症状に応じて調整します(過度な制限は栄養不良の原因)。
低血糖が心配です。
グルカゴン欠乏で低血糖に脆弱です。15ルールの実践、グルカゴン常備、CGMアラートの活用で予防します。

👨‍⚕️ 医師からのコメント・監修(膵性糖尿病 3c)

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「3c型糖尿病は“栄養・消化の最適化”“低血糖を避ける血糖管理”の両輪が大切です。禁酒禁煙と酵素補充、インスリン中心の調整をCGMで可視化しながら進めます。」
  • 便中エラスターゼや栄養指標で外分泌不全を見逃さない
  • グルカゴン欠乏を踏まえ、低血糖対策を先に設計
  • 膵・消化器・栄養・外科と多職種連携で安心を高めます。
監修:黒田 揮志夫 医師(病理専門医/外科病理医/プライマリケア認定医)
0th CLINIC 日本橋 院長/医学博士(心臓血管外科学)
日本病理学会認定 病理専門医/元外科専門医/日本プライマリケア連合学会認定 プライマリケア認定医

💊 糖尿病治療薬の種類と特徴

糖尿病治療では、血糖値を下げるための薬を使うことがあります。
病態や合併症の有無に応じて、内服薬や注射薬を適切に組み合わせて治療します。

🔷 主な内服薬(経口血糖降下薬)

  • ビグアナイド薬(メトホルミンなど)
    ─ 肝臓での糖の産生を抑える。体重が気になる方にも適応されます。
  • SGLT2阻害薬
    ─ 尿から糖を排出する薬。体重減少や血圧改善も期待されます。
  • DPP-4阻害薬
    ─ 食後のインスリン分泌を助ける薬。低血糖を起こしにくいのが特徴です。
  • スルホニル尿素薬(SU薬)
    ─ インスリン分泌を促進する薬。やや低血糖を起こしやすいので注意。
  • α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)
    ─ 糖の吸収をゆっくりにすることで、食後高血糖を抑えます。

💉 注射薬(インスリン・GLP-1受容体作動薬)

  • インスリン製剤
    ─ 血糖値を直接下げるホルモンを補う薬。1型糖尿病や重症の2型糖尿病で使用。
  • GLP-1受容体作動薬
    ─ インスリン分泌を促進し、食欲を抑える注射薬。週1回の製剤もあり、肥満のある方にも有効です。

📋 副作用や注意点

  • 低血糖(特にSU薬・インスリン使用中)
  • 吐き気・食欲不振(GLP-1受容体作動薬)
  • 尿路感染症・脱水(SGLT2阻害薬)
  • 腎機能や肝機能の状態により、使用できない薬もあります

🏥 通院・血液検査が大切です

糖尿病は「症状が出にくい」慢性疾患です。
自己判断で薬を中断せず、定期的に診察・HbA1cや腎機能の検査を受けて、合併症を予防しましょう。

💊 糖尿病治療薬の種類と特徴

糖尿病の治療薬は多岐にわたります。以下は、日本国内で使用される代表的な薬剤とその特徴をまとめたものです。

🟢 経口血糖降下薬(内服薬)

① ビグアナイド薬(Biguanides)

② スルホニル尿素薬(SU薬)

③ 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド系)

④ α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)

⑤ チアゾリジン薬(TZD)

⑥ DPP-4阻害薬

⑦ SGLT2阻害薬

💉 注射薬(インスリン・GLP-1受容体作動薬)

① GLP-1受容体作動薬

② インスリン製剤(分類別)

それぞれの薬剤は、患者さんの体質・合併症・ライフスタイルに応じて選択されます。
詳しくは医師にご相談ください。

GLP-1受容体作動薬の作用メカニズム

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GLP-1受容体作動薬は、インスリン分泌促進食欲抑制胃の排出遅延などの作用を通じて血糖値をコントロールします。
また、体重減少効果もあることから、2型糖尿病や肥満治療にも用いられます。

こんな方はご相談ください

  • のどが渇く、水をたくさん飲む
  • 尿の量や回数が増えた
  • 食欲があるのに体重が減る
  • 疲れやすい、だるい
  • 手足のしびれ
  • ケガが治りにくい
  • 健康診断で血糖値やHbA1cが高いと言われた

症状から探す

膵性糖尿病(3c型)は、外分泌不全(消化吸収障害)内分泌不全(インスリン・グルカゴン欠乏)が併存し、血糖が上下に揺れやすいタイプです。膵の基盤治療(膵酵素補充・栄養)と、低血糖を避けるインスリン中心の管理を並行して行います。

🏛 学会・専門ガイドライン(診断・治療の標準)

  • ADA Standards of Care 2025:糖尿病の分類・診断、特別な病型や周術期管理を網羅。Diabetes Care(特集号)ADA公式ページ
  • Pancreapedia(Type 3c レビュー):膵疾患に伴う糖尿病の概念と病態。Pancreapedia
  • AGA クリニカルプラクティスアップデート 2023(外分泌不全/EPI)診断されたEPIには膵酵素補充(PERT)が必須AGA Clinical Guidance
  • ESPEN ガイドライン(2020/2024 実務版):慢性膵炎の栄養管理・マイクロ栄養素補充。Clin Nutr 2020Clin Nutr 2024(Practical)
  • UK 実務ガイド(PEI):外分泌不全の診断・フォロー・PERT実装。BMJ Open Gastro 2021
  • UEG/HaPanEU 欧州ガイド 2025(PEI):PERTは食事毎に十分量を基本(用量調整を推奨)。UEG Journal 2025
  • CFRD(嚢胞性線維症関連糖尿病)ガイド年1回OGTT、治療はインスリン第一選択CFF

3c型は膵疾患ガイドライン(EPI/栄養)糖尿病標準治療(ADA)の組み合わせが基本です。

🔎 3c型の診断エビデンス(Ewald/Hardt の提案など)

  • 主要所見:①外分泌不全(例:便中エラスターゼ低下)、②膵画像異常(CT/MRI/EUS)、③1型自己免疫マーカー陰性(ICA/GAD等)。Hart 2016Ewald 2013
  • 補助所見:Cペプチド低下、インスリン抵抗性の乏しさ、脂溶性ビタミン低下など。

🧪 診断・スクリーニングの実務

  • 糖代謝評価:HbA1c+随時/空腹時血糖。著明高血糖やケトン陽性があれば即治療。
  • 外分泌評価:便中エラスターゼ、脂肪便、体重・栄養指標(脂溶性ビタミンA/D/E/K・骨代謝)。AGA 2023
  • CFRD:10歳以降はOGTTを年1回推奨、体調安定時に施行。CFF

🧴 膵酵素補充(PERT)・栄養(ESPEN/UEG/AGA)

  • PERTはEPI診断後は原則必須(未治療は脂肪吸収不全・栄養障害を増悪)。AGA 2023
  • 用量の目安:主食時40,000–50,000リパーゼ単位/回以上から開始し、症状に応じて増量可。UEG 2025
  • 栄養:十分なカロリー・蛋白、脂溶性ビタミン補充、禁酒禁煙。ESPEN 2020ESPEN 2024 Practical
  • 実装手順:診断・フォローの実務はUK実務ガイドが有用。BMJ Open Gastro 2021

💉 治療の基本:インスリン中心+低血糖予防

  • インスリン第一選択:基礎–追加/混合などを食事・栄養状態に合わせ個別化(低血糖脆弱性を前提に)。ADA 2025
  • 経口薬併用:栄養や腎機能・膵炎活動性で選択。SGLT2は正ケトアシドーシス・脱水リスク、GLP-1RAは膵炎既往では慎重適応。
  • テクノロジー:短期センサー/CGMで上がる/下がる時間帯を可視化し、Time in Rangeを改善。

⚠ 低血糖対策・シックデイルール

  • 15ルール(ブドウ糖15g→15分後再測)、グルカゴン製剤常備と周囲共有。
  • シックデイ基礎インスリンは中止しない/水分・電解質確保/血糖・ケトン頻回測定。

🇯🇵 日本の公的情報・学会

3c型は「膵の治療・栄養の最適化」と「安全な血糖管理」の両輪が鍵です。PERTと栄養補正を土台に、インスリンを中心とした低血糖を避ける設計を、CGMで見える化しながら進めます。上記リンクは実地診療で使われる一次情報・ガイドです。受診時にこのセクションをご提示いただければ、個別事情に合わせて迅速にプランを作成します。

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